監修=大橋裕一連載③MyboomMyboom第3回「臼井嘉彦」本連載「Myboom」は,リレー形式で,全国の眼科医の臨床やプライベートにおけるこだわりを紹介するコーナーです.その先生の意外な側面を垣間見ることができるかも知れません.目標は,全都道府県の眼科医を紹介形式でつなげる!?です.●は掲載済を示す連載③MyboomMyboom第3回「臼井嘉彦」本連載「Myboom」は,リレー形式で,全国の眼科医の臨床やプライベートにおけるこだわりを紹介するコーナーです.その先生の意外な側面を垣間見ることができるかも知れません.目標は,全都道府県の眼科医を紹介形式でつなげる!?です.●は掲載済を示す自己紹介臼井嘉彦(うすい・よしひこ)東京医科大学眼科私は,東京医科大学眼科学教室に2001年に入局後,ただちに大学院に進学し,その後一貫して眼免疫,特にぶどう膜炎,網膜硝子体疾患や眼腫瘍における臨床や研究を行ってきました.大学院生の間を南カリフォルニア大学ドヘニー眼科研究所のラオ教授の下で眼病理学を,順天堂大学医学部免疫学教室の奥村康教授の下で眼免疫学をおもに勉強させていただきました.大学生時代はサッカー部に所属し,全日本医科学生体育大会や関東医歯薬獣医サッカーリーグで優勝したこともあります.サッカー部のオフ期間にはスキューバダイビングやスノーボードなど頭を使うよりも体を動かしていました.医師になった後,生活習慣は劇的に変化し,“運動”とは無縁の生活になったため,運動不足にカロリー摂取過多が重なり,そのうえ医局内では「ラーメン同好会」を立ち上げ,日々美味しいラーメンを探求しており,“アンチエイジング”とは真逆の方向に進んでいます.臨床眼科学会のときに行われるサッカー大会では,過去の栄光?に浸り,頭の中のイメージと体の動きが乖離し,いつ怪我をしてもおかしくない状態です.38歳でシドニーFCへ移籍した三浦和良を思えば情けない限りです.臨床のmyboom私はぶどう膜炎を専門としているため,前房水や硝子体などの眼内液から検体を採取し,原因検索を行うことを日常臨床で多く経験しました.最近では,ぶどう膜炎(77)0910-1810/12/\100/頁/JCOPY以外にも,白内障,網膜硝子体疾患,眼内腫瘍など私が手掛ける手術で,患者さんから同意が得られているすべての検体を採取し,サイトカインなどの液性因子を測定しています.液性因子を調べることで,その疾患における病態解明はもちろんのこと,新規治療法を探索することができるのではないかと思っています.私は白内障や網膜硝子体疾患,ぶどう膜炎,眼腫瘍など年間400件の手術を大学で行っていますが,眼内液のサイトカインと手術後の経過および病状の推移との関係をみています.まだ,統計学的に集計したり,EBM(evidence-basedmedicine)のレベルではありませんが,手術後の患者さんの経過を観察し,その結果をフィードバックしています.先日,私が白内障手術(破.などなく)を行った患者さんで,特に糖尿病や高血圧などがなかったのですが,ヘビースモーカーの方がいました.手術後に黄斑浮腫が出てきて,手術直前の前房水を調べてみたところ,黄斑浮腫に関係したサイトカインが上昇していたのです.喫煙すると血清中の炎症性サイトカインが上昇するという報告が多数ありますので,もしかしたら喫煙の影響で前房水中の炎症性サイトカインが上昇し,手術侵襲によってさらに眼内液中のサイトカイン濃度が上昇して,黄斑浮腫が出てきたのでは?と妄想しております.ぶどう膜炎や難治性網膜硝子体疾患では,他の疾患と比較して,再手術になる頻度が高いですが,再手術の原因なども液性因子の検査結果から,「○○さんの眼内液中には○○という蛋白が上昇していますので,もしかしたら再手術の可能性が高いかもしれません」などといった言い訳?ができるのではないかと思っています.このように日常臨床でもスリットや手術顕微鏡で患者さんの眼を診つつ,免疫学的関与について妄想を膨らませ,創造性を養う努力を怠らないようにしています.東京医科大学は,主任教授である後藤浩先生のご専門が眼腫あたらしい眼科Vol.29,No.4,2012511瘍のため,他の施設と比較して眼腫瘍の症例数が多いのですが,検眼鏡的にパッと診ても,眼内のただの黒いできものとしかわかりません.しかし,悪性腫瘍は眼内でたくさんのサイトカインを分泌しているため,前房水を採取すると良性腫瘍と比較してサイトカインが上昇しています.このように,眼内腫瘍の良・悪性の鑑別にも液性因子の検査は役に立っていますが,現時点では学会発表はしましたが,何分,亀のように論文作成のスピードは遅く,まだ原著は執筆しておりません.研究のmyboom大学院生時代から免疫学を基盤とした眼科疾患の研究に関わってきました.眼科学や免疫学の本質に関わったときの何ともいえない感覚も10年間で少しは味わわさせていただきました.この原稿を書いている年末・年始も東京医科大学伝統の大晦日実験や,朝6時に後輩たちを呼んでの実験をしています.研究内容におけるmyboomは今まで遂行してきたぶどう膜炎の病態解明および新規治療法の開発をベースにして,網膜硝子体,眼腫瘍,視神経疾患と免疫学をfusionさせ,眼免疫学として新しい知見を見つけていくことです.眼球は非常に血流が豊富な臓器のため,そのバリアが破綻した場合,血管から大量の免疫細胞がいつでも,どこでも侵入してくる可能性を秘めています.そのため,ぶどう膜炎や結膜炎以外の多くの眼疾患,すなわちドライアイ,加齢黄斑変性症,糖尿病網膜症,未熟児網膜症,バセドウ病眼症,また緑内障において「自己」を攻撃する免疫細胞やそれらの細胞が産生するサイトカイン〔写真1〕OKNの原理を利用したマウスの視力測定器(手前)と眼底カメラ(奥)の関与を推測しています.眼に血液が流れている限り,免疫反応が起きる可能性を秘めていると思います.すなわち,どんな眼疾患でも大なり小なり免疫的機序が関与しているのではないかと推測しています.私の専門であるぶどう膜炎や結膜炎,眼腫瘍,網膜硝子体疾患における免疫学的関与はいうまでもありませんが,「それ関係ないだろ.」とつっこみを入れたくなる眼疾患でも,どのように解析したら免疫学的関与があるのかどうかを日々考えています.そこには汲めども尽きせぬ眼免疫の泉があるような気がします.また,最近研究室にOKN(optokineticnystagmus)の原理を利用したマウスの視力測定器と眼底カメラが入りましたので,今後のmyboomにしたいと思います(写真1).プライベートのmyboom私事ですが,平成23年3月23日に第一子(女の子)を授かりました.こんなにも子供が可愛いとは夢にも思わず,子育てが私のboomになってしまいました.私はもともと性格が大人よりも子供に近いため,子供の思考回路のほうがあっています.10年以上前の小児科と産婦人科の知識を総動員して,子育てに奮闘しております.日々の子供の成長には驚かされ,学ぶことが多い毎日です.子供は特に好奇心が旺盛で(自分の子供に限ったことではないですが),自分はいつから色々なことに好奇心をもてなくなったのか,反省とともに娘から沢山のことを学ばせてもらっています.子育て以外については,もともと一つのことにしか集中することができないため(熱心は悪しき召使?),大学卒業後は生活のほとんどを眼科学の研鑽に費やしています.しかし,気がつけば35歳で,人生も折り返し地点に来ている気がします.本当は遺跡巡りや24歳からしていないテレビゲームをすべて制覇(クリア)するのがプライベートでの夢です.次回のプレゼンターは北海道大学の加瀬諭先生です.加瀬先生は,小生の知る限り同年代の眼科医で最も原著論文を書いている先生の一人であり,北海道大学医学部眼科の石田晋教授をして「加瀬先生は日記のように論文を書く」といわしめています.注)「Myboom」は和製英語であり,正しくは「Myobsession」と表現します.ただ,国内で広く使われているため,本誌ではこの言葉を採用しています.512あたらしい眼科Vol.29,No.4,2012(78)