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ニュープロダクツ 株式会社 スリットランプ METORI-50

2020年5月31日 日曜日

●株式会社エムイーテクニカスリットランプMETORI.50METORI-50は,スマートフォンに取付けて使用する軽量・簡便なスリットランプです.スマートフォンのカメラ機能と通信機能を使って,スリットやコバルト光を用いた前眼部検査の記録や,遠隔地などへの動画や静止画像の送信もスマートフォンの操作そのままに簡単に行えます.また,院内だけでなく,海外への医療支援や在宅,救急などの医療現場,あるいは眼科医不在の診療所などにおいても,眼科専門医と容易に情報を共有できるなどのメリットがあります.仕様検査光:スリット,コバルト光源:LED電源:DC3V(リチウム電池CR2×1)連続使用時間:約10時間重量:93g製造元:株式会社井澤日本製医療機器認証番号:13B2X00180000078定価:¥86,800(税別)<総発売元・問い合わせ先>株式会社エムイーテクニカ東京都豊島区巣鴨1-34-4TEL:03-5395-4588http://www.metechnica.co.jp/(101)あたらしい眼科Vol.37,No.5,2020603

基礎研究コラム 36.シナプスと網膜再生

2020年5月31日 日曜日

シナプスと網膜再生秋葉龍太朗*1,2松山オジョス武*3高橋政代*3万代道子*3シナプスとは脳や網膜などの神経組織は,多数の神経細胞(ニューロン)がシナプスという構造を介して神経伝達物質をやり取りすることでお互いに会話をし,コンピューターのような回路として機能することができます.網膜において光を受容するのは視細胞ですが,シナプスを介して双極細胞・神経節細胞などの上位ニューロンに視覚情報が伝えられることで初めて,中枢神経に視覚情報が認識されるようになるのです(図1a).視細胞のシナプスにおいては,ribeyeという蛋白質を介して神経伝達物質であるグルタミン酸が放出され,二次ニューロンである双極細胞の代謝型グルタミン酸受容体(mGluR6)にて受け取られます(図2a).網膜再生におけるシナプスの再建網膜色素変性症では遺伝子変異によって視細胞が細胞死を起こし,その結果として視機能を喪失します.近年,iPS/ES細胞から網膜組織を分化する技術が開発されたため1),幹細胞由来の網膜組織を移植することで視細胞を補充する細胞治療が,新しい治療法として期待されています2).この治療法で視機能を回復するために重要なのは,移植した細胞がホストの網膜と視細胞シナプスを形成すること(図1b,c)ですが,移植後のシナプスを詳細に検討した研究は行われていませんでした.そこで筆者らは,視細胞のシナプスをribeyeとCmGluR6の免疫染色で可視化し(図2b),その画像からシナプスを客観的に評価できるコンピュータープログラムを作成しました.マウスCiPS細胞由来の網膜組織を網膜変図1正常網膜の構造と幹細胞を用いた細胞治療の概略図*1ワシントン大学*2千葉大学医学研究院眼科学*3理化学研究所網膜再生医療研究開発プロジェクト性モデルマウスに移植し,移植後にシナプスの解析を行ったところ,経時的に視細胞のシナプスが増加することが明らかになりました(図2c).また,移植後の飼育環境に光があると,暗所で飼育した場合と比べて有意にシナプス形成が増加することも明らかになり,移植後の光刺激の有用性が示唆されました3).今後の展望加齢黄斑変性や黄斑ジストロフィなど,中心視力が低下する疾患では視細胞を補うだけではなく高密度のシナプス接続が必要となります.今後,視細胞シナプスのメカニズム解明が進むことで,高密度にシナプス接続が必要とされる黄斑や中心窩の再生が可能になるかもしれません.文献1)EirakuCM,CTakataCN,CIshibashiCHCetal:Self-organizingCoptic-cupCmorphogenesisCinCthree-dimensionalCculture.CNatureC472:51-56,C20112)MandaiM,FujiiM,HashiguchiTetal:iPSC-derivedret-inaCtransplantsCimproveCvisionCinCrd1Cend-stageCretinal-degenerationmice.StemCellReportsC8:69-83,C20173)AkibaCR,CMatsuyamaCT,CTuCH-YCetal:QuantitativeCandCqualitativeCevaluationCofCphotoreceptorCsynapsesCinCdevel-oping,CdegeneratingCandCregeneratingCretinas.CFrontCCellCNeurosciC13:16,C2019図2視細胞シナプスの構造と移植後の解析結果a:視細胞シナプスの構造.Cb:正常網膜と移植後網膜で検出されたシナプスの免疫染色画像(加算画像).ScaleCbar=0.5Cμm.Cc:iPS細胞由来網膜組織移植後の視細胞シナプス数の推移.(文献C3より改変引用)(99)あたらしい眼科Vol.37,No.5,2020C6010910-1810/20/\100/頁/JCOPY

硝子体手術のワンポイントアドバイス 204.脈絡膜出血後の網膜皺襞(初級編)

