———————————————————————-Page10910-1810/07/\100/頁/JCLS過性が十分ではなかった.特に近視度数が強いソフトコンタクトレンズ(図1)やトーリック(図2)やバイフォーカルのような特殊ソフトコンタクトレンズではレンズ厚が厚くなり,角膜内皮細胞障害,角膜血管新生,pig-mentedslideなどの慢性の酸素不足による眼障害をひき起こす.またコンタクトレンズ装用による酸素不足は,緑膿菌の角膜上皮への接着を助長させることも報告されている1,2).安全なソフトコンタクトレンズの装用には,より高い酸素透過性の素材が必要であった.そこに登場したのがシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズである.シリコーンは非常に酸素透過性が高い素材であるが,疎水性であり,コンタクトレンズの素材として使用するには難点があった.シリコーンを含む含水性の素材を作ることが開発目標であったが,水と油を混ぜるようなものであり,透明な素材を作製することはIシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズの必要性ハードコンタクトレンズ装用下の眼球への酸素供給は,おもに瞬目によるレンズ移動に伴う涙液交換に依存しているが,ソフトコンタクトレンズ装用下では涙液交換に伴う酸素供給はわずかであり,おもにレンズ自体を透過する酸素に依存している.ソフトコンタクトレンズ装用下の眼球への酸素供給量を増やすには,素材の酸素透過性を上げることが必須である.しかし,従来のハイドロゲル素材の酸素透過性は,素材に含まれる自由水に依存しているため,水の酸素透過係数〔Dk値,単位=×10-11(cm2/sec)・(m?O2/m?×mmHg)〕である80を超えることは理論的に不可能であった.つまり,既存のハイドロゲル素材のソフトコンタクトレンズでは酸素透(3)???*MotozumiItoi:道玄坂糸井眼科医院〔別刷請求先〕糸井素純:〒150-0043東京都渋谷区道玄坂1-10-19糸井ビル1F道玄坂糸井眼科医院特集●コンタクトレンズの流れを読むあたらしい眼科24(6):697~703,2007シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ????????????????????????????????糸井素純*図2ソフトコンタクトレンズの断面右:球面レンズ,左:トーリックレンズ(プリズムバラスト).図1ソフトコンタクトレンズ(球面)の断面右:-2D,左:-10D.———————————————————————-Page2???あたらしい眼科Vol.24,No.6,2007なかなかできなかった.その後,たとえば現在日本で販売されているO2オプティクスでは,シロキサンをポリマー化せずにマクロモノマーの状態で含水性モノマーと二層性構造を形成させることにより透明化に成功し,シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズが誕生した.シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズはハイドロゲル相とフルオロシロキサン相の二層性構造を有し,フルオロシロキサン相はハイドロゲル相に比べて非常に多くの酸素を透過する(図3).このため,これまでのハイドロゲルコンタクトレンズとは異なり,シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズでは低含水性でありながら,非常に高い酸素透過性を実現することができる(図4,5).II海外のシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ市場1998年にメキシコで最初のシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズとしてCIBAVision社からNIGHT&DAY?(日本で発売されているO2オプティクスと同一製品)が発売開始された.その後,1999年にBausch&Lomb社のPureVision?の発売が欧米で開始され,当初は1カ月間の連続装用としてシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズは普及した.しかし,すべてのシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ装用者が1カ月間の連続装用を継続することは困難であり,徐々に,終日装用して使用される割合が高くなっていった.このような状(4)図3シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズの二相性構造TRISフルオロシロキサン相ハイドロゲル相図4含水率と酸素透過性(Dk値)200180160140120100806040200酸素透過係数シリコーンハイドロゲル水020406080100含水率(%)ハイドロゲル(従来の含水性SCL素材)図5シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズの酸素透過率200180160140120100806040200酸素透過率(Dk/L値)ACUVUE?ACUVUE?ADVANCETMPureVision?O2OPTIXTMACUVUE?OASYSTMbio?nityTMNIGHT&DAY?4086110138147160175Dk/L:酸素透過率〔×(10-9cm2/sec)・(m?O2/m?×mmHg)〕———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.24,No.6,2007???況のなかで,2004年1月にはシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズとして,初めてJohnson&Johnson社のACUVUE?ADVANCETMが2週間終日装用というカテゴリーで米国にて発売された.その後,CIBAVision社のO2OPTIXTM(日本で発売されているO2オプティクスとは異なる製品)が欧州で2004年6月に2週間終日装用と1週間連続装用のカテゴリーで発売され,2005年にJohnson&Johnson社のACUVUE?OASYSTMとCooperVision社のbio?nityTMが欧州で2週間終日装用というカテゴリーで発売開始された.