0910-1810/11/\100/頁/JCOPYめ,網膜は網膜各層を組織学レベルで確認することが可能となった(表1,図1).もちろん,この解像度の向上は,time-domain方式がspectral-domain方式に変わったことだけで達成できたものではない.測定精度の向上のためオートフォーカスやEye-Tracking機能はもちろんのこと,より精密な画像を提供するために,いくつかの画像を解析することによりノイズを減らすことが可能な加算平均処理機能や,以前の画像と比較をするために網膜血管の位置を照合させる高度な自動位置補正機能といった,現在のデジタルカメラで最も進化した領域でもある画像処理エンジンを搭載することで可能となった.I他社製品との比較現在,眼科臨床に使用可能なOCTは8社から発売されている.おもなものとして,カールツァイス社のCirrusHD,トプコン社の3DOCT-2000,ハイデルベルはじめに眼科診療における光干渉断層計(OCT)の使用は,1997年にHumphrey社(現CarlZeissMeditec社)からtime-domainOCTであるOCT2000が発売されてから始まった.当時は解像度10μm,スキャンスピード100A-scan/secではあったが,黄斑部の断層像が確認できたため黄斑円孔や黄斑浮腫の治療は一足飛びに進化した.しかし,緑内障診療に使用するためには精度の点で問題があった.5年後にスキャンスピードが400A-scan/secと約4倍になった後継機種であるStratusOCT3000が発売された.視神経乳頭の形状変化は確認できるが網膜各層を描出できる画像は得られず,緑内障診療に必要な精度には至っていなかった.現在使用されているspectral-domainOCTであるCirrusHD(HighDefinition)-OCTは解像度が約2倍となり,1秒間当たりの取得画像数は27,000枚と67倍に進歩した.このた(33)785*KazuhideKawase:岐阜大学医学部眼科学教室〔別刷請求先〕川瀬和秀:〒501-1194岐阜市柳戸1-1岐阜大学医学部眼科学教室特集●光干渉断層計(OCT)の緑内障への応用あたらしい眼科28(6):785.793,2011CirrusHD-OCTCirrusHD-OCT川瀬和秀*表1CirrusHD-OCTvs.StratusOCT3000(カールツァイス社資料)CirrusHD-OCTStratusOCT3000CirrusHD-OCTの利点光源(スーパールミネッセンスダイオード光:SLD)840nm(±50nm)広帯域820nm(±30nm)波長が広帯域のため高解像度方式スペクトラルドメイン(SD)タイムドメイン(TD)測定時間が迅速深度(軸方向)解像度5μm10μm網膜各層を解剖レベルで表現でき,極微細な病横断面(横方向)解像度10~20μm20μm巣,病態が描出可データポイント(横方向)4,096512網膜各組織を詳細に捉えることが可能深度2mm2mm波長が広帯域のため測定深度が多少深くなった1秒間当たりの取得画像数27,000400測定時間が迅速なため3D構築が可能786あたらしい眼科Vol.28,No.6,2011(34)条件から比べると,緑内障の診療に有利な条件であると考えられる.緑内障の診療に有用なソフトとして,網膜神経線維層厚の測定はどの機種も用意されており早期緑内障の診断や鑑別診断に活躍している.現在は,緑内障に関係するOCTの機能に関しては過渡期にあり搭載の有無が分かれているが,今後は同様な機能が搭載されてくると考えられる.ソフトの場合は機能そのものよりもグ社のHRA(HeidelbergRetinaAngiograph)-OCTSpectralis,オプトビュー社のRTVue-100,オプトポール社のOptopolSPOCT-HRの5機種について比較してみた(表2a,b).CirrusHD-OCTは,他社製品に比べて検査可能な最小瞳孔径が小さく解像度が高いことがわかる.トプコンの3D-OCTは画角が広く,カラー眼底写真が撮影可能であるなどの網膜疾患の診療に有利なCirrusHD-OCTOCT3000A-scan本数:4,096×5本27,000本/0.75秒67倍A-scan本数:512本400本/1.28秒図1CirrusHD-OCTvs.OCT3000表2aSD-OCTの比較(光学系・性能・機能)(カールツァイス社資料)CirrusHD-OCTRTVue-100Topcon3DOCT-2000HeidelbergSpectralisOCTOptopolSPOCT-HR画角36°×30°32°×23°45°30°×30°26°×21°最小瞳孔径2.53433眼底撮影LSOIRカラー眼底写真(FAG,ICG)CSLOIR軸方向解像度(μm)55673横断面解像度(μm)10.2015201412.18スキャン速度(A-scan/sec)27,00026,00027,00040,00052,000測定範囲(深度)(mm)22.2.321.82眼底屈折調整範囲.20~+20D.15~+12D.27~+18DNANAスキャン長(mm)とパターン3.9,62.12,128.2,4NA,64.10,6眼底像とOCT画像のregistration有無有有無硝子体・脈絡膜撮影有(2011夏導入)有有有無前眼部撮影オプションオプションオプションNANA(35)あたらしい眼科Vol.28,No.6,2011787どにより低下する1).