———————————————————————-Page10910-1810/08/\100/頁/JCLSとしては画期的な画像であった(図1).解像力(Z軸)は20μm.2.OCT3000(CarlZeissMeditec社)2005年に解像力(Z軸)が10μmに向上したOCT3000が導入され,OCT2000の画像に比べより詳細なものが得られるようになった(図2).操作も非常に簡便になり現在日本のみならず海外でも,最も普及していると思われる機種である.B-scan(断層像)を得るのに約1.3秒を要する.解像度が上がったことにより視細胞層内節外節境界部(IS/OS)ラインに相当する高反射ラインが観察できるようになり,IS/OSラインと視力との研究が進んだ.3.OCTOphthalmoscope(NIDEK社)2004年にNIDEK社から発売.これまでのOCTの断層像であるB-scanに加えて,新たに断面像であるC-scanの撮影が可能になった(図3).このことで,網膜疾患を立体的に考えることが可能になった.解像度はB-scanが9μm,C-scan(断面像)が18μmで,B-scanの解像度はOCT3000と同程度である.最も解像度の良い画像を得るには,B-scan(断層像)が約1秒,C-scan(断面像)が0.5秒を要する.得られたOCT画像は,これまでのOCTと同様のカラースケールでの表示の他に,グレースケールでの表示も可能である.また実際の測定画像では,左側にSLO画像が,右側にOCTIOCTの歴史光干渉断層計(opticalcoherencetomography:OCT)は網膜の光学的断層像を撮影する装置である.現在の眼科の診療には欠かせない検査となり,2008年には眼底三次元画像解析として保険点数請求が可能になった.当たり前のように使用しているOCTだがその歴史は実はまだ浅い.1991年にFujimotoらがはじめてOCTの画像を報告し,実際に製品化され日本に導入されたのが1997年である.その断層像からさまざまな臨床研究報告が行われ,B-scan画像は親しみやすいものになっていった.2004年には新たなscan画像であるC-scan(前額断)が得られるOCT-Ophthalmoscope(OCT/SLO)がNIDEK社から発売された.2006年には大きな転機を迎えた.すなわち,測定方法を従来からあるタイムドメイン方式から,スペクトラルドメイン方式へと世代交代したことである.TOPCON社の3D-OCTがそれにあたり,さらなる詳細な眼底画像所見が得られるようになった.本稿では,各OCTの概要などにつき触れたい.II機種の紹介:タイムドメイン方式1.OCT2000(Humphrey社,現CarlZeissMeditec社)1997年に日本に導入された最初のOCTである.現在のOCT画像に比べると相当粗いものだが,発売当時(13)589MasaakiSaitoTomohiroIida::601251特集●新しい光干渉断層計(OCT)バイヤーガイドあたらしい眼科25(5):589595,2008網膜・子体のOCT検査機:機種一OpticalCoherenceTomographyforRetina-VitreousDisorder:DeviceOverview齋藤昌晃*飯田知弘*———————————————————————-Page2590あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008(14)画像が同時に映し出され,さらにはこの左右の画像がpixeltopixelで1対1対応しているといった最大の特徴がある.この1対1対応によって,SLOでの眼底所見と,OCTのC-scan(断面像)の詳細な関係がわかるようになった.測定の際には患者側から斜め右方向に検者が位置し,かつ撮影画像は瞬目による影響を受けやすく,測定にはある程度の熟練を要する.III機種の紹介:スペクトラルドメイン方式スキャン速度は2040Hzであり,400HzのタイムドメインOCTよりも50100倍もの高速化が可能にな図2AOCT3000の外観図1OCT2000のscan画像中心性漿液性脈絡網膜症例:カラー眼底写真(a)でみられる漿液性網膜離はOCT2000のscan画像(b)では低反射領域としてみられる.ab図2BOCT3000のscan画像中心性漿液性脈絡網膜症例:眼底写真(a).OCT3000ではOCT2000に比べより詳細なscan画像(b)が得られる.ab———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008591(15)も撮影され,この上に実際にスキャンされたラインが示されるので,より親しみやすい画像になり,かつ眼底所見と対比しやすい.3D画像を得るには,まず3Dモードでの撮影が必須である.