———————————————————————- Page 10910-1810/09/\100/頁/JCOPYルト環の切れ目と同じ方向にして答えさせる.病院でランドルト環による視力測定がうまく測定ができなかった場合には,練習パンフレットを渡して家庭練習を指導する(図 2).子供は視力を測定すると見えなくても「わからない」という答えは言わず,次々と方向を指し示すことが多い.検者はランドルト環を調子よく提示せずに,わざと同じ方向を続けて提示し正答を確認する.また,子供が答える手を毎回机の上に置かせて落ち着いて答えさせ,信頼性のある答えを引き出す工夫をする.ランドルト環での視力検査ができない場合は森実式ドットカードを用いる.森実式ドットカードでは“うさぎ”や“くま”の“目”の有無と位置がわかるかを問い,最小視認閾による視力を測定する.“目”の有無を問う場合には 1 枚のカードを提示し「目がある?」「目はどこにある?」という方法と,目があるカードと目がないカードの 2 枚を提示し「目がある子はどっち?」を問う方法がある.検査結果の信頼性を上げるためには 2つの方法で確認することが有効である.森実式ドットカードができない場合には Teller acuity card を用いる.Teller acuity card はカードを提示し検者が中央に空いた穴から子供の顔を観察して,どちらの視標を固視したかによってその視力とするものである.乳幼児が無地より縞模様を好んで注視することを利用したもので,縞視標を認識したときの眼球や顔の運動を通して眼の分解能を測定する.低年齢の小児に対する検査では,集中力が非常に短いはじめに小児の視力検査で特有な点は,発達段階にあることを考慮する必要があることである.視覚中枢の発達という点から考えると,いわゆる“よみ分け困難”があるため,成人と同じような視力表でなく,字ひとつ視標での測定が重要になる.また,ランドルト(Landolt)環による視力検査は 3 歳以降でないと信頼性に乏しく,調節力が強いので,遠視がある場合は調節麻痺の点眼後の検査が必要になる.10 歳前後の女児に多くみられる現象として,心因性視力障害がある.中和法による視力検査が,この場合重要になる.小児の視力検査は,落ち着きがなく集中力も続かないため,検査値の信頼性が問題になるが,弱視治療の指標としての重要性もあり,経過観察を含めた検討が必要となる.本稿では,小児の視力検査を正確に行ううえでの注意点や,工夫も含めた実際の方法を述べる.I年齢による検査表の選択と方法(図 1)1)小児の視力検査は,3 歳ごろになるとランドルト環を用いて測定できる.ただ小児では視覚発達が未熟であるため読み分け困難があり,通常 8 歳程度まで字ひとつ視標が用いられる.測定前にはオリエンテーションを行いどのような測定方法がよいか選択する.ランドルト環は上下左右の 4 方向を提示し,切れ目を指で指すことができるか答え方を練習する.特に左右を間違えることが多いので注意する.指せなければハンドルを持ってランド(17) 1457 1 o a o o 2 a a ado 5 0 0132 2 7 1 特集●視力検査のすべて あたらしい眼科 26(11):1457 1462,2009小児の視力検査The Visual Acuity Test for Children松本富美子*1不二門尚*2———————————————————————- Page 21458あたらしい眼科Vol. 26,No. 11,2009(18)ランドルト環を用いた検査指さしで答えられる?はいいいえ指さしによる検査はいいいえハンドルで答えられる?ACUITY CARDSMORIZANE DOT CARDACUITY CARDSの実物MORIZANE DOT CARDの実物MORIZANE DOT CARDで答えられる?はいいいえハンドルによる検査図 1視力検査法の選択(文献 1 より改変)図 2視力検査の家庭練習パンフレット———————————————————————- Page 3あたらしい眼科Vol. 