●連載◯295監修=稗田牧神谷和孝295.SMILEpro岡義隆先進会眼科SMILE(スマイル)はフェムトセカンドレーザーを用いた角膜屈折治療である.2024年C2月,屈折矯正手術のガイドラインに記載された.SMILEproとは,新型のフェムトセカンドレーザーCVISUMAX(日本未発売)を使用したCSMILE手術をさす.本稿ではCSMILE手術,新型機の特徴,SMILECproとなり改良された点などを紹介する.●はじめにSMILE(スマイル)とは,SmallCIncisionCLenticuleExtractionの略で,フェムトセカンドレーザーCVISUMAX(CarlCZeissMeditec社)を使用して行う角膜屈折治療方法である.2023年C3月に厚生労働省の薬事承認を取得した.また,2024年C2月に更新された日本眼科学会の屈折矯正手術のガイドライン(第C8版)1)にCSMILEとして掲載された.SMILECproは,VISUMAXの新機種であるモデルC600またはC800に搭載されているCSMILEソフトウェアプログラムを使って行うCSMILE手術をさす.わが国では2024年C5月時点において承認審査中であり,未発売である.欧州,米国,アジア各国においては,すでにSMILEproが導入されている.C●SMILEとはSMILEはフェムトセカンドレーザーC1台で完結する角膜屈折手術である.LASIK(laserinCsituCkeratomile-usis)手術のようにエキシマレーザーは使用しない.角膜実質層の内部にフェムトセカンドレーザーを照射し,矯正量に応じた厚みにデザインされたシート状の角膜切片(レンチクル)を作製する.そして,2~4Cmmの創口を同レーザーでつくり,その切片を抜き取ることで角膜の曲率を変化させ屈折を矯正する(図1).LASIKのようにフラップを作製しないため,フラップに関する合併症がなく,創口もC2~4Cmmと小さく,ドライアイも発生しにくい.国内では,等価球面度数.10D(近視.10.00D以下,乱視.3.00D以下)までの近視眼および近視性乱視眼の矯正に供されるとされている.全世界では,2011年の発売開始以来CSMILEの実施数はC2023年C5月にC800万眼を超えたと発表されている2).とくにアジア圏では屈折矯正手術の主流となっている.(63)C0910-1810/24/\100/頁/JCOPY図1SMILEの手術工程レーザー照射によりシート状に角膜切片(レンチクル)を切りとり,約C3Cmmの創口から抜き取る.●フェムトセカンドレーザVISUMAXの新機種(モデル600/800)CarlZeissMeditec社はC2021年にCSMILEproプログラムを搭載したCVISUMAX(モデルC600/800)のCCEマークを取得し,2024年C1月には米国食品医薬品局(FDA)の承認を得た3).わが国ではCSMILEproのプログラムは未承認のため未発売であるが,レーザー装置本体はC2023年C11月にCVISUMAXpro(承認番号:30500BZX00273000)として承認を得ている.VISUMAX(モデルC800)(図2)は,レーザー本体に2本のアームを備えている.一つがレーザーアームで,もう一方がCOPMI(手術顕微鏡)アームである.手術工程に合わせて,使用するアームをボタン操作で作業ポジションに移動させる.レーザーアームにはモニターが備わっており,患者の角膜の様子が映し出される.モデル600にはCOPMIアームが備わっておらず,手術顕微鏡を別途用意する必要がある.この新型のCVISUMAXは,従来品と比べて小型化を実現した.以前は患者用ベッドを上下左右に動かすことで患者の位置を調整していたが,レーザー本体が上下左あたらしい眼科Vol.41,No.12,20241447図2フェムトセカンドレーザー図3CentraLignの画面図4回旋補正機能OcuLignの画面VISUMAX800瞳孔中心を認識し,モニター上に示す.2本のアームを備える.右に動き位置調整ができるようになった.そのためベッドを支えるプラットホームといわれる設置ベースが不要になった.C●SMILEproとはVISUMAX(モデルC600/800)は,レーザーの周波数が従来の同社製品のC500CkHzからC2CMHzとなった.これにより,従来装置で約C30秒弱かかっていたレンチクルの作製が,およそC8秒程度とC10秒未満で完了する.照射時間が大幅に短縮されることで,サクションロスの発生リスクが低減し,患者への負担も少なくなると期待される.CSMILEpro(VISUMAXモデルC800使用)と,従来のSMILE(VisuMaxモデルC500使用)における手術工程にかかった時間を比較したCBrarらによる報告4)によると,ドッキングにおいては,SMILEproがC133.63C±38.88秒に対して,従来のCSMILEはC194.11C±47.59秒,手術全体の時間は,SMILEproがC6.96C±1.67分に対して従来のCSMILEはC9.52C±1.72分と,SMILEproでは有意に手術時間が短縮された.またCSaadらは,52症例C82眼に対するCSMILECproの臨床使用において,合併症はなかったと報告した5).術後の臨床成績に関しては,今後の報告が待たれる.このほか,VISUMAX(モデルC600/800)になって搭載された機能として,CentraLignというセンタリング機能と,OcuLignという回旋補正機能がある.CentraLignは瞳孔中心を自動でトラッキングし,患者の眼にトリートメントパックとよばれる患者インターフェースをドッキングする際の位置合わせをアシストする機能である.その様子はレーザーアームに備えられているモニターに表示され,術者が位置合わせをする際にC1448あたらしい眼科Vol.41,No.12,2024瞳孔中心を示し,視覚的にアシストする(図3).OcuLignは眼球の回旋運動に対する機能である.事前のマーキングまたは事前に撮影した画像を使用して,虹彩紋理パターンをもとに回旋補正を行う(図4).C●おわりにSMILEproは国内では未承認プログラムであるが,欧州,米国,アジア各国において実施されている.レンチクルの作製時間,つまりレーザーの照射時間が従来の30秒弱からおよそC8秒程度へと大幅に短縮されたことは,サクションロスの発生リスクの低減に大きく寄与すると期待される.また,今後もソフトウェアのバージョンアップによって,一層改良されていくであろう.従来SMILEの弱みとされていたセントレーションに対する機能強化や,遠視治療の対応など,今後のさらなる発展が期待される.文献1)日本眼科学会屈折矯正委員会:屈折矯正手術のガイドライン(第C8版).日眼会誌128:135-138,C20242)https://www.zeiss.com/content/dam/z/med/reference-master/campaigns/en-smile-bene.ts.pd0f3)CarlCZeissCMeditecCAG.CPRESSCRELEASE.CU.S.CFDACApprovesCtheCVISUMAXC800CwithCSMILECproCsoftwareCfromZEISS;https://www.zeiss.com/meditec-ag/en/Cmedia-news/press-releases/2024/fda-approves-visumax-800-with-smile-pro.html4)BrarCS,CGaneshCS,CBhargavS:ComparisonCofCintraopera-tivetimetakenfordocking,lenticuledissection,andover-allwork.owforSMILEperformedwiththeVisuMax800versustheVisuMax500femtosecondlaser.CJRefractSurgC39:648,C20235)SaadCA,CKlabeCK,CKircaCMCetal:RefractiveCoutcomesCofCsmallClenticuleextraction(SMILE)ProCRCwithCaC2CMHzCfemtosecondlaser.IntOphthalmolC44:52,C2024(64)