②DeviationMap:1OCT像,2RNFLスキャン(直径3.46mm),3RNFL厚カラーマップ(50×50スーパーピクセル),4DeviationMapからなり,網膜神経線維層(RNFL)の障害を検出する.黄色が5%未満,赤色が1%未満を示す.緑内障の場合,視野異常と神経線維層欠損(NFLD)との一致を確認することが重要である.③DoubleHump:RNFLTSNITNormativeData(乳頭中心から1.73mmの円周).④定量的な網膜神経線維層厚:AverageThickness,Quadrants,ClockHoursが表示されている.正常では上下にpeak,耳側と鼻側ではtroughを認める.緑色は正常範囲,黄色は5%未満,赤色は1%未満を示す.正常では上下のピークに差がない(下方がやや厚い).緑内障では上下のピークに明らかな差があり,耳側にくぼみ(Dip).近視眼では上下のピークが耳側両外側に広がる.ピークが異常に大きい場合は,乳頭周囲の網膜.離,網膜浮腫などを疑う2,3).⑤網膜神経線維層厚:緑色は正常範囲,黄色は5%未満,赤色は1%未満を示す.AverageThicknessは視解析法や表現法により,見やすさや使いやすさに違いがでてくるため,今後どれだけ改良されていくかという点が重要である.現在,最新技術を駆使したSD-OCTの精密な画像と高い再現性より,視神経乳頭形状やGCC(ganglioncellcomplex:神経線維層+神経節細胞層+内網状層)の計測や経過観察により,測定値の変動が大きい自覚的検査である視野検査に代わり,測定値が安定し誤差が少ない他覚的検査によって緑内障性視神経障害の進行の指標が解析されるプログラムとして確立されることが重要なポイントとなる.IICirrusによる測定プログラム1.OpticDiscCube200×200視神経とその周辺を測定して解析するプログラムで,視神経乳頭を中心として6mm×6mm平方をスキャンする.①SignalStrength:検査の信頼性を示すデータであり,信号強度(10段階)のうち5以上を確認する必要がある(GPAでは6以上が対象).この数値は,測定の稚拙,角膜乾燥,角膜混濁,白内障,硝子体混濁,縮瞳な表2bSD-OCTの比較(解析プロトコル)(カールツァイス社資料)CirrusHD-OCTRTVue-100Topcon3DOCT-2000HeidelbergSpectralisOCTOptopolSPOCT-HR網膜厚測定解析網膜厚・体積解析カラーマップ解析有有有有有セグメンテーションマップ有有無無無網膜厚Cスキャン(横方向スライス)有有有無有網膜厚・体積経過観察プログラム有有有有無網膜厚年齢別正常データベース有有有無有網膜神経線維層厚測定解析有有有有有網膜神経線維層厚年齢別正常データベース有有有有有網膜神経線維層厚経過観察プログラム有有有無有視神経乳頭形状解析有有有無有網膜厚・網膜神経線維層厚3D構築有有有有(制限あり)有GCC(ganglioncellcomplex)有(2011夏導入)有有無無788あたらしい眼科Vol.28,No.6,2011(36)場合は黄.赤.白の順で表示される.④ETDRSグリッドは,ILM-RPE(internallimitingmembrane-retinalpigmentepithelium)thicknessを示し,減少している場合は黄色(5%未満)や赤色(1%未満)で表示される.増加している場合はピンク色(1%未満)で示される.Overlayは,None,OLM-RPE,OCTFundus,ETDRSpositionに変更可能である.ETDRSグリッドの直径は,1mm,3mm,6mmである.⑤LSO(laserscanningophthalmoscope)画像にてETDRSグリッドが,どの部位の網膜厚を表示しているかを確認できる.⑥断層像にて中心窩および傍中心窩の状態を確認する.⑦3D画像にて立体的なNFLDの観察が可能である.野障害のMDと有意な二次相関を示す.AverageThickness70.100μmではMDの悪化を認めないことが報告されている3).2.MaculaCube黄斑部を中心に6mm×6mmでスキャンし,黄斑を中心とした網膜厚を測定するプログラムである(図3).黄斑部のOCTデータは緑内障による中心視野障害と相関する.緑内障診療の場合は,視野障害の部位に対応する眼底像における青色の帯(NFLD)および黄斑周囲の網膜厚の障害程度をETDRS(EarlyTreatmentDiabeticRetinopathyStudy)グリッドで確認する(図4).①検査眼:MaculaCubeはOpticDiscCubeと異なり片眼ずつ表示される.②SignalStrength:検査の信頼性を示すデータ.③眼底像:中心窩は青色で表示され,黄斑部の網膜厚が正常.薄い場合は緑.青の順で薄く表示され,厚い①SignalStrength②DeviationMap③DoubleHump④網膜神経線維層厚⑤左右の神経リム厚図2OpticDiscCube200×200(37)あたらしい眼科Vol.28,No.6,2011789②SingalStrength①検査眼③眼底像④ETDRSグリッド⑤LSO画像⑥断層像⑦3D画像図3MaculaCubeHFA10-2MaculaCubeの測定範囲ETDRSグリッド:HFA10-2図4HFA10-2測定点と網膜厚測定点の対応790あたらしい眼科Vol.28,No.6,2011(38)ンを表示する.有意な菲薄化を認めた場合,1回目は黄色(possibleloss),2回目は赤色(likelyloss)で警告される.⑦RNFLSummary:RNFL厚カラーマップ,TSNIT(temporal-superior-nasal-inferior-temporal)グラフ,平均RNFL厚・上方RNFL厚・下方RNFL厚のいずれかが有意に進行がみられた場合,左側のチェックボックスに黄色,より進行が有意な場合赤のチェックが付く.2.MaculaChangeAnalysis2回のMaculaCubeの差を表示することにより,黄斑部の網膜厚の変化を検出するプログラムである(図6).①検査眼:片眼の表示である.②検査日:解析を希望する任意の2つの解析結果を選択する.③SignalStrength:MaculaChangeAnalysisのデータとして解析するためには6/10以上が必要.④Registration:ベースラインの中心窩を自動検索し,OCT像の中心に赤丸で表示し,2回の眼底血管走行からレジストレーションを行い,レジストレーションIIICirrusによる経過観察プログラム1.GPA(GuidedProgressionAnalysis)複数回のOpticDiscCube200×200の結果より,視神経周囲の網膜厚の経過を表示するプログラム(図5).①検査眼:OpticDiscCubeは両眼表示であるが,GPAは片眼表示となる.②SignalStrength:GPAのデータとして解析するためには6/10以上が必要.③Registration(Registered):眼底血管走行からレジストレーションにより位置補正を行う.④DeviationMap:視神経乳頭周囲の網膜厚の変化を表示する.有意な菲薄化を認めた場合,1回目は黄色(possibleloss),2回目は赤色(likelyloss)で警告される.⑤網膜厚の経過(全体,上,下):4回以上の測定結果では,回帰直線によるトレンド解析とポイントごとに表示されるイベント解析(3回目以降の結果がベースラインの変動を越えて変化した場合,1回目は黄色,2回目は赤色)が表示される.⑥DoubleHump:各測定時のDoubleHumpのライ①検査眼②SignalStrength③Registration④DeviationMap⑤網膜厚の経過⑥DoubleHump⑦RNFLSummary図5GPA(GuidedProgressionAnalysis)による表示あたらしい眼科Vol.28,No.6,2011791が成功するとRegistrationSuccessfulが表示される.⑤OCT像:解析部位と中心窩を表示.⑥網膜厚マップ:それぞれのETDRSグリッドの網膜厚を表示.⑦網膜厚差異マップ:2つの検査結果における同一部位の網膜厚の差異が±で表示,寒色系(薄),暖色系(厚)でカラーマッピングされる.IV新しい解析表示OpticDiscCubeは2010年8月よりver.5.0となり,画面が一新された.特に進化した部分はDeviationMapが乳頭境界および陥凹境界が自動的に判別してラインと色で表示されるようになったことと,HRTで表示されていた,視神経乳頭解析パラメータが表示されるようになったことである(図7).①視神経乳頭形状解析図では,3.46mmの紫線のRNFL厚測定サークル内と,Bruch膜〔網膜色素上皮層(RPE)の基底膜〕の終結点により特定された黒線の視神経乳頭の外縁と赤線の視神経乳頭陥凹境界線が表示され,年齢別正常データからの偏差値がDeviationMapとして黄と赤(黄色が5%未満,赤色が1%未満を示す)で表示されている.