反復低出力赤色光療法RepeatedLow-LevelRed-Light(RLRL)Therapy五十嵐多恵*はじめに反復低出力赤色光(repeatedClow-levelred-light:RLRL)療法(以下,レッドライト治療)は,従来の「best治療」〔低濃度アトロピン,近視管理用眼鏡,MiSightなどの多焦点ソフトコンタクトレンズやオルソケラトロジー(orthokeratology,以下,オルソK)〕を超える可能性を秘めた「beyondthebest」の治療として位置づけられる.とくに,強度近視における眼軸短縮効果は革新的である.しかし,長期的安全性に関する議論が続いており,今後は視細胞レベルでの検証や大規模多施設試験が求められている.本療法はC650CnmC±10Cnm前後の単一波長赤色光を眼底に照射するもので,基本的にC1回C3分,1日C2回,週5日間のプロトコールで行われる.レッドライト治療装置は,中国国内ではC20種類を超える機器が流通してきたが,EyerisingInternational社のEyerising(アイライジング)近視治療用機器(図1)のみが,中国以外の各国で医療機器として認可され,ISO13485認証を取得している.CI臨床試験の成果Jiangらによる軽度.中等度近視児を対象としたC1年間のランダム化比較試験(randomizedCcontrolledtrial:RCT)では,8.13歳の近視(C.1.00.C.5.00D)の中国人小児C264人を,レッドライト治療群(1,600ルクス/650nm/2.0mW/C1日C2回C3分/週C5日)と,単焦点眼鏡(single-visionCspectacles:SVS)群に割当て比較した1).この結果,眼軸長の延長がC69.4%抑制され,等価球面屈折度の進行はC76.6%抑制された.75%以上のコンプライアンス良好群(平日C5日のうちC4日間実施した群)のみを抽出した場合,近視進行抑制効果は眼軸長でC76.8%,近視度数でC87.7%であった.さらに追跡研究では,2年間でC75%の近視度数および眼軸長の抑制効果が確認され,中等度のリバウンドがあるものの臨床的有効性が支持された(図2)2).CII3年間の長期成績レッドライト治療のC3年間の長期効果に関するデータもリアルワールドスタディから報告されている.Chenらによる中国C3施設のリアルワールド多施設コホート研究では,7.18歳の近視児C362例を対象に最大C3年以上のレッドライト治療の有効性と安全性が検討された.その結果,3年以上の治療において年間眼軸長伸長が0.10Cmm以下である「良好な近視抑制」を達成した割合はC72.5%であり,平均眼軸長伸長はC0.06Cmm/年であった.治療効果はC1.2年の成績と比較するとやや低下する傾向がみられたものの,3年間にわたり臨床的に有意な抑制効果が維持された.安全性に関しては,視力低下や網膜電図(electroretinogram:ERG)異常などの視機能障害は認められず,光干渉断層計(opticalcoherencetomography:OCT)でごく少数の症例に楕円体帯の微小な不連続が認められたものの,視機能への影響はなく*TaeIgarashi:東京都立広尾病院眼科〔別刷請求先〕五十嵐多恵:〒150-0013東京都渋谷区恵比寿C2-34-10東京都立広尾病院眼科(1)(61)C5330910-1810/26/\100/頁/JCOPY(mm)0.80.6眼軸長の変化メーカーHPhttps://www.eyerisinginternational.com/0.40.20.001361224(カ月)時間使用説明動画https://vimeo.com/803740195図2レッドライト治療の眼軸伸展抑制効果とリバウンド図1Eyerising(アイライジング)近視治療用機器と使用説明動画の二次元バーコード動画サイトに説明動画が公開されている.(画像提供:EyerisingInternational)RLRL2年継続群()の眼軸伸展抑制効果は,SVS2年継続群()と比較して,約C75%であった.1年目でCRLRLを中断した群()では,中断後に赤線の継続群よりも速い眼軸伸展が観察された3).リバウンドの程度はCSVS2年継続群()のC2年目の進行速度より速いものの,1年目の進行速度と同程度であることから,中程度と判断された.なお,2年目にCSVSからRLRLに切り替えた群()では,最終的にC2番目に高いC22.6%の眼軸伸展抑制効果を得ることができた.(文献C2より引用)眼軸長の変化(mm)0.300.250.200.150.100.050.00-0.05-0.10baseline126期間(カ月)図3異なるレッドライト出力における眼軸長伸展抑制効果Low-LevelCRed-LightTherapy(LRL)群では,EyerisingCInter-national社製より低い,いずれの出力条件においても対照群(単焦点眼鏡装用)と比較して有意な眼軸長伸展抑制が認められている.(文献C10より引用)期安全性の確保が重要であり,副作用を最小限に抑える観点から,より低出力条件の有効性を検討する必要性も示唆されている.CX光安全性に関する議論市場にはCGroup1(低出力)とCGroup2(高出力)の機器が流通しており,EyerisingInternational社製デバイスは後者に分類される.Group2では光強度が強く,抑制効果が高いとされる一方,安全域を超えるとの指摘がある.