考える手術.監修松井良諭・奥村直毅内視鏡毛様体光凝固術のparsplanaアプローチのコツ米田一仁昴会アイセンター・さくら眼科グループ内視鏡毛様体凝固(endoscopiccyclophotocoagulation:ECP)は,チューブシャント手術などでも眼圧下降が不十分な緑内障の難治患者に対する治療法として,海外ではダイオードレーザーを用いた方法が以前から行われていた.わが国では島根大学医学部の谷戸らが,グリーンレーザーを用いた,より低侵襲で組織選択的なECPを開発し,2024年に保険収載され広く実施できるようになった.ECP以前は,眼圧下降を目的とした毛様体の破壊術として,冷凍凝固を用いる方法や眼外からの光凝固術という方法があったが,眼球への侵襲が非常しながら光凝固を行うことから,不必要な組織への破壊や侵襲が最小限に抑えられ,選択的に毛様体の房水産性ECPは本来,角膜輪部付近に創口を作製し,前房からアプローチする方法が一般的である.具体的には前房を粘弾性物質で満たしたのち,内視鏡の観察,光源,レーザーの3種類のファイバーが1本になった20ゲージ(G)の器具を挿入し,内視鏡で直接毛様体を前房側から確認しながら凝固する方法である.前房からのアプローチの場合は270.360°の範囲で凝固するため,輪部の創口を2カ所作製することが一般的である.一方,今回紹介するparsplanaからアプローチするECPの方法は,従来のECPで眼圧下降が不十分な患者に対して,硝子体側からアプローチして毛様体の後方から光凝固を行う方法である.具体的には3portvitrectomyの要領で25Gのトロカールを3カ所(耳下側,耳上側,鼻上側)に設置し,鼻上側のトロカールに灌流ラインを設置して眼圧を維持し,耳側の一方から25Gの眼内内視鏡を挿入し眼内を観察した状態で,もう一方の耳側の25Gトロカールから硝子体手術で用いる眼内レーザープローブを挿入して,毛様体を硝子体側から光凝固する方法である.聞き手:前房からのアプローチとparsplanaからのアプますが,後方は少し凝固がむずかしいように思います.ローチとで,毛様体の凝固に関して異なる点はありますか?その代わり,角膜輪部からのアプローチなので,2カ所米田:前房からのアプローチでは毛様体皺襞部の前房側に創口を作製するだけで全周の毛様体を直視下で観察・から光凝固を行うため,毛様体皺襞部の前方は凝固でき凝固可能です.Parsplanaからのアプローチでは,硝(87)あたらしい眼科Vol.42,No.3,20253510910-1810/25/\100/頁/JCOPY考える手術子体から毛様体皺襞部を凝固するため,毛様体皺襞部をほぼすべて凝固可能ですし,毛様体の扁平部を光凝固することも可能です.扁平部の凝固を追加することで,さらに眼圧下降が得られるとの報告もあります.ただし,鼻側からのparsplanaのトロカールからの毛様体の観察はむずかしく,耳側のトロカールからのアプローチでのみ毛様体凝固が可能な場合もあります.耳側からのアプローチではどれだけ広い範囲の凝固を試みても180.200°が限界ではないかと思っています.聞き手:Parsplanaアプローチを用いたECPを選択する条件や適応はどのようのものですか?米田:そもそもECPが適応となるのは,従来の濾過手術などを行いづらい患者に対してです.具体的には,血管新生がコントロール不能な状態が続いている血管新生緑内障や,濾過手術後の管理が難しいような患者背景をもつ場合,または増殖性の網膜疾患の手術後でシリコーンオイルを抜去することができず,オイルタンポナーデで高眼圧が持続している場合などです.その中でも血管新生緑内障やぶどう膜炎に伴う緑内障などでは,虹彩の拘縮や水晶体への虹彩の強固な癒着があり,前房からのアプローチが困難な場合があります.そのような場合には,とくにparsplanaからのアプローチがよい適応となります.また,増殖硝子体網膜症や増殖糖尿病網膜症の術後でシリコーンオイルを抜去することができない状態の場合は,前房からのアプローチを行うと,前房にシリコーンオイルが脱出してくることが予想されます.このような状態なども,parsplanaからのアプローチがよい適応になると考えています.ただし,硝子体手術を行った後の状態である必要がありますし,水晶体は,人工水晶体もしくは無水晶体であれば施行可能ですが,有水図1内視鏡モニターの設置晶体の状態では毛様体凝固が行いにくいため,白内障手術を事前に行っておくほうがECP施行する必要があると思います.そのため,適応は非常に限定的になります.聞き手:トロカールはどのように設置したらよいでしょうか.米田:鼻側からの眼内内視鏡挿入では毛様体の観察ができません.そのため,基本的に耳鼻側のトロカールには灌流ラインを設置します.これは鼻上側でも鼻下側でもいいと思いますが,個人的には鼻上側に設置しています.耳側のトロカールには、一方は眼内内視鏡,他方はレーザーを挿入します.この際,あまりに2本のトロカールを近接して設置すると操作が困難になることがあります.しかし,間を開けすぎると凝固可能範囲が狭くなるため,耳側のトロカールはケースごとによく考えて設置すべきだと思います.また,耳側のトロカールの内視鏡とレーザーは途中で入れ替えて,可能な限り広い範囲を凝固するようにしています.聞き手:レーザーの設定はどのようにしていますか?米田:グリーンレーザーで100.200mWの出力で持続照射(continuousmode)を用いて,しっかり毛様体を凝固するように心がけています.モニターなどの配置はそれぞれの手術室の状況にもよりますが,患者の耳側側に執刀医が座って行うため,患者を挟んで逆のサイドに内視鏡モニターを設置すると,観察が行いやすいです(図1,動画①).聞き手:ParsplanaアプローチのECPを実際に行う際の注意点やコツを教えてください.米田:先の質問でもお答えしたように,トロカールの設置位置が非常に重要になります.また,前房アプローチの場合とは逆に,前房を虚脱させると,毛様体の全貌が観察しやすくなり凝固が容易になります.ただし,parsplanaアプローチのECPは,前房アプローチに比べて毛様体皺襞部ならびに扁平部を広く凝固可能ですが,全周にわたりそのような凝固をした場合には,低眼圧や眼球癆などの合併症に注意が必要です.文献1)TanitoM,ManabeS,HamanakaTetal:Acaseseriesofendoscopiccyclophotocoagulationwith532-nmlaserinJapanesepatientswithrefractoryglaucoma.Eye34:507-514,2020352あたらしい眼科Vol.42,No.3,2025(88)