0910-1810/11/\100/頁/JCOPYDysfunction”という報告書としてInvestigativeOphthalmologyandVisualScience誌に記載された.その報告書より定義,分類,MGDの疫学,診断,治療についていくつかの重要な点を以下に述べる.IIMGDの定義わが国のMGDの新定義では腺組織の慢性的な障害と不快感や乾燥感といった自覚症状の有無が重視されているようで,定義は以下のようになっている.“MGDとはさまざまな原因によってマイボーム腺の機能が瀰漫性に異常をきたした状態であり,慢性の眼不快感を伴う”2)一方,国際ワークショップの新定義は以下のとおりである.“Meibomianglanddysfunction(MGD)isachronic,diffuseabnormalityofthemeibomianglands,commonlycharacterizedbyterminalductobstructionand/orqualitative/quantitativechangesintheglandularsecretion.Itmayresultinalterationofthetearfilm,symptomsofeyeirritation,clinicallyapparentinflammation,andocularsurfacedisease.”3)マイボーム腺機能不全について腺組織の慢性でかつ広範囲の異常が存在し,腺分泌物の量的・質的異常も指摘され,これらに伴って自覚症状が生じることが強調されている.I国際マイボーム腺機能不全ワークショップの背景マイボーム腺機能不全(meibomianglanddysfunction:MGD)は日常診療でよく経験される疾患であるにもかかわらずその定義,分類および診断基準はいまだに決まっていなかった.この背景のもとにMGDの定義や診断基準を作成しようという動きが国内・海外に生まれ,2008年11月よりTearFilmOcularSurfaceSociety(TFOS)のもとにMGDワークショップstudygroup(世話人代表:KellyNichols)が構成された.国際MGDワークショップの目的は以下のとおりである1).・正常人およびMGD症例のマイボーム腺の構造および機能を根拠に基づいた形で評価する.・MGDの新定義ならびに分類を作成する.・MGDの診断におけるさまざまな方法を評価する.・MGDの適切な治療法を推奨する.・MGDにおける適切な臨床治験のやり方について指摘する.・MGDにおいて今後必要とされる研究課題を指摘する.MGDワークショップstudygroupの理事会員ならびにstudygroupの先生方は2010年秋までに数回にわたる国際会議を行い,2011年の3月にその結果が“TheReportoftheTFOSWorkshoponMeibomianGland(3)1063*DooruMurato:慶應義塾大学医学部眼表面眼光学講座〔別刷請求先〕村戸ドール:〒160-8582東京都新宿区信濃町35慶應義塾大学医学部眼表面眼光学講座特集●マイボーム腺研究,臨床の最前線あたらしい眼科28(8):1063?1066,2011世界におけるマイボーム腺機能不全の考え方:TearFilmOcularSurfaceStudyの概略CurrentInternationalConceptsinMeibomianGlandDysfunction:SummaryofTearFilmOcularSurfaceSocietyMGDWorkshop村戸ドール*1064あたらしい眼科Vol.28,No.8,2011(4)のstudyを比較することが困難である.MGD発症頻度が報告されている世界のさまざまなドライアイ疫学調査の結果をみるとMGDの発症頻度が3.5~69.3%であり,その頻度がアジア人種に多いとされている(表1)5).世界的に応用できるMGD診断基準のもとで施行される疫学調査が各国で行われるのであれば人種による違いの比較も可能となりうる.MGDの発症とさまざまな眼疾患および全身疾患が発症のリスクファクターであることがMGDワークショップstudygroupの報告書で指摘されている(表2,3)5).そのなかで加齢とMGDの相関が強いと報告されてきているが,いまだに同じpopulationを対象とし長期にわたるMGDの発症過程を経時的に検討する調査がみられない.また,眼瞼中のマイボーム腺はどの程度消失すれば自覚症状や眼表面上皮障害が生じるかについても不明な点が多く,さらなる検討が必要であると思われる5).IIIMGDの分類MGDワークショップstudygroupの報告書のMGDの分類ではMGDは大きく圧縮物低下型と増加型の2つのグループに分かれる.