●連載(最終回)多焦点眼内レンズセミナー監修=ビッセン宮島弘子24.海外の話題から荒井宏幸みなとみらいクリニック分節状屈折型の多焦点眼内レンズがおもに欧州にて使用され始めている.加入部分を分節状に配置することで,多焦点レンズにおけるグレア・ハロー・waxyvisionの出現しにくいレンズとして注目されている.乱視矯正用のレンズもあり,その製作度数は100分の1Dステップのオーダー単位である.●分節状屈折型多焦点眼内レンズおもに欧州を中心として使用されているが,わが国では未承認である1).Oculentis社製LentisMPlusRの外観を図1に示す.レンズの光学部下方が,加入部分に相当する構造になっている.2重焦点の遠近両用眼鏡をイメージしやすいが,視線の移動によって近方視を確保するという理論ではない.屈折型として,近用部を集約して網膜上に結像させるアイデアは斬新である.他の多焦点レンズと同様に,網膜上には遠方・近方ともに集光されており,脳の選択によりどちらかの集光像を認識する.加入度数部分の面積は,全集光面積の約3分の1に相当する.素材は親水性アクリル(25%含水)であり,形状はプレート型である.切開創は2.0mmからの挿入が可能ということであるが,筆者は2.3mmの切開創にて行っている.レンズ長径は11mm,光学部は6.0mmである.球面度数の製作範囲0.+36Dである.加入度数は2種類あり,+3.0Dと+1.5D(どちらもレンズ面)が選択可能である.Toricレンズも用意されており,0.25.12Dまでの円柱レンズが対応可能となっている.●LentisMPlusRの光学的優位性現在,選択が可能な多焦点眼内レンズは,同心円状の屈折型レンズと回折型レンズである.屈折型には夜間のグレア・ハローの問題があり,回折型にはwaxyvisionという問題がある.基本的には,単焦点に比べれば近方視力は確実に確保できるのであるが,光学的なロスや散乱による見え方の不具合により,適応を狭めざるをえない.同心円状の屈折型多焦点眼内レンズには,遠方と近方(53)図1LentisMPlusRの外観近用部分が下方(6時方向)になるように.内に固定する.マーカーラインは水平方向を示している.のzone部分のgapがあり,その部分の散乱により光学的なロスが生じる.暗所にて瞳孔径が大きくなると,このgap部分が何周も表出されるため,より多くのロスが生じてしまう.回折型多焦点眼内レンズの場合には,回折構造の物理特性として,常に18%の入射光が減弱する.残りの82%を利用して遠方と近方に振り分けており,そのため鮮明度は甘くなり,これがwaxyvisionとして知覚される.術前にwaxyvisionに対する予測が可能であれば,非常に使い勝手の良いレンズであるが,それが難しいために躊躇することも多い.LentisMPlusRは光学的なロスを最小限に留めるように設計されている.レンズの中心部分および60%以上の部分が遠方焦点の単焦点レンズであるため,良好な遠方視は担保される.また,屈折型に特徴的なzone間のgapは1本のラインしかなく,したがって瞳孔径が大きくなっても表出するgapはラインの1部分のみである.そのgapも非常に精緻に作製されている.●2つの加入度数を使い分けるLentisMPlusRには2種類の加入度数が用意されてあたらしい眼科Vol.28,No.12,201117150910-1810/11/\100/頁/JCOPY図3LentisMPlusRtoricの術後前眼部写真下方の加入部分の反射と上下のトーリックラインが観察される.図2LentisMPlusRtoricのオーダーフォーム100分の1D単位での推奨レンズ度数が示されている.乱視軸の角度によらず,レンズの固定は常に垂直方向である.いる.レンズ面にて+3.0Dと+1.5Dである.それぞれ眼鏡面では+2.5Dと+1.0Dに相当する.Oculentis社は優位眼に加入+1.5Dを,非優位眼に+3.0Dを選択してmodifiedmonovisionを作ることにより中間視力を確保するという提案をしている.●驚異的なtoricレンズの製作度数LentisMPlusRにはtoricレンズの設定がある.To-ricレンズの度数設定は,球面・円柱面ともに100分の1D単位である.図2のレンズのオーダーはおもにIOLマスター(CarlZeissMeditec社製)のデータを元に決定する.円柱面の軸方向は製作時点ですでに回転をつけて位置づけされており,挿入は球面レンズと同様に12時-6時の縦方向に固定すればよい.しかも納期は4週間である.●手術結果今回は誌面の関係上,術後結果は示さないが,通常の多焦点眼内レンズと同等の満足できる結果が得られている.最も安心できるのが,グレア・ハローやwaxyvisionの訴えがないことである.術後の細隙灯顕微鏡写真を図3に示すが,通常の光束で観察するかぎり単焦点レンズの様相である.すでに海外からも術後結果の報告がされはじめている2,3).●今後の展望このLentisMPlusRがほぼ単焦点に近い遠方視力と,日常的には十分な近方視力が安定して得られるものであれば,今後はこうした光学特性をもったレンズが多焦点眼内レンズの主流になりうると考えている.すでに調節力のない50歳以上の屈折異常眼に対しては,LASIKやPhakicIOLではなく,LentisMPlusRが良い適応になるかも知れない.文献1)McAlindenC,MooreJE:Multifocalintraocularlenswithasurface-embeddednearsection:Short-termclinicaloutcomes.JCataractRefractSurg37:441-445,20112)AlioJL,PineroDP,Plaza-PucheABetal:Visualoutcomesandopticalperformanceofamonofocalintraocularlensandanew-generationmultifocalintraocularlens.JCataractRefractSurg37:241-250,20113)AlioJL,Plaza-PucheAB,PineroDPetal:Comparativeanalysisoftheclinicaloutcomeswith2multifocalintraocularlensmodelswithrotationalasymmetry.JCataractRefractSurg37:1605-1614,2011☆☆☆1716あたらしい眼科Vol.28,No.12,2011(54)