———————————————————————-Page10910-1810/09/\100/頁/JCLSこの後側頂点屈折力の測定にはレンズメータを使用する.現在ではレンズ当てにレンズを置くだけで値が表示されるオートレンズメータの普及が著しいが,マニュアル式レンズメータにはオートレンズメータにない機能,たとえばレンズ表面のあらさや結像性能を実際に眼で直接確認できるので有用である.ただ,接眼鏡をのぞく望遠式の場合は,測定の際に測定者の眼の調節が影響しないように,測定前に接眼スリーブを一旦引き出してからレチクルにピントを合わせるという視度合わせを行うとともに,測定するときは常にマイナス度数からプラス度数側に一方向に測定ハンドルを回転させて,ターゲットのピント合わせを行うなどのノウハウを必要とし,多少手数がかかる.ところで,レンズの屈折力測定は実際に眼に作用する屈折力を測定することが原則であるが,そのためにはレンズの装用状態を再現して測定することが不可欠である.レンズメータのレンズ当てに載せたときにこの装用状態が再現できるのは,一般にはレンズの光学中心位置および枠入れのときの心取り点で測定したときだけに限られる(図1A).一般に光学中心で測定しなければならない理由はここにある.2.レンズ周辺部における屈折力測定眼鏡レンズが頭部に固定されているのに対して眼球は回旋することから,眼を振ったときの視線はレンズの周辺部を通過する.このときレンズの後側頂点にあった基はじめに出来上がった眼鏡の良し悪しは,装用する人自身の印象からなる「視界の見え」,「掛け心地」,「見栄え」などで判断される.近年の眼鏡レンズの製品動向といえば,まずこれらに対する改善が進められてきたことがあげられる.なかでも高屈折率プラスチック材料の普及や,ゆるいカーブの非球面レンズの普及によって,比較的強度の屈折度数までその表示度数を感じさせない薄く軽いレンズが供給可能となり,「掛け心地」,「見栄え」の改善に役立っている.また,フリーフォーム加工装置の普及により,累進面に代表される自由曲面が短時間に精度よく加工できるようになり,さらに最適化や個別設計などの手法の導入によって,個々の装用者に合わせて性能を向上させる新設計の累進屈折力レンズ(以下,累進レンズと略す)が提案されている.本稿では,広く一般的に使用されるようになった非球面レンズと累進レンズに絞り,特性と概要を述べる.I眼鏡レンズの光学特性―球面レンズと非球面レンズ1.眼鏡レンズの屈折力測定と収差眼鏡レンズの屈折力は,レンズの後側頂点から後側焦点までの距離f(メートル単位)の逆数1/fで求められる,いわゆる後側頂点屈折力で表すことになっている.単位は[m1],記号はD(ジオプトリー)を使用する.(3)727Fmiksiン1408601163ン特集●眼鏡ケーススタディあたらしい眼科26(6):727733,2009に役立つ眼鏡レンズの識SurveyofRecentSpectacleLensesforCorrection高橋文男*———————————————————————-Page2728あたらしい眼科Vol.26,No.6,2009(4)図2の表はこのm像面とs像面の差で表される非点収差の値である.この表から,球面設計のレンズはゆるいカーブのレンズほど非点収差が大きく,等価球面度数が強度側に変化することがわかる.また,ここでは図示していないが歪曲収差(ディストーション)もカーブがゆるいレンズほど大きくなる.一方,プラスレンズの場合は符号が逆になるだけで同様の傾向を示し,カーブのゆるいレンズほど非点収差が大きくなり,その等価球面度数の像面はプラス強度に傾くようになる.このように球面設計のレンズで非点収差を削減するにはレンズカーブをきつくしなければならないが,きついカーブのレンズは厚さが増して見栄えが劣ることから,準点の軌跡は,回旋点を中心にした半径25mmの球面となる(図1B).なお,この25mmは国内で慣用としている値で,海外では27mm前後の値を使用している.このような測定を実現するには,この基準球面にレンズ当てが接した状態で測定できるように,眼鏡レンズを空中に保持するための何らかの機構が必要であるが,一般には供給されていないためむずかしい.仮にそのような機構を組み込んだとして眼に作用する屈折力を測定するには,FOA方式のレンズメータが望ましい.このときの屈折度数F¢は基準球面から結像位置までの距離f¢の逆数1/f¢で求められる値となるが,レンズ周辺部を通る光線は一般に非点収差が発生しているため,次項3.で示すような像面度数で考えることになる.3.