2020年5月31日 日曜日

硝子体手術のワンポイントアドバイス●連載204204脈絡膜出血後の網膜皺襞(初級編)池田恒彦大阪医科大学眼科●はじめに脈絡膜出血は種々の内眼手術でまれに生じる重篤な合併症であり,手術症例の多い白内障手術や,術中に急激な眼圧の変動をきたす緑内障手術などで生じたとする報告が多いが,硝子体手術中に生じることもある.通常,脈絡膜出血は発症直後に凝血をきたすため,その場で強膜切開を施行しても出血を排出できないことが多い.いったん創を閉じ,溶血するのを待ったうえで再手術を施行する1).溶血に要する期間は通常2週間とされているが,1週間で溶血している症例もある.脈絡膜出血の量が多いと脈絡膜.離が胞状となり,脈絡膜.離が消退したあとに網膜皺襞が残存することがある.●症例提示62歳,女性.右眼の裂孔原性網膜.離に対して近医で日帰り硝子体手術を受けたが,術中に脈絡膜.離が生じたため当科紹介となった.右眼は人工的偽水晶体眼で硝子体腔内には気体を約2/3認めたが,耳側に脈絡膜.離を認めた.超音波Bモード検査で耳側の脈絡膜.離中にも高輝度陰影を認め(図1),術中に生じた脈絡膜出血と診断した.当科入院後,溶血を待って脈絡膜出血除去を予定していたが,出血は次第に消退してきたため経過観察することにした.術後2カ月の時点で耳側の脈絡膜出血はほぼ消退したが,同部位に胞状の脈絡膜出血により引き伸ばされた網膜が皺襞状となり残存した(図2).なお,経過観察中に網膜.離の再発は認めなかった.●脈絡膜出血後の網膜皺襞脈絡膜出血の量が多いと,胞状の脈絡膜.離となり,その部位の網膜は過度に伸展される.網膜はそれ自体に伸展性があるので,脈絡膜の隆起が軽快すると,伸展さ(97)0910-1810/20/\100/頁/JCOPY図1当科初診時の右眼超音波Bモード写真耳側に脈絡膜.離中に高輝度陰影を認め,脈絡膜.離ではなく術中に生じた脈絡膜出血と診断した.図22カ月後の右眼眼底写真脈絡膜出血により引き伸ばされた網膜が皺襞状となり残存した.れた網膜が元通りには回復せず,今回のような皺襞として残存する.通常の漿液性脈絡膜.離でも,胞状の場合には脈絡膜.離が消退したあとに網膜皺襞が残存することがある.これらの皺襞は時間の経過とともに徐々に伸展してくることが多く,皺襞が視機能に影響しないかぎりは経過観察に留めるのが一般的である.文献1)池田恒彦:硝子体手術のワンポイントアドバイス駆逐性出血に対する硝子体手術(中級編).あたらしい眼科29:69,2012あたらしい眼科Vol.37,No.5,2020599

