———————————————————————-Page10910-1810/08/\100/頁/JCLSradialscan(128A-scan/line)で約2秒と高速化した.またその疑似カラー表示は現在でもOCTのスタンダードとなっている.世界で最も普及したOCTであり,現在でも臨床の現場において第一線で活躍している.2.OCTOphthalmoscope,OCTC7(NIDEK社)OCT3000は汎用性が高く,使いやすいが,眼底モニター用の画面は写りが悪く,眼底の異常部位を観察しながらのOCT撮影には不向きであった.OCT-Ophthal-moscopeは光源波長820nmのスーパールミネッセンスダイオード(SLD)を用い,同一光源でOCT画像と走はじめに1997年光干渉断層計(OCT)の登場は眼科医に対し大きなインパクトを与えた.これまで解剖学的に証明され,検眼鏡的に所見として認識されていたことが非侵襲的・他覚的に画像として観察できるようになり,現在では治療のみならず,患者への説明,さらには学会などでの発表の際にも大活躍している.最近ではさらに高速化・高解像度化が進み,生体顕微鏡の様相を呈し,網膜硝子体専門医にとって,ますます黄斑部疾患の理解への武器となってきている.登場以来10年が経ち,黄斑部疾患を専門としない眼科医にもその存在は十分認識され,今後臨床におけるさまざまな場面で必要になってくることは疑いない.当科では外来で各種OCTを使用しており(図1),本稿では新旧各種のOCTの使用経験から,それぞれの機種の特徴などについて解説する.IタイムドメインOCT1.OCT3000,StratusOCT(Zeiss社)OCT2000が登場し,これまで見ることのできなかった生体での網膜断層像の観察が可能となった.さまざまな黄斑部疾患での理解が深まったが画質,操作性の面から診療時の補助的な役割をもつにすぎなかった.OCT2000は深さ分解能が約20μmであるのに対し,OCT3000は約10μm以下と,ほぼ倍になり網膜の層構造がより明瞭に観察されるようになった(図2a).撮影時間も高解像度のlinescan(512A-scan)で約1秒,6本の(21)597Ichiroaruo子601251特集●新しい光干渉断層計(OCT)バイヤーガイドあたらしい眼科25(5):597602,2008網膜・硝子体のOCT検査機器の使用経験(1)ImpressionofOpticalCoherenceTomographyDevicesforRetina-VitreousDisorder丸子一朗*図1外来風景左下に3D-OCT,右横にOCT3000,中央奥にCirrusOCTおよび陰になっているがOCT-Ophthalmoscopeが見える.その他トプコン眼底カメラやハイデルベルグ社HRA2も見える.———————————————————————-Page2598あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008(22)リットである.深さ分解能は約9μmでほぼOCT3000と同等かそれ以上である(図3).OCT-Ophthalmo-scopeのもう一つの特徴は,網膜の断層像(B-scan)ではなく,前額断(C-scan)として観察できることで,これにより病変の広がりを3次元的に捉えることが可能となった.ただし,実際には病変のさまざまな部位の画像を取得するには検者の技術を要する.OCT-Ophthalmo-scopeでは疑似カラーではなくグレースケール表示のほうが,詳細な観察が可能である.IIフーリエドメインOCT,スペクトラルドメインOCTタイムドメインOCTは光干渉を時間領域で行うのに対して,フーリエドメインOCTはフーリエ空間で行うことで高速化・高解像度化を実現した.単純にいうと1回の計測で網膜の一点の情報を得るタイムドメインに対し,1回の計測で深さ方向(いわゆるA-scan1本分)すべての情報を取得できる.フーリエ解析を行って算出するすべてのOCTをフーリエドメインOCTとよぶため,現行のOCT(3D-OCT,CirrusOCTなど)は,その一つにすぎないことから最近ではスペクトラルドメインOCTの呼称が使われるようになった.スペクトラルドメインOCTは一定の波長光源からの光が網膜に照射され生じた干渉波を分光器でスペクトル分けし,フーリエ解析する方式である.現在市販されていて,当科で高頻度に使用している3D-OCTとCirrusOCTについて特査型レーザー検眼鏡(SLO)画像を取得することが可能である.OCT画像とSLO画像がpixeltopixel(1対1)で対応していて,SLO画像上の実際の眼底における部位の網膜断層像を観察できることがこの装置の最大のメ表13DOCTvsCirrusOCTDevice3D-OCTCirrusOCT撮影スピード約27,000A-scan/秒例)3Dscan(256×256)3.5秒27,000A-scan/秒例)Cubescan(256×200)2秒解像度5μm5μmモード3DscanCrossscanCubescan5linerasterscan画像解析時間がかかる外部ソフトで詳細に観察可早いPeelingモードあり眼底カメラ無散瞳カメラ内蔵なし眼底モニター撮影時には眼底確認は困難共焦点画像で眼底確認良好中間透光体影響は最小限影響大その他ジョイスティック採用で操作性は良好顎台を動かすので調整困難例あり図2正常眼の各OCT像a:OCT3000,b:OCT-C7(OCT-Ophthalmoscope),c:3D-OCT,d:CirrusOCT.abcd———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008599(23)合は問題ないが,radialscanやcrossscanでは,撮りたい部位と外れてしまうことも少なくないので,この点については改善が望まれる.