また,網膜神経線維層厚マップでは濃グレーで視神経乳頭リム,薄グレーで乳頭陥凹が表示される.②OCTBスキャン像では,Disc中心を通過する4.0mmの放射状スキャンと3.46mmのサークルスキャンにより得られた画像上に,黒線でRPE,赤線で網膜表面を表示する.さらに,放射状スキャン像には黒丸の視神経乳頭外縁と赤丸の乳頭陥凹境界線が表示される.下方には,LSOFundusとOCTFundusの重ね合わせ像が表示され,青線で放射状スキャンの方向が確認できる.なお,放射状スキャンの方向は任意に変更可能である.③直径3.45mmのサークルにおける4分割,12分割の平均RNFL厚を表示.緑色は正常範囲,黄色は5%未満,赤色は1%未満を示す.(39)②検査日①検査眼③SignalStrength④Registration⑤OCT像⑥網膜厚マップ⑦網膜厚差異マップ図6MaculaChangeAnalysisによる表示792あたらしい眼科Vol.28,No.6,2011④神経網膜リム厚とRNFL厚が両眼同時にミクロン単位で表示される.サンプリング位置は青線で示されており,任意の位置に変更可能である.⑤視神経乳頭形状サマリーパラメータは,AverageRNFLThickness,RNFLSymmetry(対称性),RimArea(濃グレー面積:mm2),DiscArea(mm2)(濃+薄グレー面積:mm2),AverageC/DRatio(薄/濃グレーの面積比),VerticalC/DRatio(薄/濃グレーの垂直の直径比),CupVolume(mm3)(薄グレー体積:mm3)が表示される.おわりに現在,緑内障診療に関係するOCTの機能に関しては,ハード面では緑内障性視神経障害や網膜障害における診断や経過観察を行うために問題ないレベルに達していると考えるが,機械光学の進化を考えると測定装置の変更によりさらに詳細な画像が得られることが予想される.さらなる高画質化により,GCCではなく網膜神経節細胞層や神経線維層自体の厚さや体積が測定できるようになるかもしれない.しかし,基本的な測定原理が変更されると,蓄積されたデータが使えなくなる可能性があるため,緑内障のような疾患の長期経過観察においては問題が生じる可能性がある.緑内障診療におけるOCTのソフトは現在過渡期にあると考える.この点においても画像処理機能の急速な進化によりさらなる変化が期待される.ソフトの場合はハードと異なりバージョンアップで対応でき,一般的に過去のデータをそのまま使用可能であるため緑内障診療においては有用である.また,視神経や網膜の解析結果と視野検査との連携も緑内障診療にとっては興味深く,臨床においてきわめて有用であることが予想される.この点において,Cirrusは同様にCarlZeiss社から販売されているHumphrey自動視野計との連携が期待される.文献1)SaviniG,ZaniniM,BarboniP:InfluenceofpupilsizeandcataractonretinalnervefiberlayerthicknessmeasurementsbyStratusOCT.JGlaucoma15:336-340,2006(40)⑤視神経乳頭形状視神経乳頭解析サマリーパラメータONHRNFL神経網膜リム厚RNFL厚図7OpticDiscCube(ver5.0)による視神経解析ONH:視神経乳頭解析図,RNFL:網膜神経線維層厚マップ.①乳頭およびカップ境界を伴ったOCTFundus像とDiviationMap①RNFL厚カラーマップとディスク,リム,カップ形状表示②放射状に抽出された4mm長のOCTスキャン画像とOCTFundus重ね合わせ像②直径3.45mmのサークルに沿ったRNFLスキャン画像④神経網膜リム厚とサークル円周上のRNFL厚③直径3.45mmのサークルの4分割,12分割の平均RNFL厚あたらしい眼科Vol.28,No.6,20117932)SungKR,KimDY,ParkSBetal:ComparisonofretinalnervefiberlayerthicknessmeasuredbyCirrusHDandStratusopticalcoherencetomography.Ophthalmology116:1264-1270,20093)LeungCK,CheungCY,WeinrebRNetal:Retinalnervefiberlayerimagingwithspectral-domainopticalcoherencetomography:avariabilityanddiagnosticperformancestudy.Ophthalmology116:1257-1263,2009(41)