0910-1810/10/\100/頁/JCOPY(75)1707はじめに以前,筆者は眼科用のジアテルミーを用いて,白内障手術練習用の豚眼による角膜混濁モデルを試作した1).そして,その有用性についても言及した2).しかし,角膜上皮にジアテルミー電極の先端を直接当て凝固斑を作るために,強い凸凹やときに皺が角膜に生じて,前房内の視認性は非常に悪くなる.したがって,初級者が白内障手術の練習をするには,難易度が高い模擬眼になる.実際の臨床で角膜混濁のある白内障を手術する場合,前房内の視認性は多少悪くても通常の顕微鏡照明下で十分対応できる症例も多数存在する.したがって,角膜混濁が軽度の模擬眼を多数経験することは,実践に即していると考える.今回,硝子体手術時に観察用レンズを固定するHHVシリコーンホルダー(HOYA株式会社,日本)を利用して,角膜上皮に凸凹や皺の少ない混濁をウエットラボ用の豚眼で作製したので,その方法について解説する.角膜混濁の作製方法ウエットラボ用の豚眼を用意し,前報同様にジアテルミーも利用した.1.ジアテルミー装置前報と同じジアテルミーを使用した1,2).超音波白内障手術器械の一つであるCataRhexRswisstech(エルトリー社,スイス)に標準装備されている装置である.ジアテルミーの電極は結膜止血用のバイポーラ鑷子を用いた.2.豚眼角膜の混濁作製最初に角膜上にHHVシリコーンホルダーを置き,ホルダー中央部の空間に灌流液などの水溶液を満たす.つぎに,ジアテルミー電極の先端を角膜上皮に触れないよう灌流液が満たされた中に挿入し,フットスイッチを押し凝固斑を作製した(図1).凝固斑の大きさをコントロールするのはむずかしいが,凸*SatoruJoko:武蔵野赤十字病院眼科〔別刷請求先〕上甲覚:〒180-8610武蔵野市境南町1-26-1武蔵野赤十字病院眼科わたしの工夫とテクニックあたらしい眼科27(12):1707.1708,2010MyDesignandTechnique初級者向けの白内障手術練習用の豚眼による角膜混濁モデルの試作TrialManufactureofCornealOpacityModelinPigEyesforUseinCataractOperationPracticeforBeginners上甲覚*ジアテルミーと硝子体手術用コンタクトレンズホルダーを用いて,白内障手術練習用の豚眼による角膜混濁モデルを試作した.シリコーンゴム性のホルダーを角膜にのせ,ホルダー内を灌流液で満たし,水中でジアテルミー凝固を行った.電極の先端が直接角膜上皮に触れないので,凸凹のない角膜混濁を作製することができた.視認性は多少悪いが,通常の照明下にて前房中の操作を行うことが可能であり,初級者が練習するのに有用な模擬眼の一つになると考えた.要約図1豚眼角膜の混濁作製HHVシリコーンホルダーを角膜上にのせて,中空を灌流液(水)で満たし,水中でジアテルミー凝固を施行.ジアテルミー電極の先端を角膜に触れないように混濁を作製(結膜止血用の電極を使用).1708あたらしい眼科Vol.27,No.12,2010(76)凹や皺のない混濁を作ることができた.凝固時間の長短で,混濁の強さはある程度調整可能である.図1で作製した角膜混濁モデル眼で,前房中の視認性を確かめてみた(図2).通常の照明下において,混濁部位での視認性は多少悪いが,細いヒーロン針の先端でも確認することができた.おわりに前報では,角膜混濁が強いので混濁範囲が広いと,通常の照明下では手術を行うのは困難であった.今回作製した角膜混濁モデルでは,前房中の視認性は比較的良好なので,初級者が練習するのに有用な模擬眼の一つになると考えた.HHVシリコーンホルダーを利用した本法では,混濁の大きさを調整するのはむずかしい.仮に直径の異なる筒状の道具が利用できれば,ある程度意図した大きさの混濁も作製可能である.その結果,より実践的なウエットラボを行うことができると考える.文献1)上甲覚:白内障手術練習用の豚眼による角膜混濁モデルの試作.あたらしい眼科27:83-84,20102)上甲覚:白内障手術練習用の豚眼による角膜混濁モデルの作製と使用経験.臨眼64:465-469,2010☆☆☆図2図1のモデル眼で,前房中の視認性を確認前房中にヒーロンを注入.細いヒーロン針の先端でも確認することができる.