レンズカーブとレンズの性能図2は,sph6.00Dの球面設計のレンズでレンズカーブを3Dとびに変化させて,回旋角を変化させたとき,実際に眼に作用する屈折力をグラフにしたものである.非点収差が存在するため,ここではメリディオナル(m)像面とサジタル(s)像面の相加平均の値,すなわち等価球面度数をプロットしたものである.カーブのゆるいレンズほど等価球面度数が強めに傾斜してしまい,仮にこのsph6.00Dが処方度数ならレンズ周辺部で見たときは過矯正の度数レンズとして作用することになる.AB25mm図1眼鏡レンズの屈折力測定フィッティングポイントが光学中心または測定基準位置に一致する場合は,Aに示す測定でよいが,フィッティングポイントが測定基準位置と一致しない場合や,レンズ周辺部の屈折力を測定する場合には,Bに示す配置で実際に眼に作用する屈折度数を測定する.なお,台形の枠はレンズメータのレンズ当てを示す.00-8-7.5-7-6.5-6-5.5-5-4.5縦軸:眼球回旋角度(?)横軸:屈折度数(D)Es-3/-3Es-0/-6Es+3/-9Es+6/-12Es+9/-1510102020303040403/-90/-6-3/-39/-156/-126/-123/30/6+3/9+6/12+9/1540°4.321.820.500.200.5530°1.970.990.360.030.2620°0.760.430.180.010.1010°0.180.100.050.010.020°0.000.000.000.000.00図2球面設計レンズの等価球面度数(D)と非点収差(D)本例ではカーブの組み合わせ(前面カーブ/後面カーブ)のなかで,(+6/12)が最小の非点収差を示しているが,等価球面度数としては周辺部で弱度側に傾いてしまう.一方,(+3/9)の組み合わせは非点収差が増加するものの,等価球面度数は周辺部まで表示度数の6.00Dに最も近い値になる.———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.26,No.6,2009729(5)きてレンズの体積を小さくできる.強度レンズほど,またレンズ径が大きいほど効果が大きい(図3).一方,高屈折率プラスチック材料は,屈折率と比重の比例係数がガラス材料の1/6と小さいため,いっそうの軽量化が期待できる.②ゆるいカーブのレンズ面を非球面化すると,プラスレンズは中心厚を,マイナスレンズは縁厚を削減できる方向に働くことから,結果としてよりスリムな形状となり軽くすることができる.これら①と②を組み合わせるとその効果が増す.図4はこの効果を示したものである.③薄型軽量化には小さい眼鏡フレームを選ぶことが効果的である.現在流行している小さいフレーム化はこの意味で有効である.ただし,プラス度数のレンズでは眼鏡枠より大きなレンズ径を使用すると不要な厚さが残る.フレームに最適な口径のレンズを提供できればレンズの余分な厚さが削減できることになる.このために外径指定やフレームパターンの選択で特注することが可能になっている.ほかに,フレームの形状をオンラインで測定して玉刷り加工まで行う特注システムが稼動している.最適な厚さに仕上がるばかりでなく,左右のレンズのバランスをとるなどして,そのまま枠入れ可能な状態カーブをゆるくする方策が模索されてきた.カーブをゆるくしたときに発生する非点収差を非球面化で削減する方法が実用化されたことによって,きついカーブのレンズから解放された.4.非球面レンズの光学特性と検眼レンズ,処方プリズムゆるいレンズカーブのレンズ面を非球面にして非球面係数を変化させたとき,発生する非点収差は図2にきわめて類似している.性能を重視した非球面レンズとして,図2のたとえば(+6/12)のように非点収差を削減することができるが,レンズ周辺部における等価球面度数も同様に弱めになることから,眼には表示度数より弱めの屈折度数のレンズとして作用することになる.ゆるいカーブで作られた球面設計のレンズを長年装用してそれに慣れた人が,新しく掛け替えた非球面レンズに違和感を覚えることがある.それは光学特性に大きな差があるためで,装用し続けることでレンズに慣れると問題なく使うことができるようになる.一方,図2からわかるように,断面形状が両凸(3/3)や平凸(0/6)形状の検眼レンズの場合,表示度数通りの性能が保障されるのは,視線がレンズ光学中心を通るように正確に調整されているときに限られ,前傾角などの許容範囲は狭い.このことから非球面レンズの使用が想定される場合の屈折測定には,メニスカスタイプの検眼レンズの使用が望まれる.