———————————————————————-Page10910-1810/10/\100/頁/JCOPYて5D以上(図2)2.裸眼視力の2段階以上低下3.近視もしくは乱視が2D以上増加IIケラテクタジアの頻度・発症時期まれな合併症であり,約1/2,500以下の頻度(0.04%)と見積もられている1).1998年にSeilerらが最初の報告を行い4),200以上の症例が報告されている.このうち95%はLASIKの術後であり,残り5%ほどがPRK(photorefractivekeratectomy)などサーフェイスアブレーションの術後であった3).LASIKの適応がサーフェイスアブレーションより狭い範囲に限定なされねばならないのは確かのようであるが,サーフェイスアブレーはじめにLaserinsitukeratomileusis(LASIK)と円錐角膜の関係は,二つの側面がある.LASIKをはじめとする,角膜を切除するエキシマレーザー角膜屈折矯正手術の適応決定において,円錐角膜を除外することは最も重要なポイントである.もう一つの面は,LASIK術後に発生するケラテクタジアとよばれる医原性とも思われる円錐角膜の進行があり,これはLASIK術後における最も深刻な合併症の一つである.本稿ではケラテクタジアについてまず解説し,その後現時点でLASIKの非適応となる「円錐角膜疑い」の鑑別方法について述べる.Iケラテクタジアの定義ここ数年Stultingらのグループが,多数例のケラテクタジア症例をレトロスペクティブに検討し,そのリスクファクターを絞り込み,いくつか報告しているのでその内容を踏まえて解説する13).ケラテクタジア(keratectasiaもしくはcornealecta-sia;角膜拡張症)は,エキシマレーザー角膜屈折矯正手術後に起こる,角膜の進行性急峻(steep)化と進行性菲薄化であり,その変化は下方角膜に起こることが多い(図1).ケラテクタジアの発症により,近視と乱視および不正乱視が起こることで裸眼視力は低下し,しばしば矯正視力の低下が起こる.Stultingらのグループでは,ケラテクタジアの定義を以下のごとくしている3).1.角膜形状解析で(下方の)急峻化が術直後に比較し(17)433Osamuiea6020841465特集●円錐角膜あたらしい眼科27(4):433438,2010LASIKと円錐角膜LaserInSituKeratomileusisandKeratoconus稗田牧*図1ケラテクタジアの角膜形状(トーメー社製TMSR)LASIK術後2年以上経過して,下方の突出が明らかになった.———————————————————————-Page2434あたらしい眼科Vol.27,No.4,2010(18)ジアの直接的な原因であると断言するにたる根拠を,われわれはいまだもっていないという意味である.さらに,このなかには「ケラテクタジアの発症は必ずしも,手術の適応における間違いを意味しない」とも述べてある.したがって,ケラテクタジア症例を診察するようなことがあっても,医療過誤の産物であると断言することには慎重であるべきかもしれない.IVケラテクタジアのリスクファクター1.Formfrustkeratoconusケラテクタジア発症の最も重要なリスクファクターは,手術前における角膜の形状異常である.Stultingらは,円錐角膜,ペルーシド角膜変性,そしてformfrustkeratoconus(フォームフラストケラトコーヌス,以下FFK,「円錐角膜疑い」の同義語)を角膜形状異常としている.FFKの定義は各論文で異なっているが,共通しているのはRabinowitzら6)が最初に提唱した角膜形状解析における診断基準で,中央のケラト値が47.2Dションでどこまで適応を広げられるかはまだ定まったラインはない.今回述べるリスクファクターも,あくまでLASIKを行う場合についてである.報告されているなかでは2001年以前に手術を受けた症例に頻度が多く,その後減少傾向となってはいる.これは,適応が2000年ごろから変化したこともあるが,まだ発症していないケラテクタジアも含まれている結果かもしれない.ケラテクタジアの平均発生期間は手術を受けてから15.3カ月で,術後3カ月以内の発症は25%にすぎず,術後1年以内も50%である.最長の発症期間は62カ月と5年以上してから発症した例もある3).IIIケラテクタジアの考え方2005年に米国屈折矯正術者らが作成したケラテクタジアに関するコンセンサスのletters5)において,「LASIKは必ずしもケラテクタジア発症の原因ではない」と記述してある.円錐角膜などの角膜形状異常はLASIK術後のみに起こるものではないので,LASIKがケラテクタ図2ケラテクタジア症例の術直後との差分マップ術後1カ月時点と術後2年を比較すると,中央部に6Dの急峻化が認められる.———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.27,No.4,2010435(19)あることは,論文中にも考察されており,最近の報告では以下のような形状分類を行っている3).1)正常/対称;円形,卵型,対称な蝶ネクタイパターンを含む2)疑い;下記の非対称パターンを含むa)非対称な蝶ネクタイパターンi)あらゆる方向で非対称が1.0D以下ii)軸がねじれていない(角膜屈折力の大きい二つの領域が,多くの場合のように直線上に位置せず,予想される直線から30°以上離れていることをねじれていると定義)b)下方の急峻化/軸のねじれi)下方の急峻化がなくて軸がねじれているii)下方の急峻化が1.0D以上であるが,I-Svalueが1.4D以下3)異常;円錐角膜,ペルーシド角膜変性,I-Svalueが1.4D以上のFFK3つに分類しているが,論文中のリスクスコアでは2)-a)の「非対称蝶ネクタイパターン」はあまり高いリスクをおかれず,2)-b)の「下方の急峻化/軸のねじれ」には高いリスクがあるとしている.