0910-1810/11/\100/頁/JCOPYることができない.具体例としてポリープ状脈絡膜血管症のOCT画像を図1に示した.OCTを使った臨床研究によれば,ポリープ状脈絡膜血管症ではBruch膜と網膜色素上皮の間の間隙(doublelayersign)が特徴的とされ,その間隙に異常血管があると報告されている.他方,異常血管網は脈絡膜内に主として存在するという報告もあり,結論はでていない.これは従来のOCTでは血流の存在そのものを確認することができないため,OCT所見が異常血管なのかどうかの議論が単なる推測に基づくためである.この問題の根本的な解決のためには,血流の存在という組織特性をOCT画像内で確認する必要がある.このような通常のOCTでは得られない組織特性(血流,組織弾性,複屈折,偏光解消性,酸素分圧,光刺激反応,など)を調べるOCTを,広い意味でfunctionalOCTとよんでおり,第三世代OCTとしI次世代光干渉断層計(OCT)光干渉断層計(OCT)は組織からの後方散乱光強度を干渉計を使って測定し,組織の断面画像を得る装置である.OCTの眼科応用には2段階のブレークスルーがあった1).まずは1991年にHuangらによって発表されたタイムドメインOCTである.タイムドメインOCTの出現により,それまで仮説にすぎなかった患者網膜の断面像を観察することが可能になった.つぎのブレークスルーはWojtkowskiらによって2002年に発表されたフーリエ(Fourier)ドメインOCTである.フーリエドメインOCTの出現により,OCTの撮影速度は飛躍的に高速化され,高密度画像,画像加算,三次元画像解析が可能になった.この二つのブレークスルーを補完する技術として,脈絡膜画像(1μm)や前眼部画像(1.3μm)に特化した光源の使用や,超広帯域光源と補償光学による超高解像度OCTが考案されてきた1).今回の特集号で紹介されている,EDI(enhanceddepthimaging)-OCTや高侵達OCTやAO-OCT(補償光学OCT)は二つのブレークスルーの応用技術として生まれたものである.それではOCTにつぎのブレークスルーはあるだろうか.本稿で解説するドップラー(Doppler)OCTは次世代OCTとして期待されているfunctionalOCTの一つである.従来の臨床用OCTは組織からの反射光の強さのみを計測しているが,これだけでは組織のもつ特性を確認す(51)1271*MasahiroMiura:東京医科大学茨城医療センター眼科〔別刷請求先〕三浦雅博:〒300-0395茨城県稲敷郡阿見町中央3-20-1東京医科大学茨城医療センター眼科特集●黄斑疾患の病態解明に迫る光干渉断層計あたらしい眼科28(9):1271?1276,2011ドップラーOCTによる黄斑疾患の観察DopplerOpticalCoherenceTomographyImagingofMacularDisease三浦雅博*図1ポリープ状脈絡膜血管症の通常のOCT画像異常血管の存在はわからない.(文献7の図を改変)1272あたらしい眼科Vol.28,No.9,2011(52)遠ざかる場合と近づく場合の2種類に分類される.正のドップラー信号および負のドップラー信号とよばれる.これら2種類のドップラー信号情報をOCT画像に重ね合わせたものをドップラーOCT画像とよんでいる.図3のドップラーOCT画像では,血流が観測者方向に向かう場合を白色,遠ざかる場合を黒色で表現している.ドップラー信号は血流速度を反映するため,ドップラーOCTを使えば網膜血流速度が算出できる.しかし図2に示すようにドップラー信号は,血流速度のうち入射光て期待されている1).FunctionalOCTにはドップラーOCT,偏光OCT,opticalcoherenceelastography,分光OCT,photo-thermalOCT,狭義のfunctionalOCT(網膜内因性信号計測)などがあるが,このなかで眼科臨床応用が報告されているのは偏光OCTとドップラーOCTである.本稿では,ドップラーOCTの眼科臨床応用について解説したい.IIドップラーOCTドップラーOCTは,ドップラー効果を検出することを可能にしたOCTである.ドップラー効果は1842年にオーストリアの物理学者ChristianDopplerによって体系づけられた現象で,波(音波,光波,電波など)の発生源が観測者に対して相対的に動くときに,波の周波数が異なって観察される現象である.