眼瞼・結膜:化膿性肉芽腫とは

2020年5月31日 日曜日

眼瞼・結膜セミナー監修/稲富勉・小幡博人小泉宇弘小幡博人62.化膿性肉芽腫とは埼玉医科大学総合医療センター眼科化膿性肉芽腫は皮膚や粘膜に生じる毛細血管腫の一種であり,眼科領域では結膜に生じることがある.化膿性肉芽腫は化膿性病変でも肉芽腫でもないので,誤解を生みやすい病名である.結膜の化膿性肉芽腫は,鮮紅色~暗赤色の半球状または有茎性に隆起した腫瘤であり,易出血性である.結膜に生じる赤い腫瘤性病変を一様に化膿性肉芽腫とよぶ傾向があるので注意が必要である.●化膿性肉芽腫とはくことがある2)(図2).化膿性肉芽腫の治療の基本は手化膿性肉芽腫(pyogenicgranuloma)は皮膚や粘膜に術である.化膿性肉芽腫は良性腫瘍であり,完全な切除生じる腫瘤性病変で,病理組織学的に毛細血管腫の一種をしないと再発することがある.もし類似の病変が副腎であり,小葉状(分葉状)毛細血管腫(lobularcapillary皮質ステロイド点眼薬で消退したならば,化膿性肉芽腫hemangioma)とよばれることもある.InternationalSocietyfortheStudyofVascularAnomalies(ISSVA)の分類によると,化膿性肉芽腫は良性の血管腫瘍に分類されている1).すなわち,化膿性肉芽腫は化膿性病変でも肉芽腫でもない.化膿性肉芽腫は誤った臨床病名(misnomer)である.外傷や手術などが誘因となって発症するといわれているが,原因が明らかでないことが多い.●臨床所見結膜に生じる半球状または有茎性に隆起した腫瘤で,色は鮮紅色または暗赤色を呈する(図1).易出血性であり,眼科では,患者から眼から血が出たという訴えを聞図1結膜の化膿性肉芽腫62歳,男性.鮮紅色の球状の腫瘤が観察される.図2出血した化膿性肉芽腫a:61歳,女性.眼から血が出たという主訴で来院した.b:圧迫眼帯をして帰宅,翌日の所見.瞼結膜に鮮紅色の有茎性腫瘤がみられる.(95)あたらしい眼科Vol.37,No.5,20205970910-1810/20/\100/頁/JCOPY図3化膿性肉芽腫の病理組織像a:弱拡大.腫瘤表面の上皮は菲薄化している.間質に小葉状の細胞増殖がみられる.b:強拡大.血管内皮細胞の増殖と拡張した血管がみられる.血管の内腔に赤血球がみられる.化膿性肉芽腫は肉芽腫ではなく血管腫の一種である.図4霰粒腫が瞼結膜に破裂してできた肉芽組織a:63歳,女性.霰粒腫が瞼結膜に破裂してできたと考えられる腫瘤.b:病理組織学的に浮腫性の間質に血管新生と多核巨細胞が観察され,肉芽腫性炎症の所見である.化膿性肉芽腫の病理組織像ではない.ではなく,肉芽組織あるいは肉芽腫性炎症であると考える.●病理血管内皮細胞の増殖と血管腔の拡張を特徴とする(図3).肉芽腫の病理組織像の特徴であるマクロファージや多核巨細胞の増殖がみられるわけではない.病理標本を見ると,化膿性肉芽腫は肉芽腫ではなく血管腫の一種であることがわかる.●鑑別診断結膜にできる赤い腫瘤の鑑別として,霰粒腫・手術・598あたらしい眼科Vol.37,No.5,2020外傷などに伴う肉芽組織(図4),乳頭腫,リンパ管腫・リンパ管拡張症,蔓状血管腫,海綿状血管腫などがある.眼科医は,結膜にできた赤く表面平滑な腫瘤を化膿性肉芽腫とよぶ傾向にあるが,血管腫の一つである化膿性肉芽腫と肉芽組織は区別する必要がある.文献1)https://www.issva.org/UserFiles/.le/ISSVA-Classi.cation-2018.pdf2)小幡博人:化膿性肉芽腫.見た目が大事!眼腫瘍(後藤浩編),眼科プラクティス24,p86,文光堂,2008(96)

