0910-1810/11/\100/頁/JCOPYにはすでに約50%のRGCが喪失していることが示されている1).RGCの約50%が黄斑に存在し,黄斑部の神経節細胞の細胞体と軸索からなるGCLやRNFLの計測が注目されてきたがOCT3000の時代は黄斑の網膜全層厚を自動計測するのが限界であった.スペクトラルドメインOCTになり,黄斑のRNFL,GCL,内網状層(innerplexiformlayer:IPL)の3層を合わせた複合体(ganglioncellcomplex:GCC)の自動計測が可能になった2.4).GCLはその部位のRGCの局所的な喪失をそのまま反映するが,RNFLは喪失部位と健常部位の軸索が合流するため,RGCの局所的な喪失がそのまま反映されない.このようにGCLとRNFLは形態および緑内障性障害の性質が異なるため,GCLとRNFLをそれぞれ明瞭に可視化し,計測することが期待されていた.SpectralisTMにより50枚以上Bスキャンの加算平均を行うと黄斑部のRNFLとGCLの境界が明瞭になる(図1).この方法を用い,筆者らは視野に異常が検出される前から局所的にGCLとRNFLに急峻な菲薄化が生じていることを見いだした.GCL厚は上下に高い対称性を示し,視神経乳頭において明らかな緑内障性変化を認めるが,視野には異常がまだ検出されていない症例:preperimetricglaucoma(PPG)群でGCLは83.8%の症例で局所に急峻な菲薄化を認め,8.1%でびまん性の菲薄化を認めた.GCLの菲薄化は下側の黄斑周辺部(中心窩より1.5.3.0mm部位)において最も顕著であり,この部位でGCL厚が正常の70%以下の症例は81.1%,正常の50%以下はじめに近年光干渉断層計(OCT)の進歩はめざましく,タイムドメインOCTからスペクトラルドメインOCTへと進化し,さらにスペックルノイズの除去(スペックルノイズ低減画像)により網膜各層の構造の境界が明瞭で高精細な画像の取得が可能となり,これまでのOCTでは困難であった緑内障の網膜層構造の早期変化の詳細が明らかになってきた.スペックルノイズとは光が干渉しあうことによって生じる画像のノイズのことで,従来のOCTではこのノイズの影響で画質が不鮮明であった.SpectralisTMHRA+OCT(HeidelbergEngineering社)の特長として眼球運動追尾機能(eyetracking)があり,これにより生理的・病的眼球運動の存在下でも効果的なスペックルノイズ除去と正確なフォローアップ機能を可能にしている.最高100枚の加算平均が可能であり,現在当科緑内障外来では通常50枚のBスキャン加算平均を採用している.I黄斑部解析スペックルノイズ除去により神経節細胞の細胞体と軸索がなす神経節細胞層(ganglioncelllayer:GCL)と網膜神経線維層(retinalnervefiberlayer:RNFL)の各単層が明瞭に観察できるようになった.緑内障は網膜神経節細胞(retinalganglioncell:RGC)が選択的に喪失する疾患と特徴づけられる.緑内障眼の組織学的検討により,視野異常が検出されるとき(25)777*TadamichiAkagi,MasayukiNukada&NorikoNakano:京都大学大学院医学研究科感覚運動系外科学講座眼科学〔別刷請求先〕赤木忠道:〒606-8507京都市左京区聖護院川原町54京都大学大学院医学研究科感覚運動系外科学講座眼科学特集●光干渉断層計(OCT)の緑内障への応用あたらしい眼科28(6):777.783,2011SpectralisHRA+OCTSpectralisHRA+OCT赤木忠道*額田正之*中野紀子*778あたらしい眼科Vol.28,No.6,2011(26)ADBCERNFLGCLIPL図1SpectralisTMHRA+OCTで撮影した正常眼の黄斑垂直水平断層像A:眼底写真.B:黄斑水平断層像.C:黄斑垂直断層像.D:Infrared画像.E:Cの拡大図.ABCDEFG図2Preperimetricglaucomaの黄斑垂直断層像の観察A:眼底写真.B:Redfree眼底写真.C:Humphrey24-2SITAstandardのpatterndeviationmap.D:HRTIIのMoorfieldsregressionanalysis.E,F:黄斑垂直断層像(E:Infrared画像.F:OCTB-scan画像).G:Fの拡大図.下方の傍中心窩の神経節細胞層(GCL)の局所の菲薄化(赤矢印)および上下方の黄斑周辺部にGCLおよびRNFLの局所の菲薄化(黒矢印)を認める.(27)あたらしい眼科Vol.28,No.6,2011779のRNFL,GCLに加えて乳頭周囲網膜神経線維(cpRNFL)のパラメータを併用しての診断が有用であると考えられる.日本人では強度近視の緑内障が多く,20.30歳代の若年発症の緑内障患者も散見されるが,強度近視患者の視神経乳頭は変形が強く初期の緑内障性視神経障害の評価は非常にむずかしい.後部ぶどう腫が強い症例を除くの症例は35.1%であった.RNFLの菲薄化は,GCLの菲薄化部位と一致していたがより軽度であり,IPL厚の菲薄化はほとんど認められなかった.RNFL+GCL+IPL(=GCC)ではGCLと同じく,黄斑周辺部の下側で最も菲薄化が著明であったが,正常の50%以下に菲薄化している症例はなかった(図2).