屈折矯正手術セミナー─スキルアップ講座─監修=木下茂●連載139大橋裕一坪田一男139.IntacsRSK加藤浩晃バプテスト眼科クリニック円錐角膜や円錐角膜疑い患者に対して近年,フェムトセカンドレーザーの広がりとともに角膜内リング治療が行われるようになってきた.2006年に進行性の円錐角膜とエクタジアに対して使用するためにIntacsRSKが開発され,IntacsRよりもより強い角膜の扁平化が期待されている.円錐角膜は角膜の中央.下方部が薄くなり,眼圧によって菲薄化した部位から前方に突出してくるため,角膜が円錐状の形態をきたす両眼性・進行性の疾患である.軽度から中等度までの進行例ではハードコンタクトレンズ(HCL)の装用によって視力矯正が可能であるが,高度の進行例ではHCLによっても視力矯正ができない.近年までは進行した円錐角膜に対する治療として角膜移植以外の選択肢はなかった.エキシマレーザー屈折矯正手術を希望する患者のなかに円錐角膜や円錐角膜疑いの患者がいることは無視できない.これらの患者に対して,エキシマレーザーによる屈折矯正手術は禁忌であり,コンタクトレンズ不耐症などによって矯正視力が不良な場合の治療として近年,角膜内リング(intracornealring:ICR)(図1)治療が行われるようになってきた.ICR治療は1997年にColinによって,それまで軽度近視の治療として用いられていたICRを円錐角膜眼の形状改善として使われたことから始まった1).円錐角膜やエクタジアに対しての効果が確認され2),1999年にFDA(米国食品医薬品局)により認可を受けたものの,トンネル作製時の手技の煩雑さからICR治療の普及は少しずつだったのだが,フェムトセカンドレーザーの出現により,トンネル作製がフェムトセカンドレーザーにより行うことができ手術の煩雑さが改善され,フェムトセカンドレーザーの広がりとともに角膜内リングの使用頻度も増加した.ICRは半円弧状のPMMA(ポリメチルメタクリレート)製のリングであり,もともとは1つの円形リングを挿入していたが,現在では2つの円形リングを挿入している.角膜強度を上げることで円錐角膜や屈折矯正手術後のケラテクタジアなどに対して不正乱視の軽減だけではなく,進行抑制も意図されている.(55)0910-1810/11/\100/頁/JCOPY図1IntacsRSK挿入後3カ月の前眼部写真表1IntacsRとIntacsRSKの規格IntacsRIntacsRSK材質PMMAPMMAリング内径の角度150°150°断面形状八角形楕円リング外周径8.1mm7.3mmリング内周径6.8mm6.0mmリング直径0.65mm0.65mm種類としてはIntacsR(AdditionTechnology社)とKeraringR(Mediphacos社)に加えて,2006年に進行性の円錐角膜とエクタジアに対して使用するためにIntacsRSKが開発された.IntacsRとIntacsRSKはともにリングの直径は0.65mmであり,リングの角度としても150°と共通しているが,大きく異なる点もある(表1).IntacsRでは八角形だった断面形状がIntacsRSKでは楕円形になっており,またIntacsRで6.8mmであったリング内の周径が,IntacsRSKでは6.0mmと小さくなり,そのためIntacsRSKではIntacsRよりもより強い角膜の扁平化が期待されている.これら2種類のセグメントの選択に加え,それぞれのセグメントに0.25.0.45mmまでの厚さがあり,同サあたらしい眼科Vol.28,No.12,20111717図2AdditionTechnology社によるIntacsRSKの挿入アドバイス結果イズで2つのリングを挿入するか(symmetric),異なるサイズで挿入するか(asymmetric)という選択も必要である.これらの選択に関しては,屈折度や乱視度数,前後面角膜形状などの角膜の各データをIntacsRを製造しているAdditionTechnology社に送ると適切なセグメントを挿入方向とともにアドバイスしてもらうことができる(図2).実際に当院でIntacsRとIntacsRSKを挿入した症例の術前後における等価球面度数の変化を比較検討したところ図3に示すような結果が得られた.IntacsRもしくはIntacsRSKを挿入した全例での等価球面度数の変化は術前.4.89±3.20Dから術後6カ月で.2.96±1.57Dと約1.9Dの矯正効果だったのだが,IntacsRとIntacsRSKそれぞれにおいて検討すると,IntacsRでは術前.3.89±0.64Dから術後6カ月で.2.13±0.67Dと1.08±0.29Dの矯正効果であり,IntacsRSKでは術前.6.65±2.55Dから術後6カ月で.3.19±2.56Dと3.47±1.80Dの矯正効果が得られた.これより予想どおりIntacsRSKでのより強い角膜の扁平化が示唆された.術後6カ月度数(D):IntacsR:IntacsRSK--8.00-6.00-4.00-2.000.0012.00-10.000.00-2.00-4.00-6.00-8.00-10.00-12.00術前度数(D)図3IntacsRとIntacsRSKによる等価球面度数の変化ICRの利点は,角膜中央部に侵襲を加えない手術であり,セグメントをすべて除去した場合,角膜形状はほぼ元の状態に戻るために「後戻り」のできる手術でもある.また,コンタクトレンズ不耐症などの円錐角膜症例に対してはコンタクトレンズ装用時間の延長や眼鏡矯正視力の向上が期待され,矯正視力が不良の場合でも角膜移植をする前にICR治療を試してみる価値は十分あると考える3,4).さらに進んで,ICR治療によって眼鏡視力が良好になればPhakicIOL(眼内レンズ)を挿入して裸眼視力の向上も期待できる.文献1)ColinJ,CochenerB,SavaryGetal:Correctingkeratoconuswithintracornealrings.JCataractRefractSurg26:1117-1122,20002)SiganosCS,KymionisGD,KartakisNetal:ManagementofkeratoconuswithIntacs.AmJOphthalmol135:64-70,20033)HellstedtT,MakelaJ,UusitaloRetal:Treatingkeratoconuswithintacscornealringsegments.JRefractSurg21:236-246,20054)KymionisGD,BouzoukisD,DiakonisVetal:Long-termresultsofthincorneasafterrefractivelasersurgery.AmJOphthalmol144:181-185,2007☆☆☆1718あたらしい眼科Vol.28,No.12,2011(56)