緑内障:OCTワイドスキャンとHoodレポート

2020年5月31日 日曜日

●連載239監修=山本哲也福地健郎239.OCTワイドスキャンとHoodレポート須田謙史京都大学大学院医学研究科眼科学緑内障性視神経症は網膜神経線維の走行に一致した視野欠損を認めるのが特徴である.HoodレポートではOCTワイドスキャンによる網膜神経線維層厚の解析結果に視野検査点を重ね合わせることで,緑内障における機能-構造の相関関係をより直観的に把握できるようになっている.●はじめに前視野緑内障(preperimetricCglaucoma:PPG)という疾患概念の登場により,現在の緑内障診療において光干渉断層計(opticalCcoherencetomography:OCT)は不可欠のものになりつつある.Spectral-domainCOCT(SD-OCT)が導入されて以後,OCTのさまざまな撮像範囲,結果の描出方法やパラメータが診断に使われている.緑内障診療でよく使用されるパラメータとして視神経乳頭周囲網膜神経線維層(circumpapillaryCretinalCnerveC.berlayer:cpRNFL)や網膜神経節細胞複合体(ganglionCcellcomplex:GCC)が知られているが,OCTの機能が向上するにつれて短時間で広範囲の撮像が可能となってきた今,一度に広範囲を撮像し(OCTワイドスキャン),1回の撮像から複数のパラメータを同時に取得するという試みがなされている1).さらに,緑内障診療においてCOCTを活用するうえで欠かせないのは,機能-構造の相関関係を適切に解釈することである.網膜外層の障害がそのままの形で視力低図1正常眼のHoodレポート3DOCT-1(トプコン製)で正常眼を撮像したCOCTワイドスキャンの解析結果.レポート内に記載されている各パートの説明は本文を参照のこと.(画像はトプコン提供)下や視野欠損としてとらえやすい黄斑疾患とは異なり,網膜神経線維が障害される緑内障などの視神経症では,網膜神経線維の欠損部位と視野障害の複雑な相関関係を意識しながら所見を読み解く必要がある2,3).このことを念頭におきながらCOCTと視野検査の結果を比較する必要があるが,トプコン製のCOCTではCOCTの検査結果に視野検査点を重ね合わせることで,構造と機能の障害部位が対応しているかを認識しやすくするという工夫を行っている(Hoodレポート).本稿では,OCTワイドスキャンを活用したCHoodレポートの特徴について述べる.C●Hoodレポートの特徴Hoodレポート(図1)は緑内障の構造-機能相関を詳細に研究しているCDonaldCC.Hoodの発案によるCOCT画像解析結果レポートである1).その大きな特徴はC4点からなり,1)緑内障は初期において黄斑部に障害を伴うことから4),黄斑のマップ解析を含むこと,2)GCCやCcpRNFLの結果は視野と比較可能な形で表示するこ(93)あたらしい眼科Vol.37,No.5,2020C5950910-1810/20/\100/頁/JCOPYと,3)cpRNFLは他の機種では耳側が両端になるように表示されることが多いが(TSNITチャート),視野との比較を簡便にするために鼻側が両端になる表示に変更したこと(NSTINチャート),4)セグメンテーションエラーや緑内障性の網膜神経線維欠損(retinalCnerveC.berlayerdefect:NFLD)を詳細に評価できるように,cpRNFLのCOCT原画像を表示すること,である.C●Hoodレポートの実際Hoodレポートの内容を表示されている順に詳述する.レポートの上方にはCImageQualityが枠内に示されており,画質が良好な場合は緑枠(図1),不良な場合は赤枠(図2)で表示され,画質が測定結果に与える影響や検査間の画質比較が容易になっている.そのすぐ下に表記されているのがCcpRNFLのCOCT原画像であり,セグメンテーションエラーを直接確認できる.OCT原画像の下にはCcpRNFL厚のプロファイルが表示されており,乳頭黄斑線維の上方をピンク色,下方を青色で表示することで黄斑部の障害を評価しやすくなっている.cpRNFLの下に表示されているのはCOCTワイドスキャンから再構成されたCen-face画像およびCRNFL厚マップである.En-face画像は眼底の概観を把握するのに役立ち,RNFL厚マップではワイドスキャンを活用することで視神経乳頭に連続するCNFLDが把握しやすくなっている.RNFL厚マップの右側ではCcpRNFLのセクターごとの平均厚が数字で,正常眼分布からの逸脱がカラー表示で示されている.Hoodレポートの右側に表示されている解析結果が,C596あたらしい眼科Vol.37,No.5,2020図2緑内障眼におけるHoodレポートと視野検査・他社製OCT検査との比較a:Hoodレポート.Cb:RS-3000(ニデック)で撮像したGCC.Cc:Humphrey視野検査(SITACStandard24-2).d:Humphrey視野検査(SITACStandard10-2).Hoodレポートの眼目といってよい.右上に表示されているのがワイドスキャンしたCRNFL厚を正常眼データベースと比較したマップである.Humphrey視野検査のC24-2およびC10-2の検査点が重ねて表示されており,さらに注目すべき点はCOCT結果が視野検査結果と直接比較しやすいように上下反転して表示されている(FieldView).この右上のマップと視野検査結果を並べて比較することにより,直観的にCRNFLの菲薄化が視野欠損に対応しているかどうかを評価することができる(図2).右下に表示されているのが黄斑部のCGCC厚マップおよびそれに対応する正常眼データベースとの比較マップ(Humphreyの視野検査点付き)である.正常眼データベースとの比較マップではCRNFLと同様,FieldViewで表示されているので,とくにCHumphrey視野検査C10-2との比較を容易にしている(図2).文献1)HoodDC,DeCuirN,BlumbergDMetal:Asinglewide-.eldOCTprotocolcanprovidecompellinginformationfortheCdiagnosisCofCearlyCglaucoma.CTranslCVisCSciCTechnolC5:1-15.C20162)HoodDC,KardonRH:Aframeworkforcomparingstruc-turalCandCfunctionalCmeasuresCofCglaucomatousCdamage.CProgRetinEyeRes26:688-710.C20073)NakanishiCH,CAkagiCT,CSudaCKCetal:ClusteringCofCcom-binedC24-2CandC10-2CvisualC.eldCgridsCandCtheirCrelation-shipCwithCcircumpapillaryCretinalCnerveC.berClayerCthick-ness.InvestigOphthalmolVisSciC57:3203-3210.C20164)HoodCDC,CRazaCAS,CdeCMoraesCCGVCetal:GlaucomatousCdamageCofCtheCmacula.CProgCRetinCEyeCResC32:1-21.C2013(94)

