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眼内レンズセミナー:前房内バブルを利用した眼球水平の視覚化「レベラー法」

2026年7月31日 金曜日

眼内レンズセミナー監修/大鹿哲郎・佐々木洋470.前房内バブルを利用した眼球水平の坪井孝太郎愛知医科大学眼科学教室視覚化「レベラー法」眼内レンズ強膜内固定術では眼球の傾きが眼内レンズ傾斜・偏心の原因となる.前房内ガスバブルを水平器として用い,眼球水平を客観的に可視化する「レベラー法」を考案した.本法は簡便でかつ再現性が高く,左右対称な固定を補助し,術後合併症低減に有用である.●強膜内固定の発展と課題眼内レンズ(intraocularlens:IOL)強膜内固定術は,従来のCIOL縫着術と比較して手技が簡便であることや術後安定性に優れることから,近年主流の術式となっている.一方で,通常のCIOL.内固定と異なり,IOLの位置決定が術者の操作に依存するため,術後のCIOL傾斜や偏心が課題となる.IOLの傾斜はレンズ性乱視を生じさせ,術後屈折誤差や裸眼視力低下の要因となる.また,IOLの偏心は高次収差,とくにコマ収差の原因となる.さらに,IOL位置異常は虹彩との接触による炎症やCuveitis-glaucoma-hyphema(UGH)症候群の原因となることも報告されており,IOLの固定位置は単なる屈折精度の問題にとどまらず,術後合併症を回避するうえでも重要である.IOLの傾斜および偏心は,術式特有の構造的要因に起因することが近年の研究で示されている.とくに,IOLChapticの左右非対称性や強膜トンネル長の左右差が,術後CIOL傾斜および偏心の主因であることが報告されている.Parkらはモデル眼を用いた検討において,強膜トンネルの位置や長さに左右差が生じた場合は,IOLの傾斜および偏心が有意に増大することを示した1).また,hapticが過長となった症例で高度のCIOL傾斜を呈し,術後にChaptic長を調整することで傾斜および屈折異常が改善した症例報告もなされている2).すなわち,術中におけるChaptic固定精度が,強膜内固定後のCIOL位置決定に重要な役割を果たしている.C●理想の強膜内固定をめざして強膜穿刺位置の決定やトンネル作製を行う際に,眼球が水平でない状態で手技を進めた場合は,術者が意図した左右対称の固定を達成することは困難となる.とくにCYamane法3)では,30ゲージ針を用いて強膜トンネルを作製するため,穿刺時の抵抗によって眼球が傾く可能性がある.しかし,煩雑な操作や針先への集中により眼球の傾きに気づかず手技を進めてしまうと,非対称な強膜穿刺となり,IOL傾斜や偏心の原因となりえる.(65)C0910-1810/26/\100/頁/JCOPY術中に眼球の水平を担保する方法としては,角膜反射や瞳孔を基準とする視覚的評価が一般的である.顕微鏡照明によるCPurkinje像や虹彩縁,瞳孔中心を指標として眼球の回旋や傾きを確認し,患者頭位や顕微鏡角度を微調整することで眼球を水平化する.この手法は特別な器具を必要とせず日常診療で広く用いられている一方,術者の主観に依存しやすく,とくに眼球偏位を伴う症例では微小な傾きを見逃す可能性がある.このような課題を克服するため,筆者らは前房内に注入したガスバブルを利用して眼球の水平を視覚化する「レベラー法」を考案した.家庭などで使用される水平器は,液体中の気泡が重力に従って常にもっとも高い位置に移動する性質を利用した装置である.装置が水平な状態では気泡は中央に位置し,傾きが生じると高い側へ移動する.同様に,前房内に注入されたガスバブルは前房中でもっとも高い位置に集まり,その上縁は常に真の水平面を反映するため,眼球の傾きを客観的に評価する指標として利用できる.筆者らはC5ccシリンジに空気を少量充填し,前房内に注入している.ガスバブルの上縁は常に真の水平を反映するため,これを基準として眼球の回旋や傾きを客観的に把握することが可能となる.また,ガスバブル自体が真円を描くことから,瞳孔や角膜との位置関係を通じて眼球中心の把握も容易となる(図1).術者はガスバブルの水平を確認しながら患者頭位や眼球姿勢を調整することで,より再現性の高い眼球水平化を達成できる.この方法は特別な機器を必要とせず,術中に即時かつ直感的に眼球の傾きを補正できる点で有用であり,強膜内固定におけるC.xationpointの左右対称性を高める補助的手段として有望であると考えている.実際の手順としては,IOL抜去および硝子体郭清後,30ゲージ針の刺入前に本手技を行っている(図2a).レンズ抜去時に注入した粘弾性物質が前房内に残存している場合には,ガス注入前に十分に除去する必要がある.前房内がクリアになったのち,適量の空気を注入する(図2b).ガスバブルの位置を角膜中心に維持しながら刺入部位をマーキングあたらしい眼科Vol.43,No.7,2026C781図1前房内ガスバブルを活用した水平視覚化「レベラー法」a:眼球が下転しておりガスバブルがやや上方に移動している.Cb:鑷子を用いてガスバブルを角膜中心に保持しマーキングを行っている.Cc.d:角膜のみを拡大し,補助線(C○)を描くと中心のズレが明瞭になる.両者の中心点のズレは図Ccで角膜径の約C5%,図Cdでは約1%であった.し,30ゲージ針による強膜穿刺を行う(図2c).この際も,トロカールなどを把持して眼球の水平を保ちながら操作することで,再現性の高い手術を行うことが可能となる.C●おわりに本術式の注意点としては,ガスバブルと角膜輪部の位置関係から水平を把握するので,結膜が侵入している場合に輪部位置を見誤らないこと,前房内に粘弾性物質が残ることでバブルの移動を妨げていないかを確認することが重要である.近年,多焦点CIOLの縫着を試みるケースも増えてきており,IOLの傾斜,偏心はそのような場合にとくに重要になってく図2レベラー法の手順a:眼内レンズ抜去,硝子体郭清後に行う.Cb:前房内に適量のガスバブルを注入し,角膜中心に保持しながらマーキングを行う.この際に角膜輪部とバブルの外周が平行であることが目安となる.c:30ゲージ針を刺入する際にも,同様にガスバブルが角膜中心に維持されていることが重要である.Cd:強膜内固定後,角膜前面とCIOLのCPurkinje像が揃っており,角膜に対して水平な固定ができていることがわかる.ると思われる.簡便に行え,眼球の水平確認を容易にする本術式が,IOL強膜内固定術の助けになれば幸いである.文献1)ParkCCH,CMoonCK,CKimCJHCetal:ContributionCfactorsCofCe.ectivelensposition,tilt,anddecentrationduring.angedscleralC.xationCofCintraocularlens:ACModelCEyeCStudy.CRetinaC44:324-332,C20242)KurimoriHY,InoueM,HirakataA:Adjustmentsofhap-ticsClengthCforCtiltedCintraocularClensCafterCintrascleralC.xation.AmJOphthalmolCaseRepC10:180-184,C20183)YamaneCS,CSatoCS,CMaruyama-InoueCMCetal:FlangedCintrascleralCintraocularClensC.xationCwithCdouble-needleCtechnique.OphthalmologyC124:1136-1142,C2017

コンタクトレンズセミナー:トーリックソフトコンタクトレンズ(2)

2026年7月31日 金曜日

■■コンタクトレンズセミナーあたらしいコンタクトレンズ診療監修前田直之4.トーリックソフトコンタクトレンズ(2)山岸景子かしはら山岸眼科クリニックトーリックソフトコンタクトレンズの適応以前から日本は世界水準に比べて乱視用ソフトコンタクトレンズ(以下,トーリックSCL)の処方率が少ない1).しかし近年,残余乱視がある程度以上残っていると読書スピードやパソコンの作業効率が落ちる2),眼精疲労を起こしやすい3)という発表がなされ,トーリックSCLの必要性が見直されている.ではどの程度の乱視からトーリックSCLを処方すべきなのであろうか?当院では眼鏡矯正視力を基に直乱視で-1.00D,倒乱視で-0.75D以上の乱視のある患者に対して,積極的にトーリックSCLの処方を検討している.ただし,斜乱視,遠視,強度近視など,屈折状態によってはトーリックSCLの規格が存在しない場合があるので,患者に話す前に屈折状態を確認するように気をつける.各社のトーリックSCLのラインナップは5月号の表1,2を参照されたい.トーリックSCLの度数決定度数決定は他覚的屈折度数ではなく,自覚屈折度数(眼鏡矯正視力)を基に行う.1.軸度軸度は15°以上ずれると矯正効果が下がり,30°以上ずれると円柱度数による矯正効果はまったくなくなってしまう.矯正視力測定時,レフ値を参考にしてCLの規格を考えながら,軸度の検査をすると時間短縮できる.2.球面度数・円柱度数眼鏡矯正視力度数に頂点間距離補正を行い決定する.トーリックSCLの度数選択早見表を基にすると便利である(図1).症例1患者は31歳,女性.球面レンズを装用中だが,眼が疲れやすいという訴えで来院.SCL視力:右眼(0.8×SCL),左眼(1.0×SCL)(両眼とも度数は-8.00D)オーバーレフ:右眼sph+0.25cyl-1.25Ax173°,左眼sph+0.75cyl-1.75Ax9°図1トーリックSCL度数早見表の一例(日本アルコン社提供)(63)あたらしい眼科Vol.43,No.7,20267790910-1810/26/\100/頁/JCOPY左眼右眼右眼sph-7.75cyl-1.00Ax180°左眼sph-7.75cyl-1.50Ax180°図2症例1の頂点間距離補正矯正視力:右眼(1.0×sph-8.50cyl-1.25Ax180°),左眼(1.0×sph-8.50cyl-1.75Ax180°).矯正視力でも円柱度数が1.0Dを超えていた.まずは図2のように頂点間距離補正した.過矯正にならないようトライアルレンズは右眼sph-7.50cyl-0.75Ax180°,左眼sph-7.50cyl-1.25Ax180°を選択した.装用テスト:右眼(1.0×),左眼(1.0×)患者は球面の過矯正がとれて残余乱視が軽減したため,パソコン業務がしやすくなり眼精疲労も減ったととても喜んでいた.症例2患者は17歳,女性.球面レンズを装用中視力がよく出ていたが,オーバーレフで残余乱視が増えてきた.右眼(1.0×SCL),左眼(1.0×SCL)(右眼sph-4.50D,左眼sph-4.75D)オーバーレフ:右眼sph-0.50cyl-1.25Ax7°,左眼sph-1.00cyl-1.25Ax167°このため上からcyl-0.75Ax180°を追加して検査した.明室ではとくに変化がなかったが,半暗室では球面レンズで0.7であった両眼近方視力が1.0に改善し,本人の希望でトーリックSCLに変更となった.10~20代は調節力が豊富なので明室検査では視力が出てしまうが,きっちり検査をすれば本人がトーリックSCLを希望することも多い.定期オーバーレフで屈折度数の変化を見守ることが大切である.おわりに患者が自分で乱視の存在に気づくことはない.患者に快適な生活を送ってもらうためには,われわれの方から積極的に働きかけて,トーリックSCLのメリットについて説明していくことが重要である.その際に,やや暗い部屋で近方視力を計ったりコントラスト感度を測定したりと検査に工夫をし,「夜になると数字の3,6,8が見えにくいか」とか「夜の運転で見えにくいか」など具体的に問診すると患者の理解を深めるきっかけにつながる.