このモードの最大の欠点は1り,現在のOCTの主流である.1.3DOCT1000(TOPCON社)2006年にTOPCON社から発売され撮影の簡便さと,高解像度の画像は一躍注目を浴びた(図4).解像度は5μmにまで上がり,外境界膜が検出できるようになった.Crossscanモードでは,B-scan(断層像)の測定はわずか0.040.05秒と非常に速くなり,瞬目などの影響も受けにくく撮影は容易になった.得られたB-scan画像は加算平均処理を行う(4または8枚)ことにより,画質はさらに良くなる.OCTと同時にカラー眼底写真図3AOCTOphthalmoscopeの外観図3BOCTOphthalmoscopeの測定画面表示Bscan矢印:OCTB-scan画像.矢頭:OCT画像で,赤い線がスキャンされた部位.細矢印:モーションアーチファクト測定.ラインがまっすぐであればアーチファクトが少ない良い画像.図3COCTOphthalmoscopeの測定画面表示Cscan矢印:OCTC-scan画像.矢頭:SLO画像.左右のSLO画像とOCT画像はpixeltopixelで1対1対応している.図3DOCTOphthalmoscopeの測定画像ポリープ状脈絡膜血管症(PCV)例SLO像とC-scan画像は1対1対応し,IA所見と合わせ,ポリープ状病巣(矢頭)はC-scanで網膜色素上皮離部位の突出として捉えられる.(文献4より改変)baca:SLO像.b:OCTC-scan画像.c:IA像.———————————————————————-Page4592あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008(16)解像度は5μmである.外観は測定本体と,コンピュータ操作画面が一体化し,これまでのOCTに比べコンパクトになり省スペース化が図れる(図5).これまでのOCTと違った点は,5ラインラスターモードといったスキャン長6mmの水平方向の高解像度なB-scan画像を,約2秒以内で等間隔(0.25mm)に5枚同時に得られる撮影モードがある点である.画面上に出てくるこの5つのラインは,撮影中に共焦点眼底画像を見ながら位置を自由に変えることができる.一度の撮影で等間隔に5つの異なった部位の高解像度の画像が得られることから,確実な病変の観察が可能になり,何度も撮り直す必要がなくなるといった利点がある.これまでは,5ラインラスターモードはスキャン長6mm,間隔0.25mm,水平方向のみの撮影であったが,新たなバージョン3では,スキャン長が3mm,6mm,9mmから選択でき,そのスキャンラインの間隔も0から1.25mmまで変更可能になり,さらには角度も自由に変えられるようになり,さまざまな網膜疾患に対応できるようになった.3D画像を得るには,MaculaCubeモードで撮影することで可能である.さらに3D網膜厚マップや,網膜色素上皮の3Dセグメンテーションマップといった新たな画像解析も容易にかつ短時間でできる.スキャンの撮影に23秒を要する点である.固視の悪い症例や,体動の多い高齢者には現実的に困難である.さらに得られた3次元データはボリュームレンダリング法を用いて3Dの構築を行う.通常のラインモードの撮影は,無散瞳カメラと同様に気軽に撮影できる点も親しみやすい点である.2.CirrusHDOCT(CarlZeissMeditec社)CirrusHD-OCTは2007年に日本に導入され,3DOCT-1000と同様,スペクトラルドメイン方式を用い,図4A3DOCT1000の外観図5ACirrusHDOCTの外観図4B3DOCT1000の3D画像ポリープ状脈絡膜血管症(PCV)症例:3Dモードで撮影し,その場で3D画像が得られる.———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008593(17)クな特徴として,前眼部観察用レンズを使用することにより,前眼部OCTとしても利用可能である.B-scanの測定時間は0.039と他の機種と比べて最も速い.