屈折矯正手術:ICLとLASIK術後の視機能比較

2020年5月31日 日曜日

監修=木下茂●連載240大橋裕一坪田一男240.ICLとLASIK術後の視機能比較小島隆司慶應義塾大学医学部眼科学教室,名古屋アイクリニックLASIKは角膜高次収差,とりわけ球面収差を惹起する.しかしCwavefront-guidedLASIKは,手術により生じる角膜高次収差を軽減することが可能で,通常のCLASIKより,高い視機能が獲得できる可能性がある.ICLは,組織を変化させず眼内レンズを挿入するという手術の特性上,高次収差の惹起が小さく,LASIKより術後コントラスト感度に優れる.どちらの手術も屈折矯正が行われる光学径に限界があるため,その領域をはずれると高次収差の増加により,夜間視におけるグレアやハローなどの問題が起こる可能性がある.LASIKは屈折矯正量が増えると術後視機能への影響が大きくなる一方,ICLではその影響は小さい.患者の状態に応じた術式の選択が必要である.C●はじめにImplantablecollamerlens(ICL)とClaserinsituker-atomileusis(LASIK)の術後視機能の比較が注目される要因として,この二つの手術が屈折矯正手術のなかで大きな位置を占め,またCICLの軽度~中等度近視に対する適応拡大によって,それぞれの適応範囲がオーバーラップしてきたことがあげられる.本稿では二つの屈折矯正手術について,有効性,安全性,屈折矯正精度やコントラスト感度などの視機能,屈折矯正手術ではときに問題となる夜間視の観点から比較し解説する.C●ICLとLASIK手術の視機能の比較2006年にCSandersらによって報告された米国でのICLとCLASIKの手術成績の多施設研究では,術後C6カ月での術後裸眼視力がC20/15(小数視力C1.33程度)以上であったものはCICL群C21.6%,LASIK群C7.8%で,20/20(小数視力C1.0)以上であったものはCICL群C67%,LASIK群C57%であり,これらの割合はCICL手術後眼で有意に高かった1).また,術後C1週で,矯正視力が術前よりもC2段階以上低下した割合はCLASIKで有意に高かったことを示している(ICL0.7%,LASIK6%).これには術後早期でのドライアイによる視力低下などが関係している可能性が示唆される.屈折矯正精度に関しては,術後C6カ月に狙いのC±0.5Dに入った割合がCICL群79%,LASIK群C70%,C±1Dに入った割合がCICL群C97%,LASIK群C88%と,有意にCICL群で精度が高いことが報告されている.ただし,この報告はC10年以上前のLASIKとの比較であるため,その後のエキシマレーザーの進歩やノモグラムの改善を受けた現在のCLASIKの成績を必ずしも反映しているとはいえない点に注意が必要(91)である.LASIKはエキシマレーザーで角膜を切除し,角膜曲率半径を大きくする(.atにする)ことにより近視を矯正する手術であるが,レーザーの切除効率などの要因によって,図1に示すように,LASIK術後は角膜中心が周辺部よりC.atなCoblate形状になり,正の球面収差が増加する.このような背景のなかで,眼球の高次収差を波面収差計で計測して,球面および正乱視成分の低次収差だけでなく高次収差も矯正するCwavefront-guidedLASIK(WFLAIK)が行われるようになってきた.Iga-rashiらはCICL手術とCWFLASIKの臨床成績を報告している2).-6D以上の高度近視を対象にした比較研究では,4Cmm径で比較するとCICLのほうがCWFLASIKに比較して,コマ収差,球面収差,全高次収差の増加量が小さいことを示した.またコントラスト視力は,コントラスト感度のグラフ下の面積(areaunderthelogcon-trastsensitivity:AULCSF)で比較して,ICL群では有意にCAULCSFが術前より向上したが,WFLASIK眼では術前より有意に低下した.一方,Kamiyaらは,-3D~-6Dまでの軽度から中等度近視を対象に同様の報告をしている3).この報告でも,4Cmm径およびC6Cmm径でCICL眼のほうが有意にコマ収差,球面収差,全高次収差の増加量が小さいことが示されている.また,AULCSFはCWFLASIK眼では術前後で変化がなかったが,ICL眼ではより良好になっていることが示された.このようにCWFLASIKでは収差の増加量を軽減できる効果はあっても,術前より減らしたり,ICLと同程度のレベルに維持することは困難と考えられている.