写真セミナー:虹彩支持型前房型有水晶体眼内レンズ挿入後に発症した角膜内皮機能不全 

2026年7月31日 金曜日

写真セミナー監修/福岡秀記山口剛史506.虹彩支持型前房型有水晶体眼内レンズ外間梨沙慶應義塾大学医学部眼科学教室挿入後に発症した角膜内皮機能不全図2図1のシェーマ①CpIOL②部分的な角膜浮腫図1初診時の前眼部写真(左眼)虹彩支持型前房型有水晶体眼内レンズの虹彩支持部近傍の部分的な角膜浮腫を認めた.図3図1のフルオレセイン染色同部位の角膜上皮浮腫を認めた.図4角膜内皮移植手術後(左眼)(61)あたらしい眼科Vol.43,No.7,2026C7770910-1810/26/\100/頁/JCOPY虹彩支持型の前房型有水晶体眼内レンズ(phakicintraocularlens:pIOL)は,2004年に米国で承認されたPMMA素材のArtisanとシリコーン素材のArti.ex(ともにOphtec社)がある.症例は48歳,男性.10年前に他院で近視矯正目的にCArti.exを両眼に挿入した.術後の定期受診はなく,9年後のC5月に左眼の痛みを訴えて筆者の病院を受診した.左眼角膜周辺部の虹彩支持部近傍の部分的な角膜浮腫を認めた.視力は右眼C1.2(n.c.),左眼C1.2(n.c.)であった.角膜内皮細胞密度(endothelialcelldensity:ECD)は右眼(角膜中央)C612Ccells/mm2,左眼(角膜中央)605Ccells/mmC2,左眼(角膜周辺虹彩支持部近傍)測定不能で,ECD減少を認めた.同年C8月に左眼CpIOL抜去と白内障同時手術を実施した.術後の左眼視力はC0.02(n.c.)であった.術後に水疱性角膜症の増悪を認めたため,同年C9月にCDes-cemet膜非.離角膜内皮移植術(non-DescemetCstrip-pingCandCautomatedCendothelialkeratoplasty:nDSAEK)を実施した.nDSAEK後C1カ月の左眼視力は(1.2C×sph-1.75DCcyl-1.00DAx55°)であった.虹彩支持型CpIOL挿入眼ではCECD減少例が報告されており,1年あたりC64cells/mmC2(p<0.001,SE3.58)のCECD減少を認めるという報告がある1).ECD減少の機序としては,虹彩支持部の角膜内皮間距離の短縮やそれによる炎症の関与等が示唆される2,3).虹彩支持型pIOL挿入後にCECD低下を理由に抜去した症例の割合の報告はC0%からC32%とばらつきが大きく4),挿入から抜去までの期間は平均7~13.8年であった4).2017年の米国眼科学会によるガイドラインでは,pIOL挿入後に術前と比較してC20%以上のCECD減少,またはCECDがC1,500Ccells/mmC2以下の場合に4~6カ月ごとの診察が必要とし,その後の期間における年間ECD喪失率がC1%/年以上であればCpIOL抜去を検討してもよいとしている5).虹彩支持型CpIOL眼においては,挿入後にCECDを定期的にフォローし,ECD減少を認める場合には適切なタイミングでレンズ抜去を検討することが重要である.文献1)JonkerCSMR,CBerendschotCTJM,CRondenCAECetal:Five-yearCendothelialCcellClossCafterCimplantationCwithCArti.exCMyopiaandArti.exToricphakicintraocularlenses.AmJOphthalmol194:110-119,C20182)YoonHY:CorneaCendothelialCcellClossCbeforeCandCafterCexplantationCofCArtisanCandCArti.exCiris-.xatedCphakicCintraocularlenses.AmJOphthalmolC270:52-60,C20253)YamaguchiT,NegishiK,YukiKetal:AlterationsintheanteriorCchamberCangleCafterCimplantationCofCiris-.xatedCphakicCintraocularClenses.CJCCataractCRefractCSurgC34:C1300-1301,C20084)Moura-CoelhoN:Descemet’smembraneendothelialkeraC-toplastyCforCcornealCendothelialCfailureCsecondaryCtoCthreeCtypesofphakicintraocularlens-Retrospectivestudy.ClinOphthalmol17:931-940,C20235)MacRae,CS,CHolladayCJT,CHilmantelCGCetal:Specialreport:CAmericanCAcademyCofCOphthalmologyCTaskCForceCrecommendationsCforCspecularCmicroscopyCforCpha-kicintraocularlenses.Ophthalmology124:141-142,C2017