26,No. 11,20091459(19)定量的に評価するものである.弱視治療においては読み分け困難の改善状況をみて遮閉治療終了の目安や治療後の再弱視化の指標となる.III調節麻痺薬を使用した屈折検査1. 調節麻痺薬小児における正確な屈折値の測定は,調節麻痺薬点眼による調節解除が不可欠である.調節麻痺薬は硫酸アトロピンか塩酸シクロペントラートを使用し,目的に応じて使い分ける(表 1).塩酸シクロペントラートは硫酸アトロピンに比べ調節麻痺効果が 0.50 1.00D 弱く,特に治療開始前の調節性内斜視や遠視性不同視症例では十分な調節麻痺効果が得られにくいため,おもにスクリーニングや弱視治療後の高年齢児の経過観察に用いる.硫酸ため,何度か来院して再現性をみる必要がある.また,大角度の斜視では,視力の良好な眼が固視眼となるため,むき眼位における固視交代の観察をする.検査眼を変更するときに嫌悪反射で表情が暗くなったり,泣き出す,あるいは固視不定になるなどがないか観察することも有用である.II読み分け困難読み分け困難は小児視覚の特徴で,単独視標による視力値が並列視標による視力値より良好である現象をいい,crowding phenomenon や separation di culty とよばれる.原因は側方抑制の不全説や弱視眼の固視異常説などがある.通常臨床では,単独視力表と並列視力表による視力値の差が 2 段階以上ある場合を読み分け困難と判定している.しかし視標の数,配置,間隔,種類や視標の指し方などさまざまな条件が影響することも報告されてい る2).臨床で読み分け困難の評価をするために並列視標を用いる場合の工夫は,すべてランドルト環の並列視標を用い,端の視標は使わず,一瞬だけ指し示すようにすると再現性のある評価ができうる.筆者らは読み分け困難を簡便に定量的に評価するためにランドルト環 Crowded Card(図 3)を開発し測定している3).ランドルト環 Crowded Card は,中心視標と周囲視標の間隔を変化させることにより読み分け困難を表 1調節麻痺薬の選択硫酸アトロピン塩酸シクロペントラート調節麻痺効果強弱適応症例就学前弱視・斜視症例就学後スクリーニング弱視治療後経過観察使用濃度3 歳未満 0.5%3 歳以上 1.0%1.0%点眼回数1日2回2 回(5 分ごと)検査時期7 日後60 分後作用消失2 3 週後1 2 日後8cm 視標サイズ:視力値0.4, 0.5, 0.6, 0.7, 0.8, 0.9, 1.0視標間隔:1?,2.5′5?,10?,15?,20?,25?,30?30?1?15?0.40.71.0図 3ランドルト環Crowded Card(文献 3 より改変)———————————————————————- Page 41460あたらしい眼科Vol. 26,No. 11,2009(20)め,小児の興味を引くような声かけを行いながら視標の固視を促す.小児では睫毛が長いため測定範囲を遮らないように必要に応じて上下眼瞼を開ける.また涙液層を乱さないよう瞬目後に測定することが正確な値を得るこつである.調節麻痺薬を使用していない状態では調節は多少入るが,くり返し測定する間に徐々に調節は緩解するので,屈折値がプラス側に安定したところで測定を終える.調節麻痺薬を使用すると安定した値が得られる.3. 自覚的屈折検査初診時など調節麻痺薬点眼を行っていない場合には,調節の介入を最小限に防ぐために予測される屈折値よりプラス 3D 程度増し,プラス側より落とす測定方法を行う( 図 4 )6).乱視度数はオートレフラクトケラトメータの値を重視する.最高視力を得る最もプラス側の値をその自覚的屈折値とする.弱視症例では健眼のほうが弱視眼よりも調節が介入した屈折値となりやすいため,十分にプラス側に増した値で測定を行う.小児の乱視検査は,乱視表やクロスシリンダーで答えることはむずかしい場合が多い.オートレフラクトケラトメータから得られた値の乱視度数を入れ,その後ランドルト環の正答率で調整する方法がある.