黄斑部での緑内障検出の限界として鼻側の異常は検出できないため,黄斑部ABCDEFGHI図3早期緑内障眼のcpRNFL解析A:眼底写真.B:Redfree眼底写真.C:Humphrey24-2SITAstandardのグレースケール.D:HRTIIのMoorfieldsregressionanalysis.E,F:黄斑垂直断層像(E:Infrared画像,F:OCTB-scan画像).G,H:cpRNFL断層像(G:Infrared画像,H:OCTB-scan画像).I:cpRNFLthicknessmap.耳上側が内部正常値の1%以下になる異常(赤)として検出されている.780あたらしい眼科Vol.28,No.6,2011(28)図4菲薄化のみの網膜神経線維層欠損(NFLD)を有する緑内障眼のOCT各機種での比較A:Infrared画像.B,E:SpectralisTMcpRNFLのスペックルノイズ低減画像.C,F:RTVue-100cpRNFLのシングルスキャン画像.D,G:StratusTMOCTcpRNFLシングルスキャン画像.赤破線枠はNFLDに相当する部分.E.G:B.Dの自動セグメンテーション後の画像.B2.G2:それぞれの赤破線枠の拡大画像.(文献8より)BA図5網膜神経線維層欠損(NFLD)のある症例のスペックルノイズ低減cpRNFL画像A:RNFLが菲薄化しているだけで残存している7症例.B:RNFLがほぼ完全に消失している7症例.赤破線枠はNFLD部位で,右側はその拡大画像.(文献8より)(29)あたらしい眼科Vol.28,No.6,2011781意に向上していることも明らかになった.つまり既報にある従来のStratusTMOCTがNFLDの検出率が低いとされていたのは,菲薄化のみのNFLDが検出できていなかったからであり,スペックルノイズを除去したOCTを用いることによってその検出率は向上する.cpRNFL解析においても加算平均によるスペックルノイズ除去がその診断精度を上げるのに重要であり,その点でSpectralisTMは有利である.III視神経乳頭深部構造解析以前から緑内障性視神経症の発症部位は篩状板であると考えられているが,従来のOCTでは乳頭周囲の強膜や篩状板の形状を十分に描出することが困難であった.撮影中にOCTを被験者に近接させ上下反転画像を取得し加算平均することで,脈絡膜側が高コントラストとなった画像を取得するenhanceddepthimaging(EDI法)9)を用いることで脈絡膜外縁の描出が可能となり,近視眼での脈絡膜菲薄化や中心性漿液性網脈絡膜症での脈絡膜肥厚が報告されている.EDI法により視神経乳頭を撮影することで篩状板や視神経乳頭周囲の強膜内側の描出が可能となる(図6).図7は強度近視症例であるが,黄矢印の高輝度部分に篩状板が描出されている.篩状板内の線状の低輝度部分は篩状板孔と考えられる.また,赤矢印はくも膜下腔が描出されているものと思われ,従来のOCTでは見られなかった深部構造が可視化できるようになった.ただし,視神経乳頭鼻側は血管によるブロックや組織の傾斜のために深部構造が明瞭に描出できないことも多く,現時点での限界である.強度近視眼において図7A-3の耳側強膜にみられるように視神経乳頭深部の変形が著しいことがわかってきており,近視が緑内障リスクファクターの一つであることとの関連性や近視性視神経症と近視眼の緑内障との鑑別の一助となる可能性があるが,これは今後の研究結果に期待されるところである.おわりに高精細なOCT画像取得のためには加算平均は不可欠であり,そのためには高速撮影が必要である.現行のSpectralisによる高精細画像によりGCLの可視化,と強度近視眼でも黄斑部の対称性は保たれていることが多いので,黄斑部のRNFL,GCLの形態変化から強度近視眼緑内障の早期発見が可能になることが期待される.II乳頭周囲網膜神経線維(cpRNFL)解析OCTにより視神経乳頭周囲をサークルスキャンし網膜神経線維層厚を測定するcpRNFL解析は緑内障診断に有用である.図3は早期緑内障眼での結果で,網膜神経線維層欠損(NFLD)の存在する上耳側のcpRNFLの菲薄化を認めている.従来のStratusTMOCTでは,NFLDの形態変化を直接観察することは困難であり,幅の狭いNFLDの検出力は低いことが報告されていた5.7).当科にてNFLDを有する症例に対して,スペックルノイズを除去したSpectralisTM,スペクトラルドメインOCTのシングルスキャン画像であるRTVue-100TM,タイムドメインOCTであるStratusTMOCTのシングルスキャンの3種類を用いて同一症例のcpRNFLを撮影した結果が図4である8).他のOCT2機種と比較してSpectralisTMの画像は網膜層構造が鮮明であり,RNFLのセグメンテーション(網膜の層の線引き)も他のOCTが不正確なのに対し,SpectralisTMでは正確であるのがわかる.図5はさまざまなNFLDを有した緑内障症例におけるSpectralisTMのNFLD断層像である.NFLDといっても,たとえば上段Aの症例のように,OCT上では一見するとRNFLが正常のように見える症例や,RNFLが菲薄化しているだけでRNFLが残存している症例,下段Bの症例群のようにRNFLがほぼ完全に消失している症例など,いろいろなNFLD断層像がある.