特集●コンタクトレンズケアを見直すあたらしい眼科28(12):1673.1680,2011特集●コンタクトレンズケアを見直すあたらしい眼科28(12):1673.1680,2011ハードコンタクトレンズのケアの問題点とその対策HardContactLensCare植田喜一*柳井亮二**はじめにコンタクトレンズ(CL)は材質の面からハードコンタクトレンズ(HCL)とソフトコンタクトレンズ(SCL)に分けられる.SCLは細菌や真菌などの微生物に汚染されやすいため,毎日の消毒が義務づけられている.日本では1972年にSCLが発売された際に,100℃で20分間の加熱消毒(煮沸消毒)が厚生労働省(旧厚生省)により定められたが,その後はコールド消毒(化学消毒)が普及した.具体的に述べると,1992年に過酸化水素を用いた消毒剤が,1995年に多目的用剤(multi-purposesolution:MPS)が,2001年にはポビドンヨードを用いた消毒剤が発売された.一方,HCLは消毒が義務づけられていない.これは日本の水道水が衛生的に管理されていることが故である.そうでない諸外国ではHCLの化学消毒剤が普及している1).CLによる眼障害のなかで最も問題になるのが角膜感染症である.日本コンタクトレンズ学会と日本眼感染症学会による入院を要するCL関連角膜感染症の調査報告によると,2週間頻回交換SCLとMPSによるものが多いが,HCLによるものもある2).HCLは微生物が付着しにくいため汚染されにくいが,ケアが不適切だとHCLであっても感染症をひき起こす.本稿では,HCLのケアの問題点とその対策を述べるが,特に感染症の対策について詳しく解説する.なお,HCLには酸素を透過しないポリメチルメタクリレート(PMMA)素材のレンズと,酸素を透過するガス透過性ハードコンタクトレンズ(RGPCL)があるが,現在はほとんどがRGPCLであるため,以下はRGPCLについて述べることにする.IHCLのケアの実際基本的に「洗浄→すすぎ→保存」の3つの操作があるが,定期的あるいは必要に応じて蛋白除去などの強力洗浄を行う3.5).1.洗浄洗浄はCLに付着した汚れや微生物の除去を目的に,こすり洗いとつけおき洗浄に大別される.洗浄法としては,(1)界面活性剤を含有した洗浄剤によるこすり洗いと定期的あるいは必要に応じた強力洗浄つけおき洗浄こすり洗い図1つけおき洗浄とこすり洗いの効果レンズの汚れはつけおき洗浄では除去できなかったが,こすり洗いをすると除去できた.*KiichiUeda:ウエダ眼科/山口大学大学院医学系研究科眼科学**RyojiYanai:山口大学大学院医学系研究科眼科学〔別刷請求先〕植田喜一:〒751-0872下関市秋根南町1-1-15ウエダ眼科0910-1810/11/\100/頁/JCOPY(11)1673abc図2表面処理を施しているRGPCLに対するこすり洗いと研磨a:新品のRGPCL.b:研磨剤を含有した洗浄剤でこすり洗いをすると水濡れ性が低下する.c:研磨を行うとさらに水濡れ性が低下する.(詳細は後述)(2)界面活性剤を含有した洗浄保存剤に酵素を数滴添加(,)するつけおき洗浄(2液システム),(3)界面活性剤を含有した洗浄保存剤に酵素を混合したつけおき洗浄(1液タイプ)がある.こすり洗いに比して,つけおき洗浄の洗浄効果は明らかに劣っている(図1).レンズに汚れが付着しやすい症例に対しては,つけおき洗浄からこすり洗いを行う製品に変更するとよい.こすり洗いのとき,あまり力を加えるとレンズの変形や破損を生じるので,ガス透過性の高いレンズでは特に注意を要する.洗浄剤には研磨剤を含むものと含まないものとがある.表面処理を施しているレンズには研磨剤を含む洗浄剤は使用できない(図2).汚れのひどいときには強力洗浄を併用するよう指導する.2.強力洗浄毎日洗浄を行っていても,レンズに汚れが付着することがある.この汚れを除去するために定期的あるいは汚れのひどいときに行う3.5).酵素(蛋白分解酵素,脂肪分解酵素)の顆粒または錠剤あるいは塩素系洗浄剤(次亜塩素酸)を使用する.これらの成分が直接眼の中に入ると角結膜障害を生じる危険があるので,使用後は水道水で十分にレンズをすすぐことが大切である.3.すすぎすすぎはCLから遊離した汚れや微生物のほか,洗浄や保存で使用した薬剤を洗い流すことを目的としてい1674あたらしい眼科Vol.28,No.12,2011る.HCLでは大量の水道水ですすぎ洗いをする3.5).4.