米国の研究者らは「Group2機器は安全域を逸脱する可能性がある」と報告し,Group1機器を販売するメーカーを推奨した11).とくにCGroup2機器は瞳孔径が大きい場合,数秒で最大許容露光量に達するとのシミュレーションが発表されている.これに対してCGroup2機器のCEyerisingメーカー側は反論を発表し,臨床試験での高い有効性と安全性を強調している12).議論は続いており,動物実験や補償光学走査型レーザ検眼鏡(adaptiveCopticsCscanningClaserCophthalmo-scope:AO-SLO)などを用いて視細胞レベルで安全性を検証する必要が指摘されるようになった.注目されるなかでCAO-SLOを用いた調査結果の第一報がCLiaoらによってC2025年CJAMACophthalmology誌に掲載された13).「錐体密度減少」の懸念が提起されたが,この報告は,後方視的研究で両群の錐体密度のベースラインデータが提示されていないこと,統計学的問題(両眼を独立対象とした解析,有意水準未調整の多重比較など),画像解釈の不備などが散見されるため,結論には慎重さが必要である.また,レッドライトで網膜に.胞様の変化が生じると指摘されているが網膜の層レベルの解釈に対する誤りも指摘されている14).北京同仁病院の多数例を対象としたよりエビデンスレベルの高いC2年間のRCTでは,治療群と対照群の錐体密度に差はなく,安全性を裏づける結果が公表されるとの予定もある15).いずれにしても安全性に関しては,今後の研究の蓄積による科学的根拠に基づいた判断が必要である.CXIレーザー安全性規格の専門家の見解と国際規制規制面では,中国がC2023年にレッドライト治療機器をCClassIII(高リスク)に再分類し,2024年以降新規販売を制限した.20社以上が臨床試験や医師監督なしに販売していたことが背景にある16).ただし,既存ユーザーの継続使用は認められ,EyerisingInternational社製デバイスはC11万人以上が使用を継続している.一方でオーストリアのCSchulmeister博士はCEyerisingInternational社製デバイスの安全性を再評価し,「網膜損傷リスクはごくわずかであり,瞳孔収縮を考慮すれば安全マージンはさらに広がる」と結論づけた.実験ではEyerisingのC5倍の強度・時間でも網膜障害は検出されなかったと述べた17).このため中国では近年,レッドライト機器対する規制分類がCClassIIIへ再分類されたが,この規制変更は各国の規制判断に直接影響するものではないと解釈されている.現在,EyerisingInterna-tional社製デバイスは,欧州では医療機器規則(medicaldeviceregulation:MDR)に基づくCCEマークを取得したCClassIIa医療機器として承認されており,オーストラリアCTGA,英国CMHRA,ニュージーランドCMed-Safe,トルコCTMMDAなどにおいても同様にCClassIIa医療機器として登録されている.また,マレーシア,ベトナム,コロンビア,サウジアラビアなどではCClassCB医療機器として承認され,UAEではCClass2医療機器として登録されているほか,オマーンでは輸入承認が与えられている(表1).なお,シンガポール,インド,韓国,エクアドルでは現在,承認申請が進行中である.このように,EyerisingInternational社製レッドライト治療機器は,複数の国・地域の規制当局により医療機器として承認されている.CXII各国における臨床研究の状況近年,レッドライト治療は世界各国で臨床研究が進められている.アジア太平洋地域では日本,マレーシア,ベトナムなどで臨床導入または臨床研究が行われており,韓国,インド,タイ,台湾などでも近視進行抑制を目的とした臨床試験が開始されている.また,欧州・中東地域においても,英国やトルコでは臨床使用が開始されている一方,フランス,スペイン,ポルトガル,ノルウェー,ポーランド,イタリア,オランダ,イスラエル,サウジアラビアなど多くの国で臨床試験が進行中で536あたらしい眼科Vol.43,No.5,2026(64)表1Eyerisingレッドライトデバイスの各国規制状況(2026年3月時点)国・地域規制当局分類C/承認状況中国国家薬品監督管理局(NMPA)ClassIII(再分類)欧州連合CEマーク(医療機器規則MDR)ClassIIa医療機器オーストラリアCTGAClassIIa医療機器英国CMHRAClassIIa医療機器ニュージーランドCMedSafeClassIIa医療機器トルコCTMMDAClassIIa医療機器マレーシアCMedicalDeviceAuthorityClassB医療機器ベトナム保健省ClassB医療機器コロンビアCINVIMAClassB医療機器サウジアラビアSaudiFoodandDrugAuthority(SFDA)ClassB医療機器アラブ首長国連邦(UAE)CEmiratesDrugEstablishmentClass2医療機器オマーン保健省輸入承認シンガポール,インド,韓国,エクアドルでは現在,承認申請が進行中である.このように,EyerisingInternational社製レッドライト治療機器は複数の国・地域の規制当局により医療機器として承認されている.C-’C