眼科医が知っておくべきアトピー性皮膚炎治療のアップデート

2026年7月31日 金曜日

眼科医が知っておくべきアトピー性皮膚炎治療のアップデートUpdatesintheManagementofAtopicDermatitisforOphthalmologists葉山惟大*はじめにアトピー性皮膚炎(atopicdermatitis:AD)は強い.痒と湿疹を特徴とする慢性炎症性皮膚疾患であり,顔面や眼周囲は高頻度に罹患する部位である.1).とくに眼瞼部は皮膚が非常に薄く,外的刺激や摩擦の影響を受けやすいため,軽微な炎症でも症状が遷延しやすい.また,顔面病変は患者の整容面や生活の質(qualityoflife:QOL)に大きな影響を及ぼすことから,日常診療において重要な問題となる.2).従来,顔面・眼周囲病変に対してはステロイド外用薬が中心的に用いられてきた.しかし,眼周囲では皮膚萎縮,毛細血管拡張などの皮膚副作用に加え,長期使用による眼圧上昇や白内障などの眼合併症への懸念から,漫然とした継続使用は避けるべきとされている1,3).このため,近年のアトピー性皮膚炎診療では,ステロイド外用薬による寛解導入後に非ステロイド外用薬へ移行し,長期的な寛解維持をめざす治療戦略が重視されている.1).日本皮膚科学会の「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン」では,タクロリムス軟膏を中心とした非ステロイド外用薬によるプロアクティブ療法の有用性が示されている1,4,5).さらに近年では,ホスホジエステラーゼ(phos-phodiesterase:PDE)4阻害薬であるジファミラスト(モイゼルト)や,外用ヤヌスキナーゼ(Januskinase:JAK)阻害薬であるデルゴシチニブ(コレクチム)など,新たな非ステロイド外用薬が登場し,顔面・眼周囲病変に対する治療選択肢は大きく拡大した6,7).加えて,デュピルマブをはじめとする生物学的製剤やJAK阻害薬の導入により,中等~重症ADの治療体系は大きく変化している.一方で,デュピルマブ投与中に顔面病変が残存あるいは増悪するresidualfacialdermatitisが注目されており,顔面病変に対する局所治療の重要性は依然として高い.8).本稿では,顔面・眼周囲アトピー性皮膚炎の特徴を概説したうえで,わが国の最新ガイドラインを踏まえ,非ステロイド外用薬を中心とした実践的な治療戦略について解説する.I顔面・眼周囲アトピー性皮膚炎の特徴顔面・眼周囲は,ADにおいてとくに治療に難渋しやすい部位である.眼瞼部は人体でもっとも皮膚が薄い部位の一つであり,バリア機能が低下しやすく,外的刺激や摩擦の影響を受けやすい.9).また,汗,涙液,化粧品,点眼薬など,多様な外的因子が接触するため,刺激性接触皮膚炎やアレルギー性接触皮膚炎を合併しやすい点も特徴である.10).顔面病変は患者の整容面や社会生活への影響が大きく,QOL低下との関連が強いことが報告されている.11).さらに,.痒による掻破や慢性的な炎症によって色素沈着,苔癬化を生じやすく,症状が長期化しやすい.また,眼周囲の.破を繰り返すと眉毛外側の脱毛を生じることがあり,ヘルトゲ徴候(Hertoghesign)として.*KoremasaHayama:日本大学医学部皮膚科学系皮膚科学分野,日本大学医学部附属板橋病院アレルギーセンター〔別刷請求先〕葉山惟大:〒173-8610東京都板橋区大谷口上町30-1日本大学医学部皮膚科学系皮膚科学分野(1)(53)7690910-1810/26/\100/頁/JCOPY図1ヘルトゲ徴候眼周囲の.破を繰り返すと眉毛外側の脱毛を生じることがある.確実な診断と重症度評価現病歴,既往歴,家族歴,罹病範囲や重症度の評価(患者および家族の社会的背景も含めて)疾患と治療の目標(ゴール)の説明寛解導入療法かゆみや炎症を速やかに軽減する合併症治療・細菌感染症,ウイルス感染症真菌感染症:抗微生物薬の投与・バリシチニブ内服・紫外線療法・心身医学的療法などa:シクロスポリンは原則として連続投与期間は12週間以内とする.再投与が必要な場合は2週間以上の休薬期間をはさむ.b:中等症以上の難治状態に対してデュピルマブを導入後,6カ月を目安として寛解の維持が得られた場合には一時中止などを検討する.治療アドヒアランスへの配慮保湿外用薬・スキンケアの継続補助療法・抗ヒスタミン薬の内服・悪化因子の検索と除去・心身医学的アプローチなど図2アトピー性皮膚炎の診断治療アルゴリズム(文献1より引用)表1アトピー性皮膚炎の定義・診断基準(日本皮膚科学会)アトピー性皮膚炎の定義(概念)アトピー性皮膚炎は,増悪と軽快を繰り返す,.痒のある湿疹を主病変とする疾患であり,患者の多くはアトピー素因を持つ.アトピー素因:①家族歴・既往歴(気管支喘息,アレルギー性鼻炎・結膜炎,アトピー性皮膚炎のうちいずれか,あるいは複数の疾患),または②CIgE抗体を産生し易い素因.アトピー性皮膚炎の診断基準1..痒2.特徴的皮疹と分布①皮疹は湿疹病変・急性病変:紅斑,湿潤性紅斑,丘疹,漿液性丘疹,鱗屑,痂皮・慢性病変:浸潤性紅斑・苔癬化病変,痒疹,鱗屑,痂皮②分布・左右対側性好発部位:前額,眼囲,口囲・口唇,耳介周囲,頸部,四肢関節部,体幹・参考となる年齢による特徴乳児期:頭,顔にはじまりしばしば体幹,四肢に下降.幼小児期:頸部,四肢関節部の病変.思春期・成人期:上半身(頭,頸,胸,背)に皮疹が強い傾向.3.慢性・反復性経過(しばしば新旧の皮疹が混在する):乳児ではC2カ月以上,その他ではC6カ月以上を慢性とする.上記C1,2,およびC3の項目を満たすものを,症状の軽重を問わずアトピー性皮膚炎と診断する.そのほかは急性あるいは慢性の湿疹とし,年齢や経過を参考にして診断する.除外すべき診断(合併することはある)・接触皮膚炎・手湿疹(アトピー性皮膚炎以外の手湿疹を除外するため)・脂漏性皮膚炎・皮膚リンパ腫・単純性痒疹・乾癬・疥癬・免疫不全による疾患・汗疹・膠原病(SLE,皮膚筋炎)・魚鱗癬・ネザートン症候群・皮脂欠乏性湿疹診断の参考項目・家族歴(気管支喘息,アレルギー性鼻炎・結膜炎,アトピー性皮膚炎)・合併症(気管支喘息,アレルギー性鼻炎・結膜炎)・毛孔一致性の丘疹による鳥肌様皮膚・血清総CIgE値の上昇臨床型(幼小児期以降)・四肢屈側型・痒疹型・四肢伸側型・全身型・小児乾燥型・これらが混在する症例も多い・頭・頸・上胸・背型重要な合併症・眼症状(白内障,網膜.離など:とくに顔面の重症例)・伝染性軟属腫・伝染性膿痂疹・カポジ水痘様発疹症(文献C1より引用)るエビデンスが豊富であり,症状安定後も間欠的に外用を継続することで再燃抑制効果が示されている4,5).一方で,使用初期に灼熱感や刺激感を生じることがあり,とくに炎症が強い顔面病変では注意が必要である.18).C2.ジファミラストジファミラスト(モイゼルト)はCPDE4阻害薬であり,炎症性サイトカイン産生を抑制する.19).ステロイド外用薬やタクロリムス軟膏と比較して刺激感が少ない症例があり,顔面や眼周囲など刺激症状が問題となる部位で使用しやすい可能性がある.国内第Ⅲ相試験では,成人CAD患者に対する有効性と安全性が示されており.6),比較的軽症~中等症の顔面病変や維持療法に適していると考えられる.また,小児への適応を有する点も特徴である.20).C3.デルゴシチニブデルゴシチニブ(コレクチム)はCJAK-STAT経路を阻害する外用CJAK阻害薬であり,多数の炎症性サイトカインシグナルを抑制する.14).ADではインターロイキン(interleukin:IL)-4,IL-13,IL-31など複数のサイトカインが病態に関与しており,デルゴシチニブはこれらを広範に抑制する点が特徴である.国内第Ⅲ相試験では,中等症から重症CAD患者に対する有効性が示されており.14),.痒改善効果も比較的速やかであることが報告されている.実臨床では,タクロリムス軟膏で刺激感が強い症例や,炎症が比較的強い顔面病変に対して有用な場合がある.一方で,長期安全性については今後さらなる検討が必要であり,ガイドラインや添付文書に基づいた適切な使用が求められる.1).C4.タピナロフタピナロフ(ブイタマー)はCarylChydrocarbonCrecep-tor(AhR)調節薬であり,皮膚バリア機能改善や炎症抑制作用を有する新規外用薬である.21).海外ではCADに対する有効性が報告されており,非ステロイド外用薬の新たな選択肢として注目されている.22).とくにCAhR経路は皮膚バリア機能や酸化ストレス制御に関与しており,従来の免疫抑制型外用薬とは異なる作用機序を有する点が特徴である.今後,日本においても顔面・眼周囲病変への使用経験の蓄積が期待される.CIV全身療法時代の顔面・眼周囲病変分子標的薬の登場によりCADの治療は大きく変化し,強力な全身療法によって従来よりも長期的な疾患コントロールが可能となっている.一方で,顔面・眼周囲病変は全身病勢とは異なる経過を示す場合があり,全身症状が改善しているにもかかわらず,顔面病変のみが残存あるいは新規出現する症例が報告されている8,12).このような病態はCresidualCfacialdermatitisやデュピルマブfacialCrednessとよばれ,近年注目されている.その病態は一様ではなく,接触皮膚炎,Malassezia関連炎症,酒さ様皮膚炎,Demodex関連炎症など,多様な機序が想定されている8,23).また,デュピルマブ導入による免疫バランス変化が関与している可能性も指摘されている.24).そのため,顔面病変が残存する患者では,単純にCAD増悪と判断するのではなく,接触皮膚炎や酒さなどの鑑別を考慮することが重要である.デュピルマブでは結膜炎などの眼表面疾患が問題となる場合がある.このような患者では,外用薬による局所治療が重要となる.とくにタクロリムス軟膏やデルゴシチニブは,ステロイドの副作用が出やすい顔面病変に対して使用しやすく,全身療法との併用が行われることが多い.さらに,経口CJAK阻害薬は比較的速やかな.痒改善効果を有し.16),顔面病変を含めた難治性CADに対する有力な選択肢となっている.とくに.痒が強い患者や,デュピルマブで十分な効果が得られない患者では,JAK阻害薬への切り替えが検討される場合がある.25).実際に筆者らは,デュピルマブ投与中に難治性結膜炎と眼周囲湿疹を呈したCAD患者において,JAK阻害薬であるupadacitinibへ変更後に結膜炎および眼周囲病変が速やかに改善した症例を報告している(図3).26).この症例では,全身の皮膚症状は比較的良好にコントロールされていた一方,眼症状と眼周囲.痒が強くCQOL低下をきたしており,顔面・眼周囲病変が全身病勢と独立して問題となりうることが示唆された.(57)あたらしい眼科Vol.C43,No.7,2026C773図3Upadacitinibへ変更後に結膜炎および眼周囲病変が速やかに改善した症例30歳代,男性.中等症アトピー性皮膚炎に対してデュピルマブ投与後,皮膚症状は改善したものの,難治性結膜炎と強い眼周囲湿疹を発症した(Ca).抗ヒスタミン点眼やステロイド点眼では改善せず,upadacitinibへ変更後,結膜炎および眼周囲湿疹は速やかに改善した(Cb).(文献C26より引用)VI眼科と皮膚科の連携AD患者では,眼瞼炎,結膜炎,角結膜炎などの眼合併症を伴うことが少なくない1,27).そのため,眼科で長期フォローされている患者も多い.一方で,眼症状の背景には眼周囲皮膚炎の活動性が関与している場合があり,眼局所治療のみでは十分な改善が得られない患者が存在する.近年では,生物学的製剤やCJAK阻害薬の導入によって,中等症から重症CADに対する治療選択肢が大きく拡大している15,16).そのため,眼症状が遷延する患者では,「皮膚炎自体のコントロールが不十分ではないか」という視点をもつことが重要である.とくに以下のような患者では,皮膚科専門医への相談を考慮することが望ましい.・眼瞼湿疹が遷延する患者・.痒が強く,掻破を繰り返す患者・ステロイド外用薬を長期反復使用している患者・顔面紅斑や落屑が持続する患者・AD皮疹自体のコントロールが不良な患者・デュピルマブ投与中に顔面・眼周囲症状が遷延する患者また,眼周囲病変では接触皮膚炎の合併にも注意が必要である.10).化粧品,保湿剤,点眼薬,睫毛美容製品などが原因となる場合があり,難治例では詳細な問診やパッチテストでの判定が有用となる場合がある.一方で,眼周囲病変ではステロイド外用薬が有効であるものの,長期使用による眼圧上昇や白内障などへの懸念がある1,3).そのため,眼科診療のなかで眼圧上昇やステロイド関連眼合併症が問題となった場合には,皮膚科と連携しながら治療内容を再検討する必要がある.そのため,・眼圧上昇が懸念される患者・ステロイド外用薬を中止・減量したい患者・ステロイド依存となっている患者・点眼治療のみでは改善が乏しい患者では,眼科単独で対応するのではなく,皮膚科専門医へ相談し,非ステロイド外用薬への切り替えや全身治療強化を含めた再評価を行うことが望ましい.現在では,多くの非ステロイド外用薬を組み合わせることで,顔面・眼周囲病変の長期管理が可能となってきている.1).そのため,眼科診療においても「点眼治療のみでは限界がある患者が存在する」という認識をもち,必要に応じて皮膚科専門医へ治療強化を相談することが重要である.おわりに顔面・眼周囲のCADは,整容面やCQOLへの影響が大きいだけでなく,ステロイド外用薬の長期使用による副作用にも注意を要する特殊な病変部位である1,3).そのため,急性炎症期には適切なステロイド外用薬による速やかな炎症鎮静を行いつつ,長期管理では非ステロイド外用薬を活用した維持療法が重要となる.近年では,タクロリムス軟膏に加え,ジファミラストやデルゴシチニブなど新規非ステロイド外用薬が使用可能となり,顔面・眼周囲病変に対する治療選択肢は大きく拡大した6,7).また,生物学的製剤やCJAK阻害薬の導入によって,中等症から重症CADの長期コントロールも大きく進歩している15,16).一方で,顔面・眼周囲病変では,接触皮膚炎や酒さ様皮膚炎,residualCfacialdermatitisなど,多様な病態が関与する場合があり8,23),単純なCAD増悪として一律に対応することは困難である.そのため,病態評価を踏まえた個別化治療が重要となる.また,眼科診療においても「点眼治療のみでは改善が乏しい背景に皮膚炎活動性が存在する可能性」や,「眼圧上昇などの理由からステロイド外用薬の減量が必要となる患者が存在すること」を認識することが重要である.そのような患者では,皮膚科専門医と連携し,非ステロイド外用薬や全身療法を含めた治療強化を検討することが望ましい.今後,AD治療はさらに個別化が進むと考えられる.そのなかで,顔面・眼周囲病変に対しては,皮膚科と眼科が連携しながら,局所病態を適切に評価し治療介入することが重要である.文献1)佐伯秀久C,大矢幸弘C,荒川浩一ほか:アトピー性皮膚炎診療(59)あたらしい眼科Vol.C43,No.7,2026C775ガイドラインC2024.日皮会誌C134:2741-2843,C20242)WollenbergCA,CBarbarotCS,CBieberCTCetal:Consensus-basedCEuropeanCguidelinesCforCtreatmentCofCatopicCeczema(atopicdermatitis)inCadultsCandchildren:partCI.CJEurAcadDermatolVenereol32:657-682,C20183)HenggeCUR,CRuzickaCT,CSchwartzRA:AdverseCe.ectsCofCtopicalCglucocorticosteroids.CJCAmCAcadCDermatolC54:C1-15,C20064)WollenbergCA,CReitamoCS,CGirolomoniCGCetal:ProactiveCtreatmentCofCatopicCdermatitisCinCadultsCwith0.1%Ctacroli-musCointment.CAllergyC63:742-750,C20085)ThaciCD,CReitamoCS,CGonzalezCEnsenatCMACetal:ProacC-tiveCdiseaseCmanagementCwith0.03%CtacrolimusCointmentCforCchildrenCwithCatopicdermatitis:resultsCofCaCrandom-ized,Cmulticentre,CcomparativeCstudy.CBrJDermatolC159:C1348-1356,C20086)SaekiCH,CItoCK,CYokotaCDCetal:DifamilastCointmentCinCadultCpatientsCwithCatopicCdermatitis:CaCphaseC3Crandom-ized,Cdouble-blind,Cvehicle-controlledCtrial.CJCAmCAcadCDermatol86:607-614,C20227)NakagawaCH,CNemotoCO,CIgarashiCACetal:DelgocitinibCointmentCinCpediatricCpatientsCwithCatopicdermatitis:aCphaseC3,Crandomized,Cdouble-blind,Cvehicle-controlledCstudyCandCaCsubsequentCopen-label,Clong-termCstudy.CJAmAcadDermatolC85:854-862,C20218)JoCCE,CFinstadCA,CGeorgakopoulosCJRCetal:FacialCandCneckCerythemaCassociatedCwithCdupilumabCtreatment:CaCsystematicCreview.CJCAmCAcadCDermatolC84:1339-1347,C20219)EliasCPM,CSteinho.M:C“Outside-to-inside”(andCnowCbackCto“outside”)pathogenicCmechanismsCinCatopicCder-matitis.CJInvestDermatolC128:1067-1070,C200810)SimonsenCAB,CJohansenCJD,CDeleuranCMCetal:ContactCallergyCinCchildrenCwithCatopicCdermatitis:CaCsystematicCreview.CBrJDermatol177:395-405,C201711)ChernyshovPV:Health-relatedCqualityCofClifeCinCadultCpatientsCwithCatopicCdermatitisCandCpsoriaticCpatientsCmatchedCbyCdiseaseCseverity.CGCItalCDermatolCVenereolC151:37-43,C201612)WaldmanCRA,CDeWaneCME,CSloanCBCetal:CharacterizingdupilumabCfacialCredness:aCmulti-institutionCretrospectiveCmedicalCrecordCreview.CJAmAcadDermatolC82:230-232,C202013)ReitamoCS,COrtonneCJP,CSandCCCetal:ACmulticentre,Cran-domized,Cdouble-blind,CcontrolledCstudyCofClong-termCtreatmentCwith0.1%CtacrolimusCointmentCinCadultsCwithCmoderateCtoCsevereCatopicCdermatitis.CBrJDermatolC152:C1282-1289,C200514)NakagawaCH,CNemotoCO,CIgarashiCACetal:Long-termCsafetyCandCe.cacyCofCdelgocitinibCointment,CaCtopicalCJanusCkinaseCinhibitor,CinCadultCpatientsCwithCatopicCdermatitis.CJDermatolC47:114-120,C202015)SimpsonCEL,CBieberCT,CGuttman-YasskyCECetal:TwoC776あたらしい眼科Vol.C43,No.7,2026phaseC3CtrialsCofCdupilumabCversusCplaceboCinCatopicCder-matitis.CNEnglJMedC375:2335-2348,C201616)SilverbergCJI,CSimpsonCEL,CThyssenCJPCetal:E.cacyCandCsafetyCofCabrocitinibCinCpatientsCwithCmoderate-to-severeCatopicdermatitis:aCrandomizedCclinicalCtrial.CJAMACDer-matolC156:863-873,C202017)KangCS,CLuckyCAW,CPariserCDCetal:Long-termCsafetyCandCe.cacyCofCtacrolimusCointmentCforCtheCtreatmentCofCatopicCdermatitisCinCchildren.CJCAmCAcadCDermatolC44(1Suppl):S58-S64,C200118)PallerCAS,CLebwohlCM,CFleischerCABCJrCetal:TacrolimusCointmentCisCmoreCe.ectiveCthanCpimecrolimusCcreamCwithCaCsimilarCsafetyCpro.leCinCtheCtreatmentCofCatopicCdermati-tis:CResultsCfromC3Crandomized,CcomparativeCstudies.CJAmAcadDermatol52:810-822,C200519)Hani.nCJM,CEllisCCN,CFriedenCIJCetal:OPA-15406,CaCnovel,Ctopical,Cnonsteroidal,CselectiveCphosphodiesterase-4C(PDE4)Cinhibitor,CinCtheCtreatmentCofCadultCandCadolescentCpatientsCwithCmildCtoCmoderateCatopicCdermatitisC(AD):CACphase-IICrandomized,Cdouble-blind,Cplacebo-controlledCstudy.CJAmAcadDermatol75:297-305,C201620)SaekiCH,CItoCK,CYokotaCDCetal:DifamilastCointmentCinCadultCpatientsCwithCatopicCdermatitis:CACphaseC3Crandom-ized,Cdouble-blind,Cvehicle-controlledCtrial.CJCAmCAcadCDermatol86:607-614,C202221)SmithCSH,CJayawickremeCC,CRickardCDJCetal:TapinarofCisCaCnaturalCAhRCagonistCthatCresolvesCskinCin.ammationCinCmiceCandChumans.CJCInvestCDermatolC137:2110-2119,C201722)PallerCAS,CSteinCGoldCL,CSoungCJCetal:E.cacyCandCpatient-reportedCoutcomesCfromCaCphaseC2b,CrandomizedCclinicalCtrialCofCtapinarofCcreamCforCtheCtreatmentCofCado-lescentsCandCadultsCwithCatopicCdermatitis.CJCAmCAcadCDermatol84,C632-638,C202123)deCBeerCFSA,CBakkerCDS,CHaeckCICetal:DupilumabCfacialredness:positiveCe.ectCofCitraconazole.CJAADCCaseCRepC5:888-891,C201924)BakkerCDS,CAriensCLFM,CvanCLuijkCCCetal:GobletCcellCscarcityCandCconjunctivalCin.ammationCduringCtreatmentCwithCdupilumabCinCpatientsCwithCatopicCdermatitis.CBrJDermatolC180:1248-1249,C201925)BlauveltCA,CTeixeiraCHD,CSimpsonCELCetal:E.cacyCandCsafetyCofCupadacitinibCvsCdupilumabCinCadultsCwithCmoder-ate-to-severeCatopicdermatitis:aCrandomizedCclinicalCtrial.CJAMADermatolC157:1047-1055,C202126)HayamaCK,CFujitaH:ImprovementCofCdupilumab-associ-atedCconjunctivitisCafterCswitchingCtoCupadacitinibCinCaCpatientCwithCatopicCdermatitis.CDermatolTherC35:e15575,C202227)ThyssenCJP,CToftCPB,CHalling-OvergaardCASCetal:Inci-dence,Cprevalence,CandCriskCofCocularCdiseaseCinCadultsCwithCatopicCdermatitis.CJAmAcadDermatolC77:280-286.Ce1,C2017(60)