つぎに典型的な症例を提示しながら,3D-OCTの特徴を解説する.a.中心性漿液性脈絡網膜症(CSC)CSCは網膜最外層である網膜色素上皮(RPE)の脆弱部位から網膜下に浸出液が漏出して漿液性網膜離(SRD)が生じる疾患である(図3).この疾患を上述したIS/OSlineとELMに注目してみてみると,SRDのない部分ではRPEの内側に(眼球内側)IS/OSline・ELMがともに明瞭に観察される.SRDのある部位では,ELMは観察されることが多いが,IS/OSlineは多くの場合不明瞭になる.OCTは機械の仕様上物質の成分の境界面を強く描出するため,境界面が傾いている場合や境界面自体の反射が減退すると画像が粗くなることがある.そのためSRDのある部位では,IS/OSlineが不鮮明になると考えられる.しかし,その場合にも実際に視細胞の内節・外節が消失しているわけではないので,ELMは変わらず観察される.もちろんSRDが遷延し実際に内節・外節や視細胞そのものが障害された場合,SRDが消失してもOCT上のIS/OSlineやELMが消失したままになることもある.この場合の視力予後は不良である.このようにELMとIS/OSlineの明瞭な描出が可能かどうかは,視力予後の判定に有用とされている.b.白内障手術後の?胞様黄斑浮腫(CME)現在では,プロスタグランジンなどの術後炎症の関与が知られているが,なかには物理的要因の関与もあるとに解説する.両者の違いについて表1にもまとめた.1.3DOCT(TOPCON社)2006年夏に発売されたスペクトラルドメインOCTの商業ベースで世界初の製品である.B-scan測定時間は0.05秒とタイムドメインと比較して大幅に短縮された.A-scanレートは1秒当たり18,700本(現在は27,000本)である.同時に高解像度化も実現され,深さ分解能は5μm程度とされている.通常のB-scanモード(linescan)では1,024または2,048A-scanの高解像度で撮影できる.Radialscanモードでは6方向のB-scanを瞬時に撮影できる.また後から追加されたcrossscanモードでは,同じ部位を瞬時に任意の枚数だけ撮影し,それを加算することでさらにコントラストを上げ詳細な断層像を得ることが可能となった.正常眼における3D-OCTcrossscan像(図2c)では,網膜層構造が詳細に観察可能であり,最近注目されている視細胞の内節・外節境界(IS/OSline)および外境界膜(ELM)がOCT3000やOCT-Ophthalmo-scopeよりもはっきりと描出されている.3Dscanモードでは6mm四方の部位に対して256A-scanを256本連続撮影することができる(その他512×128,1,024×64も選択可).測定時間は約3.5秒である.測定データをパソコンで処理すれば簡単に3D画像として眼底を観察できる.また無散瞳眼底カメラが一体化されており,撮影部位の正確な特定が可能で,眼底撮影後には任意の病変部位の断層像を簡単に観察できる.付属のソフトではないが,市販の3D解析ソフトAmira4(MercuryComputerSystems)を使えば3D画像を任意の部位でスライスし断面像として観察可能で,それを動画ファイルとして保存できる.付属ソフトのアップグレードによって今後は,撮影直後に直接解析や動画ファイル作成が可能になる予定である.実際の使用においては,操作上はジョイスティックがついているため,感覚的に細隙灯顕微鏡や眼底カメラなどと同様である.ただし,眼底観察には通常の赤外光を使用しているため,眼底は暗く実際にはどの部位の撮影をしているかを判断するのは困難であることが多い.3Dscanモードで黄斑部全体を一度に撮影してしまう場図33DOCTによる中心性漿液性脈絡網膜症(CSC)の典型例中心窩網膜下に漿液性網膜離がみられる.視細胞の内節・外節境界(IS/OSline)が離部では不明瞭になっているのがわかる.漿液性網膜剥離IS/OSline———————————————————————-Page4600あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008(24)は3D画像,中央は水平立体断面像,右は水平断面像である.種々の表示法を合わせることで,黄斑浮腫や網膜離の存在が立体的に観察できる.さらに上述のように元データを市販の3次元解析ソフトウェアで処理することで,動画としても観察できる.2.CirrusOCT(Zeiss社)現在でも最も普及しているOCTであるOCT3000を作っているZeiss社が,スペクトラルドメインOCTとして2007年に発売したOCTである.これまでの蓄積されたノウハウやブランド力もあり,最も注目されている製品であろう.撮影スピードはA-scanレートが1秒当たり27,000本とされ,解像度についても深さ分解能は5μm程度とほぼ3D-OCTと同様かそれ以上であり,遜色はない.