圧縮物低下型はまた分泌減少性のものと閉塞性のものとしてさらに2つのグループに分かれており,分泌減少性のものは一次性のものと二次性のものがあるとされている.閉塞性MGDは瘢痕に伴う疾患と伴わない疾患の2つのグループにさらに分かれており,それぞれまた一次性のものと二次性のものがあるとされている.分泌増加型のMGDの代表的な疾患として脂漏性皮膚炎とacnerosaceaがあげられている(図1)4).IVMGDの疫学マイボーム腺機能不全についての大規模の疫学調査は少なく,ドライアイにおける疫学調査のなかで異なるパラメータでMGDの発症率が評価されてきており,各々図1マイボーム腺機能不全の分類マイボーム腺機能不全圧縮物低下型圧縮物増加型分泌減少性閉塞性分泌増加型一次性二次性瘢痕性非瘢痕性例:薬剤性一次性二次性一次性二次性一次性二次性例:トラコーマ眼類天疱瘡アトピー性皮膚炎脂漏性皮膚炎ロザシェア尋常性乾癬脂漏性皮膚炎ロザシェア涙液の質的変化眼不快感臨床症状に伴う眼表面炎症ドライアイを伴う眼表面障害表1MGD発症頻度が報告されているドライアイ疫学調査のサマリー調査名対象者数(名)MGDの指標頻度年齢(歳)著者バンコクstudy550眼瞼縁の新生血管46.2%>40LekhanontらBeijingstudy1,957眼瞼縁の新生血管69.3%>40Jieら千葉study113腺房消失,圧縮物61.9%>60内野らShihpaistudy1,361眼瞼縁の新生血管60.8%>65LinらMelbournestudy926涙液層破壊時間の短縮8.6~19.9%>40~97McCarthyらSalisburystudy2,482腺口のプラッギング3.5%>65Scheinら(5)あたらしい眼科Vol.28,No.8,20111065VMGDの診断わが国のマイボーム腺機能不全ワーキンググループが報告した分泌減少型MGDの診断に必要な項目は大きく分けて3つあり,1.自覚症状,2.マイボーム腺開口部周囲異常所見,3.マイボーム腺開口部閉塞所見である.これら3つの項目が満たされる場合に分泌減少型MGDと診断する.一方,国際ワークショップの報告書ではこのような診断基準が設けられておらず,MGDの診断においてファーストステップとしてドライアイと正常の涙液機能を鑑別することが勧められている.ドライアイと診断できればつぎのステップとして水分不足型ドライアイなのか蒸発更新型ドライアイかはさらに鑑別するよう検査を勧めることが推奨されている.MGDに伴うドライアイの診断において一般施設の眼科外来で施行可能な検査を行うのが望ましく,ドライアイ専門外来においてはいくつかの特殊検査の施行が望ましいとされている(表4)6).VIMGDの治療国際MGDワークショップの報告書ではMGDの重症度分類(表5)に基づいた段階的な治療ストラテジー(表6)が勧められている.自覚症状を伴わないMGDでは表2MGDと相関があると推測される眼疾患?無虹彩症?慢性眼瞼炎?コンタクトレンズ装用?デモデックスによる眼瞼炎?Tatoo?巨大乳頭型結膜炎?Salzmannの角膜変性症?トラコーマ?魚鱗癬(ichthyosis)表3MGDと相関があると推測される全身疾患?加齢?アンドロゲン欠乏症?アトピー性皮膚炎?前立腺肥大症?眼類天疱瘡?円盤状ルプス?Ectodermaldysplasia症候群?骨髄移植?高血圧?閉経?Parkinson病?尋常性乾癬?Rosacea?Sjogren症候群?Stevens-Johnson症候群?中毒性表皮壊死症?Turner症候群?薬剤性:isotretinoin,抗アンドロゲン薬剤,抗うつ薬,抗ヒスタミン薬,前立腺肥大症に使用されるaブロッカー,閉経後のエストロゲン治療など表4MGDの診断において一般眼科外来およびドライアイ専門外来で行うべき検査検査カテゴリー検査一般眼科外来で行うべき検査ドライアイ専門外来で行うべき検査自覚症状問診票Schein,DEQ,OSDIなどSchein,DEQ,OSDIなど所見マイボーム腺機能不全眼瞼の形態マイボーム腺消失の評価分泌物の評価スリットランプ検査スリットランプ検査スリットランプ検査スリットランプ検査スリットランプ検査/マイボグラフィースリットランプ検査眼瞼脂質貯留の評価─マイボメトリー涙液油層厚インテルフェロメトリーインテルフェロメトリー涙液油層進展時間─ビデオインテルフェロメトリー涙液蒸発の検査浸透圧浸透圧検査浸透圧検査涙液の安定性涙液層破壊時間涙液層破壊時間涙液層破壊時間涙液分泌量Schirmer試験Schirmer試験Schirmer試験/フルオロフォトメトリー貯留量スリイトによるTMHメニスコメトリー涙液排出率涙液排出率検査TFITFI眼表面炎症の評価生体染色/ELISA生体染色ELISAやフローサイトメトリーによる涙液中のサイトカインの定量DEQ:Dryeyequestionnaire,OSDI:Ocularsurfacediseaseindex,TMH:tearmeniscusheight,TFI:tearfunctionindex,ELISA:enzymelinkedimmunosorbentassay.1066あたらしい眼科Vol.28,No.8,2011(6)も指摘されている7).