なお,非球面レンズの場合は,光学性能を重視するため処方プリズムは特注でプリズム加工を行い,球面設計レンズのように偏心処理では行わない.5.レンズの薄型化と軽量化掛けやすく見栄えが良い眼鏡にするには,眼鏡レンズを薄く軽くすることが効果的である.この目的のために,①高屈折率レンズ,②非球面レンズ,③小さい眼鏡フレーム,特注加工などを選択する方法がある.①高屈折率材料を使用すると,同じ曲率半径の屈折面でも面屈折力を大きくする効果がある.同じ屈折度数レンズでは曲率半径をゆるくできる分,レンズの厚さ(プラスレンズは中心厚,マイナスレンズは縁厚)が削減でSph-6D50f70fn=1.8n=1.550fSph+6D図3材料の屈折率とレンズ断面形状レンズ材料の屈折率を1.501.90まで,0.10刻みに変えたときsph±6.00Dのレンズ断面形状.sph6.00Dは前面,sph+6.00Dは後面の曲率半径が同一.レンズ径が大きいほど高屈折率材料を使用する効果は高い.———————————————————————-Page4730あたらしい眼科Vol.26,No.6,2009(6)計」であった.しかし,レンズ面の一部に大きな非点収差が発生するために使いにくく慣れにくい,使えるようになるにもかなりの時間,努力を要するものであった.その後,閉じ込めていた非点収差をレンズ面に薄くばらまくという「ソフトタイプの設計」によって,常用タイプに分類される累進レンズでも最大非点収差を,加入屈折力にほぼ等しい値まで削減させることができるようになって,慣れやすく使いやすいものとなり現在に至っている.とは言うものの,累進レンズを使いこなすにはある程度の慣れが必要である.初めての累進レンズの装用で加入度数が2.00Dを超えるような場合は,レンズの光学特性とともに年齢的な適応力の低下もあって慣れにくい傾向にある.また,累進レンズを使いたいという欲求が累進レンズを使い続けてそのハードルを越えさせる原動となって届くものである.II累進レンズの光学特性と種類1.設計および製造加工技術の進歩遠近の境目がない老視用の累進レンズは,見栄えが良いこともあって年頃の方の関心をひくレンズである.累進レンズの累進面は,レンズ面の中央下部に曲率半径が変化する領域を設けたレンズである.曲率半径の異なる球面の断面を上下につなぐと中心部ではつながっても周辺部では段差が生じる.しかも,この曲率半径を細かく分割して順につないで,それぞれの段差が小さくなっても滑らかな面につながることはない.累進レンズはこの段差を無理やりつないだものなので,結像に貢献する光学面にはできずに,非点収差が残る領域になる.この累進面を数学的に解析したMink-witz1)によれば,非点収差の発生量は,加入屈折力が加わる方向と垂直に,加入屈折力の勾配の2倍の勾配になるという(図5).この法則に従えば,非点収差を削減するには加入屈折力の勾配を小さくすることであるが,それには累進帯を長くしなければならない.眼球の回旋角にも限度があり,遠用部に対して見やすい位置で近用部を使おうとすると,累進帯の長さも自ずと決まってしまうために究極の解決策とはならない.しかし,この法則は遠中重視累進レンズや中近累進レンズ,近々累進レンズなどの新しい製品に生かされている.一方,初期の累進レンズは発生した非点収差をレンズ面の一部の狭い領域に閉じ込めて,できるだけ非点収差のない球面領域を広くするという「ハードタイプの設Sph+6D70(65)f4.48.65.75.715.2屈折率ne=1.74屈折率ne=1.50実線:非球面レンズ破線:球面レンズ16.6g19.4g20.1g(65f)/21.5g(70f)31.4g/26.2g10.18.68.6Sph-6D70f35035図4高屈折率材料使用と非球面化による薄型軽量化の効果Sph±6.00Dのレンズの断面形状を示す.1.50の球面レンズに比べると改善効果は大きい.2b≒a5Minkwitzの法則レンズ面に累進帯を設けることで,その子午線(YY)とは垂直方向(XX)に加入度数勾配bの2倍の非点収差aが発生する.———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.26,No.6,2009731(7)ためのフィッティング測定器なども開発されている.現在までに提案された新しい累進レンズを図6に示す.レンズは前面後面2面だけなので,考えられる組み合わせがほぼ出揃ったといえる.なお,累進レンズの遠用部のレンズカーブは,一般に上述した非球面レンズと同様に,ゆるいカーブが採用されている.