●連載◯296監修=稗田牧神谷和孝296.ICLサイズ不適合への対策三木恵美子南青山アイクリニックHoleICLは術後合併症が少なくよい成績が認められているが,残された問題の一つはサイズ不適合である.複数の機器の測定値を比較し,いくつかの選択法を組み合わせて,より適切なサイズを選ぶ方法を紹介する.それでもサイズが合わずに入替えが必要になることがあるので,入替えの方法,結果についても紹介する.●はじめにスターサージカル社のCICL(implantableCcollamerlens)はCHoleICL(ICLCKSAquaPORT)の登場により術後合併症が減り,よい成績が認められている.今回は残された問題の一つであるサイズ不適合について述べる.C●サイズ選択サイズ不適合を防ぐためにはサイズ選択が重要である.サイズは,12.1,12.6,13.2,13.7CmmのC4種類である.スターサージカル社より提供される計算式ConlineCcalculationC&Corderingsystem(OCOS)で角膜横径(whiteCtowhite:WTW)と前房深度(anteriorCchamberdepth:ACD)から計算するが,これらの測定値は機器による違いがあるため最適化が必要である.たとえば筆者の施設(以下,当院)では,WTWはCIOLマスター700の測定値からC0.5Cmm引いて用いている.OCOSで推奨されるサイズは旧タイプのCICLに対応しており,大きめを選ぶ傾向がある.サイズ選択には他のファクターも確認するといい.隅角間距離(angleCtoangle:ATA)はレンズが固定される毛様溝間距離(sulcusCtosulcus:STS)との相関が認められる1).水晶体膨隆度(crystal-lineClensrise:CLR)は極端に大きい場合(≧300Cμm)は推奨より大きいサイズを,小さい場合(≦.150Cμm)は小さいサイズを検討するべきとする報告がある2).CASIA2のCICLSIZEの画面ではCNS式,KS式の結果から推奨サイズ,予測されるCpostvault,postACD,CpostTIA(trabecularirisangle:隅角角度)などが示される.画像で自動選択された測定点を確認し,必要があれば修整する.PostACDはC2.0Cmm以上あればいいが,選択サイズによるCvaultの違いも表示されているので,低めや高めを選ぶなど術者による選択が可能である.CPostTIAはC15.2°以上が推奨される.AIによるCvault予測の方法も出てきており,予想精度がさらに上がるこ(83)C0910-1810/25/\100/頁/JCOPYとが期待される.C●サイズの評価サイズが適当かどうかの評価はCvaultで行い,0.5~1.5CT(cornealthickness)が適当とされる.術前のACDによっても評価は異なり(図1),ACDが浅い患者や深い患者ではCCTの値そのものではなく,前房内でのバランスをみる必要がある.HoleICLの合併症は少ないとされるものの,highvaultでは隅角閉塞による眼圧上昇や閉塞隅角症のリスクがあり,角膜内皮への接触ないか,瞳孔運動障害や毛様痛,光障害などがないか注意する.経過とともにCvaultは下がることが報告されており3),当院の患者でも同様の傾向がみられた(図2).CHoleICLでは前房水の循環が保たれることでClowvaultによる白内障のリスクは少ないが,調節障害を起こす可能性があり,0.3CT以下では慎重な経過観察が必要と思われる.当院でC3年間に使用したサイズはC1,041眼中C12.1mmがC183眼(17.6%),12.6mmがC697眼(69.9%),13.2mmがC125眼(12.5%)とC12.6mmの使用が多い(図3).ほとんどの患者で術後Cvaultは良好であるが,12.6Cmmのレンズを入れてChighvaultになっているケースがあり,12.1CmmとC12.6Cmmで選択を迷う患者では,STSは水平方向より垂直方向のほうが長いので,12.6Cmmのレンズを積極的に縦固定にするなど工夫が必要であろう.C●サイズ不適合になったら合併症が懸念される場合は対処が必要となる.水平方向に固定してあるノントーリックのCICLがChighCvaultであれば,垂直に回すとCvaultは下がる.ICLを回転させるにはC1Cmmの創から粘弾性物質(ophthalmicvisco-surgicaldevice:OVD)を前房内に少量入れ,マニピュレーターで回転させる.操作後に眼灌流液を穿刺創から流し,前房洗浄を行う.その他の場合やトーリックレンズの場合はサイズ変更が必要になり,当院ではC8眼(0.8あたらしい眼科Vol.42,No.1,202583図1前房深度とvaultICL後面と水晶体前面の距離を角膜厚と比較してCCTで表す.上:前房が浅い症例.ACD2.622Cmm.12.1Cmmのレンズを入れ,vaultはC0.23CTと低い.下:前房が深い症例.ACD3.862Cmm.12.6Cmmのレンズを入れ,vaultはC1.86CTでChighvaultであるが問題ない.(%)52.8%)がChighvaultで,4眼(0.4%)がClowvaultで入替えが必要であった.摘出はレンズの上下にCOVDを入れ,マニピュレーターでハプティクスを虹彩の上に出し,パックマンなどの鑷子でハプティクスを把持して,元の主創口から引き出す.レンズは柔らかく裂けやすく,また滑りやすいので,少し引き出したら他のレンズ鑷子で補助するようにしている.その後はCOVDを入れて新しいレンズを挿入する.入替え後の結果(表1)から,highvaultの場合はサイズをC2段階下げることも検討する.C●おわりにICLのサイズ不適合は完全になくすことはむずかしいが,複数の機器の測定値を比較し,いくつかの選択法を組み合わせることで,より適切なサイズが選べるものとC84あたらしい眼科Vol.42,No.1,2025(CT)highmoderate表1サイズ変更後のvaultの変化入替前(CT)レンズサイズ(mm)入替後(CT)C2.6613.2C→C12.6*C1.62C↓C2.59C13.2C→C12.1**C0.68C↓C2.53C13.2C→C12.1**C0.68C↓C2.45C12.6C→C12.1C0.78C↓C2.32C12.6C→C12.1C0.86C↓C2.30C12.6C→C12.1C0.63C↓C2.1213.2C→C12.6*C1.51C↓C1.88C12.6C→C12.1C0.89C↓C0.26C12.6C→C13.2C0.44C↑C0.23C12.6C→C13.2C0.60C↑C0.08C12.6C→C13.2C0.68C↑C0.05C12.6C→C13.2C0.71C↑low*サイズをC1段階小さくしてCvaultは下がったが,まだChighvaultであった.**サイズをC2段階小さくしてCvaultがよくなった.(いずれも同一の両眼)思う.不適合による合併症の可能性があれば抜去,入替えを行うことは術前に説明が必要であろう.文献1)荻瑳彩,西田知也,片岡嵩博ほか:前眼部COCTによる前眼部計測値と超音波生体顕微鏡(UBM)における毛様溝間距離との関係.日本視能訓練士協会誌47:181-189,C20182)ZhouZ.ZhaoX.JiaoXetal:Thedistributionofcrystal-lineClensCriseCinChighCmyopiaCpopulationCandCitsCin.uenceConCvaultCafterCimplantingCintraocularCcollamerClens.COph-thalmolTherC13:969-977,C20243)LiCB,CChenCX,CChengCMCetal:Long-termCvaultCchangesCindi.erentlevelsandfactorsa.ectingvaultchangeafterimplantationCofCimplantableCcollamerClensCwithCaCcentralChole.OphthalmolTherC12:251.261,C2023(84)