その内訳は,緑内障がより早期で幅が狭いものほど菲薄化のみのNFLDが増加し,緑内障がより進行していて幅が広いものほど完全欠損を含むNFLDが増加する8).完全欠損を含むNFLDにおいては,従来のStratusTMOCTでもNFLDの検出率は高く他のOCTと比較しても検出率は変わらないのに対し,菲薄化のみのNFLDはStratusTMOCT,RTVue-100が検出率が低く,SpectralisTMでの検出率はその他のOCTと比較して有782あたらしい眼科Vol.28,No.6,2011(30)ABCDE図6正常眼の視神経乳頭の通常OCTとEDIの比較A:眼底写真.B:Redfree眼底写真.C:通常のOCT画像.網膜および硝子体は綺麗に描出されているが,深部構造は部分的に不鮮明である.D:EDI画像.篩状板前面,強膜内側境界が比較的明瞭に描出されている.E:Dの線引き後画像.青:ILM,赤:RPE/BM,緑:強膜内側境界,橙:篩状板とそれにつながる強膜境界.矢印の高輝度部位が篩状板である.Aー1Aー2Aー3Bー1Bー2Bー3図7強度近視眼の視神経乳頭EDI画像A:眼軸長28.0mm.B:眼軸長29.0mm.A.1,B.1:眼底写真.A.2,B.2:Redfree眼底写真.A.3,B.3:EDI画像.黄矢印の高輝度部位が篩状板で,篩状板孔の走行も見える.赤矢印はくも膜下腔と考えられるスペース.あたらしい眼科Vol.28,No.6,2011783cpRNFL解析の精度向上,視神経乳頭深部構造解析など今までになかった情報が手に入るようになってきた.しかしながら,SpectralisTMは高速であるが50枚の加算平均を行うのに最短でも1.92秒を要するため,現行では高精細画像を三次元撮影することは不可能である.今後さらに高速あるいは長波長のOCTが出現してくれば,臨床的に利用できる情報がますます増えていくことが考えられる.ハードの進歩,ソフトの開発に加え,それら多くの情報を臨床に有用な情報として利用する側の情報収集もさらに重要となるだろう.文献1)QuigleyHA,DunkelbergerGR,GreenWR:Retinalganglioncellatrophycorrelatedwithautomatedperimetryinhumaneyeswithglaucoma.AmJOphthalmol107:453-464,19892)IshikawaH,SteinDM,WollsteinGetal:Macularsegmentationwithopticalcoherencetomography.InvestOphthalmolVisSci46:2012-2017,20053)TanO,LiG,LuATetal:Mappingofmacularsubstructureswithopticalcoherencetomographyforglaucomadiagnosis.Ophthalmology115:949-956,20084)TanO,ChopraV,LuATetal:DetectionofmacularganglioncelllossinglaucomabyFourier-domainopticalcoherencetomography.Ophthalmology116:2305-2314,20095)JeoungJW,ParkKH,KimTWetal:Diagnosticabilityofopticalcoherencetomographywithanormativedatabasetodetectlocalizedretinalnervefiberlayerdefects.Ophthalmology112:2157-2163,20056)KimTW,ParkUC,ParkKHetal:AbilityofStratusOCTtoidentifylocalizedretinalnervefiberlayerdefectsinpatientswithnormalstandardautomatedperimetryresults.InvestOphthalmolVisSci48:1635-1641,20077)JeoungJW,ParkKH:ComparisonofCirrusOCTandStratusOCTontheabilitytodetectlocalizedretinalnervefiberlayerdefectsinpreperimetricglaucoma.InvestOphthalmolVisSci51:938-945,20108)NukadaM,HangaiM,MoriSetal:DetectionoflocalizedretinalnervefiberlayerdefectsinglaucomausingEnhancedSpectral-DomainOpticalCoherenceTomography.Ophthalmology,inpress9)SpaideRF,KoizumiH,PozzoniMC:Enhanceddepthimagingspectral-domainopticalcoherencetomography.AmJOphthalmol146:496-500,2008(31)