文献1)NicholsK:Theinternationalworkshoponmeibomianglanddysfunction:Introduction.InvestOphthalmolVisSci52:1917-1921,20112)天野史郎,マイボーム腺機能不全ワーキンググループ:マイボーム腺機能不全の定義と診断基準.あたらしい眼科27:627-631,20103)NicholsKK,FoulksNG,BronAJetal:Theinternationalworkshoponmeibomianglanddysfunction:executivesummary.InvestOphthalmolVisSci52:1922-1929,20114)NelsonDJ,ShimazakiJ,Benitez-del-CastilloJMetal:Theinternationalworkshoponmeibomianglanddysfunction:reportofthedefinitionandclassificationsubcommittee.InvestOphthalmolVisSci52:1930-1937,20115)SchaumbergDA,NicholsJJ,PapasEBetal:Theinternationalworkshoponmeibomianglanddysfunction:reportofthesubcommitteeontheepidemiologyof,andassociatedriskfactorsfor,MGD.InvestOphthalmolVisSci52:1994-2005,20116)TomlinsonA,BronAJ,KorbDRetal:Theinternationalworkshoponmeibomianglanddysfunction:reportofthediagnosissubcommittee.InvestOphthalmolVisSci52:2006-2049,20117)GeerlingG,TauberJ,BaudouinCetal:Theinternationalworkshoponmeibomianglanddysfunction:reportofthesubcommitteeonmanagementandtreatmentofmeibomianglanddysfunction.InvestOphthalmolVisSci52:2050-2064,2011患者教育の重要さが指摘されており,角膜上皮障害を有せずMGD機能不全の臨床所見(腺組織の消失,分泌物の変化など)を認めるものでは最初にlidhygieneおよび温熱療法が望ましいとされている.自覚症状,MGDの臨床所見,角膜上皮障害を認める軽度のものでは上記の対応に加え,人工涙液点眼やテトラサイクリン内服使用の検討も必要であると報告されている.これらより重症のものでは抗炎症剤の内服を治療に加えたほうが良いとされている.重症度のグレードと関係なくどんなグレードでも角結膜の角化,フリクテン,睫毛乱生症,霰粒腫,デモデックスによる眼瞼炎などを認めた場合はプラスdiseaseとして扱い(表7),それぞれの所見にあった治療をその重症度グレードの適切な治療に加えることが推奨されている.ただし,現在MGDの治療法のなかで根拠に基づいたものが少なく,今後さまざまな治療法を大規模の前向きのstudyで比較検討することの必要性表6MGDステージにおける治療方針の提案ステージ治療法1患者教育,lidhygiene,温熱療法2上記+人工涙液点眼,抗生剤点眼,脂質点眼3上記+テトラサイクリンの内服,保湿眼軟膏4上記+抗炎症剤の追加表5MGDの重症度分類ステージMGDグレード自覚症状角膜上皮障害1MG分泌物の圧縮と質に微量の変化なしなし2MG分泌物の圧縮と質に軽度の変化微量~軽度なし3MG分泌物の圧縮と質に中程度の変化中程度軽度~中程度4MG分泌物の圧縮と質に重症度の変化重症重症(おもに角膜中央部)Plusdisease:角結膜の角化,フリクテン,睫毛乱生症,霰粒腫,デモデックスによる眼瞼炎を有する場合そのステージをプラスとする.表7プラスdiseaseにおける治療方針の提案1.眼表面に重症の炎症あり:弱いステロイド剤のパルス療法2.粘膜の角化あり:バンデージコンタクトレンズ装用3.フリクテンあり:ステロイド点眼4.睫毛乱生症:鑷子による脱毛,クライオセラピー5.霰粒腫:ステロイド注射,切除6.眼瞼炎:抗生剤/ステロイド点眼7.デモデックスによる眼瞼炎:Teatreeoilによる眼瞼のスクラブ