ランダム化比較試験を解析したCCochraneCSystematicReviewでは,phakicIOL(虹彩支持型を含む)とLASIKでは術後C12カ月の裸眼視力には差はないが,中あたらしい眼科Vol.37,No.5,2020C5930910-1810/20/\100/頁/JCOPY等度から高度近視ではCICLで矯正視力の低下が少なくより安全であること,phakicIOLはCLASIKより中等度から高度近視でより高いコントラスト感度を得ることができることが示されている4).C●ICLとLASIK手術の夜間視直接比較した研究がほとんどなく,主観的な症状について,どちらが優れているかをエビデンスに基づいて論じるのはむずかしいが,一般的にCLASIK術後患者では上述した高次収差の増加によるグレアを訴えることが多い.LASIK術後でもハローの訴えはあるが,ICLは光学径を外れると急激に屈折力の変化が起こるために,はっきりとしたハローを訴えることが多い.ICL術後のハローの原因について多変量解析を用いて検討した研究では,ハローの程度は瞳孔径とCICL光学径の差に依存することが報告されている5).ただし,最新のモデルであるCICLのCV5は,従来のモデルよりも光学径が大きくなり,従来のモデルに比較して夜間視の問題が少ないことが報告されている6).C●おわりにICLとCLASIKはそれぞれ眼内レンズによる屈折矯正と,レーザー角膜屈折矯正手術の特性が,術後視機能に影響を与える.レーザー屈折矯正手術はレーザーによる切除効率が角膜に負荷される水分量,手術室の湿度,手術時間によって変化し,手術結果にも影響しうる.このため,術者や施設によって手術結果にばらつきも生じうる.また,レーザー角膜屈折矯正手術はレーザーの照射中心ずれの問題もあり,いくら優秀なアイトラッキングC594あたらしい眼科Vol.37,No.5,2020図1LASIK術前後の角膜の変化LASIK術前は角膜中心部が周辺部よりCsteepなCprolate形状をしているが,術後は角膜中心部が周辺部より.atなCoblate形状となり,正の球面収差が増加する.装置が装備されていても,固視が悪く眼の向きが傾く場合には照射ずれが起きる可能性がある.一方,ICLは眼内レンズを埋植する手術であり,合併症を起こさず手術が終われば,術後視機能に影響を与える要素は少ない.手術の適応を判断する際には,術後視機能について患者に十分なインフォームド・コンセントを行い,またそれだけではなく,それぞれの手術で起こりうる特有の合併症についても十分な説明が必要である.文献1)SandersCDR,CSandersML:ComparisonCofCtheCtoricCimplantableCcollamerClensCandCcustomCablationCLASIKCforCmyopicastigmatism.JRefractSurg24:773-778,C20082)IgarashiCA,CKamiyaCK,CShimizuCKCetal:VisualCperfor-manceCafterCimplantableCcollamerClensCimplantationCandCwavefront-guidedClaserCinCsituCkeratomileusisCforChighCmyopia.AmJOphthalmol148:164-170,C20093)KamiyaCK,CIgarashiCA,CShimizuCKCetal:VisualCperfor-manceCafterCposteriorCchamberCphakicCintraocularClensCimplantationandwavefront-guidedlaserinsitukeratomi-leusisCforClowCtoCmoderateCmyopia.CAmCJCOphthalmol153:1178-186,C20124)BarsamCA,CAllanBD:ExcimerClaserCrefractiveCsurgeryCversusphakicintraocularlensesforthecorrectionofmod-eratetohighmyopia.CochraneDatabaseSystRevC2014:CCD007679,C20145)LimCDH,CLyuCIJ,CChoiCSHCetal:RiskCfactorsCassociatedCwithCnightCvisionCdisturbancesCafterCphakicCintraocularClensimplantation.AmJOphthalmol157:135-141,C20146)KojimaCT,CKitazawaCY,CNakamuraCTCetal:ProspectiveCrandomizedCmulticenterCcomparisonCofCtheCclinicalCout-comesofV4candV5implantablecollamerlenses:Acon-tralateraleyestudy.JOphthalmolC5:7623829,C2018(92)

眼内レンズ:34ゲージ鋭針を用いた白内障手術創口のハイドレーション

2020年5月31日 日曜日

眼内レンズセミナー監修/大鹿哲郎・佐々木洋402.34ゲージ鋭針を用いた白内障手術創口の保坂文雄岩見沢市立総合病院眼科ハイドレーション白内障手術の角膜切開創自己閉鎖が不十分な場合,カニューラを用いて切開トンネルの内腔からCBSSを吹き付けるハイドレーションが行われる.今回,より確実な創閉鎖のためにC34ゲージ極細鋭針を用いて角膜切開創の外側からCBSSを微量注射するハイドレーション法を試みた.●はじめに近年の小切開白内障手術では無縫合で切開創を自己閉鎖させる.手術終了時の自己閉鎖をうながすために,切開創口に内側からカニューラを押し当ててビーエスエスプラスC500眼灌流液(以下,BSS)を吹き付ける角膜ハイドレーションが広く行われている.しかし,ハイドレーションを行っても,フィッシュマウス状に開いた創口から房水が漏れることがある.今回,より確実な創閉鎖のためにC34ゲージ(G)極細鋭針を用いて術創の外側にCBSSを微量注射するハイドレーション法を考案した.C●テクニック34G極細鋭針を,BSSを半量程度充.したC1.0CmlあるいはC2.5Cmlシリンジに装着する.針長C4Cmmの短いものが針先がぶれずに扱いやすい.片手に持った先細の無鉤鑷子で角膜切開創前弁の縁を軽くつかみ,もう片手で前弁の切開縁からC1.0Cmm程度角膜中心寄りの位置にべベルダウンで針を刺入する.刺入角度はC30°程度が刺入深度をコントロールしやすい.適度な深さに針が刺さ図134G鋭針による創口ハイドレーションa:術中虹彩緊張低下症候群.Cb:注射によるハイドレーションにより,虹彩脱出することなく創閉鎖した.ったら,穿刺点から直径C1.5~2.0Cmmの範囲で角膜が白濁するまでゆっくりCBSSを注入し,角膜前弁を膨潤させることで創口を閉鎖する(図1,2).切開位置が輪部よりも角膜中心側にある場合やサイドポートなど切開トンネル長が短い場合は,角膜切開創の前弁ではなく後弁に同様の手技を行うこともできる(図3).C●34G鋭針ハイドレーション法の特長角膜切開創を手術終了時に確実に閉鎖させることは,術後眼内炎予防のためにとくに重要である.もっとも簡便で一般的な方法はカニューラを用いたハイドレーション法であるが,この方法では創口の両側にCBSSを吹き付けるため,中央付近の閉鎖が不十分となることがある.そこで主創口の前方にケラトームで角膜ポケットを作製してハイドレーションを行う方法が考案されたが1),ケラトームでは創口を損傷する懸念があり,一定のポケットを作製するには習熟を要する.最近,30G鋭針で角膜潰瘍部に抗菌薬液を直接注射する治療法に着想を得て,同じくC30G鋭針で角膜創口前弁にハイドレーションを行う方法が報告された2).今(89)あたらしい眼科Vol.37,No.5,2020C5910910-1810/20/\100/頁/JCOPY回は,現在一般利用可能なもっとも極細のC34G針を用いることで,さらに低侵襲となり,針の刺入も容易となった.34G針は刺入による挫滅が小さいだけでなく,液の注入速度が制限される点で安全である.また,今回は角膜切開創前弁だけでなく,後弁への鋭針ハイドレーションも有効であることがわかった.さらに,鋭針ハイドレーションにはもう一つ利点がある.カニューラによる切開トンネル内腔へのハイドレーションと違って眼内圧が上昇しないことである.とくに術中虹彩緊張低下症候群では通常のハイドレーションにより虹彩脱出してしまうことがあるが,鋭針ハイドレーションでしっかり創閉鎖したあとにサイドポートから眼圧調整すると,これを防げる.また,挿入したトーリック眼内レンズが動きがちな症例では,眼内圧を下げて水晶体.とレンズの接図3後弁への34G鋭針ハイドレーショントンネル長の短い創では切開創後弁へのハイドレーションが有効である.触をうながすことが術後回転の防止となるが,鋭針ハイドレーションを行うと低眼圧のまま確実に創閉鎖することができる.この手技による合併症はこれまで経験していないが,Descemet膜.離には注意が必要である.しかし,内腔からC25~27G針でCBSSの水流を吹き付ける通常のハイドレーションよりもその危険性は低いと予想できる.今後より多くの症例でこの手技の有効性と安全性が確認されることを期待する.文献1)Mi.inCMD,CKinardCK,CNeu.erMC:ComparisonCofCstro-malChydrationCtechniquesCforCclearCcornealCcataractCinci-sions:conventionalChydrationCversusCanteriorCstromalCpocketChydration.CJCCataractCRefractCSurgC38:933-937,C20122)NithyanandarajahCG,CAthanasiadisCY,CScolloCPCetal:CHydrationCofCtheCanteriorCstromaCinCphacoemulsi.cationCcataractCsurgery.CJCCataractCRefractCSurgC40:702-704,C2014C