このように海外ではシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズがすでに6製品(表1)発売され,急速な普及をしており,2006年1月現在で,シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズは米国のソフトコンタクトレンズ市場の37%を占めている3)(図6).2007年度には過半数を超えるであろうといわれている.シリコーンハイドロゲル素材のコンタクトレンズは酸素透過性が高く,デザイン上,レンズ厚が厚くなってしまうトーリックコンタクトレンズで有用性が高い.海外では,すでにJohnson&Johnson社のACUVUE?ADVANCETMforAstigmatism,Bausch&Lomb社のPureVision?Toricが発売されている.CIBAVision社のO2OPTIXTMToricも限定的な市場であるが米国で発売されている.これらのレンズが日本市場に登場する時期もそう遠くはないであろう.III日本のシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ市場日本では2004年10月にチバビジョン社がO2オプティクス(図7)(海外ではNIGHT&DAY?として発売(5)表1海外で発売されているシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズレンズ名NIGHT&DAY?(日本ではO2オプティクス)PureVision?ACUVUE?ADVANCETMO2OPTIXTMACUVUE?OASYSTMbio?nityTM販売会社CIBAVisionBausch&LombVistakonCIBAVisionVistakonCooperVisionDk値*114010160110103128Dk/L値*217511086138147160含水率(%)243647333848装用方法1カ月間連続装用1カ月間連続装用2週間終日装用2週間終日装用2週間終日装用2週間終日装用1カ月間終日装用1カ月間終日装用1週間連続装用*1Dk:酸素透過係数〔Dk値単位=×10-11(cm2/sec)・(m?O2/m?×mmHg)〕.*2Dk/L:酸素透過率〔Dk値単位=×10-9(cm2/sec)・(m?O2/m?×mmHg)〕.図6米国のソフトコンタクトレンズ市場(2006年1月)─素材による分類低含水性8.0%中含水性49.0%高含水性6.0%シリコーンハイドロゲルCL37.0%図7O2オプティクス(チバビジョン社)———————————————————————-Page4???あたらしい眼科Vol.24,No.6,2007されている)を1カ月交換終日装用レンズのカテゴリーで発売開始した.2006年2~3月の調査では日本のソフトコンタクトレンズ市場の5.6%(図8)を占めているにすぎない.諸外国に比べて,シリコーンハイドロゲルレンズの市場拡大が遅いのにはいくつかの理由が考えられるが,最も大きな理由は1カ月交換というカテゴリーであったと筆者は考えている.欧州では1カ月交換レンズのカテゴリーが圧倒的なシェアを占めていたが,日本では頻回(2週間)交換レンズがソフトコンタクトレンズ市場の約45%,1日使い捨てレンズが約35%であり,1カ月交換レンズは10%程度と一般的でない(図9).このため1カ月交換レンズであるO2オプティクスの爆発的な普及ができなかったと考える.2007年3月にジョンソン・エンド・ジョンソン社から2種類のシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズが発売された.アキュビュー?アドバンスTM(図10)とアキュビュー?オアシスTM(図11)である.両レンズともに2週間終日装用レンズのカテゴリーであり,装用感も既存のハイドロゲルコンタクトレンズに勝るとも劣らない.両レンズは発売当初から急激に市場に浸透している.これらのレンズ以外にもボシュロム社のボシュロムピュアビジョン?とボシュロムピュアビジョン?〈乱視用〉が1週間連続装用のカテゴリーとして,メニコン社の2ウィークプレミオが2週間終日装用のカテゴリーとして,2007年4月20日現在,すでに国の認可を受けており,年内には日本市場に登場してくるものと思われる.日本市場においてもシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズの急激な市場拡大が予想される.IV各世代のシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズの特徴1998年に最初のシリコーンハイドロゲルコンタクト(6)図8日本のソフトコンタクトレンズ市場(2006年2~3月)─素材による分類低含水性15.6%中含水性57.9%高含水性20.9%シリコーンハイドロゲル5.6%図9日本のソフトコンタクトレンズ市場(2006年2~3月)─カテゴリーによる分類1日使い捨て34.6%2週間交換45.8%従来型7.3%1カ月交換10.8%3~6カ月交換0.3%1年交換0.4%1週間連続装用0.9%図10アキュビュー?アドバンスTM(ジョンソン・エンド・ジョンソン社)図11アキュビュー?オアシスTM(ジョンソン・エンド・ジョンソン社)———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.24,No.6,2007???レンズとしてCIBAVision社からNIGHT&DAY?が発売開始され,その後,次々と新製品が登場し,欧米では現在,6製品が販売されている.各コンタクトレンズの素材や規格の違いを表1に示したが,これらのシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズは大きく3つの世代にグループ分けができる.1.第一世代のシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ第一世代のシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズとしてあげられるのが,CIBAVision社のNIGHT&DAY?(日本で発売されているO2オプティクスと同一製品)とBausch&Lomb社のPureVision?である.発売当初は1カ月間連続装用のコンタクトレンズとして普及した.その後,海外でも終日装用としても使用されるようになった.両製品とも含水性が低く,非常に酸素透過性が高い反面,レンズ硬がやや硬く,そのために従来の使い捨てソフトコンタクトレンズに比べて装用感がやや劣り,特有の合併症〔SEALs(superiorepithelialarcuatelesions)(図12),巨大乳頭結膜炎〕の発生の問題があった.2.