図 4 に示すようにランドルト環の切れ目が上下方向と左右方向で正答率に差がある場合,図のようにランドルト乱視表での見え方を推測し調整する.つまり上下方向を誤答する場合には水平に像がずれており 180°を軸にした度数を増す.左右方向を誤答する場合には逆に垂直に像がずれておりアトロピンの使用方法は 1 日 2 回 7 日間点眼で 7 日目に検査を行う.点眼日数は施設により少し異なるが,近畿大学医学部附属病院(以下,当院)で 1 日 2 回 5 日間点眼と 7 日間点眼で同一症例において屈折値を比較したところ,有意に 7 日間点眼でプラス側に移行したため 7 日間点眼で測定している.硫酸アトロピンは家庭で正しい点眼を行い,また副作用の発生を抑えるために説明書によって説明する.内容は点眼目的,点眼方法,誤点眼や誤飲予防の注意,薬剤の作用持続期間,生活上の注意についてである.特に点眼方法では点眼時の鼻根部の圧迫と閉瞼を行うように指導し体内への吸収を避ける.硫酸アトロピン点眼の副作用の発生率は通常 2%程度と報告されている.当院の調査では 4%であり点眼開始から 3日以内に起こり,症状は発熱で,年齢,性差,薬剤濃度には関係はなかった.副作用が発生した場合には点眼を中止し,来院時に塩酸シクロペントラート点眼によって屈折検査を行う.近視症例では,斜視を合併していたり,屈折値が不安定であったり,矯正視力が不良である場合には調節麻痺薬を点眼する.当院ではまず塩酸シクロペントラートを選択し調節の介入を除いた屈折値を検査している.2. 他覚的屈折検査小児の自覚的屈折検査は集中力の乏しさや応答の信頼性を欠き正確な検査が困難であるため,オートレフラクトケラトメータによる他覚的屈折値は重要である.測定時には視軸上の屈折値を測定することが重要であるた図 4幼小児の乱視微調整(文献 6 より改変)ランドルト環の正答率上下方向○,左右方向△左右の誤答軸180?の乱視度数を増す上下ずれ像上下に濃い乱視表オートレフ値VS:sph+6.00D(cyl 1.50D Ax180°VS=(0.2×sph+9.00D(cyl 1.50D Ax180°) (0.3×sph+8.00D(cyl 1.50D Ax180°) (0.4×sph+7.50D(cyl 1.50D Ax180°) (0.5×sph+7.50D(cyl 2.00D Ax180°) (0.7×sph+7.00D(cyl 2.00D Ax180°) (0.8×sph+6.50D(cyl 2.00D Ax180°) (0.9×sph+6.25D(cyl 2.00D Ax180°)例)———————————————————————- Page 5あたらしい眼科Vol. 26,No. 11,20091461(21)V心因性視力障害の視力検査小児に多い眼心身症として心因性視覚障害がある.症状で多いのは視力障害で,視野障害や色覚障害もみられることがある.女児に多く発症年齢は 8 10 歳の前思春期年齢である.心因性視覚障害を疑う場合,検査を行う心構えは必ず何らかの眼疾患が存在するという気持ちを忘れないようにし,心因性と決めつけず,しかし心因性の可能性も視野に入れながら検査を行う.両眼性の心因性視力障害と鑑別が必要な眼疾患として Leber 病,近視症例に多い先天性停止性夜盲,遠視症例に多い網膜分離症などがある.片眼性では友人の手や物があたったなど,比較的軽度な外傷経験を契機に起こす症例がある.1. レンズ中和法(図 5)他覚的屈折検査を行い,ランドルト環単独視標を用いて裸眼視力を測定し,まず通常の自覚的屈折検査を行う.屈折異常はごく軽度であることが多く,他覚的屈折値から推測される裸眼視力より極端に悪く,また屈折矯正で良好な視力が出なかった場合,心因性を疑ってレンズ中和法を行う.① 他覚的屈折値から 3.0D 程度プラス側のレンズを入れ,矯正視力を測定する.② ①のレンズを基にして,上からレンズ度数を打ち消す度数のレンズを重ね,矯正視力を測定する.マイナスレンズを重ねるとき「このレンズを入れるとよく見えるよ」と声をかけながら入れる.③ ②のマイナスレンズを抜き,①のレンズの上から90°を軸にした度数を増す.