0910-1810/11/\100/頁/JCOPYるもの(RDH12,LRAT,RPE65),視細胞の発生や構造に関連するもの(CRX1,CRB1),視細胞内の蛋白輸送(transportacrossthephotoreceptorconnectingcilium)に関連するもの(TULP1,RPGRIP1,CEP290,LCA5),その他(IMPDH1,MERTK,RD3,SPATA7)に分けられる(LCA9はまだ詳細がわかっていない).遺伝子変異の検索方法としては,AsperOphthalmics社(エストニア)のLCAmutationchipを使用したマイクロアレイ解析が最も汎用されている.I疾患概念レーバー先天黒内障(Leber’scongenitalamaurosis:LCA)は,1869年Leberによって報告された網膜色素変性(retinitispigmentosa:RP)の類縁疾患で,生後早期(多くは生後6カ月以内)より高度に視力が障害される1).これまでに16種類の原因遺伝子が同定されており,ほとんどが常染色体劣性遺伝の形式をとる2,3).80,000出生に1?2人の頻度で認められ,先天盲の約20%を占めるとされている4).近年,LCAの原因遺伝子の一つであるRPE65を欠損した患者に対する遺伝子治療が英国,ならびに米国の3つの施設において臨床応用(phaseI)され,安全性に大きな問題がなく,さらに一部の被験者で治療効果が認められたと報告された5~7).II病因:原因遺伝子LCAは遺伝的異質性をもつ疾患であるが,全患者の約70%がこれまでに同定された16種類の原因遺伝子(表1)のいずれかにより発症している2).原因遺伝子の中で最も頻度が高いのが,CEP290で全体の約15%を占める.報告により差があるものの,以下,GUCY2D(約12%),CRB1(約10%),RPE65,AIPL1,RPGRIP1などの頻度が高いとされている2,3).これらの遺伝子を機能で分類すると,phototransductionに関連するもの(AIPL1,GUCY2D),レチノイドサイクルに関連す(17)921*YasuhiroIkeda:九州大学大学院医学研究院眼科学分野〔別刷請求先〕池田康博:〒812-8582福岡市東区馬出3-1-1九州大学大学院医学研究院眼科学分野特集●遺伝性網膜・黄斑ジストロフィアップデートあたらしい眼科28(7):921?925,2011Leber先天盲(Leber先天黒内障)Leber’sCongenitalAmaurosis池田康博*表1LCAの原因遺伝子LCAtype遺伝子染色体部位遺伝形式LCA1GUCY2D17p13.1ARLCA2RPE651p31ARLCA3SPATA714q31.3ARLCA4AIPL117p13.1ARLCA5LCA56q14.1ARLCA6RPGRIP114q11ARLCA7CRX19q13.3ADLCA8CRB11q31-q32.1ARLCA9LCA91p36ARLCA10CEP29012q21.3ARLCA11IMPDH17q31.3-q32ADLCA12RD31q32.3ARLCA13RDH1214q23.3ARLCA14LRAT4q31ARMERTK2q14.1ARTULP16p21.3ARAR:常染色体劣性遺伝,AD:常染色体優性遺伝.922あたらしい眼科Vol.28,No.7,2011(18)ある.LCAでは,oculodigitalsign(指眼現象)という拳や指を眼球に繰り返し押しつける行動がよく観察される8)(図1).この行動は,盲児に認められる共通の行動(blindism)で,LCAだけに認められるものではないが特徴的である.視力は,ほとんどの症例が0.1以下である.しかしながら,原因遺伝子がRDH12,RPE65,CRB1である症例のなかには,視力が比較的良好なものも認められ,平均視力が他の原因遺伝子の症例よりも良いと報告されている9).また,まれではあるが視力が改善する症例があったことが報告されている10,11).一般に高度な遠視眼が多く,円錐角膜や白内障が高頻度に合併するため,視機能はさらに障害される.眼底所見は,症例によりさまざまであるが,血管狭小化,視神経萎縮,黄斑部の変性,骨小体様色素沈着,胡麻塩状網膜,などの所見が認められる2)(図2).一方で,視機能が高度に障害されている症例でも新生児期には検眼鏡的に眼底の変化がほとんどないものも認められる.網膜電図は,初期より消失型もしくは著しい減弱を示す.光干渉断層計(OCT)の所見は,原因遺伝子によりさまざまであるとされている.RPE65遺伝子異常により発症した幼少時期より視機能異常のある患者の所見は,視細胞の消失を一部は示しているものの比較的正常に近い構造であったと報告されている11).さらにこれまでの報告をまとめると,RPE65遺伝子異常の症例では,年齢が進むにつれて黄斑部の網膜構造が壊れていく傾向にあるようである11~15).GUCY2D遺伝子異常の場合,黄III診断:臨床的特徴,症状,検査所見LCAは遺伝的異質性のみでなく,臨床所見も多様性に富むが,つぎの4つの臨床的な特徴を有する.生後早期からある高度な視機能障害,感覚性眼振(sensorynystagmus),対光反応の欠如,もしくは高度障害(黒内障瞳孔:amauroticpupil),網膜電図の異常(消失型もしくは著しい減弱)である.鑑別疾患としては,幼少時発症の網膜色素変性,Alstrom症候群,Batten病などがある.LCAにはしばしば,精神発達遅滞,自閉症,てんかん,水頭症,難聴などの全身合併症を伴う場合が図1Oculodigitalsign(指眼現象)(文献8を改変)ABC図2LCAの眼底写真A:CEP290,B:GUCY2D,C:CRB1.