複数のB-scan画像を加算平均処理することによって画質が向上する.撮影モードにはたくさんの種類があり,網膜3.RTVue100(Optovue社)米国でFDA(米国食品医薬品局)に最初に認可されたスペクトラルドメイン方式を用いたOCTである(図6).深度解像度は5μm,横方向解像度15μmと他のスペクトラルドメインOCTと同様のスペックをもつ.ユニー図5BCirrusHDOCTの5LineRasterポリープ状脈絡膜血管症(PCV)症例の水平断層像.図5CCirrusHDOCTのMacularthicknessanalysis加齢黄斑変性(2型脈絡膜新生血管)の症例.3D網膜厚マップ内境界膜レベルでのセグメンテーションマップ網膜色素上皮レベルでのセグメンテーションマップ———————————————————————-Page6594あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008(18)疾患のみならず緑内障疾患にも対応している点は広く受け入れられやすい点である.4.SpectralisOCT(Heidelberg社)2008年に認可が下りたばかりの最新のOCTである(図7).OCTの解像度は深度解像度3.5μm(デジタル),横方向解像度14μmと非常に優れた解像度をもつ.この機種の最大の特徴は,操作がより簡便で,解像度の高い同社のHeidelbergRetinaAngiograph2(HRA2)とOCTが同時に組み込まれたことである.これによって,フルオレセイン蛍光眼底造影(FA),インドシアニングリーン(ICG)蛍光眼底造影(IA),そしてOCTの撮影が同時に行える.近年非侵襲的な検査として注目されている,自発蛍光(FAF)の観察も可能であり,これとOCTの組み合わせもできる.測定の際に非常に優れた機能である,TruTrackTM─デュアルビームアイトラッキングシステム─が備わっている点も見逃せない.このデュアルビームアイトラッキングシステムとは,絶えず動くであろう眼球に対して,同一部位をスキャンすべく追跡機能をとり備えた画期的なシステムである.この際図6BRTVue100のCrossLineモードポリープ状脈絡膜血管症(PCV)症例の水平断層像(a),垂直断層像(b).図6ARTVue100の外観図6CRTVue100の3DMacularモード図4Bと同様の症例,CrossLineモードに比べると画質は劣るが,断層像(b,c)に加えて,断面像(a)や,3D画像の切断面(d)も同時に描出できる.cbad———————————————————————-Page7あたらしい眼科Vol.25,No.5,20085952)板谷正紀,尾島優美子,吉田章子ほか:フーリエドメイン光干渉断層計による中心窩病変描出力の検討.日眼会誌111:509-517,20073)HangaiM,OjimaY,GotohNetal:Three-dimensionalimagingofmacularholeswithhigh-speedopticalcoher-encetomography.Ophthalmology114:763-773,20074)SaitoM,IidaT,NagayamaD:Cross-sectionalandenfaceopticalcoherencetomographicfeaturesofpolypoidalchoroidalvasculopathy.Retina28:459-464,2008に加算する画像の枚数も設定でき,得られた画像は非常に画質に優れている.FA,IA,FAF所見とOCT所見との詳細な比較が可能である.おわりにOCTは非侵襲的な簡便な検査である.OCTの解像度の開発は現在もなお進歩している.さらなるOCTの臨床研究の進歩によって,より低侵襲な診断,治療予測が可能になると思われる.OCTは眼科医にとってなくてはならない存在になっている.文献1)岸章治:OCT眼底診断学.エルゼビア・ジャパン,2006(19)図7ASpectralisOCTの外観図7BSpectralisOCTの画像:正常眼得られたOCT画像は,あたかも組織切片のように画質に優れている.図7CSpectralisOCTの画像:PCVa:インドシアニングリーン(ICG)蛍光眼底造影(IA),b:OCT画像(加算平均処理).IAでポリープ状病巣がはっきりと描出され,その部位のOCT画像が詳細かつ正確に得られる.ab