特集●眼科小手術PearlsandPitfallsあたらしい眼科29(7):933.940,2012特集●眼科小手術PearlsandPitfallsあたらしい眼科29(7):933.940,2012涙管チューブ挿入術LacrimalPassageIntubation杉本学*はじめに涙管チューブ挿入術には,従来行われているプロービング後に涙管チューブを挿入する方法と,涙道内視鏡を用いて閉塞部を開放し,引き続いて開放部に正確に涙管チューブを挿入する方法がある1,2).後者のほうが治療成績は良くなってきている3)が,涙道内視鏡・鼻内視鏡でモニターを見ながら操作しなくてはならないので,練習して慣れることが必要となる.いったん習得すれば,涙道内の状況を把握して治療戦略を立てて,直視下で操作することができるので,盲目的操作を嫌う眼科医にとっては有力な手段となる.本稿では,涙道内視鏡・鼻内視鏡を用いた涙管チューブ挿入術について解説させていただく.I手術手順①鼻粘膜麻酔と収縮②皮膚の消毒とドレーピング③涙道内麻酔(滑車下神経ブロック麻酔)④涙点拡張⑤涙道内視鏡による涙道内の状況把握⑥閉塞部の開放〔シース誘導内視鏡下穿破法(sheath-guidedendoscopicprobing:SEP),シース誘導プロービング(sheath-guidedprobing:SHIP)〕⑦チューブ留置〔シース誘導チューブ挿入術(sheath-guidedintubation:SGI)〕II鼻粘膜麻酔と収縮(図1,2)4%点眼用キシロカインRとボスミン液Rを1:1で混合した液を綿棒(ベビー綿棒が綿球が小さくて挿入しやすい)に染み込ませて,鼻中隔,下鼻甲介,下鼻道の鼻粘膜を軽く触れながらなぞっていく(図1b,c).綿棒でなぞって1分もたてば鼻粘膜が収縮してくるのがわかる(図1d).つぎに,同混合液を染み込ませた短冊ガーゼ(1.5×30cm)の先端10cmほどを,こよりのようにねじって細くして,ルーツェ鑷子にて下鼻道へ挿入する(図1e).15cmほど挿入できたら,下鼻甲介を覆い,鼻中隔先端付近まで挿入して(図1f),ガーゼの後端は鼻翼から2cmほど鼻外に出しておく(図2).注意点は,鼻粘膜に綿棒を強く押し付けると患者は痛がり,痛覚閾値を下げてしまい,後の手術操作がしにくくなるので,狭くて綿棒が入りづらいときは,先の綿球が小さいものに変える.筆者が用いている最小のものは,日本綿棒メンティップRの綿球径1.9mmである.III皮膚の消毒とドレーピング(図2)眼瞼を閉じたままでイソジンR原液にて皮膚を消毒する.受水袋付きドレープを,術眼と同側の鼻孔が覆われないように,目穴の下方部分を剪刃で拡大切除し,張り付ける.鼻孔が見えるようにしておくと,鼻内操作がしやすいだけでなく,鼻腔内留置ガーゼが常に目に入るので,ガーゼ除去忘れ防止に役立つ.*ManabuSugimoto:すぎもと眼科医院〔別刷請求先〕杉本学:〒719-1134総社市真壁158-5すぎもと眼科医院0910-1810/12/\100/頁/JCOPY(57)933adbecfadbecf図1鼻粘膜麻酔と収縮(左側,鼻内視鏡像)a:処置前.b:鼻中隔側の塗布.c:下鼻道側の塗布.d:塗布後1分.e:下鼻道へガーゼの留置.f:ガーゼ留置の完成.NS:鼻中隔,INC:下鼻甲介,INM:下鼻道,CS:綿棒.IV涙道内麻酔(滑車下神経ブロック麻酔)(図2)筆者は,涙道内操作をしているときに,裂孔を生じた場合,早く気づくために患者の疼痛を利用している.浅い麻酔であれば,裂孔を生じると患者は急に痛がる.痛みは「違う方向に行っていますよ」という警告と考えている.したがって,涙道内麻酔を主体とし,疼痛をひどく訴える患者には滑車下神経ブロック麻酔を追加するようにしている.涙道内麻酔は,4%点眼用キシロカインRを2.5mlまたは5mlシリンジにとって,25ゲージ(G)曲の涙道洗浄針をつけて,涙点より挿入し(涙道洗浄針の曲がった部分まで),注入する.キシロカインRが逆流してきたところで注入を中止し,5分待つ.涙道内麻酔を行うときに,涙道洗浄針を挿入していない涙点から逆流があるかないかを確認する.逆流があれば上下交通があることになり,総涙小管より手前の閉塞ではないことが判断できる.シリンジはすぐに注入できるような態勢で持つ.すな934あたらしい眼科Vol.29,No.7,2012図2涙道内麻酔(左側)わち,シリンジの外筒のつばに人差し指,中指をかけ,内筒のおしりに親指をかけるように持ち,小指を伸ばして患者の頭で固定する.もう一方の手の,人差し指か中指で,下眼瞼か上眼瞼を引っ張って涙点をみやすくし,この手の親指を土台にするようにシリンジあるいは涙道洗浄針を乗せると操作がしやすくなる(図2).滑車下神経ブロック麻酔は,medialcanthaltendon(58)の上縁から27G×3/4針(針長19mm)を10mm(針長半分)ほど刺入し,2%キシロカインR液を0.5ml注入している.眼球穿孔に注意する.また,根元まで刺入すると,針先が前篩骨管付近に達するので,前篩骨動脈を損傷して球後出血することがある.眼神経の分枝である鼻毛様体神経は前篩骨神経を分枝して滑車下神経となるが,前篩骨神経は前篩骨動脈を伴って前篩骨管を通過している4,5).V涙点拡張(図3)目盛付涙点拡張針が便利である.まず,第一の目盛りまで涙点に垂直に挿入し回旋させて拡張する(図3a).つぎに,拡張針を涙小管水平部に平行になるように寝かせる.もう一方の手の指で眼瞼を耳側に引っ張って,拡張針は眼瞼を外反させる一方向に回旋させて,第二の目盛りまで拡張させる(図3b).患者に少し痛みがあることを伝えながら行うと協力してもらえる.VI涙道内視鏡による涙道内の状況把握(図4)涙小管の観察は,涙点より涙道内視鏡を挿入したら,眼瞼を耳側に引っ張って涙小管をなるべく直線的にし,涙小管水平部と平行になるように涙道内視鏡を寝かせる.助手に灌流を開始してもらう.涙小管粘膜は白く血管は観察されない(図4a涙道内視鏡像).総涙小管は前方に屈曲しながら涙.につながっていること(図4b涙道内視鏡像)と,総涙小管粘膜の涙.側には血管がみえる例もあることも知識に加えておく.モニターに映し出されている涙小管内腔をみながら涙道内視鏡を進めていab図3涙点拡張(左側,surgeon’sview)a:白矢印の第一の目盛りまで拡張する.b:白矢印の第二の目盛りまで,黒矢印の方向に回旋させて拡張する.ab図4上下涙小管の観察(右側)a:下涙小管の観察.b:上涙小管の観察.眼瞼を黒矢印の方向に引っ張り,涙道内視鏡は白矢印の方向に進める.(59)あたらしい眼科Vol.29,No.7,2012935るときの涙道内視鏡の方向は,上涙小管を観察しているときには,涙道内視鏡はやや下方に向いている(図4b).下涙小管を観察しているときには,涙道内視鏡はやや上方に向いている(図4a).この方向は総涙小管閉塞を開放するときに参考になる.涙小管閉塞は,行き止まりの白い壁として観察される(図8a涙道内視鏡像).壁に1箇所へこんだ部分(ディンプル)がみられることが多い.上下交通のある症例でも必ず,上下の涙小管を観察して,涙小管狭窄・ポリープの有無,涙.に到達しやすいのはどちらかも見きわめておく.涙道内視鏡に慣れるまでは涙小管の観察はむずかしいので,涙.付近まで涙道内視鏡を挿入して観察を始めてもよい.また,涙道内視鏡は先端に粘膜が接していると観察不能になるので,見えなくなったら少しだけ手前に引いてみることも覚えておくと役に立つ.涙小管・総涙小管に閉塞がない場合,涙.に入ると,粘膜にいろいろな太さの血管が見え赤っぽくみえる.涙道内視鏡を下方に回転させて涙.鼻涙管を観察する.膿や粘稠な液が多くて視認性が悪いときには,しばらく灌流を行って膿を洗浄する.涙道内視鏡がやっと通過できるくらいの狭い総涙小管の例では,洗浄しようとして強く灌流シリンジを押しても灌流液が逆流できず涙.内圧が上昇して痛みが強くなるので,いったん涙道内視鏡を抜いて涙.を圧迫して内容物を逆流させる.または,後述する涙道シースを用いるSEPで涙.に達した後,涙道シースを残して涙道内視鏡のみ抜いて,バンガーター針を涙道シース内に挿入して生理食塩水で洗浄すると楽である.涙小管・総涙小管・涙.鼻涙管が確認できたら,2%(エピレナミン含有)キシロカインRで涙道内麻酔を追加しておくと,涙.鼻涙管粘膜からの出血を抑制でき,後の操作がしやすくなる.鼻涙管閉塞は粘膜の壁状(ディンプルがみられることが多い)(図6a涙道内視鏡像)か,クモの巣状に見える.閉塞部の確認と腫瘍性病変の有無を確認する.血管の見える涙.粘膜がドーム状に隆起している場合は,涙.が外から圧迫を受けている(涙.窩.胞,副鼻腔炎,mucocele,pyoceleなど)ことが考えられる.腫瘍性病変を疑った場合にはそれ以上の操作は中止して,CT(コンピュータ断層撮影)かMRI(磁気共鳴画像)の画像診断に移る.Pearls&Pitfalls:涙道内視鏡を回旋させないようにすることが大切である.少しの回旋でもモニター上で進めたい方向に涙道内視鏡を進められなくなる.VII閉塞部の開放SEP&SHIP1.鼻涙管閉塞に対するSEP(図5,6)涙道内の状況が把握できて鼻涙管閉塞が確認できたら5mm45mm図5涙道シースabc図6鼻涙管閉塞症に対するSEP(左側)a:ディンプル(中央少し暗い部分)の確認.b:SEP中.c:お迎えの穴発見.涙道シースを白矢印,涙道内視鏡を黒矢印の方向に一体として,中央のやや暗い部分へ進める.S:涙道シース.936あたらしい眼科Vol.29,No.7,2012(60)(図6a),涙道シース(図5)を涙道内視鏡にかぶせ,涙道内視鏡の先端が涙道シースより1mmほど出るようにセットする.このセッティングはSEP,SHIPともに同じである.この内視鏡を涙.に入りやすいほうの涙点より挿入し,鼻涙管閉塞部の手前で保持する.鑷子(古くなったポープル型睫毛鑷子など)をもう一方の手に持ち,シースのみみを把持し,涙道シースが涙道内視鏡先端より1mmぐらい出るようにスライドさせる.涙道シースのみみを把持したまま,涙道シースと涙道内視鏡を一体として,閉塞部のディンプルに押し当てていくと,穿破される様子が観察できる(図6b).ゆっくり穿破し,本来の涙道内腔と思われる暗い部分を進めていくとお迎えの穴に到達できる(図6c).あとはお迎えの穴に沿って進んでいき鼻腔に達したら,涙道シースのみ残して涙道内視鏡を抜去する.穿破中,灌流液は出しっぱなしがよい.Pearls&Pitfalls:涙道シースと涙道内視鏡を一体として操作することが大切である.トロンボーンのようにグーッと伸ばすと盲目的操作と変わらなくなる.本来の内腔が穿破されていれば,患者は痛がらないし,ほとんど出血はみられない.もし急に痛がられたらすぐに穿破と灌流をとめて,2.3mmぐらい戻って再灌流してみると,裂孔を形成した脇に本来の内腔が見つかることがある.図7涙道シースストッパーを装着したところ涙道シースのほうが涙道内視鏡より1mmぐらい出た状態になる.adbec図8総涙小管閉塞症に対するSEP(右側)a:閉塞部の確認.眼瞼を黒矢印の方向に引っ張って観察.b:シースの伸長.涙道シースを白矢印の方向に3mmほど伸ばす.c:涙道シースストッパーの装着.d:SEP中.e:涙.に到達.再び眼瞼を黒矢印の方向に引っ張り,涙道内視鏡を白矢印の方向に進める.涙.に到達すると涙道内視鏡のモニターの視野が赤っぽくなる.S:涙道シース.(61)あたらしい眼科Vol.29,No.7,20129372.総涙小管閉塞に対するSEP(図7,8)総涙小管の開放は,解剖学的観点6)から,上涙小管から行うと成功率が高い.上述のように涙道シースを涙道内視鏡にセットし,上涙点より挿入し,他方の手で眼瞼を耳側に引っ張って涙小管内を観察する(図8a).閉塞部が確認できたら,眼瞼を引っ張っていた手を離し,鑷子を持って涙道シースをスライドさせて,3mmぐらい内視鏡先端より出るようにする(図8b).鑷子を涙道シースストッパー7)に持ち替えて,涙道内視鏡の根元に涙道シースを巻き込まないようにセットする(図7,8c).再び眼瞼を耳側に引っ張って,涙道内視鏡を閉塞部に押し当てていくと,穿破されていく様子が観察され(図8d),涙.内に入ると赤っぽくなる(図8e).ここで涙.内にエアーがみられたら,それより先に閉塞部はないと考えてよい.涙道シースストッパーをはずして,あとは鼻涙管内を進めていき鼻腔に達したら,涙道シースのみ残して涙道内視鏡を抜去する.3.鼻涙管閉塞症に対するSHIP(図9)SEPが行えない硬い鼻涙管閉塞のときには,涙道シースの先端を閉塞部に当てたまま涙道内視鏡のみを抜去する.先端から10mm部で27°曲げた0-7か0-8か0-6のブジーを涙道シース内に挿入し(図9a),ブジーで硬い閉塞部をブツッと穿破する.穿破は硬い部位だけにとどめ,ブジーをそのまま保持し,涙道シースを1mmぐらい送り込んでから(図9b),ブジーのみ抜去する.再び涙道内視鏡を涙道シースに挿入して(図9c),あとはSEPで鼻腔まで到達する.4.総涙小管閉塞症に対するSHIPSEPが行えない硬い総涙小管閉塞の場合は,まず,滑車下神経ブロック麻酔を追加する.閉塞部に涙道シースの先端を押し当てたまま涙道内視鏡のみを抜去し,先端から10mm部で27°曲げた0-7か0-6のブジーを涙道シース内に挿入し,眼瞼を耳側に引っ張って,ブジーで穿破する.穿破できたら,涙道シースを1mmぐらい送り込んでから,ブジーのみ抜去する.涙.が小さい場合は,涙道シースを1mm送り込めないので,ブジーで穿破後,ブジーを涙.内で下方に回転させてから,涙道シースを1.2mm送り込むとよい.再び涙道内視鏡を涙道シースに挿入してあとはSEPで鼻腔まで到達する.穿破時のブジーの方向は,上涙小管から解放している場合は,やや下方である.abc図9鼻涙管閉塞症に対するSHIP(右側,surgeon’sview)a:涙道シースに0-7ブジーを挿入中.涙道シースを白矢印の位置で保持し,0-7ブジーを黒矢印の方向に進める.b:ブジーにて硬い閉塞部のみを穿破後涙道シースを1mm送り込み中.0-7ブジーを白矢印の位置で保持し,涙道シースを1mm黒矢印の方向に送り込む.c:再度涙道内視鏡を挿入.涙道シースを白矢印の位置で保持し,涙道内視鏡を黒矢印の方向に進める.938あたらしい眼科Vol.29,No.7,2012(62)Pearls&Pitfalls:硬い総涙小管閉塞をSHIPで穿破できたかどうかの判断は,ブジーを押したときに,内眼角部付近の眼瞼がピクピクと一緒に動くときにはまだ穿破できていない.穿破できていないのにブジーを立てると裂孔を形成し,灌流すると眼瞼腫脹をきたす.VIIIチューブ留置SGI(図10)鼻腔まで達して残しておいた涙道シースに,留置チューブをドッキングさせる.まず,涙道シースのみみを鑷子でつかんで,ステント付きチューブを涙道シース内に3mmほど押し込む(図10a).チューブのステントを抜去する(図10b).鼻腔に留置していた短冊ガーゼを抜去して,鼻内視鏡で下鼻道に出ている涙道シースの先端を確認して,小此木氏.聹鉗子でつかんで鼻外に引き出す(図10c)と,チューブがするすると引き込まれる.留置チューブを鑷子でつかんで,チューブと涙道シースを分離する(図10d).ここで,涙道内麻酔を追加しておく.もう一方の涙点から,留置したチューブに沿ってSEPを行って鼻腔に達したら,涙道シースのみ残して,留置チューブのもう一端をドッキングさせて,再度同様に操作を繰り返すと,開放部に確実に1組のチューブを留置することができる.IX手術適応と症例選択骨性閉塞以外の涙道閉塞症が手術適応になると考えている.軟らかい総涙小管閉塞症,閉塞距離の短い軟らかい鼻涙管閉塞症から始めることをお勧めする.硬い総涙小管閉塞・涙小管閉塞症,副鼻腔炎術後の鼻涙管閉塞症,大きな涙.結石症,急性涙.炎は難度が高い.涙道閉塞の難度は高くなくても,狭い下鼻道は鼻内操作の難症例であるので,術前に下鼻道を観察しておくことも必要である.模擬涙道を使って,涙道内視鏡・鼻内視鏡の操作の練習を十分に行ってから,涙.の大きくなった慢性涙.炎の症例から,涙道内の観察を始める.鼻腔の観察も下鼻道の広い症例から始めると,くじけないで自信がついてくる.涙道内,下鼻道の観察に慣れたら,難度の低い症例から,開放・チューブ留置を試みる.Pearls&Pitfalls:難易度の低い症例を選択したつもりでも,実際に手術を始めると,むずかしい症例であったりする.技量が上達するまでは,無理をしないで撤退することを勧める.撤退は恥じではなく,最終成功率を上げるこつである.無理をして裂孔形成し硬い瘢痕組織を作ってしまうと,上達してから再挑戦した際,もっと大変で成功率も落ちてしまう.adbc図10SGI(左側,surgeon’sview)a:涙道シースにチューブをドッキング.鑷子で涙道シースのみみをつかみ(白矢印),ステント付きチューブを黒矢印の方向に3mm挿入する.b:チューブのスタイレットを抜去.c:下鼻道の涙道シース先端を鉗子で引き出し中.鉗子で黒矢印の方向に,涙道シースの先端を引き出す.d:涙道シースとチューブの分離.鑷子でチューブをつかみ(白矢印),涙道シースを黒矢印の方向に引っ張って分離.(63)あたらしい眼科Vol.29,No.7,2012939X手術器材涙道内視鏡はファイバーテック社,町田製作所,鼻内視鏡(直径2.7mm,視野方向70°か30°)は町田製作所,ニスコ,オリンパス,カールストルツから入手できる.涙道洗浄針は25G曲(はんだや),涙点拡張針は目盛付涙点拡張針(MEテクニカ),ブジーは三宅式(0-1.2),鼻内操作用鉗子は小此木氏.聹鉗子(ナガシマ),Hartmann-Wullstein鉗子OF410R(田島器械)を用いている.涙道シースはアルゴキュアシステム,涙道シースストッパーははんだやから入手できる.留置チューブはPFカテーテル(TORAY・ニデック)かシラスコンRN-S(ヌンチャク型シリコーン)チューブ(カネカメディックス)が使用できる.XI手術成績チューブ抜去後2,000日の通水可能率は,涙小管閉塞症単独で94%,鼻涙管閉塞症単独で72%,涙小管閉塞合併鼻涙管閉塞症で90%であった3,8).XII安全に手術遂行のために涙道内視鏡・鼻内視鏡を併用することにより,涙管チューブ挿入術が確実・安全に施行できるようになったが,涙道シースの涙道内への落とし込み,鼻腔内留置ガーゼの除き忘れ,綿棒の咽頭迷入などの事故の発生が危惧される.涙道シースの落とし込みは,多くは短い自作シースで発生している.涙道シースを自作する場合は長さを4.5mmとし,みみは5mm以上残す.鼻粘膜麻酔収縮に用いた綿棒は,鼻腔に留置したままにしない.また,鼻腔内留置ガーゼはできるだけX線写真にうつるものを使用したほうが安全である.おわりに涙道内を観察できる唯一の手段である涙道内視鏡は,眼科医に新たな世界をもたらした.しかし,モニターを見ながらの操作というハードルを越えなくてはならない.日本涙道・涙液学会では,フォーサムにて,涙道内視鏡・鼻内視鏡の技術指導を行う予定にしているので,ぜひ参加していただき,多くの涙道内視鏡サージャンが誕生することを願っている.文献1)杉本学:シースを用いた新しい涙道内視鏡下手術.あたらしい眼科24:1219-1222,20072)井上康:テフロン製シースでガイドする新しい涙管チューブ挿入術.あたらしい眼科25:1131-1133,20083)杉本学,井上康:鼻涙管閉塞症に対する涙道内視鏡下チューブ挿入術の長期成績.あたらしい眼科27:12911294,20104)細畠淳:眼窩の血管.眼科診療プラクティス6,眼科臨床に必要な解剖生理(大鹿哲郎編),p16,文光堂,20055)金子博行:顔面の解剖.眼科診療プラクティス6,眼科臨床に必要な解剖生理(大鹿哲郎編),p22,文光堂,20056)鈴木亨:涙道.眼科診療プラクティス6,眼科臨床に必要な解剖生理(大鹿哲郎編),p72,文光堂,20057)杉本学:涙道シースストッパー.眼科手術22:355-357,20098)杉本学:涙管チューブ挿入術.眼科52:981-986,2010940あたらしい眼科Vol.29,No.7,2012(64)