硝子体手術のワンポイントアドバイス●連載143143術中の脈絡膜下灌流(初級編)池田恒彦大阪医科大学眼科●はじめに硝子体手術の術中合併症の一つとして,網膜下灌流あるいは脈絡膜下灌流がある.いずれもインフュージョンポートの先端が硝子体腔に正確に挿入されていない場合に生じる.先端から人工房水が毛様体無色素上皮下に灌流されると前者,脈絡膜と強膜の間(脈絡膜上腔)に灌流されると後者となる.以前の20G(ゲージ)硝子体手術のときにはときどきみられたが,近年のトロカールを使用するmicro-incisionvitrectomysurgery(MIVS)では,その頻度は激減している.しかし,トロカールを使用していてもまれに本合併症が生じることがある.●術中所見と対処法網膜下灌流では,インフュージョンポートが設置してある象限から胞状の網膜.離が生じる(毛様体無色素上皮と感覚網膜は解剖学に連続している).脈絡膜下灌流では脈絡膜.離が生じる.図1は脈絡膜下灌流をきたしたときの術中所見であるが,駆逐性出血との鑑別が必要である.通常,駆逐性出血では眼圧が上昇するが,脈絡膜下灌流では極端に上昇することはない.●術中の対処法術中にこのような所見を認めた場合には,まず灌流を止めてトロカールの状態を確認する.この症例ではトロカールが脱落しかけており(図2),強膜と脈絡膜の間に灌流液が迷入していた.インフュージョンポートを別の象限のトロカールに挿入しなおし,灌流を開始する(図3).通常は誤灌流した強膜創から脈絡膜上腔液が排出され,脈絡膜.離は速やかに消失する(図4).ついで誤灌流した強膜創の状態を確認し,必要に応じて眼内光凝固(61)0910-1810/15/\100/頁/JCOPY図1脈絡膜下灌流をきたした症例術中に急速に拡大する脈絡膜.離を認める.図2トロカールの状態トロカールが脱落しかけている.図3インフュージョンポートの変更インフュージョンポートを別の象限のトロカールに挿入しなおし,灌流を開始する.図4再灌流後の眼底所見脈絡膜.離は速やかに消失している.図5眼内光凝固誤灌流した強膜創の状態を確認し,必要に応じて眼内光凝固を施行しておく.を施行しておく(図5).網膜下灌流でも同様の処置を行うが,脈絡膜下灌流よりも誤灌流された人工房水が排出されにくいことがある.また,しばしば毛様体無色素上皮.離をきたし,その部位に裂孔を形成していることが多いので,眼内光凝固に引き続き,必要に応じてガスタンポナーデを施行しておく.あたらしい眼科Vol.32,No.4,2015525