保存保存は洗浄後のレンズを衛生的に保つだけでなく,レンズの物性を維持することを目的としている.PMMA製のHCLは乾燥した状態でケースに保管しても構わないが,RGPCLは水濡れ性が悪く,汚れやすいため,保存液または洗浄保存液中にレンズを保管する.ただし,界面活性剤,酵素あるいは蛋白質や脂肪の分解産物によって角結膜障害を生じることがあるので,装用前に水道水でレンズをすすぐ必要がある3.5).また,溶液中に長期間保管すると微生物による溶液の汚染やレンズの規格変化が生じやすいため,RGPCLであっても長期間保管する場合は乾燥状態で保管するほうがよい.5.CL装着液レンズの水濡れ性が悪い場合にはpolyvinylalcohol(PVA)などを主成分としたCL装着液を使用する.6.研磨市販の洗浄剤で除去できない汚れに対しては,レンズの研磨を行うことがある.ただし,表面処理を施してあるレンズやガス透過性の高いレンズの場合は,研磨が行えない場合がある(図2).IIHCLによる感染角膜上皮の欠損部から微生物が侵入して増殖すると,角膜感染症が発生する.硬い素材であるHCLは機械的(12)図3HCL装用者のアカントアメーバ角膜炎刺激などによる角膜上皮障害が生じやすい.HCLに微生物が付着していると,HCLを介して角膜感染症がひき起こる.HCL使用者は,角膜上皮障害が生じると異物感や眼痛のため,無理な装用はせずに,医療機関を早く受診するので重篤化しないことが多いが,ときとして難治性の角膜感染症を生じることがある(図3).こうした患者のHCLのケアについて詳しく調べると,いくつかの問題点がみえてくる.1.手指の洗浄レンズケアではケア用品ばかりが注目されるが,ケアのなかで最も基本的なことは手洗いである.手洗いは手指についた汚れだけでなく,微生物も除去する.したがって,石けんで十分に手指を洗うことが大切である.手洗いをした後に不潔なものに触れては元も子もない.手が触れた蛇口,レンズケース本体やケア用品のボトルなどは不潔である.たとえば,HCLの装着にあたって,レンズケースの中のHCLを取り出すときは,手を洗った後にレンズケース本体からレンズの蓋をはずしてHCLに触れるのではなく,レンズケース本体からレンズの蓋をはずした状態で手洗いをして,HCLに触れるように細心の注意を払う.2.レンズケアと化粧化粧品がHCLに付着すると,なかなか落ちにくい.研磨剤含有の洗浄剤でこすり洗いをすると除去できるが,研磨剤を含まない洗浄剤では不十分で,つけおき洗浄ではほとんど効果はない6)(図4).化粧品などの脂質による汚れが付着した場合には,イソプロピルアルコールを含有する洗浄剤で洗浄するとよい.HCL用として(13)洗浄前洗浄後研磨剤含有洗浄液(ボシュロムスーパークリーナー強力こすり洗いタイプ)のこすり洗い研磨剤非含有洗浄液(ボシュロムスーパークリーナーアドバンスタイプ)のこすり洗い研磨剤非含有洗浄液(シードジェルクリン)のこすり洗い2液型洗浄保存液(メニコンO2ケア,プロテオフ)のつけおき洗浄1液型洗浄保存液(メニコンO2ケアミルファfresh)のつけおき洗浄2液型洗浄保存液(ヨード剤,株式会社オフテクスバイオクレンRO2セプトTM)のつけおき洗浄図4化粧品(リキッドアイライナー)に対する洗浄効果は株式会社シードのジェルクリンがある.SCL用ではあるが,チバビジョン株式会社のミラフローRも効果的である.レンズを触った後に化粧をするように指導する.具体的には,レンズを装着した後に化粧をする.化粧を落とす前にレンズをはずしてケアを行う.3.HCLの洗浄とすすぎHCLに付着した微生物を除去する最も有効な方法は,物理的に落とすこと(こすり洗いとすすぎ)である.こすり洗いには,手のひら洗浄と指先洗浄(3本指洗浄)がある6).a.手のひら洗浄①利き手と反対の手のひらに凹みをつくり,その上にレンズの内面(凹面)を上にして置く.②洗浄剤を数滴,レンズに滴下する.③レンズの内面(凹面)を人差し指の腹で軽く押さえながら前後に動かして,30回こすり洗いをするあたらしい眼科Vol.28,No.12,20111675abab図5HCLのこすり洗いa:手のひら洗浄,b:3本指洗浄.(図5a).b.指先洗浄(3本指洗浄)①利き手の人差し指,中指を揃え,その指の間にレンズの内面(凹面)を上にして置く.②洗浄剤を数滴,レンズに滴下する.③レンズの内面(凹面)を親指で,レンズの外面(凸面)を人差し指と中指で30回こすり洗いをする(図5b).