アレルギー性結膜炎治療の新たな選択肢

2026年7月31日 金曜日

アレルギー性結膜炎治療の新たな選択肢ANewTherapeuticOptionforAllergicConjunctivitis原祐子*はじめにアレルギー性結膜炎の治療は基本的に薬物療法である.第一選択は抗アレルギー点眼薬であり,効果不十分例や重症例では副腎皮質ステロイド(以下,ステロイド)点眼薬の追加を考慮し,春季カタルでは免疫抑制点眼薬を選択することができる.1).通常の季節性あるいは通年性アレルギー性結膜炎において,抗アレルギー点眼薬のみで十分なコントロールが得られない場合には,ステロイド点眼薬の併用が必要となることも少なくない.しかし,ステロイド点眼薬には眼圧上昇や易感染性などの副作用があり,とくに小児では眼圧上昇のリスクが高いことが報告されており,長期使用には注意を要する.2).一方で,抗アレルギー点眼薬は安全性に優れるものの,花粉飛散量が多い場合や用法遵守が不十分な場合には十分な効果が得られないことも少なくない.アレルギー性結膜疾患の有病率は48.7%に達すると報告されており.1),より高い有効性,安全性,利便性を兼ね備えた治療法へのニーズは高い.このような背景のもと,2024年に世界に先駆けて,眼瞼に塗布することにより薬剤を結膜へ移送する新しいアレルギー性結膜炎治療薬が発売された.本稿では,エピナスチン塩酸塩眼瞼クリーム0.5%の特徴と臨床的有用性について概説する.I抗アレルギー点眼薬の歴史わが国で最初の抗アレルギー点眼薬は,1984年に販売されたクロモグリクサンナトリウムを主成分とするインタール点眼薬2%である.本剤はメディエーター遊離抑制薬であり,細胞内へのCa2+流入抑制やホスホジエステラーゼ活性の阻害を介して細胞膜を安定化し,肥満細胞(マスト細胞)からの化学伝達物質を抑制する.安全性に優れる一方で,効果発現までに時間を要し,アレルギー反応が惹起されたあとでは十分な効果が得られにくいという課題があった.そのため,より即効性が期待される抗ヒスタミン点眼薬の開発が進められ,1991年にケトチフェンフマル酸塩点眼薬が発売された.その後レボカバスチン塩酸塩,オロパタジン塩酸塩,エピナスチン塩酸塩の点眼薬が次々と登場した.これらの薬剤は毛細血管や三叉神経末に存在するヒスタミンH1受容体を遮断し,結膜の充血や浮腫,掻痒感などの即時反応を抑制する.また,多くの薬剤は抗ヒスタミン作用に加えてメディエーター遊離抑制作用もあわせもつ.このように,抗アレルギー点眼薬の主流は,メディエーター遊離抑制薬から抗ヒスタミン作用を主体とする薬剤へと移行してきた.II従来の点眼薬の限界と問題点抗アレルギー点眼薬の改良は進んでいるものの,適切な用法・用量で使用されなければ,本来の効果を十分に得ることはできない.花粉症患者を対象としたアンケート調査では,内服薬の服薬遵守率が90%以上であったのに対し,点眼薬や点鼻薬では遵守率が明らかに低いこ.*YukoHara:住友別子病院眼科〔別刷請求先〕原祐子:〒792-8543愛媛県新居浜市王子町3-1住友別子病院眼科(1)(47)7630910-1810/26/\100/頁/JCOPYとが報告されている.従来,抗アレルギー点眼薬の多くはC1日C4回の点眼を必要としていたが,近年は薬効の持続性向上により,1日C2回で使用可能な製剤も登場している.しかし,季節性アレルギー性結膜炎患者を対象とした使用実態調査では,1日C4回点眼製剤を使用した患者のうち,症状の有無にかかわらず用法どおりに点眼していた患者はC4.0%に過ぎなかったと報告されている.3).一方で,1日C2回点眼製剤では遵守率の改善が認められたものの,その割合はC22.3%にとどまり,十分とはいいがたい.また,抗ヒスタミン点眼薬による治療中であっても,起床時や就寝前の眼掻痒感,あるいは目頭や眼瞼縁のかゆみが残存する患者が一定数存在することが報告されており,従来の点眼治療にはなお課題が残されている.CIII眼瞼塗布による新しい薬剤送達システムの開発点眼薬は投与後,瞬目,涙液のターンオーバー,さらに鼻涙管への流出によって眼表面から速やかに排出される.そのため,薬剤は結膜.内に長時間とどまることがむずかしく,多くの抗アレルギー点眼薬では有効濃度を維持するためにC1日C2.4回の点眼が必要とされてきた.しかし,実際には抗アレルギー点眼薬の用法遵守率は高いとはいえず,これが治療効果を十分に得られない一因と考えられている.米国ではC1日C1回投与の抗アレルギー点眼薬も承認されているが,その効果は点眼後の経過とともに減弱することが報告されており,点眼薬という剤形そのものの限界を示しているとも考えられる.このような背景のもと,投与回数を減らしながら持続的な抗アレルギー効果を得ることを目的として,点眼薬以外の薬剤送達技術が検討されてきた.その一つが,薬剤を眼瞼皮膚に塗布し,眼瞼組織内を通過させて結膜へ移送するという新しいコンセプトである.エピナスチン塩酸塩を含有するクリームを,ヒスタミン誘発性結膜炎モデルモルモットの眼瞼皮膚に塗布したところ,投与C24時間後においても結膜血管透過性亢進が強く抑制され,その効果はC0.1%エピナスチン点眼薬よりも有意に高かったことが報告されている.4).また,最大の抑制効果は投与C2時間後に認められ,その後C24時間以上持続した.さらに,ウサギの眼瞼皮膚にエピナスチン塩酸塩眼瞼クリームC0.5%を塗布し,薬剤分布を経時的に検討した結果を図1に示す.5).投与C0.5時間後には眼瞼表層に高濃度のエピナスチンが認められ,その後徐々に深部へ拡散し,8時間後およびC24時間後には結膜層に分布していることが確認された.これらの結果から,眼瞼塗布によって薬剤が結膜へ到達し,24時間にわたり分布が維持されることが示され,1日C1回投与で持続的な治療効果が得られる可能性が示唆された.CIVエピナスチン塩酸塩眼瞼クリーム0.5%2024年C5月,アレルギー性結膜炎治療薬として初めての剤形であるエピナスチン塩酸塩眼瞼クリームC0.5%(アレジオン眼瞼クリームC0.5%)(図2)が発売された.現時点で,1日C1回,上下眼瞼に塗布するという用法を有する唯一のアレルギー性結膜炎治療薬である.使用方法は,適量のクリームを指先にとり,軽く閉眼した状態で上下眼瞼に塗布する(図3).「適量」という表現はややわかりにくいが,片眼あたりC1.3Ccm(成人の人差し指第一関節の約半分),約C30Cmgを塗布することが推奨されている.1包装にはC2Cgが含まれており,両眼に使用した場合,およそC1カ月分に相当する.本剤の特徴の一つは,基剤にも工夫が施されている点である.眼瞼に塗布する薬剤としては,タリビッド眼軟膏やステロイド眼軟膏を思い浮かべることが多い.これらの眼軟膏は油性基剤であるため,被覆性に優れる一方で,べたつきが強く,伸展性にも乏しい.これに対し,アレジオン眼瞼クリームC0.5%には油中水型(W/O)のクリーム基剤が採用されている.軟膏に比べて伸展性が高く,塗布後のべたつきも少ない(表1).眼内に入った場合には速やかに洗浄することが推奨されているが,誤って眼内に入っても刺激感は比較的少なく,軽度の異物感を認める程度である.CVエピナスチン塩酸塩眼瞼クリーム0.5%の治療成績エピナスチン塩酸塩眼瞼クリームC0.5%の治療成績についての報告はまだ少ない.第Ⅲ相環境試験では,アレルギー性結膜炎患者C186764あたらしい眼科Vol.C43,No.7,2026(48)TimeafteradministrationEpinastinedistnbutionPostLMDPreLMD0.5h8h24hEpidermissideLidmarginsideConjuctivalside10510310110-1Concentration(pg/mm3)図2アレジオン眼瞼クリーム0.5%図3アレジオン眼瞼クリーム0.5%患者向けの塗り方指導パンフレットアレジオン眼瞼クリームは,約C1.3Ccmのクリームを目のまわり全体に塗るように指導している.表1外用製剤の基剤による特徴油中水型クリーム水中油型クリーム製剤の例油脂性軟膏(水中水型:W/O)(水中油型:O/W)(W/O:water-in-oil)(O/W:oil-in-water)イメージ図使用感(べたつき)高低被膜性(保護性)高低伸展性(伸びのよさ)低高刺激感(一般に)低高眼科でよく用いられる油性軟膏はべたつきやすく,伸展性が低いのに対し,油中水型クリームは使用感も良好で伸展性が高いC.表2使用成績調査中間報告での副作用出現率承認時前調査(1C24例)使用成績調査(1C72例)眼瞼炎1(0C.6%)眼瞼紅斑1(0C.8%)1(0C.6%)眼瞼腫脹1(0C.6%)眼瞼.痒症2(1C.6%)1(0C.6%)眼瞼刺激1(0C.6%)結膜出血1(0C.6%)眼の異物感1(0C.6%)副作用発現症例数2/124例(1C.6%)6/172例(3C.5%)MedDRA/J(ICH国際医薬用語集日本語版)version(28.0)ab図4エピナスチン塩酸塩眼瞼クリーム0.5%による眼瞼炎72歳,男性.アトピー皮膚炎既往あり.Ca:エピナスチン塩酸塩眼瞼クリームC0.5%塗布開始後C3日目に眼瞼の発赤,腫脹を生じた.b:エピナスチン塩酸塩眼瞼クリーム中止後C1週間.塗布中止後は速やかに改善した.