この場合,原理的には非球面成分を加えて非点収差を削減している.3.二重表記累進レンズのカスタマイズや最適化などで光学性能を高めようとしたときに課題となるのが,レンズの屈折力測定である.高性能をうたうこれら累進レンズは,装用したときに視線が通過するところで処方度数になるようにレンズ面を設計する.一方,屈折力測定ではレンズメータのレンズ当てに載せるため,実際の視線と測定の光線とではレンズを透過する方向が異なり,測定した屈折度数が処方度数に一致しないという事態が発生する.これは,測定基準位置がレンズのフィッティングポイントに一致していないことに起因している.この解決のために,レンズ袋には処方度数のほかに従来からの測定方法でレンズを測定したときの値も併記している.このような表示を二重表記とよんでいる(図7).4.アライメント基準マーク累進レンズのレイアウトと枠入れ調整に使う基準マークには,ペイントで描かれた一時的マークとレンズ上に描かれた永久マークの2種類ある.永久マークには図8力となっているので,この欲求が低いと早々に使用を中止する可能性もある.若い世代であれば適応力も高く必要な加入度数も小さいので,難なくクリアできることになる.この若い時期から装用を目的としたものではないが,老視にはまだ早い30代で疲れ目を自覚する人向けに,最弱度加入屈折力の累進のレンズを単焦点レンズ感覚で装用してもらって,疲れ目を少しでも軽減しようとする製品が商品化されている.最弱度の加入屈折力なので,発生する非点収差はレンズ全面にわたり許容値を下まわっているため,装用当初からほとんど違和感なく装用できる.2.最適化,カスタマイズ化ガラス材料の時代に比べて,プラスチックレンズは母型を使った成型法が可能となり,累進面のような自由曲面の製造加工の難度がある程度改善されたが,それでもあらかじめ累進面を成型して半製品の形で在庫することが一般的であった.しかし,近年になって旋盤加工装置を原理とした高速で精度の高いフリーフォーム加工装置が普及したことで,特注のように納期が厳しいレンズであっても注文を受けてから累進面を加工して納入することが可能となった.このフリーフォーム加工装置と光学設計を組み合わせることで,最適化設計やカスタマイズとよばれるような,個々の装用者に特有な各種パラメータをできるだけ設計に取り込んで,掛けやすく性能の高いレンズを供給する動きが出て,一部ですでに製品化されている.その外面累進レンズ内面累進レンズ両面複合累進レンズ両面設計累進レンズ線で示した部分は累進面または累進要素をもった面を表す遠用部近用部縦方向累進要素横方向累進要素度数面を表す中間累進帯図6新累進レンズ従来,レンズ前面に累進面を,後面に乱視面という外面累進レンズが主流であったが,新しい高精度な加工装置の開発に成功して内面累進レンズが登場した.その後,自由曲面加工が短時間でできるフリーフォーム加工装置が普及したことから,両面複合累進レンズや両面設計累進レンズなどが製品化された.内面累進レンズの前面は球面もしくは非球面で後面は累進面と乱視面を合成した面になる.両面複合累進レンズは,前面が縦方向の累進要素で後面が横方向の累進要素と乱視面の合成となる.両面設計累進レンズは,前面が累進面で後面には累進要素を含んだ収差フィルター面と乱視面を合成した面となる.———————————————————————-Page6732あたらしい眼科Vol.26,No.6,2009(8)近用部に発生するプリズム屈折力が左右レンズで異なり上下プリズム差が生じる.左右眼の度数差が大きくなると上下プリズム屈折力差も大きくなり,近用部で長時間の両眼視がむずかしくなる.残念ながら,現状では累進レンズの近用部に発生する上下プリズム差をコントロールすることができないため,左右眼で度数差が大きい不同視眼に累進レンズは適していない.に示すように,34mm離れて描かれた2つの水平基準マークを基準にして,この中点が累進帯の子午線になる.ほかに,品種などの識別用のマークや加入度数などが記載されている.ペイントマークはフィッティングポイントのほか,各部の測定基準位置などが描かれている.累進帯の長さは遠用フィッティングポイントから近用参照円の上辺までの距離で,累進帯の長さに違いをもたせた製品の場合には,この図のように両方併せて表示する場合もある.このペイントマークは枠入れ後消去されるので,消えてしまった後でこれら位置を再現するには,図8のようなアライメントシールを使う.累進レンズを枠入れするときに芯取り点となり基準となるのは,フィッティングポイントである.