撮影モードとしては3次元画像を構成可能なcubescanモードとB-scan5本分を同時に撮影できる5linerasterモードがある.Cubescanモードは,6mm四方をB-scan200枚分同時に撮影可能であり,撮影後の解析で3D画像が得られる.また現在の解析ではCirrusOCTの一つの特徴である内境界膜や網膜色素上皮を分離してセグメンテーションマップ(またはpeeling画像)を得ることができる(図6).現在のソフトウェアでは,画像を操作するなされている.図4は白内障手術後1カ月で視力低下をきたした症例の中心窩3D-OCT所見である.中心窩陥凹が消失し,胞様所見を伴った黄斑浮腫が観察される.細矢印(↓)のように硝子体牽引が明瞭に描出され,黄斑浮腫の原因と考えられる.このように3D-OCTでは網膜の層構造だけでなく,硝子体の観察も可能であり,病態を理解するうえで注目されている.c.黄斑部牽引症候群(VMTS)後部硝子体離(PVD)の発生時に後部硝子体膜が黄斑部を前方に牽引されひき起こされる.OCTによる検討で,黄斑浮腫やときに網膜離を伴うことが指摘されている.図5はVMTS症例の3D-OCT像である.左図43DOCTによる白内障手術後1カ月の?胞様黄斑浮腫における硝子体牽引細矢印(↓)のように硝子体牽引が明瞭に描出される.胞様黄斑浮腫5黄斑部牽引症候群(VMTS)症例の3DOCT像左は3D画像,中央は水平立体断面像,右は水平断面像である.———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008601(25)ど詳細に観察することはできないが今後アップグレードされる予定である.5linerasterモードでは0.25mmごとの高解像度B-scanが得られる.実際に撮影された正常眼におけるB-scanは非常に高解像度であり,網膜各層,IS/OSおよびELMまで詳細に観察可能である(図2d).デフォルトではOCT3000と同様に親しみやすい疑似カラーを採用しているが,グレースケールでも表示可能である.撮影部位は任意に操作が可能で,撮りたい位置をマウスで指定すればよい(図7).眼底観察にはSLO(共焦点眼底観察)方式を導入しており病変の位置などをモニターで確認しながら撮影できる.これは非常に優位な点であり,操作性も良好でOCT撮影中に新しい異常部位を発見することもしばしばある.ただし,現在までのところ当科ではこのモードは水平断でしか観察できない.バージョンアップによって垂直断でも観察できるようになる予定である.実際の使用については,被検者に顎と額をつけてもら図6CirrusOCTでの正常眼における網膜表面や網膜色素上皮を分離したセグメンテーションマップ(またはpeeling画像)RPEILM-RPEILM図7CirrusOCTにおける実際の5linerasterモードでの測定画面画面左下のSLO画像上で眼底観察は可能であり,マウスで撮影部位を自由に移動可能である.———————————————————————-Page6602あたらしい眼科Vol.25,No.5,2008(26)operculumや中心窩周囲の浮腫(図8下)が詳細に観察される.3.その他a.RTVue100(オプトビュー社)毎秒26,000A-scan,深さ分解能5μmで,他のスペクトラルドメインOCTとほぼ同等.3Dscan,crossscanなどほぼすべての機能を搭載.画像解析ソフトも充実し,特に緑内障関係の解析ソフトがそろっている.アタッチメントによって前眼部OCTとしても機能する.b.SpectralisHRA+OCT(ハイデルベルグ社)眼底SLOのHRA2と一緒になったスペクトラルドメインOCT.HRA2がついているので造影検査と同時にOCT画像を取得することができる.造影検査での異常部位のOCT像を簡単にみることができる.スキャンスピードは毎秒40,000A-scanと最速である.さらにHRA2ですでに定評のあったアイトラッキング機能がそのままOCTにも導入され画像の鮮明さを増している.加算平均により作成されるOCT画像は非常に美しい.III今後の展望低価格帯の光源800nmを用いたOCTではなく,長波長を用いた光源を利用した高深達OCTが注目されている.また今のところまだ開発段階であるが,フーリエドメインOCTの異なる形であり,光源の波長が変化することで干渉波を得るスウェプトソースOCT(SS-OCT)や元は天体望遠鏡でのレンズのゆがみを補正するために開発された補償光学を用いたOCTなどの出現の可能性がある.い検査をするのであるが,本体は固定されているので,眼球の位置を合わせる際には,顎台が動くことによって調整される.この場合顔自体が動かされることになり,検査中被検者が無理な体勢になっていることもあるので注意を要する.またすべての操作がマウスによって行われるので,微妙な調整は困難なこともある.顎台の調整には,初期段階の顎台の位置が,欧米人に合わせてあるのか大きくずれていることが多く,被検者にもよるが時間がかかることも多い.一度顎台の調整が済めば,その後の操作は問題ないのでこの点についてはもう少し改善が望まれる.黄斑円孔広く一般にOCTの有用性を再認識させられた疾患である.CirrusOCTでは,stage2における硝子体と中心窩の牽引との関係(図8上)やstage3でのpseudo-図8CirrusOCTによる黄斑円孔stage2およびstage3