●連載175緑内障セミナー監修=岩田和雄山本哲也175.OCTの見方三木篤也大阪大学大学院医学系研究科眼科学教室光干渉断層計(opticalcoherencetomography:OCT)は緑内障診断にとても有用な機器である.しかし最近,OCTの検査結果を鵜呑みにしたために誤診を招く症例をみることが多くなった.本項では,OCTの信頼度チェックの手順を紹介する.OCTを正しく使用する一助となれば幸いである.OCTによる網膜神経線維層(retinalnervefiberlayer:RNFL),黄斑部神経節細胞複合体厚(ganglioncellcomplex:GCC),および視神経乳頭トポグラフィーの測定は,緑内障に伴う構造的異常の評価法として非常に有用である.その一方で,最近では「OCT緑内障」(OCT所見のみで緑内障と診断されるが,実際には緑内障ではない症例のこと)なる診断名(?)が広がっているように,OCTに依存した診断により,過剰診断や誤診を招くケースもときおりみられる.しかし,日常臨床でみられるこういった誤診のかなりの部分は,OCT画像そのものが適切に撮影できていない信頼度不良例に基づいていることに最近筆者は気がついた.とくに,(過去の筆者のように)OCTのプリントアウトに表示される数値やカラーコードを頭から信用し,元の画像をチェックしないで診断を行う臨床家には,この間違いが起こりやすい.本項では,OCTの信頼度をチェックする基本的な手順を紹介する.●信頼度チェックの手順静的視野検査を読影する際には,固視不良,偽陽性,偽陰性といった信頼度の指標をチェックし,これらが一定の基準を満たしていない場合には信頼度不良として慎重に結果を解釈することが求められる.OCTでもまったく同じことがいえるのであり,信頼度のチェックは不可欠である.OCTの信頼度を確認する方法はいくつかあるが,筆者は,①シグナル強度,②センターリング,③セグメンテーション,④画像の高さ,の4項目をとくに重視している.シグナル強度:すべてのOCT機器で数値化されて示されている.数値の基準は機器により異なるので,販売(101)0910-1810/15/\100/頁/JCOPY図1シグナル強度が弱い例右眼のSSI(画像左上方.白囲み)が5と低い.画像のシグナルが弱く,鼻側の一部ではRNFL層の検出が困難となっている.者に確認されたい.図1はシグナル強度が低い画像の1例である.この症例に使用したRS-3000の場合は,シグナル強度はSSI(signalstrengthindex)という数値で示される.SSIは数値が大きいほどシグナル強度が強く,10が最大であるが,一般的には6以上が信頼度のある画像とされる.図1の右眼ではSSIが5しかなく,シグナル強度が弱い.このため,シグナル(網膜などの組織からの反射)とノイズ(アーチファクト)との差が小さいために,網膜の層構造を正しく検出することができない.センターリング:乳頭周囲サークルが正しい位置にあるかどうかである.理想的には,乳頭の中心にサークルの中心が合致すべきであるが,乳頭変形があるような症例では,図2の左眼のように,OCTが自動で設定するサークルの位置が,明らかに乳頭の中心からずれることがある.この場合,サークルの位置が正しい位置にあるあたらしい眼科Vol.32,No.1,2015101図2センターリング不良の例左眼のサークルの中心は視神経乳頭中心から大きくはずれている.図3セグメンテーション不良の例網膜厚が薄く,右眼はシグナルも弱いため,RNFL層が正しく検出されていない.場合と比べて乳頭縁からサークルまでの距離が異なるため,RNFL厚の測定値も変化する.とくに部位(セクター)別のRNFL厚はセンターリングずれの影響を受けやすい.セグメンテーション:RNFLやGCCなど対象の網膜層を正しく検出しているかどうかである.上記のSSIが低い場合や乳頭の変形が強い場合,大きな傍乳頭網脈絡図4画像がはみ出している例高度近視で視神経乳頭周囲も前後に長く伸びているため,画像の範囲をはみ出してしまっている.はみ出している部分の網膜厚は当然正確に測定できない.膜萎縮(parapapillaryatrophy:PPA)がある場合などはセグメンテーション不良が起こりやすい(図3).画像の高さ:網膜のZ軸方向の位置が正しい位置にあるかどうかである.撮像するうえでは,OCT機器と眼球との距離が適切であるかどうかと言い換えられる.とくに図4のような高度近視眼においては,RNFLスキャンがZ軸方向に大きく伸びているので,一部が画像外にはみ出てしまうようなことが起こり得る(図2も実は少しはみ出している).●おわりにどんな検査でも,得られた数値なり画像なりが正確なものでなければ診断価値はない.OCTにおいても信頼度のチェックは不可欠なことをもう一度強調したい.ここでは傍乳頭RNFLを例にとったが,黄斑部GCCにおいてもまったく同じことがいえる.OCTで緑内障を診断する際には,まず上記のような信頼度の指標をチェックし,信頼度が一定の基準を満たさない画像については慎重に解釈することが必要である.☆☆☆102あたらしい眼科Vol.32,No.1,2015(102)