このようにして正答率が方向によって変わらない度数まで調整する.調節麻痺薬点眼後には予測される屈折値よりプラス 1 2D 程度足して,レンズ度数をプラス側より落とす測定方法を行う.後は調節麻痺薬点眼前と同様の測定方法である.IV弱視を疑う症例の視力検査集中力が続かない小児の場合,短時間の検査によって視力や屈折値を見きわめる必要があるため,検査の目的を明らかにして行う工夫が必要である.弱視や片眼性疾患による視力障害を疑う症例では,最高視力を知ることもより左右差を知ることに注目する.健眼の最高視力を求めるばかりに集中力が続かなくなってしまい,肝心の弱視眼の視力が信頼性を欠いてしまうことがある.ランドルト環で測定できる年齢の小児では,初診時には健眼と推測される眼から測定し,患眼との差があるかどうかを知る場合には,そのままの視力で遮閉用具を変えたときの患児の表情も観察や視力の正答率をみる.患児の答える速さ,表情の変化,固視不安定な状況や嫌悪反射がないかを観察し,左右差の有無の判断の参考にする.再診時には患眼と推測されるほうから測定し,健眼との差があるかを注意する.また小児では,視力検査だけで片眼弱視かどうかを判定することがむずかしい場合があるので,調節麻痺薬下の屈折値,固視検査,立体視検査,眼位検査,Bagolini 線条レンズ試験,4ΔBase out testなど,不同視弱視や微小斜視弱視を鑑別に入れ検査を総合的に判断することが重要である.図 5心因性視力障害のレンズトリック法 のレンズを にする は+3.50Dでも+4.0Dでもよい.)マイナスレンズを基準レンズに重ねる.同じ度数のレンズでも別のレンズに入れ替えるだけで視力は向上する.オートレフ値VS:sph+0.50D(cyl 0.25D Ax180°VS=0.3 (0.2×sph+3.00D) (0.3×sph+3.00D(sph 1.00D) (0.5×sph+3.00D(sph 1.75D) (0.6×sph+3.00D(sph 2.00D) (0.8×sph+3.00D(sph 2.50D) (0.9×sph+3.00D(sph 2.75D) (1.0×sph+3.00D(sph 3.00D) (1.2×sph+3.00D(sph 3.00D)例)———————————————————————- Page 61462あたらしい眼科Vol. 26,No. 11,2009(22)9-14, 2006 2) 深井小久子:弱視の病態と診療のかかわりcrowding phe-nomenon.眼科診療プラクティス 1:64-67, 1998 3) 松本富美子,若山曉美ほか:ランドルト環 Crowded Cardによる読み分け困難の検討─正常成人と正常小児─.日本視能訓練士協会誌 27:241-245, 1999 4) 臼井千惠:調節麻痺薬.理解を深めよう視力検査・屈折検査,p70-74,金原出版, 2009 5) 森隆史,八子恵子,飯田知弘ほか:乳幼児に対する 1%アトロピン点眼液を用いた調節麻痺下の屈折検査.眼臨紀 1:157-160, 2008 6) 若山曉美:弱視がある場合.理解を深めよう視力検査・屈折検査,p78-80,金原出版, 2009 7) 小口芳久:心因性視力障害.日眼会誌 104:61-67, 2000 8) 越後貫滋子:心因性視力障害の測定方法.理解を深めよう視力検査・屈折検査,p81-83,金原出版, 2009②のレンズよりもっと打ち消す度数のマイナスレンズを重ね矯正視力を測定する.このとき基に入れたプラスのレンズが見えにくい状態であることをわざと見せて,打ち消すレンズを入れ良く見えることを自覚させることがこつである.同じ操作をくり返し,徐々に打ち消してプラスマイナス 0Dになるまで行い矯正視力を測定する.※ ③の測定中で,もしプラスマイナスして+0.5D になって(1.2)が得られても,調節麻痺との鑑別を要するため,必ずプラスマイナス 0D になるまで行う.文献 1) 大牟禮和代:小児の視力検査.日本視能訓練士協会誌 35: