———————————————————————-Page10910-1810/07/\100/頁/JCLSこのように安全性,利便性に関しては,かなりの進歩が認められたが,コンタクトレンズ装用時の視機能に関しては,大多数の症例で良好な矯正視力が得られているために,必ずしも活発に議論されていなかったと思われる.しかしながら,近年,qualityofvision(QOV)の重要性が唱えられており,今後はコンタクトレンズ装用時のQOVにも関心が集まるようになるのではないかと推測され,実際コンタクトレンズ装用時の高次収差が測定されるようになっている14).Iコンタクトレンズ装用時のコントラスト検査と高次収差たとえば,眼鏡,ソフトコンタクトレンズ,ハードコンタクトレンズを正常者に装用させ,それぞれの矯正手はじめにコンタクトレンズは,優れた屈折異常の矯正手段であり,その安全性と有効性が高いために広く普及し,わが国でも1,700万人以上によって装用されている.コンタクトレンズが登場した頃は,その安全性が十分ではなかったため,コンタクトレンズの進歩はその安全性の追求に主眼がおかれ,酸素透過性が良好な素材の開発やコンタクトレンズのケアの改良が行われた.安全性が臨床的に許容される範囲に達すると,安全性と同時に利便性が追求されるようになり,装用感が良好なソフトコンタクトレンズの需要が高まり,毎日使い捨てソフトコンタクトレンズ,頻回交換ソフトコンタクトレンズ,あるいはMPS(multi-purposesolution)などが登場した.(57)1467図1矯正手段の差による,高コントラスト視力および低コントラスト視力の差(文献5より)-0.30-0.25-0.20-0.15-0.10-0.050.00-0.20-0.15-0.10-0.050.000.050.100.150.20眼鏡RGP*****高コントラスト視力低コントラスト視力*:p=0.001SCLDSCL眼鏡RGPSCLDSCL(logMAR)(logMAR)*NaoyukiMaeda:大阪大学大学院医学系研究科視覚情報制御学寄附講座〔別刷請求先〕前田直之:〒565-0871吹田市山田丘2-2大阪大学大学院医学系研究科視覚情報制御学寄附講座特集●眼の収差を理解するあたらしい眼科24(11):14671472,2007コンタクトレンズと高次収差ContactLensesandHigher-OrderAberrations前田直之*———————————————————————-Page21468あたらしい眼科Vol.24,No.11,2007段によって得られる矯正視力が1.0であったとしても,装用時の見え方は三者三様であることが多い.また,同じレンズを装用していても,瞬目が減少して乾燥したり,コンタクトレンズが偏心すると見え方が変化する.図1は,正常眼に対して,眼鏡,連続装用rigidgaspermeable(RGP)コンタクトレンズ,毎日交換dispos-ablesoftcontactlens(DSCL),従来型softcontactlens(SCL)装用下にて,高コントラスト視力(100%ETDRS:EarlyTreatmentDiabeticRetinopathyStudy)と低コントラスト視力(ETDRS10%)を測定した結果である5).通常の視力検査に相当する高コントラスト視力ではこれらの屈折矯正手段に有意差がないが,コントラスト検査の一つである低コントラスト視力ではその差が検出された.このように,コントラスト検査を用いれば,通常の視力検査では区別できないQOVの違いを定量的に示すことができる.つぎに,正常者に対して種々のコンタクトレンズを装用させた状態での高次収差を,波面センサーで測定した結果を図2に示す.これらの対象では,ソフトコンタクトレンズよりハードコンタクトレンズで高次収差が低く,より裸眼に近いことが示された5).同様にソフトコンタクトレンズ装用によって非装用時より高次収差が増加するとの報告がある1,6).このように,コンタクトレンズの種類によって,装用時の高次収差が異なり,装用時のコントラスト検査の結果の差は,高次収差の存在,すなわち軽度の不正乱視がある程度関連している.IIコンタクトレンズ装用時の高次収差の原因筆者らが推測するコンタクトレンズ装用時の高次収差の原因を図3に示す.コンタクトレンズ前涙液層,コンタクトレンズ自体のもつ高次収差,コンタクトレンズのセンタリング,レンズ下涙液層,角膜後面や水晶体による残余不正乱視などが原因となりうると思われる.コンタクトレンズ自体の高次収差を実測することも可能ではある7)が,他の要因も関わっているため,最終的な評価はレンズを装用した状態でなされるべきである.原因を究明できればコンタクトレンズ装用時のQOVを改善で(58)図2矯正手段による高次収差の差(文献5より)00.050.10.150.20.25コマ様収差:裸眼:RGP:DSCL:SCL*******:OnewayRMANOVA:p<0.05高次収差の総和球面様収差RMS(?m)図3コンタクトレンズ装用時の高次収差の原因コンタクトレンズ自体コンタクトレンズのセンタリング角膜後面,水晶体の高次収差コンタクトレンズ前涙液層コンタクトレンズ下涙液層———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.24,No.11,20071469きる可能性があり,それぞれのコンポーネントがどれぐらいの影響を与えているか知ることは意義がある.III角膜不正乱視の矯正と残余不正乱視角膜不正乱視に対する中心的な治療はハードコンタクトレンズの処方である.しかし,角膜に瘢痕がない円錐角膜に対してハードレンズを処方し,良好なフィッティングが得られていても,必ずしも矯正視力が1.0に達しないことがある.そして円錐角膜が進行した症例ほどコンタクトレンズによる矯正視力が1.0未満の比率は高い.この原因を探るため,円錐角膜のコンタクトレンズ装用時と非装用時の高次収差を比較したところ,裸眼の高次収差では垂直のコマ収差が特徴的で,下方の波面が遅くなるパターンが典型的であるが,ハードコンタクトレンズを装用するとコマ収差は減少し,かつ下方の波面が速くなるパターンに変化して,コマ収差の軸の方向が逆になることが判明した(図4)8).これは,ハードコンタクトレンズにより角膜前面の不正乱視が矯正されると,角膜後面の不正乱視が顕在化した結果と考えられた.そのため,典型的な円錐角膜症例の網膜像のシミュレーションでは図4に示されるように,下方に尾を引くパターンを示すが,コンタクトレンズ装用時には,尾は小さくなるが,逆に上方に尾を引く.図5は,Zernike多項式のなかの垂直と水平の2つのコマ収差をベクトル解析して,その軸と高次収差量によって2倍角で極座標表示したものである.左の正常眼ではコマ収差はハードコンタクトレンズ装用時でも非装用時でも小さいのに対し,右の円錐角膜および円錐角膜疑いにおいては,非装用時ではコマ収差が大きく,軸が90°付近にあるのに対し,装用時は,コマ収差は減少するが,軸が反対の270°方向になった8).角膜乱視と水晶体乱視がちょうど打消しあう状況にある症例でハードコンタクトレンズを処方すると,角膜乱(59)図4円錐角膜での,裸眼(A)およびハードコンタクトレンズ装用時(B)の高次収差のベクトル解析およびLandolt環の網膜像シミュレーション(文献8より)AB図5正常眼(A)と円錐角膜(B)での,裸眼およびハードコンタクトレンズ装用時のコマ収差のベクトル解析(文献8より)CONTKC&KCSARMS(μm)RMS(μm)BwithoutCLwithCLKCwithoutCLKCwithCLKCSwithoutCLKCSwithCL———————————————————————-Page41470あたらしい眼科Vol.24,No.11,2007視が矯正されることによって水晶体乱視が顕性化して残余乱視となることが知られているように,円錐角膜でハードコンタクトレンズによって角膜前面の不正乱視を矯正すると,角膜後面の突出による残余不正乱視が顕性化することが示唆された.この残余不正乱視を矯正するには,高次収差矯正可能なカスタムのソフトコンタクトレンズの開発が望まれる9).近年オルソケラトロジーレンズが注目されているが,オルソケラトロジーでは角膜形状を変形させることによって近視矯正を行うことから,高次収差が矯正量に比例して増加して,コントラスト感度も低下することが知られている1013).IVコンタクトレンズ前涙液層の影響コンタクトレンズ前涙液層は,正常角膜前涙液層に比較して,その厚みが薄く,かつ不安定であることが知られている.コンタクトレンズ装用時のVDT(visualdisplayterminal)作業などに伴う瞬目減少時や乾燥した環境,あるいは風が強い場所でくもりやすいのは,このためと考えられている.そこで保湿効果のある素材を含むソフトコンタクトレンズなども開発されている.このコンタクトレンズ前涙液層の瞬目や乾燥に伴う変化で高次収差が変化すると仮定すると,高次収差を連続して測定する必要がある.そこで,筆者らは1秒後ごとに連続測定可能な波面センサーを開発し,瞬目後の高次収差の経時的変化を測定した14).すると,正常眼においては,瞬目後10秒間の変化は,大多数の症例においては,安定するかやや動揺があるものの,基本的に変化に乏しかった.しかしながら20%の症例では,瞬目後に高次収差が経時的に増加し,つぎの瞬目で低下後再上昇する,「のこぎり型」を示すことが判明し,これらの症例は正常ではあるが,BUT(tearlmbreakuptime)短縮型のドライアイの前段階であると推測された.