米国ではinferiorsteepening(IS)もしくは,asymmetricbowtiewithskewedsteepradialaxes(AB/SRAX)は円錐角膜の初期兆候として認識されているようである5).以上,I-S(InferiorSuperior)value(角膜上方と下方もしくは中央の屈折力の差で大きいもの)が1.4D以上であって,臨床上明らかな円錐角膜でないものについてFFKとしている.臨床上明らかな円錐角膜とは,角膜の突出と菲薄化が明瞭であり,フライッシャー(Fleischer)リング(鉄色素の沈着)やフォークト(Vogt)線条(Descemet膜のしわ)などの所見がとれ,検影法を行うとハサミで切るような不正な光の反射がある場合である.また,円錐角膜をはじめとする非炎症性の角膜変形疾患は多くの場合,程度の差はあれ両眼性であり,片眼でも異常が診断されれば,両眼とも異常と判断しなければならない.2.角膜形状による評価方法円錐角膜,ペルーシド角膜変性を適応から除外するのは可能であるが,FFKを除外するには限界がある.そもそもFFKとは,角膜形状解析では円錐角膜と考えられるが,臨床上明らかな円錐角膜の特徴を有しない,グレーゾーンに位置する角膜形状の総称であって,特定の疾患概念ではない.しかもFFKの角膜形状における判定基準は統一されていないので,FFKの診断に迷う症例が必ず存在してしまうからである.上述した初期RabinowitzのFFK定義では不十分で図3TMSRの円錐角膜自動診断プログラムKlyce/MaedaのKCIは最も特異度が高い円錐角膜自動診断である.———————————————————————-Page4436あたらしい眼科Vol.27,No.4,2010(20)ある.5.残余角膜厚つぎに重要なリスクファクターとしては残余角膜厚(ベッド厚)があげられる.ベッド厚とは,術前の中央部角膜厚から,設定により決められる予想フラップ厚を差し引き,これから矯正に必要な切除深度を差し引いた残りの角膜厚である.2000年ころにLASIKのインストラクションコースを聴講したところ,それまでベッド厚は200μmで十分とされていたらしく,200の文字に×がつけられ,250μm残すようにと書き直されたスライドを見たことがある.そのころから急速に「ベッド厚は250μm残す」が世界標準化されていった.ベッド厚250μmの根拠は特にないようなものだが,2001年以降ケラテクタジアの発症が減っているということが,根拠の一つになるのかもしれない.フラップ厚には誤差があるため,予想外に分厚いフラップが作製されれば実際には250μm残せていない可能性が指摘されている.論文やletters中においても,フラップ作製後に,実際の角膜の厚みを術中パキメータ3.自動診断システムKlyceらが,複数の角膜形状指数から多変量判別解析で円錐角膜を自動的に診断する方法を報告している7,8).わが国では前田直之先生が作られたKlyce/MaedaのKeratoconusIndex(KCI)が,角膜形状解析装置TMSR(トーメー社製)シリーズに早くから導入され,多くの施設で使用されている(図3).KCIは円錐角膜診断の特異度が高いので,この自動診断で円錐角膜が少しでも疑われれば,筆者らの施設ではLASIKをはじめ角膜屈折矯正手術は行わないようにしている.CornealNavigatorはOPD-ScanR(ニデック社製)用に開発された,角膜形状の自動診断ソフトである.このソフトではNRM(Normal),AST(Astigmatic),KCS(KeratoconusSuspect),KC(Keratoconus),PMD(PellucidMarginalDegeneration),MRS(MyopicRefractiveSurgery),HRS(HyperopicRefractiveSur-gery),PKP(PenetratingKeratoplasty)とそれ以外の9つのカテゴリーに角膜形状を分類する.感度は非常に高く,わずかな形状異常も見逃さない.筆者らの施設ではKCSの可能性が少しでもあれば,LASIKは行わないようにしている(図4).4.角膜後面などによる評価角膜後面形状についてOrbscanR(ボシュロム社製)で角膜後面中央部のelevationが50μm以上をFFKの定義として含んでいる論文もある2)が,あまり重要なリスクと認識されていない.大鹿哲郎先生らが作られた,後面は20μmスケールで表示して,中心3mm以内のカラーコード3色以内が正常,4色は異常という判定基準(図5)もある9).クリアカットな判定方法で臨床的に有用であり,筆者らの施設では4色であれば,LASIKは行わないようにしている.PentacamR(Oculus社製)は角膜前面形状,後面形状とも角膜中央部を除外したbesttsphereと中央部を含んだbesttsphereによる形状の差で評価するという独自の方法を提唱している.この前面・後面評価に加えて,角膜頂点の厚み,最薄点の偏位,中央から周辺角膜への厚み分布,の5つの項目を考慮して正常・異常を判断するBelin-AmbrosioenhancedEctasiaDisplayが図4二デック社製OPDStaionRの角膜形状自動診断プログラム9つのカテゴリーに自動診断される,特にKCS(円錐角膜疑い)は感度が高い.———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.27,No.4,2010437(21)は,正常からFFKへの変化は比較的若年時に起こるということである.論文中のリスクスコアでは21歳以下であれば比較的高いリスクと認識されている3).7.