眼内レンズセミナー監修/大鹿哲郎・佐々木洋森悠大406.前眼部OCTによる水晶体の評価筑波大学医学医療系眼科前眼部光干渉断層計(OCT)で撮影した白内障症例(核混濁,皮質混濁,後.下混濁,成熟白内障,後極白内障)および水晶体異物の症例を提示する.前眼部COCTを用いることで水晶体の状態を客観的にとらえることが可能であり,とくに高度の散瞳不良例や,水晶体異物での後.評価に有用と考えられる.●はじめに光干渉断層計(opticalCcoherencetomography:OCT)は組織断層像を容易かつ非侵襲的に取得できる技術で,現在の眼科診療には欠かせない機器の一つとなっている.従来は眼底撮影用が一般的であったが,最近は前眼部COCTも保険収載され,角膜,前房,隅角の評価に用いることが一般的になりつつある.さらに最近では,水晶体全体の観察まで可能となった高侵達前眼部OCTも臨床使用可能となっている.今回は,前眼部OCTによる白内障所見,臨床的に有用と考えられた症例について提示する.C●正常眼,眼内レンズ挿入眼正常有水晶体眼,眼内レンズ挿入眼について前眼部OCTで撮影した断層像を図1に示す.有水晶体眼では角膜から水晶体後.まで明瞭に描出されており,水晶体は中心がやや低輝度となる(図1a).眼内レンズは内部が低輝度,輪郭がやや高輝度に描出される(図1b).C●核混濁,皮質混濁,後.下混濁白内障の代表的な病型について,前眼部COCTで撮影した水晶体断層像を図2に示す.核混濁はCEmery-Little分類でCGrade2程度までの症図1正常眼,眼内レンズ挿入眼の前眼部OCT所見a:正常有水晶体眼.水晶体は中心がやや低輝度に描出される.Cb:眼内レンズ挿入眼.眼内レンズは内部低輝度,輪郭がやや高輝度に描出される.例では水晶体核が低輝度に観察されるが(図2a),混濁が強くなるほど水晶体核が高輝度に観察される(図2b).皮質混濁は線状の高輝度領域として観察される(図2c).強い皮質混濁では後方に陰影を生じる.後.下混濁は後.のラインが正常より高輝度に描出される(図2d).C●成熟白内障,後極白内障成熟白内障では,ある程度の内部構造は判別できるものの,後.までは撮影不可能である(図3a,b).Dhamiらは白色成熟白内障において,前眼部COCTで前.下に下液腔を認める症例で,前.切開前の穿刺吸引が有効であったことを報告している1).後極白内障は術中の後.破損をきたしやすい病型であり,術前評価と手術計画が重要となるが,前眼部COCTでは後.に接した高輝度領域が観察される(図3c,d).図2白内障の前眼部OCT所見a:Emery-Little分類CGrade2程度の軽度核混濁.核は低輝度に映る.b:Emery-Little分類CGrade4程度の核混濁.核はやや高輝度に映る.Cc:皮質混濁.線状の高輝度領域として観察される.d:後.下混濁.後.のラインが高輝度に映る.(79)あたらしい眼科Vol.37,No.9,2020C11190910-1810/20/\100/頁/JCOPY図3成熟白内障,後極白内障の細隙灯顕微鏡および前眼部OCT所見a:外傷性成熟白内障の症例.Cb:aの前眼部COCT所見.内部構造はある程度描出されるが,後.までは描出不可.Cc:後極白内障の症例.Cd:cの前眼部COCT所見.後.に接した高輝度領域を認める.C●その他臨床上有用と思われる場面前眼部COCTが臨床上有用と思われたC2症例を報告する.図4aは原因不明の縮瞳を呈していた症例であるが,散瞳薬への反応も非常に悪く,後.までは観察困難であった.図4bはこの症例の前眼部COCT所見であるが,このような散瞳不良例でも後.まで明瞭に観察可能だった.図4cは針金状の異物が角膜を穿孔し水晶体に突き刺さった症例だが,前眼部COCTで撮影すると異物の深達度,後.の状態が客観的に判断できる(図4d).ただし,異物の後方は陰影を生じるため明瞭には観察できない場合もあり,成熟白内障に至っている症例では観察困難になる.C●考察これまで水晶体を客観的に評価する方法としては図4散瞳不良,水晶体異物の前眼部OCT所見a:原因不明の縮瞳を認める症例.水晶体の状態はほとんど観察できない.Cb:aの前眼部COCT所見.後.まで観察可能である.Cc:水晶体異物の症例.針金状の異物が角膜を貫通し水晶体に刺さっている.d:cの前眼部COCT所見.高輝度の異物を認め,後.までは達していないことがわかる.Pentacam(OCULUS社)などのCScheimp.ugカメラがあったが,水晶体後面までは撮影できない症例も多く,とくに散瞳不良例では観察困難だった.また,異物や高度の皮質混濁では強いハレーションを生じるという欠点もあった.前眼部COCTでは成熟白内障を除くほとんどの例で水晶体後面まで観察が可能であり,図4で提示したように散瞳が非常に悪い症例でも水晶体断面の観察が可能であった.また,水晶体異物でもハレーションは生じず,周囲の状態を明瞭に観察できた.前眼部COCTにより水晶体の状態を客観的に評価することが可能であり,とくに散瞳不良例や水晶体異物での後.評価で有用と考えられる.文献1)DhamiA,DhamiAS,SinghHetal:Roleofanteriorseg-mentopticalcoherencetomographyforsafermanagementofCmatureCwhiteCcataracts.CJCCataractCRefractCSurgC45:C480-484,C2019C