この方法を用いて,正常眼およびソフトコンタクトレンズ装用時に乾燥感が強い症例で,通常のグループIVの素材の毎日使い捨てソフトコンタクトレンズ(ワンデーアキュビューR)と,それに保湿成分が加えられたレンズ(ワンデーアキュビューRモイストTM)の比較を行った.その結果,正常眼では両者に著明な差は認められなかったが,ソフトコンタクトレンズ装用時に乾燥感が強い症例では,保湿成分のないレンズではのこぎり型のパターンを生じたのに比較して,保湿成分を含むレンズでは安定型のパターンが得られ,保湿成分のコンタクトレンズ装用時の光学的特性に対する有効性が定量的に示された15).Vコンタクトレンズの動き,安定位置,および光学設計レンズの球面度数が異なると,それに伴って球面収差も変化することが知られている16).そのため,球面デザインのレンズにおける球面収差や,球面と非球面デザインのコンタクトレンズで,コントラスト感度や高次収差が両者でどのように異なるか検討がなされている1719).コンタクトレンズの光学系としての一つの大きな特徴は,コンタクトレンズの光軸と瞳孔中心と固視点を結ぶ照準線が必ずしも共軸ではないことである.その場合,コンタクトレンズの光軸に斜めに入射する光線によって生じるコマ収差や非点収差が持ち込まれる.よって,コンタクトレンズの処方では装用時の光学的特性を良好にするため,コンタクトレンズの安定位置が角膜中央になるようにすることが鉄則となっている.しかしながら,コンタクトレンズは瞬目によって移動することは不可避であり,コンタクトレンズの球面度数が強い場合や,非球面であった場合には,これらの収差をいっそう考慮する必要がある.従来,コンタクトレンズの光学設計は,図6左のごとく,レンズ単体で設計されていた.この方法は,設計も簡単で,製造上も管理しやすい.しかし,この方法で非球面のコンタクトレンズを設計すると,中央に安定する場合には良好な光学的特性を提供することが可能であるが,レンズが瞬目に伴って偏心した場合には,かえってコマ収差などが出現する可能性がある.その解決策としては,図6右に示すように,装用状態を考慮してコンタクトレンズと眼球光学系で設計するという方法がある3,5).これにより,レンズの中央安定時とレンズの偏位時を想定し,中央に安定しているときに光学的特性が最良でなくとも,レンズが移動しているときを含めて継続的に良質な光学特性を得ることができる.このレンズの動きに対応した設計も,経時的に良好なQOVを提供(60)———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.24,No.11,20071471(61)する方法としては,一つの解決策である.さらに,最近ではバイフォーカルコンタクトレンズ20)やトーリックコンタクトレンズなど,レンズの光学設計が複雑なものが多数登場してきており,その評価も今後重要になってくるであろう.おわりにコンタクトレンズ装用眼で高次収差を測定すると,コンタクトレンズ装用時の,球面度数,あるいは残余乱視とよばれる正乱視の度数と軸のみだけでなく,残余不正乱視ともよぶべき高次収差を記録し,コンタクトレンズ装用者の視機能を推測することが可能となる3,4).さらに,光学系が動く,コンタクトレンズ前涙液層が不安定であるという特殊性から,コンタクトレンズ装用者のQOVを評価する際には,高次収差の経時的変化を評価することも意義がある.通常の視力表と球面度数と乱視度数と軸による従来からの検査に加えて,波面センサーによる収差測定とコントラスト検査が,コンタクトレンズ装用者のQOVをいっそう向上させることに役立つと思われる.文献1)HongX,HimebaughN,ThibosLN:On-eyeevaluationofopticalperformanceofrigidandsoftcontactlenses.OptomVisSci78:872-880,20012)DorronsoroC,BarberoS,LlorenteLetal:On-eyemea-surementofopticalperformanceofrigidgaspermeablecontactlensesbasedonocularandcornealaberrometry.OptomVisSci80:115-125,20033)洲崎朝樹,前田直之,不二門尚:コンタクトレンズの光学特性とQualityofVision.視覚の科学27:3-11,20064)根岸一乃:波面収差解析のCL矯正への応用波面収差から従来法新設計非球面従来設計非球面中央安定時瞬目偏位時装用状態を考慮した方法図6コンタクトレンズの設計法———————————————————————-Page61472あたらしい眼科Vol.24,No.11,2007(62)みたコンタクトレンズ矯正の特徴.日コレ誌48:198-200,20065)前田直之:不正乱視とコンタクトレンズ.