161.高度円錐角膜に対する角膜内リング手術福岡佐知子多根記念眼科病院高度円錐角膜に対する角膜内リング手術は角膜が局所で菲薄化,突出しているためトンネル作製時に穿孔の可能性があり積極的に行われていない.術前の綿密な手術計画や手術中の角膜厚計測,フェムトセカンドレーザーによるトンネル作製位置の微調整を行うことにより,手術が可能であったので紹介する.はじめに角膜内リング(intracornealringsegments:ICRS)手術は,PMMA(ポリメタクリレート)製の弧状のリング片2本を角膜周辺部実質内に挿入する手術で,角膜中央部を平坦化し,角膜形状を整える.1987年にFle-mingらが近視矯正手術用に開発したが1),2000年にColinら2)が円錐角膜への使用を提唱した.中等度以下の円錐角膜に対するICRS手術の報告は多数あるが,高度円錐角膜には全層角膜移植が施行されており報告は少ない3.5).これは従来トンネル作製はマニュアル操作であり,角膜屈折値が55Dを超えるような症例には角膜穿孔の可能性があるため,積極的に治療を行うことが困難であったからである.近年,フェムトセカンドレーザー(femtosecondlaser:FSレーザー)の登場により,トンネルが正確に作製でき,そのような症例にも手術が行えるようになった.●手術計画ICRS手術は,リングを最も適正な位置と深さに設置することによって有効な治療法となる.安定した検査結果を基に綿密な手術計画を行うことが手術の成功の秘訣である.最初に角膜形状解析装置(PentacumRなど)で角膜厚分布を計測して,リング挿入部位の角膜厚がすべて450μm以上であることを確認する.同時にリングの選択を各メーカーのノモグラムから決定する.現在使用されているおもなICRSを表1に示す.メーカーは各症例のケースアドバイスも行っている(図1).高度円錐角膜は中心の角膜が菲薄化しているため,矯正効果が強いといわれているKeraringは角膜厚を確保できず,実際には手術適応外となることが多い.当院ではリング内周径6.0mmのIntacsSKを使用し,それでも角膜厚が確保できない場合は安全な方向へトンネル作製位置を変更している.●手術座位から仰臥位における眼球回旋を補正する基準点,エントリーカット部,トンネルと円錐角膜のconeが接して穿孔しそうな部位にマーキングを行う.つぎにその部位をパキメトリーで測定し角膜厚が十分あることを確認する.つぎにFSレーザーでトンネルを作製する.当院はiFSAdvancedFemtosecondlaser(iFSTM,150kHz:AMO社)を使用しているが,ドッキング時のモニター表1角膜内リングの種類IntacsRIntacsSKRKeraringR材質PMMAPMMAPMMAリング内径の角度150°150°90/120/160/210°リング内周径6.8mm6.0mm4.7mmリング厚作製範囲0.21.0.450.02mm刻み0.21mm.0.25.0.450.05mm刻み0.15/0.2/0.25/0.3/0.35mmメーカーAdditionTechnology社AdditionTechnology社Mediphacos社挿入するリングの種類や組み合わせ,挿入の方向は球面度数・円柱度数・角膜形状をもとに,各メーカーのノモグラムから決定する.リング厚が大きいほど,内径が小さいほど矯正効果が強い.(51)あたらしい眼科Vol.30,No.10,201313950910-1810/13/\100/頁/JCOPY画面には予定トンネル作製部位の外側ラインが表示される.それを参考にさらに安全な場所へ微調整する.トンネルが完成したらリングを挿入し,エントリーカット部を1針縫合し,コンタクトを装用させて手術は終了である.●実際の症例36歳,女性.高度円錐角膜で,HCL不耐症であった.メーカー推奨プランは図1であり,耳側は角膜厚が398μmと薄く穿孔の可能性があるため,1mm耳側にトンネル作製部位を変更した.先述した手順で手術を行い,術後3カ月でHCLを再作製した(図2).術前と術後1年の裸眼視力,HCL視力,装用時間,TMSによるK耳側に移動図1Additiontechnology社推奨の角膜内リング予定作製位置推奨プランは0.4mmのIntacsSKを0°のエントリーカットより450μmnの深さのトンネルを作製し挿入する.耳側は角膜厚が薄く穿孔の可能性があるため,1mm耳側にトンネル作製部位を変更した.図2術前(左),術後HCL装用(右)前眼部写真HCL不耐症であったが術後終日装用可能となりHCL視力は0.6から1.2に改善した.(steep),AveKは0.01/0.2,0.6/1.2,装用1時間/終日装用可能,58.4D/54.8D,56.4D/53.9と角膜形状は改善し,QOV(qualityofvision)も改善した.当院で行った上記症例を含む高度円錐角膜6眼は全例ICRS挿入可能で,角膜形状は術前/術後1年のAveK,Ks,球面成分(6mm),正乱視成分(6mm)は58.3±3.8/54.8±3.3,60.5±3.7/56.0±3.6,56.7±3.3/52.8±2.5,2.14±1.4/1.20±1.2(すべてp<0.05,t検定)と有意に改善した.2症例はHCL不耐症であったが全例終日HCL装用可能となり平均HCL視力は1.17であった.●当院の高度円錐角膜眼に対するICRS手術のまとめ1)メーカー推奨プランを参考にICRS設置場所をより安全な部位へ変更.2)手術中に角膜厚を計測.3)FSレーザーを使用.4)角膜厚の薄い場所をマーキングし,トンネル作製回避の指標とした.5)FSレーザーのモニター画面で,トンネル設置場所を微調整した.今回紹介した方法ですべての高度円錐角膜症例にICRS手術が可能となるのではなく,慎重に手術適応を決める必要があり,また手術が可能であった症例に対しても今後長期的な経過観察が必要であるが,高度円錐角膜眼でも,ICRSによって角膜形状が改善し,コンタクトレンズ不耐症患者に良好な結果が得られたので,角膜移植前に試みる価値があると考える.文献1)FlemingJR,ReynoldsA.E,KilmerLetal:Theintra-stromalcornealring-twocasesinrabbits.JCataractRefractSurg3:227-232,19872)ColinJ,CochenerB,SavaryGetal:CorrectingKeratoco-nuswithintracornealrings.JCataractRefractSurg26:1117-1122,20003)HamdiIM:PreliminaryresultsofintrastromalcornealringsegmentimplantationtotreatmoderatetosevereKeratoconus.JCataractRefractSurg37:1125-1132,20114)SansanayudhW,BaharI,KumarNLetal:IntrastromalcornealringsegmentSKimplantationformoderatetosevereKeratoconus.JCataractRefractSurg36:110-113,20105)ErtanA,Kamburo.luG:Intacsimplantationusingafem-tosecondlaserformanagementofkeratoconus:Compari-tionof306casesindifferentstages.JCataractRefractSurg34:1521-1526,20081396あたらしい眼科Vol.30,No.10,2013(52)