アレルギー性結膜炎の基礎研究―花粉の殻により誘導される抗原取り込み

2026年7月31日 金曜日

アレルギー性結膜炎の基礎研究─花粉の殻により誘導される抗原取り込みBasicResearchonAllergicConjunctivitis:AntigenUptakeInducedbyPollenShells木村芽以子*はじめにアレルギー性結膜炎は,Ⅰ型アレルギーが関与する結膜の炎症性疾患である.1).原因物質である花粉やハウスダストなどの抗原(狭義にはアレルゲンと呼称されるが,本稿では便宜上「抗原」と記載する)が,鼻粘膜や喉などを介して体内へ侵入すると,樹状細胞などの抗原提示細胞に取り込まれ,2型ヘルパーT細胞(Thelper2cell:Th2)型免疫応答が誘導される.その後,B細胞によって産生された抗原特異的免疫グロブリンE(immunoglobulinE:IgE)抗体は血液に乗って全身をめぐり,全身の肥満細胞(マスト細胞)の表面に結合して,アレルギーを起こす「準備状態(感作)」が成立する(図1).その後,再び同一の抗原が結膜に侵入し,マスト細胞上のIgE抗体と結合して架橋する.これがトリガーとなってマスト細胞からヒスタミンなどの化学伝達物質が放出される(脱顆粒)ことで,かゆみや充血といった即時型のアレルギー症状が引き起こされる(発症)(図1).これらの症状は,眼が抗原に曝露されてから数十分以内に生じる即時型反応である.このことから,抗原は結膜においてきわめて迅速に組織内へ侵入していると考えられる.したがって,原因物質である抗原がいかにして眼表面のバリアを突破し,結膜組織内へ侵入するかという仕組みは,本疾患の発症メカニズムを理解するうえで重要な鍵となる.「Ⅱ結膜組織内への抗原の侵入方法」の項では,この抗原の侵入の仕組みについて解説する.われわれ医師が診療でアレルギー検査を行う際,通常よく検査するのは血液中のIgE抗体である.ところが,実際には血液検査ではIgE抗体が陰性であるにもかかわらず.2),強いかゆみなどアレルギー性結膜炎の症状を訴える患者も少なくない.こうした患者の場合は,結膜局所だけで感作から発症までの病態が成立していると考えられ,localallergicconjunctivitisと呼称されている.筆者らは結膜局所で感作から発症まで引き起こすマウスモデルを確立し,同モデルにおいて花粉の殻が重要な役割をしていることも明らかにした.「ⅤLocalallergicconjunctivitisと花粉の殻」では,この詳細についても解説する.I眼表面バリア機構と杯細胞眼表面は外界に晒されている粘膜であり,外界からの異物の侵入を防ぐため複数のバリア機構が機能している.なかでも結膜上皮細胞の1種である杯細胞は,MUC5ACやMUC5Bといった分泌型ムチンを産生することで涙液の安定性を高め,眼表面の湿潤性と潤滑性の保持に寄与する.また,ムチンに含まれるシアル化した糖鎖は,異物をカプセル化してトラップし,効率よく除去する機能を有しており.3),杯細胞は異物の除去においても重要な役割を果たしている.さらに,杯細胞はレチノイン酸.4)やTGF-β2.5)の産生を通じて免疫寛容を誘導するなど,免疫調節細胞としての側面ももつことも明らかになってきた.このように,これまで杯細胞は,おも.*MeikoKimura:順天堂大学医学部附属浦安病院眼科,順天堂大学大学院医学研究科アトピー疾患研究センター〔別刷請求先〕木村芽以子:〒279-0021千葉県浦安市富岡2-1-1順天堂大学医学部附属浦安病院眼科(1)(39)7550910-1810/26/\100/頁/JCOPYマスト細胞IgE脱顆粒充血流涙浮腫掻痒感図1Ⅰ型アレルギー反応感作相:侵入した抗原に対して特異的IgE抗体が産生され,マスト細胞の表面に結合し,アレルギーの準備が整う段階.惹起相:再び侵入した抗原がマスト細胞上の複数のIgEを橋渡し(架橋)するように結合すると,ヒスタミンなどが放出され(脱顆粒),アレルギー症状が発症する段階.GAP図2抗原の侵入経路杯細胞関連抗原経路(GAP)は杯細胞が抗原を取り込み,実質へと抗原を受け渡す経路である.①②③TopZBottomZWGAOVA-AF647図3結膜におけるGAP花粉の殻と蛍光ラベルした蛋白抗原を点眼すると,多数の杯細胞が抗原を取り込み,GAPを形成していることが確認された.緑色に染まっているのが杯細胞,赤色が蛍光ラベルした蛋白抗原である.(文献C8より改変引用)C.CKimuraCM.CetCal.C2023.CACnerve-gobletCcellCassociationCpromotesCallergicCconjunctivitisCthroughCrapidCantigenCpassage.CJCIInsight,DOI:10.1172/jci.insight.168596.CCC-BY4.0https://creativecommons.org/licenses/Cby/4.0/CStromallayerfluorescenceintensity10,000(Arbitraryunit)8,000OVA-AF6476,000Shell+OVA-AF647MostGAParea4,000LeastGAParea2,00000400Gobletcelllayerfluorescenceintensity80012,000(Arbitraryunit)図4表層のGAP形成と実質層の抗原取り込み表層のCGAP分布と実質層の抗原取り込みは空間的によく相関していた.①CGAPありエリアは実質層の抗原の取り込みが多い.②GAPなしのエリアでは取り込みが少ない.(文献C8より改変引用)C.CKimuraCM.CetCal.C2023.CACnerve-gobletCcellCassociationCpromotesCallergicCconjunctivitisCthroughCrapidCantigenCpassage.CJCIInsight,DOI:10.1172/jci.insight.168596.CC-BYC4.0https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/a花粉の殻の有無bZ事前に局所麻酔薬(Lidocaine)を点眼ZZ200150100500SalLDC三叉神経を電気焼灼(Ablation)図5各条件によるGAPの数a:蛋白抗原を単独点眼するとCGAPはほとんど形成されなかった.GAP形成は花粉の殻刺激により誘導される.Cb:事前に局所麻酔薬を点眼すると,GAPの数が減少する.c:三叉神経を電気焼灼した側では,GAPの数が減少する.(文献C8より改変引用)C.CKimuraCM.CetCal.C2023.CACnerve-gobletCcellCassociationCpromotesCallergicCconjunctivitisCthroughCrapidCantigenCpassage.CJCIInsight,DOI:10.1172/jci.insight.168596.CCC-BY4.0https://creativecommons.org/licenses/Cby/4.0/C抗原抗原提示細胞図6GAPを介した迅速な抗原の取り込み好酸球性炎症(アレルギー性結膜炎)図7花粉の殻により誘導されるGAP形成花粉の殻は三叉神経を介してCGAP形成を誘導する.GAPによる迅速な抗原通過はアレルギー性結膜炎の発症に関与するC.(文献C8より改変引用)C.CKimuraCM.CetCal.C2023.CACnerve-gobletCcellCassociationCpromotesCallergicCconjunctivitisCthroughCrapidCantigenCpassage.CJCIInsight,DOI:10.1172/jci.insight.168596.CCC-BY4.0https://creativecommons.Corg/licenses/by/4.0/アレルギー性結膜炎の発症花粉懸濁液事前の全身感作なし花粉の殻と抽出液図8Localallergicconjunctivitisの発症の条件アレルギー性結膜炎の発症には,花粉の殻(粒子性成分)と花粉の抽出液(水溶性蛋白抗原)の両者が必要である.-