日コレ誌49:2-9,20076)RobertsB,AthappillyG,TinioBetal:Higherorderaberrationsinducedbysoftcontactlensesinnormaleyeswithmyopia.EyeContactLens32:138-142,20067)JeongTM,MenonM,YoonG:Measurementofwave-frontaberrationinsoftcontactlensesbyuseofaShack-Hartmannwave-frontsensor.ApplOpt44:4523-4527,20058)KosakiR,MaedaN,BesshoKetal:Magnitudeandorien-tationofZerniketermsinpatientswithkeratoconus.InvestOphthalmolVisSci48:3062-3068,20079)SabesanR,JeongTM,CarvalhoLetal:Visionimprove-mentbycorrectinghigher-orderaberrationswithcustom-izedsoftcontactlensesinkeratoconiceyes.OptLett32:1000-1002,200710)HiraokaT,MatsumotoY,OkamotoFetal:Cornealhigh-er-orderaberrationsinducedbyovernightorthokeratolo-gy.AmJOphthalmol139:429-436,200511)村上順子,杉田達:オルソケラトロジーによる高次収差変化と患者満足度およびWavefrontLaserInSituKerato-mileusisとの比較.眼紀56:7-10,200512)StillitanoIG,ChalitaMR,SchorPetal:Cornealchangesandwavefrontanalysisafterorthokeratologyttingtest.AmJOphthalmol144:378-386,200713)HiraokaT,OkamotoC,IshiiYetal:Contrastsensitivityfunctionandocularhigher-orderaberrationsfollowingovernightorthokeratology.InvestOphthalmolVisSci48:550-556,200714)KohS,MaedaN,HiroharaYetal:Serialmeasurementsofhigher-orderaberrationsafterblinkinginnormalsub-jects.InvestOphthalmolVisSci47:3318-3324,200615)KohS,MaedaN,HamanoTetal:Eectofinternallubri-catingagentsofdisposablesoftcontactlensesonhigher-orderaberrationsafterblinking.Eye&ContactLens,inpress16)CoxI,HoldenBA:Softcontactlens-inducedlongitudinalsphericalaberrationanditseectoncontrastsensitivity.OptomVisSci67:679-683,199017)VazTC,GundelRE:High-andlow-contrastvisualacu-itymeasurementsinsphericalandasphericsoftcontactlenswearers.ContLensAnteriorEye26:147-151,200318)DietzeHH,CoxMJ:On-ando-eyesphericalaberrationofsoftcontactlensesandconsequentchangesofeectivelenspower.OptomVisSci80:126-134,200319)DietzeHH,CoxMJ:Correctingocularsphericalaberra-tionwithsoftcontactlenses.JOptSocAmAOptImageSciVis21:473-485,200420)HiroharaY,MihashiT,SuzakiAetal:EvaluatingopticalqualityofabifocalsoftcontactlensinnearvisionusingaShack-Hartmannwavefrontsensor.OpticalReview13:396-404,2006