第二世代のシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ第二世代のシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズとして位置づけられるのがJohnson&Johnson社のACUVUE?ADVANCETMである.これまでのシリコーンハイドロゲルレンズよりも含水率が高く,素材の酸素透過性はDk60と低下したが,レンズ硬をこれまでのシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズよりも軟らかくし,従来の使い捨てソフトコンタクトレンズに装用感を近づけた.シリコーンハイドロゲル特有の合併症と考えられたSEALsや巨大乳頭結膜炎の発生も少なくなった.3.第三世代のシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ第三世代のシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズとしてあげられるのが,Johnson&Johnson社のACU-VUE?OASYSTM,CIBAVision社のO2OPTIXTM(日本で発売されているO2オプティクスとは異なる製品),CooperVision社のbio?nityTMである.これらのシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズは,いずれもDk100以上で,高酸素透過性でありながら,第一世代のレンズに比べて,レンズ硬が軟らかく,装用感も向上している.特有の合併症(SEALs,巨大乳頭結膜炎)の問題も改善されている.最近,米国でBausch&Lomb社のPureVision?の改良版が発売されているが,以前のものよりもレンズ硬が軟らかくなっており,このカテゴリーに入るものと推測する.Vレンズケア製品との相性シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズは塩酸ポリ(7)図12O2オプティクス装用者にみられたSEALs図13O2オプティクスとPHMBを含む多目的溶剤使用者にみられた角膜上皮障害———————————————————————-Page6???あたらしい眼科Vol.24,No.6,2007ヘキサニド(PHMB)を含む多目的溶剤(MPS)との相性が悪いことが国内外で報告されている4~6).筆者らが行った臨床実験でも,PHMBを含むMPSに浸漬したO2オプティクスを装用すると,装用初期にびまん性の点状表層角膜症が発症した(図13).ただし,同じPHMB製品であっても,配合される他の成分により,角膜上皮障害の程度は異なった.海外では前述したように,すでにシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズは6製品販売されている.Andraskoはシリコーンハイドロゲルコンタクトレンズ5製品と米国で販売されているレンズケア7製品の相性の詳細な報告をしている7).彼の実験結果は,ホームページ(http//www.staininggrid.com)上で,常にアップグレードされている(図14).その結果をみると,コンタクトレンズの種類により,MPSとの相性が大きく異なることが報告されている.PHMBを含まないMPSはシリコーンハイドロゲルレンズと比較的良い相性を示している.ただし,彼の報告では日本で発売されているMPSは2製品しか含まれていない.また新品のコンタクトレンズをパッケージから開け,コンタクトレンズをすすがずに,MPSに直接浸漬しているためにパッケージ内の保存液に含まれる成分の影響も考えられ,必ずしも,通常のコンタクトレンズの使用状況に即しているとはいえない.いずれにしても,シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズの安全な装用のためには,日本でもAndraskoの研究のように,シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズとレンズケア製品の相性の確認が必要であろう.文献1)LadagePM,YamamotoK,RenDHetal:E?ectsofrigid(8)図14シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズと米国で販売されているレンズケア製品の相性(ホームページより転載)———————————————————————-Page7あたらしい眼科Vol.24,No.6,2007???andsoftcontactlensdailywearoncornealepithelium,tearlactatedehydrogenase,andbacterialbindingtoexofo-liatedepithelialcells.?????????????108:1279-1288,20012)RenDH,PetrollWM,JesterJVetal:TherelationshipbetweencontactlensoxygenpermeabilityandbindingofPseudomonasaeruginosaadherencetoexfoliatedhumancornealepithelialcells.??????25:80-100,19993)MorganPB,WoodsCA,JonesDetal:Internationalcon-tactlensprescribingin2006.ContactLensSpectrum/Jan-uary:34-38,20074)JonesL,MacDougallN,SorbaraGL:Asymptomaticcor-nealstainingassociatedwiththeuseofbara?lconsilicone-hydrogelcontactlensesdisinfectedwithpolyaminopropylbiguanide-preservedcareregimen.?????????????79:753-761,20025)AmosC:Performanceofanewmultipurposesolutionusedwithsiliconehygrogels.????????227:18-22,20046)工藤昌之,糸井素純:シリコーンハイドロゲルコンタクトレンズと消毒剤との相性.あたらしい眼科22:1349-1355,20057)AndraskoGJ,RyenKA:EvaluationofMPSandsiliconehydrogellenscombinations.ReviewCornea&ContactLenses/March:36-42,2007(9)