手のひら洗浄ではレンズの外面(凸面)の汚れは除去されやすいが,内面(凹面)の汚れがとれにくい.一方,指先洗浄(3本指洗浄)ではレンズの内面(凹面)の汚れは除去されやすいが,外面(凸面)の汚れがとれにくい.したがって,手のひら洗浄と3本指洗浄を併用すると効果的である.円錐角膜用の多段階カーブレンズやオルソケラトロジーレンズなどのレンズ内面(凹面)が複雑な形状をしているものでは,その移行部に汚れが付着しやすい.こうした汚れを除去するには,洗浄剤を浸した綿棒を用いてこすり洗いをするとよい.ガス透過性の高いレンズは,変形,破損,損傷が起こりやすいので,こすり洗いにあたっては洗浄剤を泡立て,レンズをやさしくこすり洗いする.こすり洗いは,レンズをはずしてレンズケースを保存するときだけでなく,レンズケースからレンズを取り出して角膜上に接着する前にも行う(1日2回).4.レンズケースの管理どんなに手やHCLを清潔にしたとしても,保存するレンズケースが微生物に汚染していると意味がない.レンズケースの具体的な管理法を以下に記す.レンズケースは自宅用と外出時携帯用の2つを使用する6).自宅用ケースはHCLをはずした後の保存用として使用する.外出時携帯用ケースは,HCLの調子が悪いときなどにはずした際に使用する.a.自宅用レンズケース①レンズを装着した後は,必ず保存液をすべて捨てる(つぎ足し防止).②レンズケースをケース本体(1つ),レンズホルダー(2つ),レンズキャップ(2つ)の5つのパーツに分ける(図6).③綿棒やブラシを用いて,ケース本体,レンズホルダー,レンズキャップを水道水できれいに洗浄する.ケース本体のねじ山もしっかりこすり洗いする.図6レンズケースのこすり洗い,すすぎ,自然乾燥レンズケースは5つのパーツに分けて,こすり洗い,すすぎを行った後に自然乾燥させる.1676あたらしい眼科Vol.28,No.12,2011(14)④5つのパーツを水道水でしっかりすすぐ.⑤5つのパーツに付着した水分を十分に振り落とす.⑥5つのパーツを清潔なトレイなどの上に離して乗せて,自然乾燥させる.トレイは,水がかからない清潔な場所に置く(水回りには置かない).⑦HCLを装脱した後はレンズケースに保存する.この際,まず5つのパーツを組み立てたレンズケースを水道水できれいに洗浄した後,レンズケース本体に保存液を注入して,キャップホルダーにHCLを収め,レンズキャップをしっかり閉める.b.外出時携帯用レンズケース①HCL装用後にレンズケース内に保存液を入れて持ち歩く.②帰宅後はレンズケース内の保存液をすべて捨てる(つぎ足し防止).その他の操作は自宅用レンズケースと同様である.レンズケースは外見上きれいに見えても,微生物に汚染されている可能性が高いので,3カ月に1回定期的に交換する.SCL用の消毒剤(MPS,過酸化水素製剤,ポビドンヨード製剤)にはレンズケースがついているので,SCL使用者は定期的に交換するようになるが,HCL用のケア用品には株式会社オフテクスのO2セプトTM以外はレンズケースがついていないため,交換していない者が多い.レンズケースの使用期間を確認して指導する.【HCL装用者のレンズケアに関するアンケート調査】HCL装用者41名にレンズケアに関するアンケート調査を行った結果を記す7).(1)試験前に使用していたケア用品の種類こすり洗いタイプが34%,1本つけ置きタイプが39%,2本つけ置きタイプが27%と,洗浄効果の弱いつけおき洗浄をしている者が多かった.(2)レンズケースの交換期間1カ月が5%,3カ月が12%,6カ月が27%,1年以上が56%と,レンズケースを長期間使用している者が多かった.(3)レンズケースの自然乾燥毎回のケアの後のレンズケースについて,自然乾燥しているが54%で,乾燥していないが46%と,自然乾燥していない者が半数近くいた.(4)レンズケースの置き場所ケア処理中のレンズケースの置き場所は,洗面所が86%,台所が8%,風呂場が2%,自分の部屋が2%,その他が2%と,水回りにレンズケースを置いている者が多かった.【レンズケース内のバイオフィルム】細菌が産生する菌体外多糖体(glycocalyx)が粘液状の鎧をつくり,その中で菌がコロニーを形成した状態をバイオフィルムという8).