ドップラー効果は物体の動きを計測するのに用いられ,天文学(赤方偏移によるビッグバンの観察),速度取締(ドップラーレーダー),球速計測(スピードガン)などさまざまな分野に応用されている.医療現場ではもっぱら血流計測に用いられており,眼科分野ではlaserDopplerflowmetryによる網膜血流計測や,超音波ドップラーによる眼球近傍の血流計測が行われてきた.ドップラー効果はOCTでも計測可能であり,ドップラーOCTまたはopticalDopplertomographyとよばれている.ドップラーOCTではOCT画像内に血流情報を付加することが可能であり,さまざまな網膜疾患の病態研究への利用が期待されている.また,臨床用OCTで一般に採用されているフーリエドメイン方式では,通常の高密度OCT画像を演算処理することによりドップラーOCT画像を算出することが可能であり,特別な装置改造の必要はない.これらの点からドップラーOCTは次世代OCTの有力候補の一つとなっている.現在ドップラーOCTの眼科分野への応用としては,網膜血流計測と網脈絡膜血管三次元画像の二つが考えられている.III網膜血流計測図2に示すようにドップラー信号計測では,血流速度のベクトルのうち,入射光に平行なベクトル成分のみが検出される.ドップラー信号は観測者から見て,血流がOCT図2ドップラー信号の検出ドップラー信号計測では,血流速度のうち入射光に平行なベクトル成分のみが検出可能である.AB図3通常のOCT画像(A)とドップラーOCT画像(B)黒矢印は網膜内の血流,白矢印は脈絡膜内の血流を示している.(文献7より)(53)あたらしい眼科Vol.28,No.9,20111273像内に血流の存在が追加表示される.OCAではドップラーOCT画像を連続撮影して,ドップラー信号分布(血流分布)を三次元表示することにより,網脈絡膜血管三次元画像を算出する.さらにOCAでは,ドップラーOCT画像を網膜色素上皮層で分割することにより,脈絡膜と網膜の血管三次元画像を別々に表示することが可能である.図4Aは筆者の右眼のOCA画像(網脈絡膜血管三次元画像)で,図4BはOCAの平面画像である.図4Bで示した画像は,実際のインドシアニングリーン(ICG)造影画像初期相(図4C)とほぼ一致しており,実際の血管構築を描出していることがわかる.OCAはポリープ状脈絡膜血管症の臨床研究にすでに用いられており,病態に関する新しい知見をもたらしている7).最初に解説したように,図1に示したポリープ状脈絡膜血管症のOCT画像では,血流の存在を確認することが病態解明に重要である.そこでドップラーOCTを使って,図1に示した画像を改めて検討してみたい.その結果,Bruch膜と網膜色素上皮の間にドップラー信号,すなわち血流の存在が確認された(図5).続いてOCA画像を元に,この血流の存在範囲を検討した.すると,Bruch膜と網膜色素上皮の間に確認された血流(ドップラー信号)の分布は,ポリープ状脈絡膜血管症の異常血管網の分布に一致することがわかった(図6).このことから,ポリープ状脈絡膜血管症の異常血管網のうち,少なくともかなりの部分が網膜色素上皮とBruchに平行なベクトル成分しか反映していないため,実際の血流速度を計算するためには血管走行角度を調べる必要がある.網膜血管走行角度の計測方法としては,1)乳頭周囲を円周方向に2カ所測定する方法(doublecircularscanmethod)2),2)三次元OCT画像を基に血管走行の全体像を把握する方法3),3)入射角度の異なる2系統のドップラーOCT計測を実施する方法4),が考案されているが,このなかでdoublecircularscanmethodのみの臨床応用が報告されている.Wangら4)は市販機OCT(RTVue)を用いてdoublecircularscanmethodを実施し,網膜から流出する静脈血流量の合計を検討した2).その結果,増殖糖尿病網膜症,虚血性視神経炎,網膜静脈分枝閉塞,緑内障では血流量が減少していたことを報告している.しかしこれらの知見は,超音波ドップラーやscanninglaserDopplerflowmetryによってすでに確認された所見であり,まだドップラーOCTによる新知見はない.今後の研究成果が待たれる.IV網脈絡膜血管三次元画像(OCA)網脈絡膜血管三次元画像は,ドップラー効果から血管位置情報を得ることにより血管構築の三次元画像を得る技術で,2006年にMakitaら5)によってopticalcoherenceangiography(OCA)として報告された後,opticalmicro-angiography6)という呼称でも報告されている.