アレルギー性結膜炎の基礎研究―眼表面のムチンシアル化を中心に

2026年7月31日 金曜日

アレルギー性結膜炎の基礎研究─眼表面のムチンシアル化を中心にBasicResearchonAllergicConjunctivitis:AFocusonSialylatedMucinsoftheOcularSurface松澤萌*はじめにアレルギー性結膜炎は,日常眼科診療においてもっとも頻繁に遭遇する疾患の一つであり,近年では有病率が増加傾向にある.とくに花粉飛散量の増加や生活環境の変化に伴い,季節性アレルギー性結膜炎のみならず,アトピー性角結膜炎(atopickeratoconjunctivitis:AKC)や春季カタル(vernalkeratoconjunctivitis:VKC)などの重症眼アレルギー疾患を診療する機会も少なくない.一方で,多くの患者では抗アレルギー点眼薬による治療で症状コントロールが可能であるものの,慢性的な炎症や涙液不安定化を伴い,難治化する患者も存在する.アレルギー性結膜炎の病態は免疫グロブリンE(immunoglobulinE:IgE)依存性炎症や2型ヘルパーT細胞(Thelper2cell:Th2)型免疫応答に加え,眼表面バリア機能異常も指摘されている.アレルギー炎症に伴う上皮障害や涙液環境変化は,眼表面バリアを破綻させ,アレルゲン侵入を促進することでさらなる炎症惹起につながる可能性も示されている1,2).また,ドライアイとの病態オーバーラップも指摘されており,「tear.lminstability」やムチン(mucin)異常という観点から眼表面疾患を統一的に理解しようとする試みが進んでいる3).ムチンは粘膜を「ぬるぬる」な状態に保つ,すなわち湿潤や潤滑にかかわる蛋白質であり,粘膜の細胞表面から生えるように存在している膜型ムチンと,いわゆる「粘液」の構成成分として放出される分泌型ムチンに分けられる.これらの眼表面ムチンは,涙液層およびグリコカリックス(glycocalyx)の主要構成成分として,潤滑や保水のみならず,外来異物に対する物理的バリアとして機能している.なかでも結膜杯細胞(gobletcell)由来のゲル形成ムチン(MUC)5ACは,涙液安定化に重要な役割を果たすことが知られている.ムチンは高度に糖鎖修飾された巨大な糖蛋白質であり,その糖鎖構造はムチンの物理化学的性質や生体防御機能に大きな影響を与える.とくに末端シアル酸による修飾(シアル化)は,ムチンに保水性や粘弾性を付与し,外来粒子との相互作用にも関与すると考えられている.筆者らは,結膜杯細胞由来ムチンのシアル化が,花粉粒子を包み込み,眼表面から効率的に除去する防御機構に重要な働きをしていることを報告した4).本稿では,眼表面ムチンおよびそのシアル化の基礎を概説するとともに,アレルギー性結膜炎における結膜杯細胞ムチンシアル化の役割について,筆者らの研究成果を中心に概説する.I眼アレルギー炎症とバリア機能眼表面は外界に常時曝露される粘膜組織であり,乾燥,微生物,アレルゲン,摩擦刺激などさまざまな外的ストレスに曝露されている.その恒常性維持には,涙液,角結膜上皮,およびムチンから構成される眼表面バリア機構が重要な役割を果たしている.アレルギー性結膜炎は,花粉やダニなどのアレルゲン*MoeMatsuzawa:順天堂大学医学部附属浦安病院眼科〔別刷請求先〕松澤萌:〒279-0021千葉県浦安市富岡2-1-1順天堂大学医学部附属浦安病院眼科(1)(31)7470910-1810/26/\100/頁/JCOPY油層涙液層グリコカリックス(glycocalyx)粘液顆粒核上皮層負電荷同士で非接着性反発するムチン分子図2ムチンの物理的性質とシアル酸眼表面のムチンがもつ糖鎖は,多くがシアル酸(紫色の菱形で示す)をその先端にもつ.シアル酸は負電荷を帯びることによって互いに反発し,非接着性(潤滑)にかかわるほか,極性分子である水を引きつける,このほか,糖鎖そのものも多数の-OH基などをもつことによって親水性となり,眼表面の湿潤にかかわる.EYEPRIM法による結膜上皮の採取アルシアンブルー/PAS染色シアル酸除去処理2.3.1.なしありアルシアンブルー染色アルシアンブルー染色+上皮細胞PAS染色上皮細胞杯細胞図3ヒト結膜の杯細胞EYEPRIMデバイスを用いて採取したヒト結膜の上皮をCPAS染色(赤紫,粘液糖鎖を染色)およびアルシアンブルー染色(青,負電荷物質を染色)で染色すると,杯細胞の粘液顆粒は両者により染色される.アルシアンブルーはシアル酸除去酵素処理によって染色されなくなることから,ヒト結膜杯細胞のアルシアンブルー染色性はシアル酸によるものであることがわかる.シアル酸除去後においても,DNAが負電荷物質であるため細胞核は染色されている.(文献C4より改変引用)杯細胞作用3OOガラクトースペプチド鎖N-アセチルペプチド鎖ガラクトサミンOOシアル酸6ペプチド鎖作用ペプチド鎖図4糖転移酵素による糖鎖伸長糖鎖の形成には,多数の酵素が関与しており,これらの酵素はそれぞれ特定の糖鎖を特定の場所に付加する職人にたとえることができる.たとえば,ムチン上の同じCN-アセチルガラクトサミンに対してCC1GALT1酵素が働くと3位(図の右上)にガラクトースが付加され,ST6GALNAC1酵素が働くとシアル酸が6位(図の右下)に付加される.ガラクトースからはさらに糖鎖伸長が可能であるが,シアル酸には他の糖が付加できないため,シアル酸は糖鎖の先端に露出している.シアル化糖鎖をもたないシアル化糖鎖をもつ野生型Balb/cマウスBalb/cマウス(Aoマウス)花粉懸濁液を点眼結膜上の花粉を顕微鏡観察花粉粘液層微粒子微粒子粘液層の表面微粒子の透過性評価花粉の表面図6粘液カプセルに隔離された花粉粒子花粉懸濁液をマウスに点眼すると,杯細胞から粘液が放出され,花粉粒子が絡めとられて凝集する.シアル化糖鎖のない野生型CBalb/cマウスの場合は花粉塊のサイズも小さく,花粉粒子が露出しており,微粒子の懸濁液を加えると花粉表面まで到達する.これに対し,シアル化糖鎖を産生できるようにしたCAoマウスにおいては,花粉塊のサイズが大きくなり,その周囲に粘液層が形成される.微粒子は粘液層の表面で阻まれ,花粉粒子まで到達できないことから,この粘液層が微粒子(細菌程度のサイズ)を通過させないことがわかる.(CC-BY4.0に基づき文献C4より改変引用)シアル化糖鎖がムチンの機能にもたらす効果・細菌や微粒子の隔離・効率的な捕捉・速やかな除去・抗原侵入の低減・アレルギー性結膜炎の抑制シアル化糖鎖をもたないムチン凝集のみムチン図7粘液糖鎖のシアル化とバリア機能花粉などの異物が眼表面に到達すると,杯細胞から粘液が放出され,粒子を絡めとる.シアル化糖鎖をもつムチンは花粉粒子をゲル状の粘液層で隔離し,効率的な捕捉,除去を介してアレルギー性結膜炎の発症を抑制している.この粘液層は異物の侵入を検知した際に集中して放出されたムチンによって形成されており,定常状態で存在する涙液層や上皮層などのバリアに加えて第三のバリアを提供する.眼表面ムチンは,このように直接的に粘液層を形成して異物を隔離するほか,上皮細胞表面の膜型ムチンによるグリコカリックス形成や,涙液中の分泌型ムチンによる涙液安定化など,角結膜バリア機能のあらゆる側面に関与している.’C