菌にとって不都合な環境下においても生き残るための一種のストレス応答と考えら外部環境から微生物がケース内に侵入する浮遊菌付着菌微生物が拡散するレンズケース微生物がケースに付着するコロニーを形成するバイオフィルムを産生する図7レンズケース中のバイオフィルム(イメージ図)細菌自体が産生する菌体外多糖体(glycocalyx)が粘液状の「鎧」をつくり,その中で菌がコロニーを形成する.HCLのケースホルダー部分の光学顕微鏡ホルダー部分の電子顕微鏡ホルダー部分の電子顕微鏡図8レンズケース中のバイオフィルム(聖マリアンナ医科大学工藤昌之氏提供)(15)あたらしい眼科Vol.28,No.12,20111677れる.HCLでは消毒が義務づけられていないので,レンズケース内の保存液が微生物に汚染されやすいことに加えて,HCL装用者は長期間レンズケースを使用していることが多いので,バイオフィルムの形成が起こりやすい(図7,8).バイオフィルムがいったん形成されると,除去することはむずかしいので,日頃から上述したようにレンズケースをきれいに洗浄して,自然乾燥させ,3カ月ごとに交換することが大切である.レンズケース中の保存液に増殖している菌(浮遊菌)については,平岡らは2010年の第34回角膜カンファランスで,レンズケース内の残存液について細菌の分離培養を行ったところ,残存液では20例中10例(50%)に細菌が同定されたと報告しているが,バイオフィルム感染症のことを考えるとレンズケースの壁に付着した細菌(付着菌)についての分離培養を行う必要がある.【抗菌効果を謳っているケア用品】HCL装用者41名が使用しているレンズケースを回収して,保存液とレンズケースの壁やレンズホルダー部分を拭き取った検査用スラブ綿球を4mlの生理食塩水に浸漬したものを検体として微生物検査を行った結果と,抗菌機能を謳っている3種類の市販HCL用ケア用剤の効果を検討した結果を以下に記す7).3種類のケア用剤は,SCLの化学消毒剤の一つであるMPSの主成分として使用されるポリヘキサメチレンビグアニド(PHMB)を含む製品(メニコン社の抗菌O2ケアネオR),同じくSCLの化学消毒剤の主成分として使用されるポビドンヨードを含む製品(株式会社オフテクスのO2セプトTM),こうしたものを含有しない製品(アイミー株式会社ワンオーケアR)である.(1)これまで使用していたケア用品の微生物学的検査レンズケースの保存液中の浮遊菌は41例中11例が陽性(26.8%)に対してレンズケースなどの付着菌は41例中14例が陽性(34.1%)で,ブドウ糖非発酵性グラム陰性桿菌,腸内細菌属,緑膿菌属などの環境菌を検出した(表1).菌種の同定結果から,陽性群では眼感染症のリスクの高い環境菌が1検体中で複数検出されたものが多かったのに対し,陰性群ではほぼ常在菌しか検出されず,環境菌が検出されたのは1検体のみであった.(2)試験ケア用品の微生物学的検査レンズケースの保存液中の浮遊菌は40例中9例が陽性(22.5%)に対して,レンズケースなどの付着菌は40表1これまでに使用していたケア用品の微生物学的検査(n=41)微生物汚染〔総検出菌数検体主な検出菌種(cfu/mlまたはケース)〕保存液レンズケース陽性(103以上)1114Pseudomonassp.SerratiamarcescensChryseobacteriumsp.StenotrophomonasmaltophiliaComamonasacidovoransEnterobactercloacaeMicrococcussp.StaphylococcuswarneriCNS陰性(0.103未満)3027Micrococcussp.StaphylococcuswarneriStaphylococcusepidermidisCNSPseudomonasfluorescens検出菌数が103以上(cfu/mlまたはケース)を陽性,103未満(cfu/mlまたはケース)を陰性とする.(宮永嘉隆:ソフトコンタクトレンズ用化学消毒液BL-49の臨床評価.日コレ誌38:258-273,1996より)1678あたらしい眼科Vol.28,No.12,2011(16)表2試験ケア用品の微生物学的検査微生物汚染〔総検出菌数(cfu/mlまたはケース)〕検体主な検出菌種保存液レンズケース陽性(103以上.)921CitrobacterfreundiiPseudomonasputidePseudomonasfluorescensブドウ糖非発酵性グラム陰性桿菌EnterobacteriaceaeCNSMicrococcussp.Staphylococcussaprophyticus陰性(0.103未満)3119PseudomonasputideKlebsiellapneumoniaeSerratialiquefaciensStaphylococcusepidermidisStaphylococcuswarneriStaphylococcuscapitisMicrococcussp.