図2に示したようにドップラーOCT画像ではOCT画ABC図4正常眼のOCA画像A:OCAによる網脈絡膜血管三次元画像,B:OCAによる網脈絡膜血管平面画像,C:同じ領域のICG造影早期画像.(文献7の図を改変)1274あたらしい眼科Vol.28,No.9,2011(54)でMakitaらは広範囲かつ高感度のOCA画像を可能にする,超高感度ドップラーOCT(dualbeamDopplerOCT)を考案した8).DualbeamDopplerOCTは2軸のOCT計測を同時に行うことにより,広範囲の高感度ドップラーOCT計測を可能にする技術である.図7はdualbeamDopplerOCTによる中心窩網膜のOCA画像である.DualbeamDopplerOCTを用いることにより,フルオレセイン蛍光眼底撮影とほぼ同等の網膜血管OCA画像が得られることがわかる.さらにdualbeamDopplerOCTでは図8に示すような広範囲の撮影が可能であり,通常の蛍光眼底と比較しても遜色はない.また網膜色素上皮で画像を分割することにより,網膜血管画像と脈絡膜血管を完全に分離して観察することも可能である.DualbeamDopplerOCTは臨床応用も試みられており,図9に示すようにポリープ状脈絡膜血管症の異常血管を,通常のICG造影画像と何の遜色もなく描出できる.DualbeamDopplerOCTは通常の造影検査とほぼ同等の画像を描出することが可能であり,眼科臨床分野への応用が大いに期待できる.VIドップラーOCTの課題と今後ドップラーOCTは次世代の眼科用OCTとして期待されるが,臨床応用のためには克服しなければならない膜との間の間隙(doublelayersign)に存在することが実証された.これは,ポリープ状脈絡膜血管症の異常血管網の走行がtype1の脈絡膜新生血管に類似している可能性を示唆している.これらの所見から,ドップラーOCTが網脈絡膜疾患解明の有力な道具になりうることがわかった.V超高感度ドップラーOCT(dualbeamDopplerOCT)図3?7に示したドップラーOCT画像は,通常のフーリエドメインOCT(高侵達OCT)を用いて算出したものである.この方式では,既存のOCTを使える利点はあるが,いくつかの課題がある.まず超高密度のA-scanが必要なため狭い範囲の撮影しかできない.また微小血管の検討のためには測定感度が足りない.そこ図5図1に示したポリープ状脈絡膜血管症のドップラーOCT画像Doublelayersign内にドップラー信号(血流)の存在が確認できる.(文献7の図を改変)AB図6ポリープ状脈絡膜血管症の画像A:ICG造影画像,B:OCA画像で,doublelayersign内の血流分布を黒色で示した.(文献7の図を改変)図7正常人眼の中心窩のdualbeamDopplerOCT画像(文献8より)(55)あたらしい眼科Vol.28,No.9,20111275ている.ドップラー計測では血流速度のうち入射光に平行なベクトル成分を測定しているため,入射光に対して血流が垂直に走行していた場合は,ドップラー信号は測定できなくなってしまう.このような場合はOCTを傾けて入射光の角度を調整してやる必要がある.このように現行のドップラーOCTによる血流速度計測では,ドップラーOCTの設定と入射角度を,対象となる血管ごとに調整する必要があり,眼科臨床応用に使う場合は操作が煩雑になる.またドップラー信号計測には時間差で測定したOCT信号を使うため,眼球運動によってOCT信号の測定位置がずれると,測定誤差が大きくなってしまう.これらの課題を乗り越えることができれば,ドップラーOCTによる血流速度測定は広く臨床現場に普及する可能性がある.網脈絡膜血管三次元画像(OCA)については臨床現場への即戦力として期待できる.本稿で示したポリープ状脈絡膜血管症に関する知見は,従来の臨床研究では不可能だったものであり,OCAがいかに有用であるかを示したものである.ドップラーOCTの計測は数秒で終わいくつかの課題がある.まず血流計測を実施する際,つぎのような課題がある.現行のドップラーOCTは,計測可能な血流速度の範囲が設定によって変わってくる.そのため,対象となる血管の血流速度にある程度合わせて,ドップラーOCTの設定を変える必要がある.他の問題点としては血流の走行角度がある.