重症アレルギー性結膜疾患における分子標的薬治療のアップデート

2026年7月31日 金曜日

重症アレルギー性結膜疾患における分子標的薬治療のアップデートUpdatesinMolecularTargetedTherapyforSevereAllergicConjunctivalDiseases坂口秀人*福田憲*はじめに春季カタル(vernalkeratoconjunctivitis:VKC)に対する免疫抑制点眼薬が登場すると,その効果と安全性からVKCの治療にパラダイムシフトが生じた.現在では多くのVKC患者において,ステロイド点眼薬を用いずに炎症のコントロールが可能である.しかし,タクロリムス点眼薬の市販後全例調査の報告で示されているように,免疫抑制点眼薬とステロイド点眼薬による治療に抵抗する症例も未だ一定数存在する1).免疫抑制点眼薬が登場して約20年が経過するが,その後新規の治療薬は上市されておらず,VKCの難治例に対する治療の開発がアレルギー性結膜疾患治療におけるアンメットニーズとなっている.アレルギー疾患は,アレルギーマーチとよばれるように複数の臓器に成長とともにさまざまな疾患を発症するのが特徴である.これらのアレルギー疾患は2型炎症という共通の病態を有しており,近年は2型炎症に対するさまざまな分子標的薬が開発・上市されている2).本稿では,アレルギー疾患に対する分子標的薬によってアトピー性角結膜炎(atopickeratoconjunctivitis:AKC)・VKCが改善した症例のエビデンスを中心に解説し,これらの疾患の病態について考察する.IVKC・AKCの病態VKCはおもに小児の男児に好発する慢性重症アレルギー性眼疾患である.アトピー性皮膚炎(atopicderma-titis:AD)を合併することが多いが,ADがなくても発症する.上眼瞼結膜の巨大乳頭や輪部病変などの結膜増殖性変化と角膜病変が臨床的特徴であり,視力障害をきたしうる.結膜巨大乳頭では,好酸球や2型ヘルパーT細胞(Thelper2cell:Th2)細胞などの炎症細胞浸潤に加えて,線維芽細胞の増加や細胞外マトリックス(extracellularmatrix:ECM)の沈着などが組織学的な特徴である3).免疫抑制点眼薬とステロイド点眼薬による治療によっても改善しない巨大乳頭のtranscriptome解析の研究によって,サイトカインではインターロイキン(interleukin:IL)-4とIL-13がもっとも発現していることが示され4),これらのサイトカインが巨大乳頭形成,VKCの病態に重要な役割を果たしていることが明らかとなった.細胞生物学的な検討により,IL-4とIL-13は結膜線維芽細胞に作用し,①細胞増殖の促進5),②遊走の促進6),③アポトーシスの抑制7)により,巨大乳頭における線維芽細胞の増加に寄与すると考えられる.また,④コラーゲンやフィブロネクチンなどのECMの産生亢進5),⑤ECMを分解するマトリックスメタロプロテアーゼ(matrixmetalloproteinase:MMP)の産生抑制8),⑥MMPの内因性のインヒビターであるtissueinhibitorofmetalloproteinases(TIMP)の産生亢進によって,ECMの沈着に寄与する.これらのさまざまな作用により,IL-4/IL-13は巨大乳頭の形成に重要である可能性が推察されている(図1)6).VKCにおける角膜病変の病態においては,角膜病変の重症度が涙液*HidetoSakaguchi&KenFukuda:高知大学医学部眼科学講座〔別刷請求先〕坂口秀人:〒783-8505高知県南国市岡豊町小蓮185-1高知大学医学部眼科学講座(1)(23)7390910-1810/26/\100/頁/JCOPY図1春季カタルにおける結膜巨大乳頭形成におけるインターロイキン(IL)-4およびIL-13の役割IL-4とIL-13は結膜線維芽細胞に作用し,ケモカイン産生に加えて,細胞増殖・遊走の促進,アポトーシスの抑制やコラーゲンやフィブロネクチンなどの細胞外マトリックス(ECM)の産生亢進,ECMを分解するmatrixmetalloproteinase(MMP)の産生抑制とMMPの内因性のインヒビターであるTIMP(tissueinhibitorofmetallo-proteinases)の産生を亢進させる.-図2春季カタルにおける角膜病変におけるIL-4およびIL-13の役割涙液中に分泌されたCIL-4とCIL-13は腫瘍壊死因子(TNF)-αと共同して角膜実質細胞からCeotaxinを産生し,好酸球を遊走させて角膜病変の形成に重要な役割を果たす.CabトラロキヌマブⅠ型受容体Ⅱ型受容体図3IL-4受容体および分子標的薬の作用部位a:IL-4受容体はCIL-4Rαサブユニットを共有するC2種類の受容体を形成する.I型受容体(IL-4Rα鎖+共通γ鎖)はCIL-4のみに応答し,おもにリンパ球などの造血細胞に発現する.Ⅱ型受容体(IL-4Rα鎖+IL-13Rα1鎖)はCIL-4およびCIL-13の両方に応答し,線維芽細胞などの非造血細胞に広く発現する.b:デュピルマブはCIL-4Rα鎖に結合することで,I型およびⅡ型受容体を介したCIL-4とCIL-13の両者シグナルを阻害する.IL-13抗体であるトラロキヌマブおよびレブリキズマブはCIL-13のみを阻害する.JAK阻害薬は細胞内でシグナル伝達分子であるCJAKを阻害することで,IL-4・IL-13のシグナル伝達を抑制する.IL:interleukin,JAK:Januskinase,Tyk:tyrosinekinase,STAT:signaltransducerandactivatoroftranscription,TNF:Ctumornecrosisfactor.C下する.デュピルマブは中等.重症CADにおいて,プラセボ群と比較して有意に症状改善を示している16).さらに外用ステロイドとの併用によるC1年間の長期試験においても,デュピルマブはC52週にわたって持続的な改善効果が維持されることが報告されている17).現在,デュピルマブはさまざまなアレルギー疾患に適応があるが,AD患者でのみ約C10.30%の患者にデュピルマブ関連眼表面疾患(dupilumab-associatedCocularCsurfacedisease:DAOSD)とよばれる結膜炎・眼瞼炎などの眼表面炎症が生じることがさまざまな論文で報告されている.DAOSDの機序として,IL-4/IL-13シグナルの遮断が眼表面局所における免疫バランスの変化や,結膜杯細胞機能の低下やムチン産生抑制などが仮説として提唱されている2)が,詳細な機序は現在も解明中である.またCIL-13を選択的に阻害するトラロキヌマブ(アドトラーザ)やレブリキズマブ(イブグリース)も,デュピルマブと同様にCAD患者においては結膜炎を生じることが報告されている.DAOSDの詳細に関しては本特集の他項を参照されたい.JAK阻害薬は,細胞内チロシンキナーゼであるCJAKを阻害することで,多種のサイトカインシグナルを包括的に遮断する低分子薬である.サイトカインが受容体に結合すると,受容体に会合したCJAKが活性化してSTATをリン酸化し,核内に移行したCSTATが標的遺伝子の転写を誘導する.JAK阻害薬はこのCJAK-STATシグナル軸を遮断することで,Th2系(IL-4/IL-13/IL-5/IL-31)のみならずCTh1・Th17系など幅広いサイトカインシグナルを同時に抑制する.ADに対してはC3種類のCJAK阻害薬が承認されている.ウパダシチニブはCJAK1選択的阻害薬18),バリシチニブはCJAK1/JAK2阻害薬,アブロシチニブはCJAK1選択的阻害薬である.JAK1の阻害により,IL-4/IL-13/IL-31/TSLP/IL-6/CIFN-γなど多彩なサイトカインシグナルを抑制することができる.CIII新規AD治療薬の重症アレルギー性結膜疾患に対する有効性VKCの治療は免疫抑制点眼薬の登場によりパラダイムシフトが生じ,ステロイド点眼薬を用いずに眼圧上昇を気にすることなく治療できる患者も多くなった.しかし,点眼治療に抵抗する難治例が一定数存在し,難治例に対する新規治療薬がアンメットニーズとなっている.このような点眼治療で難治な患者に対して,新規CAD治療薬の有効性を示す症例が報告されている.C1.抗IL-4受容体α抗体(デュピルマブ)が奏効したVKC/AKC症例デュピルマブは,上述のとおりCIL-4Rαを介してIL-4/IL-13の両シグナルを遮断するため,VKCやAKCの病態に直接作用すると考えられる.筆者らは,巨大乳頭を伴う重症のCAKCに対して抗CIL-4受容体α抗体(デュピルマブ)が奏効したC2症例を報告した9).1例目はデュピルマブ投与開始日に「眼の調子が悪い」と皮膚科から紹介されたC33歳のCAD患者である.診察すると両眼の上眼瞼に巨大乳頭がみられ(図4a,b),眼脂には多数の好酸球が観察され,活動性の高い増殖性変化を伴うCAKCと診断した.デュピルマブが同日に開始されるため,点眼治療は行わなかった.2週間後の再診時には,巨大乳頭は著明に平坦化し(図4c,d),そのC2週間後(デュピルマブC2回目投与後)には巨大乳頭は完全に消退していた(図4e,f).2例目は,タクロリムス点眼薬およびリン酸ベタメタゾン点眼薬で加療しても,結膜巨大乳頭と角膜のシールド潰瘍が改善しないC25歳のCAKCの難治例である(図5a).幼少時からCADも加療していた.点眼治療に抵抗するため,巨大乳頭切除術をC2回施行しても,すぐに巨大乳頭が再発し(図5b),角膜病変も改善しなかった.3回目の巨大乳頭切除術施行の同時期にCADの治療がデュピルマブに変更された.その後,巨大乳頭は再発せず,角膜病変も改善した(図5c).また,筆者らの報告後,海外からも同様の症例が複数例報告されている.Tsuiらは,点眼療法に抵抗性の難治性CVKCに対し,デュピルマブの追加により上眼瞼結膜の巨大乳頭の消退と,角膜病変が治癒した小児症例を3例報告した19).これらは,眼瞼へのタクロリムス軟膏塗布・ステロイド点眼でもコントロール不能であった重症例であったが,デュピルマブ追加後は再燃なく良好な経過が得られている.さらに,日本からも齋藤らがデュ742あたらしい眼科Vol.43,No.7,2026(26)図4デュピルマブによる巨大乳頭の消退アトピー性角結膜炎の症例.Ca,b:デュピルマブ投与前の所見.右眼(Ca)と左眼(Cb)の上眼瞼結膜に巨大乳頭を認める.Cc,d:デュピルマブ初回投与C2週間後の所見.巨大乳頭が著明に平坦化している.Ce,f:デュピルマブC2回目投与C2週間後の所見.巨大乳頭が完全に消退した.(文献C9より引用)図5デュピルマブによる巨大乳頭および角膜病変の改善a:タクロリムス点眼薬およびステロイド点眼薬で加療中のアトピー性角結膜炎の症例で,結膜巨大乳頭と角膜シールド潰瘍を認める.Cb:巨大乳頭切除術をC2回施行後の所見.速やかに再発した.Cc:3回目の切除術と同時にCAD治療をデュピルマブに変更したあとの所見.巨大乳頭は再発せず,角膜病変も改善した.(文献C9より引用)図6JAK阻害薬による春季カタルの改善タクロリムス点眼薬およびステロイド点眼薬で加療中の春季カタル症例(13歳,女児).a:ウパダシチニブ内服前は上眼瞼結膜に巨大乳頭と点状表層角膜症がみられる.Cb:内服開始C1カ月後には巨大乳頭の範囲が縮小した.Cc:内服C3カ月後には巨大乳頭がほぼ平坦化し,角膜上皮障害も消退した.(文献C21より引用)-