遠用部が存在する累進レンズの場合は,これを遠用瞳孔間距離に一致させる.中近累進レンズや近々累進レンズのように遠用部が明確でない累進レンズ場合は,中間視距離でのフィッティングポイントか近用視でのフィッティングポイントが指示されているほかに,遠用のフィッティングポイントを参考に描いている製品もあるので,どれかに合わせてアライメントすることになる.累進レンズは,他の多焦点レンズと同様に,1枚の遠用度数のレンズに近用部を設けていることから,一般にフィッティングポイントを外れると,遠用度数に応じたプリズム屈折力が発生する.左右眼で度数差があると,①遠用参照円中心を通る視線の方向②遠用度数測定光線の方向(FOA方式,2面当て)図7累進レンズの二重表記測定基準位置がフィッティングポイントから離れているため,上述した装用状態を再現して測定することが必要であるが,一般にはむずかしいため,従来からの通常の測定値を併せて表示している.単単単単本図8累進レンズのマークとアライメントシール一時的マークが消されると永久マークだけが頼りとなる.各位置を正確に再現するには製品ごとに準備されているアライメントシールを使用して確認する.———————————————————————-Page7あたらしい眼科Vol.26,No.6,2009733おわりに「掛けていることを忘れるような眼鏡」が,理想の眼鏡といわれている.はるか彼方の目標で実現は覚束ないものの,現状を紹介した.ほかに表面処理やその分光特性などを含めて,いろいろな機能をもつレンズが製品化されている.なかでも撥油コートとよばれる防汚加工が実用化されたことによって,汚れにくく拭きやすいレンズが製品化されてレンズの取り扱いが格段に楽になっていることもあり,眼鏡を掛ける人の使用環境や状況に合わせて最適なレンズを選択していただきたい.また,希望する付加機能が選択した製品の標準装備になくても,別途特注可能になっているものもあるので,各社の窓口などに確認願いたい.一方,ファッション業界に委ねられているフレームであるが,最近流行している小さいフレームが眼鏡の軽量化に効果的で「掛け心地」の改善にも貢献してくれている.しかし,小さくなった分だけ視界も狭くなるために,もろ手を挙げて歓迎できることでもない.流行にとらわれることなく選択して欲しいものである.文献1)MinkwitzG:UberdenFlachenastigmatismusbeigewis-sensymmetriscenAspharen.OptActa10:223-227,1963(9)語解FOA方式:レンズメータの測定方式には,マニュアル式に代表されるFOA(FocusonAxis)と多くのオートレンズメータが採用しているIOA(InnityonAxis)とよばれる2つの方式が存在する.両者は,光学中心位置で測定するときには基本的に同一の値となるが,プリズム屈折力が加わるレンズ周辺位置での測定になると,測定光線の方向の違いなどに起因して微妙な差異が生ずることがある.レンズカーブ:一般にはレンズ面の面屈折力を指す.屈折面の曲率半径をr(m),屈折率をnとすると,面屈折力Sは,S=(n1)/rで求めることができる.記号はジオプトリー(D)で,カーブ(C)を使うこともある.「ゆるいレンズカーブ」とは曲率半径が大きな面の面屈折力を指し,零カーブは平面を指す.ベースカーブは,ある度数範囲を同じベースカーブで共通化させたとき,その共通化させたカーブを指す.非球面:頂点から周辺にかけ曲率が連続的に変化する回転面の一部.(JIST7330眼鏡レンズの用語から)補足)一般には球面以外の面形状をすべて非球面と称しているが,眼鏡レンズの分野に限り,回転対称な面を非球面としている.メリディオナル(m)像面,サジタル(s)像面:非点収差が存在するレンズは,レンズの直径方向の主経線屈折力によってできるメリディオナル像面と,レンズ円周方向の主経線屈折力によってできるサジタル像面に結像する.それぞれの主経線の方向に対して互いに垂直な方向に直線の像ができる.これを焦線とよび,先の基準円から各焦線までの距離(メートル)の逆数が各像面度数となり,その差が非点収差度数となる.等価球面度数:非点収差が残ったレンズや乱視屈折度数をもつレンズで,直交するそれぞれの主経線方向の屈折力PHとPVの平均値PE=(PH+PV)/2.または,PE=Sph+Cyl/2である.無限遠からの平行な光束はこの等価球面度数によって示される位置に円形に収束し,最小の面積に収束することから,最小錯乱円または最良像面ともよばれている.