連載現場発,病院と患者のためのシステム連載現場発,病院と患者のためのシステム仮想情報システム部の勧め杉浦和史*.仮想システム部門の機能システム部門には企画(構想,仕様),開発(製造),保守,運用,教育などいろいろな役割があります.仮想情報システム部は主に企画の部分を担当し,保守,運用の部分でも,できるものは自前でやり,まったくやらない(できない)のは開発の部分だけです.付け焼き刃で開発にチャレンジするのは非常に危険なのでやめ,専門家であるSLerに任せます.委員以外のスタッフへの教育は自ら仕様を作っているので問題なく自前で可能です..条件組織内に仮想情報システム部を作り,機能を果たすには以下の環境が必要です.①上から下まで,システムの必要性を理解している.②時間と予算が確保できる.③やる気があり,好奇心があるスタッフがいる.④本来の業務以外に時間を割くことに理解のある雰囲気が醸成されている.⑤適切な指導者がいる..育成方法担当している日々の仕事を洗い出し,整理整頓しながら仕様書を作る過程で,ヒアリング,ドキュメント,プレゼン,ネゴシエーションの基本リテラシRを養います.適切な指導者がいればOJTで一定レベルまで引き上げることができます.Howto本は不要です.現場を知らないライターや泥をかぶったことのない評論家が書いた本は役に立たず,そのような講師のセミナを何回受講してもできるようにはなかなかなりません.画面を印刷(裏紙)し,遷移順に貼り付け,操作(機能)と表示,遷移を確認し,問題点を洗い出す.ディスプレイに画面を映しながら行き来するよりも全体の動きが頭に入りやすく,俯瞰しながら個々の画面,操作を検討できます.図1画面遷移と操作を検討する医事会計委員c個人医院はもちろんですが,院内に情報システム部門をもっている医療機関は限られています.眼科専門病院ではさらに少ないでしょう.あったとしても人件費分の機能を果たしているのかどうか疑問に思う場合が珍しくありません.当院では看護師,検査員,臨床検査技師,視能訓練士,薬剤師,管理栄養士,医事会計スタッフを教育し,実質的に情報システム部員としています.専任ではなく,担当業務との二足のわらじです.養成には時間がかかりますが,業務を見直しながら仕様書を作り上げ,SLer(システム開発会社)と専門用語を交えながらやりとりができるスタッフからなる“仮想情報システム部”,お勧めです..どこまでできるようになるかITに関する知識経験はもとより,業務分析,整理整頓などの経験がないスタッフを教育して,どこまでできるようになるのか?あるいは任せることができるか?生兵法はケガの元ではないかなど,懸念する向きがあります.しかし,論より証拠.素人であったスタッフが以下のような資料を作れるようになっています.インプレッションサイトロジ,ヘルペス,検鏡検査は,1回当たりの検査回数,画像有無,測定条件,測定結果の入力,表示方法などが異なります.それぞれの専*KazushiSugiura:宮田眼科病院CIO/技術士(情報工学部門)(105)あたらしい眼科Vol.31,No.9,201413530910-1810/14/\100/頁/JCOPY医師・診察室,介助Ns割当処理・M-Magicでは,VNC機能を使い,診察室のPDPをコントロールするPCのIPアドレスを指定し,4つの時間帯毎に当該診察室を使うDr名を指定している.・看護師は受付,検査を開始する8時前に出勤し,手作業でこれを行っており,手間を要している.・Hayabusaでは,各診察室とLCDの割当を専用の画面から行えるようにし,IPアドレスの設定をなくし,Drの割当を簡単に行えるようにする.・また,Drに就く介助Nsの割り得てもこの画面から行えるようにし,割当作業の負荷軽減を図る.レ一ザ担当,外来処置担当も同様に簡単に割当可能である.・この処理は,外来師長,あるいはその任を代行する者が使うことを想定しており,大画面の外来メニユ一から起動する.図2外来看護師が書いた仕様書のヘッダc用入力画面を作っていては手間がかかります.これをまとめて表示する汎用的なレイアウトを検討した結果,図3に示すような方法になりました.これを考えたのはシステムとは無縁だった臨床検査技師です.yy/mm/dd検鏡検査種類染色:グラム対物レンズ:×100検査条件インプレッションサイトロジ,ヘルペス,検鏡の画像細菌(+)好中球(++)検査結果上皮(+)グラム陽性桿菌を認めます.コメントcorynebacteriumを疑います.図3臨床検査技師が考案した汎用レイアウトc自ら考えた方法で,どのくらいの効果があるのかについても考察する習慣ができています.仕様を作って終わりではなく,その先を考えるようになっています.これによって年間約13,000件もあるこの検査をシステムを処理することで,260時間/年の時間短縮が図れ,かつ検査データを電子的に扱えることによるメリットも期待できます.このようなことを考慮しつつ仕様を作ったのは看護師の資格をもつ検査員と視能訓練士です.1354あたらしい眼科Vol.31,No.9,2014表1ある検査をシステムで処理した場合の手間比較表R手順作業名平均所要時間(秒)紙カルテ時代現Hayabusa改Hayabusa1検査実施○○○2印刷ボタンをクリック○○○3検査結果がプリントされる○○不要4レシートを切り取る,O.O.45秒○○不要5検査用紙台に貼る○不要不要6スキャン用台紙に貼る─○不要7スキャナ台へ移動─○不要8スキャン作業─○不要9スキャナ台から戻る,OOOO.OOOOO.30秒─○不要10HayabusaPCに結果表示─○不要11平均値を手入力─○不要12確認─入力した値を確認表示された値を確認13登録ボタン─○○14適宜Excel入力○不要不要一方,医事会計部門の委員は,入院中の患者さんの会計処理作業をシステムにのせることで,どれだけ効率化されるかをチェックしました.作業ステップを書き出し,システム化することにより,なくなるもの,残るもの,変わらないもの,変わるものをなどに分類することで,システム化の効果を確信しつつ取り組んでいます.①日入力する各階の入院患者一覧をコピーする.②各階に行ってカルテを借りる.③診察所見/看護記録/処置記録などを見て請求できるものを点数表と照らし合わせ,過不足がないかチェックする.④点数表を見ながら医事会計システムに入力する.⑤入力した日の合計点数が計算されるので,点数表に書き込む.⑥入退院一覧表を管理しているExcelに適宜入力する.⑦各階にカルテを一旦返却する(ずっと借りていられないので).⑧必要になったら,再度カルテを借りる.⑨③~⑧の繰り返し.⑩翌日の退院患者の準備作業(退院後,外来で使用するカルテの出力など).赤字は確実になくなる作業.青字は完全にはなくならないが,作業が楽になる,または方法が変わるもの..結論二足のわらじを履くことになりますが,“仮想情報システム部とその仮想部員”構想を実現することで,院内に人材が育ち,かつ自ら作り上げたシステムであることから,育てようという雰囲気が醸成され,即物的にも,長期的にも効果が期待できます.業務,ITのどちらにも中途半端なシステム室と要員を抱えるよりは,はるかにメリットがあると思われます.(106)