リスクスコアエクタジアリスクファクタースコア(表1)3)にまとめられているように,他のリスクファクターとしては角膜厚と矯正量があげられている.角膜厚が薄い場合(510μm以下)にはリスクありと考えられ,矯正量も8D以上はリスクありと考えられている.だたし,角膜厚480μm以下や,矯正量も12D以上でなければ高いリスクとは考えられていない.これらのリスクスコアを累積することで,リスクを3段階にカテゴリー化し,総合的にLASIKの適応を決定するという方法はより合理的である(表2)3).しかし,角膜厚は米国と日本では平均が違い,平均的な近視の程度も異なり,何と言っても角膜形状解析の診で測定することが推奨されている13,5).また,論文中のリスクスコアではベッド厚300μm以下の場合にも,低いながらもリスクありとしている3).6.年齢術前に角膜形状や角膜厚,矯正量にリスクがない症例で,術後ケラテクタジアを起こした症例と,コントロール症例との差は年齢のみである.年齢が若ければケラテクタジアが起こるリスクがあるということである.現在の米国におけるFFKの判定基準や角膜後面の見方に問題はあるものの,FFKが正常と異常の境界に存在する疾患概念であるから,正常から少しずつ変化する時間の要素を考えに入れると,正常からFFKになる直前にはどう見ても正常な時期がありうる.つまり,FFKが顕在化する前の角膜であれば,術前リスクがなく,術後にケラテクタジアが起こってきてもおかしくはない.ケラテクタジア症例がより年齢が若いということ図5ボシュロム社製OrbscanRの角膜後面異常角膜後面の形状を評価する方法として,4色は簡便で有用である(赤枠).———————————————————————-Page6438あたらしい眼科Vol.27,No.4,2010(22)文献1)RandlemanJB,RussellB,WardMAetal:RiskfactorsandprognosisforcornealectasiaafterLASIK.Ophthal-mology110:267-275,20032)KleinSR,EpsteinRJ,RandlemanJBetal:Cornealectasiaafterlaserinsitukeratomileusisinpatientswithoutapparentpreoperativeriskfactors.Cornea25:388-403,20063)RandlemanJB,WoodwardM,LynnMJetal:Riskassess-mentforectasiaaftercornealrefractivesurgery.Ophthal-mology115:37-50,2008Epub2007Jul124)SeilerT,KoufalaK,RichterG:Iatrogenickeratectasiaafterlaserinsitukeratomileusis.JRefractSurg14:312-317,19985)BinderPS,LindstromRL,StultingRDetal:KeratoconusandcornealectasiaafterLASIK.JCataractRefractSurg31:2035-2038,20056)RabinowitzYS,McDonnellPJ:Computer-assistedcornealtopographyinkeratoconus.RefractCornealSurg5:400-408,19897)MaedaN,KlyceSD,SmolekMKetal:Automatedkerato-conusscreeningwithcornealtopographyanalysis.InvestOphthalmolVisSci35:2749-2757,19948)SmolekMK,KlyceSD:Currentkeratoconusdetectionmethodscomparedwithaneuralnetworkapproach.InvestOphthalmolVisSci38:2290-2299,19979)TanabeT,OshikaT,TomidokoroAetal:Standardizedcolor-codedscalesforanteriorandposteriorelevationmapsofscanningslitcornealtopography.Ophthalmology109:1298-1302,2002断基準が異なるので,この判定方法がわが国に完全に当てはまるとは限らない.Vケラテクタジアの予防は可能か?以前に発生したケラテクタジアの多くがFFKへの手術によりひき起こされているようである.したがって,ケラテクタジアのリスクファクターをよく理解し,慎重に適応を決定すれば,ほとんどの場合発症は防げていたかもしれない.つまり,よほど若年者を手術するのでなければ,ケラテクタジアが起こる角膜には術前に何らかのサインがあるはずなので,今回紹介したような検査を複数用いて適応を決定することにより,その発生を抑えることは可能ではないかと考えている.表1ケラテクタジアリスクファクタースコアシステムパラメータスコア43210角膜形状パターン異常下方の急峻化/軸のねじれ非対称蝶ネクタイ正常対称蝶ネクタイベッド厚<240μm240259μm260279μm280299μm300μm年齢1821歳2225歳2629歳30歳術前角膜厚<450μm451480μm481510μm510μm等価球面度数>14D>12D14D>10D12D>8D10D>8Dまたはそれ以下表2ケラテクタジアリスクファクタースコアのカテゴリー累積リスクスコアカテゴリー提案02低リスクLASIKもしくはPRK3中リスク注意しながら行う.格別なインフォームド・コンセント.PRKに関しては未定4またはそれ以上高リスクLASIKは行わない,PRKに関しては未定