アトピー緑内障のアップデート

2026年7月31日 金曜日

アトピー緑内障のアップデートUpdatesonAtopicGlaucoma松田彰*Iアトピー緑内障の疾患概念アトピー性皮膚炎(atopicdermatitis:AD)に緑内障が合併する症例があり,ステロイド緑内障がCADに合併したと解釈されることが多い.一方で,ステロイド忌避症例やステロイドの使用歴はあるものの,ステロイド緑内障とは考えにくい症例があり,アトピー性炎症によって誘発されるアトピー緑内障という疾患概念を筆者らは提唱している.1).アトピー緑内障の定義として,①顔面を含む重症CADが存在すること,②緑内障性の視神経乳頭の変化を認めること,③視神経乳頭の変化に合致する視野障害が存在すること,④C21CmmHg以上の高眼圧,⑤明らかなステロイド緑内障症例は除外する,という基準を作成して,45症例C62眼の臨床的な特徴をまとめて報告した.その結果,発症年齢の平均がC38.13歳と原発隅角緑内障の好発年齢より若く,男女比がC4:1と男性に多く,43眼(69%)にアトピー白内障の合併を,19眼(30%)に網膜.離の合併を認めた.また,論文報告時には両眼性症例がC17眼(27%)であったが,その後の経過中に片眼性から両眼性へ進行した症例もあることから,時間差がある両眼症例が存在するものと考えられる.臨床上の特徴として,経過中の最高眼圧の平均が40mmHgと高く,70%の症例において重症(Aulhorn分類C3期以上)の視野変化を認めている.AD患者において緑内障の有病率が高いことは米国のCJohnsHopkins大学から報告があり.2),韓国での疫学調査などでも報告されている.3).また,重症のCAD患者では観血的手術を要する重症緑内障の発生リスクが高いことが,大規模臨床データベースを使った解析から明らかになっており,アトピー緑内障の疾患概念を支持する報告と考えられる.4).わが国の「アトピー性皮膚炎診療ガイドラインC2024」のクリニカルクエスチョンにもアトピー緑内障の疾患概念がとりあげられており,ガイドラインで引用されている総説.5)は,筆者らの論文.1)を根拠として引用している.「アレルギー性結膜疾患診療ガイドライン」(第C3版)においても,次回改訂時にクリニカルクエスチョンとしてエビデンスを集めたうえでのシステマティックレビューを予定している.CIIアトピー緑内障患者の特徴と疾患概念確立の重要性2015年にアトピー緑内障についての論文を発表した際の患者平均年齢はC38歳であった.筆者が順天堂大学医学部附属順天堂医院と日本大学医学部附属板橋病院で2010~2025年に経験したアトピー緑内障手術症例C62例の初回緑内障手術時の平均年齢はC46.6C±11.7歳であり,2015年時点と比較して患者の年齢層が上がっていると考えられる.これは,AD治療の進歩で,アトピー性角結膜炎,アトピー白内障,アトピー網膜.離といったアトピー眼合併症を次々と併発する症例(眼アトピーマーチ症例)が減ってきている(患者層は高齢化している)ことが影響していると考えられる.患者の性別は男.*AkiraMatsuda:日本大学板橋病院眼科〔別刷請求先〕松田彰:〒173-8610東京都板橋区大谷口上町C30-1日本大学板橋病院眼科(1)(17)C7330910-1810/26/\100/頁/JCOPY性C55人,女性C7人でC88.7%が男性であり,アトピー緑内障は働き盛りの青壮年層の男性に多いことがわかる.受診の時間がとれないなどの理由で,片方の眼が見えているうちは受診しなかった例,緑内障治療を途中放棄した例,うつ症状を呈した例など,アトピー緑内障の病態を広く社会に認知してもらうこと,さらに社会的なサポートが必要と痛感させられる場面を何度も経験している.アトピー緑内障の疾患概念を確立すべき理由は,①重症例であっても濾過手術後であれば,顔面を含めた局所のステロイドを適切に使用することで,ADのコントロールが改善することを経験すること,②濾過手術を施行していない症例でもタクロリムス軟膏やヤヌスキナーゼ(Januskinase:JAK)阻害薬の局所投与,重症例では生物製剤の使用でCADのコントロールを改善することで,眼合併症の連鎖を断ち切ることが期待できること,③前述のように重症CADに伴う緑内障の疾患概念を社会に理解してもらうことが治療上有益であると考えられること,④重症CADに伴う緑内障とステロイドの関係を過剰に考えることで,AD治療に必須であるステロイド使用を忌避したり,医療従事者とのトラブルや親が過剰に責任を感じるといった問題を防ぎ,治療へ前向きな姿勢を作るためにも有効であると考えられるためである.当初の論文で記載したように,軽症CADの症例のなかには,ステロイドの副作用として緑内障を発症したと考えられる症例もあり,完全に両者を鑑別することは困難な場合もある.1).一方で,ステロイドの使用が病態形成にほとんど関係せず,アトピー性炎症が緑内障を含めた一連のアトピー眼合併症を引き起こしていると考えられる症例が真のアトピー緑内障であると考えられる.CIIIアトピー緑内障の病態生理アトピー緑内障の病態生理には不明点が多いが,病理変化の特徴として,透過電子顕微鏡で房水が排出される経路(線維柱帯)にC10~30Cnmの特徴的な線維の沈着が認められる.1).この線維の形態はステロイド緑内障において観察されるC.ngerprint-like物質.6)とは異なる形態を示す.アトピー緑内障患者の前房水中にはインターロイキン(interleukin:IL)C-6,CC-CCmotifCchemokineCligand2(CCL2)といった炎症性サイトカインの発現が亢進しており,眼内炎症が病態形成に関連している.1).アトピー緑内障にはアトピー白内障やアトピー網膜.離の合併症例が多いことを考えると眼球におけるアトピー性炎症の慢性化が病態に重要な役割を果たしていると考えられ,2型炎症サイトカイン(IL-4,IL-13)とその下流にある組織線維化に関連する分子との関連について臨床サンプルを用いて現在も病態生理の研究を継続している.CIVアトピー緑内障の病型分類アトピー緑内障にはその病態の違いからC4病型がある.7).C1.アトピー白内障合併型20~30歳代の発症が多く,アトピー白内障と同時あるいはアトピー白内障の術後にアトピー緑内障が診断される病型.アトピー白内障は典型的な前.下白内障(図1a,b)のほかに,後.下白内障,成熟白内障などの形状を呈する.8).また,ADのコントロールが悪い重症例では,かゆみのために眼球叩打を繰り返すことから,眼内レンズの偏位・落下を認める症例(図1c)があり,アトピー緑内障の重症化のサインである.C2.アトピー性角結膜炎:円錐角膜合併型緑内障治療上の重要なパラメータである眼圧測定は角膜形状に不正がなく,角膜中心部の厚み(中心角膜厚)がC0.545Cmmであることを前提に計測機器(圧平眼圧計)が設定されている.そのため,アトピー性角結膜炎や円錐角膜の症例にアトピー緑内障が合併した場合に眼圧の正確な評価が困難になる.とくに円錐角膜は角膜中心が突出することで中心角膜厚が薄いことから,眼圧を実際よりも低く計測してしまうリスクがある.また,アトピー性角結膜炎や円錐角膜のためもともと視機能が悪い場合に,緑内障による視機能低下に患者が気づきにくいという問題が生じる.さらに,重症円錐角膜患者の場合は治療のために角膜移植が必要になることがあり,拒絶反応防止のためにステロイド点眼を使用する症例や,角734あたらしい眼科Vol.C43,No.7,2026(18)bc図1アトピー白内障に合併したアトピー緑内障a:アトピー白内障に典型的な前.下混濁を呈した症例.b:同じ眼のCHumphrey視野検査,眼圧C30CmmHgでアトピー緑内障(アトピー白内障合併型)の診断.Cc:重症のアトピー性皮膚炎に伴う掻痒感のため,眼球を叩打していた症例.白内障術後の眼内レンズが下方に落下しているC.C図2ROCK阻害薬点眼によるアトピー性接触性皮膚炎Rho-associatedCproteinkinase(ROCK)阻害薬点眼による接触性眼瞼皮膚炎,パッチテストで当該薬剤に陽性反応を認めた.図3網膜.離合併型アトピー緑内障①50歳代,男性.うつ状態を伴う重症アトピー性皮膚炎.4年前に右眼アトピー白内障+アトピー網膜.離の手術歴.引きこもりのため,治療を放棄.左眼はアトピー白内障+網膜全.離でほぼ失明.右眼眼圧C40CmmHg,網膜に.胞様黄斑浮腫を認める(Ca).末期緑内障視野(Cb),右眼に緑内障インプラント手術を施行したC.C40歳代,女性.両眼アトピー白内障術後両網膜.離,強膜内陥術後.右眼は線維柱帯切開術とCBaerveldtインプラント挿入術後(Ca).右眼眼圧再上昇で受診,バックル+インプラント挿入後(Cb,c)で濾過手術追加困難.内視鏡下毛様体光凝固(Cd)を施行.図5網膜.離合併型アトピー緑内障③50歳代,男性.両眼アトピー白内障とアトピー網膜.離術後,左眼光覚なし.右眼CIOL偏位C3回(Ca),右眼緑内障手術4回.右眼水疱性角膜症に対して3回の角膜内皮移植(Cb),眼前手動弁.-

デュピルマブ関連眼表面疾患のアップデート

2026年7月31日 金曜日

デュピルマブ関連眼表面疾患のアップデートAnUpdateonDupilumab-AssociatedOcularSurfaceDiseases安達瑠美*はじめにアトピー性皮膚炎(atopicdermatitis:AD)は皮膚の慢性炎症性疾患であり,眼科領域においてもさまざまな合併症を引き起こす疾患である.2018年にCADに対する生物学的製剤であるデュピルマブがわが国でも承認され,ADの治療の幅が広がっている.一方で,デュピルマブ投与中の副作用として結膜炎があげられており,眼科的治療介入が必要であることが報告されている.本稿では,デュピルマブ関連眼表面疾患(dupilumab-associ-atedCocularCsurfacedisease:DAOSD)の最近の知見を概説する.CIアトピー性皮膚炎ADは,増悪と軽快を繰り返す,.痒のある湿疹を主病変とする皮膚疾患である.ADの病態形成には皮膚のバリア機能異常・掻痒・炎症が三つの大きな病因とされている.慢性的な顔面や眼瞼皮膚の強い掻痒感は,患者の生活の質(qualityoflife:QOL)を低下させるだけでなく,頻回の眼部の掻爬や叩打のきっかけとなり,さまざまな眼合併症を引き起こす.眼合併症としては,アトピー性角結膜炎(atopickera-toconjunctivitis:AKC)・アトピー性眼瞼炎・白内障・緑内障・網膜.離・円錐角膜・易感染性などがあり,幼少期~壮年期の点眼治療,また,重症化した場合には視機能維持のため手術療法が必要となる.1.ADの病態ADにおける炎症の病態にはC2型ヘルパーCT細胞(TChelperC2cell:Th2)やC2型自然リンパ球(innateClym-phoidcellgroup2:ILC2)が深く関与している.これらは局所にC2型炎症を誘導させ,インターロイキン(interleukin:IL)C-4,CIL-5,IL-13などのC2型サイトカインが産生される.IL-4はCB細胞に作用して免疫グロブリンCE(immunoglobulinE:IgE)へのクラススイッチを促進し,IgEの産生に関与している.また,IL-4やCIL-13は皮膚の感覚神経の過敏化にも寄与していることが知られている.IL-5は好酸球の増殖や分化・活性化に関与している.慢性期にはC1型ヘルパーCT細胞(Th1),17型ヘルパーCT細胞(Th17)やC22型ヘルパーT細胞(Th22)が炎症の増強に関与している.AKCやアトピー性眼瞼炎でも同様の機序によりアレルギー炎症が引き起こされていると考えられている.さらに,眼表面では粘膜特有の変化もみられ,IL-4とCIL-13は結膜上皮の杯細胞(gobletcell)の分化およびムチン産生の誘導や線維芽細胞の増殖に関与している.これらの機序により,アレルギー炎症は一過性ではなく慢性化・重症化していくと考えられている(図1).C2.ADにおける生物学的製剤AD患者に対しては近年,生物学的製剤が使用可能となり,わが国で適応が承認されている生物学的製剤としては,デュピルマブ,ネモリズマブ,トラロキヌマブ,*RumiAdachi:日本大学医学部視覚科学系眼科学分野〔別刷請求先〕安達瑠美:〒173-8610東京都板橋区大谷口上町C30-1日本大学医学部視覚科学系眼科学分野(1)(11)C7270910-1810/26/\100/頁/JCOPYIL-4/IL-13線維芽細胞図1アトピー性角結膜炎の病態TSLP:胸腺間質性リンパ球新生因子(thymicCstromallymphopoietin),IL:インターロイキン(interleukin),ILC2:2型自然リンパ球(innatelymphoidcellgroup2),Th:ヘルパーCT細胞(Thelpercell),IgE:免疫グロブリンCE(immunoglobulinE)C.~図2デュピルマブ関連眼表面疾患(DAOSD)図3Impressioncytology法デュピルマブ投与前アトピー性角結膜炎デュピルマブ投与後デュピルマブ関連眼表面疾患(DAOSD)図4デュピルマブ投与によるサイトカインの変化Th:ヘルパーCT細胞(Thelpercell)C.C–