表3試験ケア用品ごとの微生物学的検査項目3カ月試験後Fisher検定(p値)vsO2セプトTM陽性陰性陽性率(%)O2セプトTM保存液31715.0─レンズケース71335.0─抗菌O2ケアネオR保存液0100.0p=0.561レンズケース7370.0p=0.154ワンオーケアR保存液6460.0p=0.037*レンズケース7370.0p=0.154例中21例が陽性(52.5%)で,既ケア用品使用時より陽性率が増加した.検出された菌類は既ケア用品使用時と同様に陽性群では眼感染症のリスクの高い環境菌が,陰性群では常在菌が検出される割合が高かった(表2).試験ケア用品ごとの微生物学的検査の結果を表3に示す.ポビドンヨードを含むケア用品を使用した(株式会社オフテクスのO2セプトTM)場合は,レンズケースの陽性率が低い傾向が認められた.PHMBを含むケア用品(メニコン社の抗菌O2ケアネオR)を使用した場合は,保存液に菌は認められなかったが,ケースの陽性率は高かった.以上の結果より,ポビドンヨードやPHMBを含むケ(17)*有意差あり(p<0.05).ア用品のほうがレンズケース内の微生物汚染は少なくなるが,これらによる消毒効果は完全ではないので,微生物の除去を考えると,十分なこすり洗いとすすぎが重要である.おわりにレンズケアに関連した角膜感染症が増えている.SCLに比べてHCLによる角膜感染症は少ないが,アカントアメーバの微生物による感染症の報告もあることから,HCLの取り扱いにあたっても十分に注意を払う必要がある.洗浄効果の高い洗浄剤によるこすり洗いとすすぎが重あたらしい眼科Vol.28,No.12,20111679要であるが,HCL装用後レンズケースに保存する前だけでなく,レンズケースから取り出してHCLを装用する前の,合わせて1日2回のこすり洗い,すすぎを推奨したい.レンズケースのバイオフィルム感染症が問題になっていることから,レンズケースの管理についても使用者に教育指導する必要がある.日本ではHCLについては消毒という操作は義務づけられていないが,微生物汚染を防ぐという観点から,消毒剤を使用するに越したことはないと考える.現在,PHMBとポビドンヨードを含有したHCL用のケア用品が市販されたが,こうした製品開発が進むことを願う.一方,概してユーザーはケア用品について無関心で,正しいケアを行っていないことが多い.医療機関で説明を受けたケア用品を当初は使用していても,その後は薬局,薬店,ドラッグストアなどで安価なほかのケア用品を購入していることが多い.商品が変わると取り扱いが異なる場合があるが,添付文書を熟読していないため,誤ったケアをしていることがある.説明したケア用品を継続して使用していたとしても,慣れてくるといい加減なケアをしていることもあるので,定期検査に来たときにはケアの具体的な方法を聴取して,不適正であれば再指導することも大切である.稿を終えるにあたり,多大なご協力を賜りました㈱オフテクスの斉藤文郎氏と山崎勝秀氏に心から謝意を表します.文献1)谷川定康:ケア用品の海外事情(ハードコンタクトレンズ).日コレ誌48:251-255,20062)宇野敏彦,福田昌彦,大橋裕一ほか:重症コンタクトレンズ関連角膜感染症全国調査.日眼会誌115:107-115,20113)植田喜一:コンタクトレンズケアの実際.あたらしい眼科17:935-944,20004)植田喜一:日本におけるレンズケアの現状.日コレ誌45:219-225,20035)植田喜一:コンタクトレンズ診療ガイドライン第3章CLケア(「ⅣCLケアの実際:SCLのケア」を除く).日眼会誌109:645-646,20056)水谷聡:ハードコンタクトレンズのケア.日コレ誌53:129-135,20117)植田喜一:ハードコンタクトレンズの微生物汚染.日眼会誌114:898,20108)工藤昌之:レンズケースとバイオフィルム.眼科診療プラクティス94:115,20031680あたらしい眼科Vol.28,No.12,2011(18)