(文献2を改変)AB図3GUCY2D遺伝子異常により発症した症例のOCT像黄斑部網膜の層構造は保たれており,正常眼と大きな違いがない.(文献15を改変)(19)あたらしい眼科Vol.28,No.7,2011923斑部網膜の層構造は保たれており,正常眼と大きな違いがないとされている15)(図3).また,CEP290遺伝子異常の症例では,黄斑部の層構造は乱れているものの,外顆粒層に相当する部分は保たれているとされている15).病理組織学的所見も症例によりさまざまであると報告されており,網膜変性が進行して瘢痕化しているものから,網膜の構造が保たれているものまである2).RPE65遺伝子異常のあるヒト胎児網膜(胎生33週)の病理組織学的検討では,同時期の胎児網膜と比較して網膜の菲薄化が生じおり,視細胞の変性のみでなく,網膜色素上皮細胞や脈絡膜血管の構造変化などがすでにあると報告されている16)(図4).IV治療:遺伝子治療RPE65(LCA2)は網膜色素上皮細胞に発現し11-cis-retinalの産生に関わるが,RPE65遺伝子に変異があると11-cis-retinalが産生されず,視細胞(杆体)が光に反応できなくなり,最終的に視細胞は死に至ってしまう.Aclandらは,このLCA2に対する遺伝子治療法として,AAV(アデノ随伴ウイルス)ベクターを用いた網膜色素上皮細胞(RPE)への正常RPE65遺伝子導入という方法を試み,イヌのLCA2モデルにおいて著明ONLONLAB図4胎生33週のヒト正常網膜(A)とRPE65遺伝子異常のあるヒト胎児網膜(B)の病理組織像網膜全体が菲薄化しており,特に外顆粒層(ONL)は薄くなっている.(文献16を改変)図5LCA2に対する遺伝子治療臨床研究の結果A:臨床研究のサマリー,B:症例3のマイクロペリメトリー検査.治療眼である右眼の網膜感度が上昇している.(文献5より)PatientNo.VisualAcuity(LogMAR)MicroperimetryVisualMobility(TravelTime)1StudyeyeControleye1.16→0.860.88→0.78変化なし42→50sec44→38sec2StudyeyeControleye1.52→1.521.62→1.58変化なし42→35sec37→35sec3StudyeyeControleye0.76→0.760.54→0.44投与部位の感度改善77→14sec37→13secABCopyrightc2008MassachusettsMedicalSociety.Allrightsreserved.924あたらしい眼科Vol.28,No.7,2011(20)おわりにLCAは非常にまれな疾患であり,筆者自身も1症例のみの経験しかない.しかしながら,上記のような新しい治療法により視機能の改善が望める疾患となりつつあるので,診断を誤らないように疾患の特徴をしっかりと把握する必要がある.文献1)LeberT:UberRetinitispigmentosaundangeboreneAmaurose.GraefesArchKlinOphthalmol15:1-25,18692)denHollanderAI,RoepmanR,KoenekoopRKetal:Lebercongenitalamaurosis:genes,proteinsanddiseasemechanisms.ProgRetinEyeRes27:391-419,20083)LiL,XiaoX,LiSetal:Detectionofvariantsin15genesin87unrelatedchinesepatientswithlebercongenitalamaurosis.PLoSOne6:e19458,20114)PerraultI,RozetJM,GerberSetal:Lebercongenitalamaurosis.MolGenetMetab68:200-208,19995)BainbridgeJW,SmithAJ,BarkerSSetal:EffectofgenetherapyonvisualfunctioninLeber’scongenitalamaurosis.NEnglJMed358:2231-2239,20086)MaguireAM,SimonelliF,PierceEAetal:SafetyandefficacyofgenetransferforLeber’scongenitalamaurosis.NEnglJMed358:2240-2248,20087)HauswirthW,AlemanTS,KaushalSetal:PhaseItrialofLebercongenitalamaurosisduetoRPE65mutationsbyocularsubretinalinjectionofadeno-associatedvirusgenevector:Short-termresults.HumGeneTher19:979-990,20088)安達惠美子(編著):網膜色素変性症,p64-65,医学書院,19989)WaliaS,FishmanGA,JacobsonSGetal:VisualacuityinpatientswithLeber’scongenitalamaurosisandearlychildhood-onsetretinitispigmentosa.Ophthalmology117:1190-1198,201010)KoenekoopRK,LoyerM,DembinskaOetal:VisualimprovementinLebercongenitalamaurosisandtheCRXgenotype.OphthalmicGenet23:49-59,200211)VanHooserJP,AlemanTS,HeYGetal:Rapidrestorationofvisualpigmentandfunctionwithoralretinoidinamousemodelofchildhoodblindness.ProcNatlAcadSciUSA97:8623-8628,200012)SimonelliF,ZivielloC,TestaFetal:ClinicalandmoleculargeneticsofLeber’scongenitalamaurosis:amulticenterstudyofItalianpatients.InvestOphthalmolVisSci48:4284-4290,200713)JacobsonSG,CideciyanAV,AlemanTSetal:RDH12andRPE65,visualcyclegenescausingLebercongenitalamaurosis,differindiseaseexpression.InvestOphthalmolVisSci48:332-338,2007な治療効果が得られることを報告した17).さらに,小型・中型動物を用いてAAVベクター網膜下投与の安全性を確認した18).2007年2月より英国のグループによって,また2007年9月より米国ペンシルバニア大学のグループによって,ヒトLCA2患者に対する遺伝子治療臨床研究が開始されており,その途中経過が報告された(図5)5~7,19,20).英国での臨床研究では,17?23歳のLCA2患者3名に対して,硝子体切除後に耳上側のアーケード血管周囲から黄斑部を含むよう遺伝子が網膜下投与された.その結果,1名(症例3)では,投与部位に一致した感度の改善を認め,さらに暗所下での行動の著しい改善を認めたと報告されている.米国の臨床研究でも同様に,19?26歳の3名の患者を対象に遺伝子治療が行われ,治療を受けた3名とも対光反応および視野に改善を認め,うち2名では視力の改善も認めたと報告されている5).米国ペンシルバニア大学のグループからの報告6,19)では,初期に低濃度のベクターを投与された3症例(19?26歳)の1.5年の長期経過観察の結果,投与後早期に軽度の免疫反応は生じた(血清中のAAV2に対する抗体が上昇したが,その後ベースラインまで低下した)ものの,重篤な副作用は認めなかったとされている(症例2では,術後14日目に黄斑円孔が生じたが,その形態は1.5年間変化していない.).視力はすべての症例で有意に改善したと報告されている.同様に,米国フロリダ大学とペンシルバニア大学の共同研究グループからの報告7,20)でも,1年間の経過観察期間に重篤な副作用がないこと,光に対する感度が上昇した症例があることが示されている.このように,LCA2に対する遺伝子治療は安全性と治療効果が複数の施設で確認され,症例も着実に積み重ねられているようだ.より若年の症例を適応とすることにより,さらに高い治療効果が期待されるようだ.同様のアプローチでRPE65以外の原因遺伝子により発症するLCAをターゲットした遺伝子治療臨床研究も計画されているようだ.LCA2に対する遺伝子治療の成功は,LCAのみでなく,難治性の網膜変性疾患に対する遺伝子治療の発展を十分に期待させる内容であった.(21)あたらしい眼科Vol.28,No.7,2011925NatGenet28:92-95,200118)AclandGM,AguirreGD,BennettJetal:Long-termrestorationofrodandconevisionbysingledoserAAVmediatedgenetransfertotheretinainacaninemodelofchildhoodblindness.MolTher12:1072-1082,200519)SimonelliF,MaguireAM,TestaFetal:GenetherapyforLeber’scongenitalamaurosisissafeandeffectivethrough1.5yearsaftervectoradministration.MolTher18:643-650,201020)CideciyanAV,HauswirthWW,AlemanTSetal:Vision1yearaftergenetherapyforLeber’scongenitalamaurosis.NEnglJMed361:725-727,200914)JacobsonSG,CideciyanAV,AlemanTSetal:PhotoreceptorlayertopographyinchildrenwithLebercongenitalamaurosiscausedbyRPE65mutations.InvestOphthalmolVisSci49:4573-4577,200815)PasadhikaS,FishmanGA,StoneEMetal:DifferentialmacularmorphologyinpatientswithRPE65-,CEP290-,GUCY2D-,andAIPL1-relatedLebercongenitalamaurosis.InvestOphthalmolVisSci51:2608-2614,201016)PortoFB,PerraultI,HicksDetal:PrenatalhumanoculardegenerationoccursinLeber’scongenitalamaurosis(LCA2).JGeneMed4:390-396,200217)AclandGM,AguirreGD,RayJetal:Genetherapyrestoresvisioninacaninemodelofchildhoodblindness.