網脈絡膜血管のかなりの部分は,網膜表面に対して平行に走行しており,ドップラーOCTの入射光に対しては垂直に走行し網膜血管脈絡膜血管図8DualbeamDopplerOCTによる網膜血管と脈絡膜血管の画像(文献8より)AB図9ポリープ状脈絡膜血管症の画像A:ICG造影画像,B:dualbeamDopplerOCTによる画像.(文献8の図を改変)1276あたらしい眼科Vol.28,No.9,2011り,造影剤も必要としない.そのため,蛍光眼底造影と比較して患者への負担ははるかに少ない.しかも蛍光眼底造影では不可能な深さ方向の三次元解析が可能である.また血流速度測定と違って,血流の存在のみを確認すればよいので,ドップラーOCTの設定や入射角度を微調整する必要性は少ない.しかしドップラーOCTによる網脈絡膜血管三次元画像にも弱点はある.ドップラーOCTでは血流の存在そのものは確認できても,血管からの漏出という重要な所見を確認することができない.そのため,網膜新生血管や脈絡膜新生血管の診断,黄斑浮腫の原因病巣の確認,などの能力では蛍光眼底造影におきかわることはできない.そこで臨床現場での使い方としては,1)蛍光眼底造影と一緒に撮影して蛍光眼底造影の所見を補完する,2)最初は蛍光眼底造影で診断し,経過観察はドップラーOCTを使う,3)蛍光眼底造影が,副作用や全身状態の問題でできない患者に代用品として用いる,といったことが考えられる.ドップラーOCTによる網脈絡膜血管三次元画像(OCA)は網膜外来における,強力な戦力として期待できる.そう遠くない将来に,ドップラーOCTが次世代OCTとして臨床現場で広く使われる日がくるものと思われる.本稿の擱筆にあたり,御指導,御協力いただいたCOG筑波大学の安野嘉晃先生と巻田修一先生に深謝します.文献1)DrexlerW,FujimotoJG:State-of-the-artretinalopticalcoherencetomography.ProgRetinEyeRes27:45-88,20082)WangY,FawziAA,VarmaRetal:Pilotstudyofopticalcoherencetomographymeasurementofretinalbloodflowinretinalandopticnervediseases.InvestOphthalmolVisSci52:840-845,20113)MakitaS,FabritiusT,YasunoY:Quantitativeretinalbloodflowmeasurementwiththree-dimensionalvesselgeometrydeterminationusingultrahigh-resolutionDoppleropticalcoherenceangiography.OptLett33:836-838,20084)WerkmeisterRM,DragostinoffN,PircherMetal:BidirectionalDopplerFourier-domainopticalcoherencetomographyformeasurementofabsoluteflowvelocitiesinhumanretinalvessels.OptLett33:2967-2969,20085)MakitaS,HongY,YamanariMetal:Opticalcoherenceangiography.OptExpress14:7821-7840,20066)AnL,WangRK:Invivovolumetricimagingofvascularperfusionwithinhumanretinaandchoroidswithopticalmicro-angiography.OptExpress16:11438-11452,20087)MiuraM,MakitaS,IwasakiTetal:Three-dimensionalvisualizationofocularvascularpathologybyopticalcoherenceangiographyinvivo.InvestOphthalmolVisSci52:2689-2695,20118)MakitaS,JaillonF,YamanariMetal:Comprehensiveinvivomicro-vascularimagingofthehumaneyebydualbeam-scanDoppleropticalcoherenceangiography.OptExpress19:1271-1283,2011(56)