写真:非典型的な部位に発生した眼窩脂肪ヘルニア

2020年5月31日 日曜日

写真セミナー監修/島﨑潤横井則彦432.非典型的な部位に発生した小林瞳福岡秀記京都府立医科大学大学院医学研究科眼窩脂肪ヘルニア視覚機能再生外科学図2図1のシェーマ眼窩脂肪ヘルニア図1初診時の前眼部写真47歳,女性.右眼鼻下側結膜下に黄色腫瘤を認めた.図3HE染色図4MDM2染色図5CDK4染色成熟脂肪細胞よりなる組織が認められた.核に染色はなく陰性だった.核に染色はなく陰性だった.(87)あたらしい眼科Vol.37,No.5,20205890910-1810/20/\100/頁/JCOPY眼窩脂肪ヘルニアは,眼窩脂肪がTenon.の脆弱部から結膜下に脱出した状態である.結膜下の黄色腫瘤であり,圧をかけると腫瘤が結膜下を移動する.眼窩脂肪は眼球を後方から支えるように存在しており,眼球に接する部位ではCTenon.で周囲の組織と隔てられている1).直筋はCTenon.を貫いて眼球に付着しており,それぞれの直筋の間には筋間膜が存在する.脂肪組織の脱出はCTenon.と筋間膜との結合の離開で生じるが,涙腺付近のCTenon.の構造が疎であるため,脱出は圧倒的に耳上側にみられることが多い1,2).鑑別疾患としては,良性疾患では皮様脂肪腫や結膜アミロイドーシス,悪性疾患では結膜リンパ腫などがあげられる.皮様脂肪腫は脂肪組織を含む黄色調のデルモイドであり,好発部位は上耳側で,奥側に伸びていることがある.結膜アミロイドーシスは結膜円蓋部に発生することが多く,ヘマトキシリン・エオジン(hematoxylineosin:HE)染色で淡いピンク色,Congo-Red染色で赤橙色に染まるアミロイドの証明で確定診断とする.結膜リンパ腫は平坦で境界明瞭なサーモンピンク色の腫瘤であり,結膜円蓋部に生じやすい.MALTリンパ腫が多く,悪性度は低いとされている.症例はC47歳,女性で,2カ月前から右眼鼻下側結膜下に限局した黄色の腫瘤が出現し,当科受診となった(図1,2).可動性があり,眼窩脂肪ヘルニアと診断した.整容面から手術を希望されたため,局所麻酔下で手術を施行した.まず結膜上皮を切開し,脱出した脂肪組織を切除後,ヘルニア門を閉じるようにC7-0バイクリル糸で結膜と強膜を縫合固定し,術中術後合併症は認めなかった.術中に採取した組織の病理では,HE染色にて大きさの揃った成熟脂肪細胞よりなる組織の所見を認め,悪性腫瘍である高分化および脱分化型脂肪肉腫のマーカーとされているCMDM2やCCDK4は陰性であり,眼窩脂肪ヘルニアと確定した(図3~5).術後C3カ月時点で再発は認めていない.手術方法は今回のように経結膜切開で眼窩脂肪ヘルニアを切除するのが一般的ではあるが,結膜切開をせずに結膜強膜固定をする術式もある3).眼窩脂肪ヘルニアをスパーテルなどで眼窩内へ戻したあと,瞼縁からC12~14Cmm後方にC10-0ナイロン糸でC2列の堤防のように強膜固定を行うため,経結膜切開よりも低侵襲で簡便であるとの報告がある3)が,長期的な再発率などは不明である.一般的には眼窩脂肪ヘルニアは中高年で肥満傾向のある男性に多い傾向があるが,耳上側以外からの脱出は少ないとの報告4)があり,耳上側>鼻上側の順であり,1例のみ下方からの脱出の報告4)があるが,今回の鼻下側からの報告は,筆者らが知るかぎりない.今回の症例のように眼窩脂肪ヘルニアが鼻下側に脱出するのはまれであり,まずは発生部位,色調や可動性などから他の結膜腫瘤との鑑別をしっかりと行い,病理にて確定診断を行うことが大切である.文献1)野田実香:結膜下眼窩脂肪脱.臨眼60:1570-1575,C20062)宮田信之,金原久治,岡田栄一ほか:炭酸ガス(COC2)レーザーを使用した眼窩脂肪ヘルニア手術.臨眼C63:1885-1888,C20093)NakamuraCN,CAkiyamaCK,CShigeyasuCCCetal:SurgicalCrepairCofCorbitalCfatCprolapseCbyCconjunctivalC.xationCtoCthesclera.ClinOphthalmolC9:1741-1744,C20154)McNabAA:SubconjunctivalCfatCprolapse.CAustCNCZCJOphthalmolC27:33-36,C1999

病的近視の治療 3. 近視性牽引黄斑症

2020年5月31日 日曜日

病的近視の治療3.近視性牽引黄斑症TreatmentforComplicationsofPathologicMyopia-PartIII:MyopicTractionMaculopathy高橋洋如*はじめに近視性牽引黄斑症は,強度近視眼に合併する網膜外層(とくに外網状層)の異常な伸展(分離)を主体とする疾患である.本疾患は内顆粒層や外顆粒層の分離を主体とし,視界に暗点を形成する若年性網膜分離症とは明確に区別できる.近視性牽引黄斑症は,硝子体による網膜表面の前方への牽引,後部ぶどう腫による眼球後壁の牽引,網膜前膜や内境界膜による接線方向への牽引力,網脈絡膜萎縮などが複雑に作用して生じている(図1).概ね緩徐に進行するが,ときに黄斑円孔,中心窩網膜.離,黄斑円孔網膜.離を発症すると不可逆的な視力低下をきたして予後不良である1).治療は,網膜が牽引される場所と要因を把握することが重要である.IOCTと硝子体手術1.近視性牽引黄斑症への硝子体手術1958年にPhilipsが強度近視眼の眼底後極部にある裂孔を伴わない限局した網膜.離を報告して以降,強度近視眼の牽引性網膜.離は検眼鏡的に確認されてきた.1999年にTakanoとKishiが黄斑分離症のOCT画像を発表し,診断が飛躍的に進歩した.同時期に低侵襲硝子体手術が発達し,近視性牽引黄斑症への硝子体手術の良好な成績が続々と報告され,それ以降現在までに,近視性牽引黄斑症はOCTで診断し,硝子体手術で治療するという診療スタイルは確立されている.そこで,本稿では適応のある患者に対する硝子体手術はもはや当然とし近視性牽引黄斑症図1近視性牽引黄斑症の病態の模式図後部ぶどう腫,硝子体牽引に加え,網膜前膜,内境界膜,網膜血管の硬化など病因は多様である.たうえで,細かい問題点について再考する.2.牽引の場所はどこか近視性牽引黄斑症の考えられる接線方向の牽引の要素として,後部硝子体に伴う硝子体牽引,残存硝子体皮質,網膜前膜,柔軟性の低下した内境界膜があげられるほか,網膜動脈の硬化などが考えられている.牽引が強く作用する場所については,黄斑円孔や硝子体黄斑牽引症候群といった他の黄斑疾患では中心窩に牽引が作用す*HiroyukiTakahashi:東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科眼科学分野〔別刷請求先〕高橋洋如:〒113-8519東京都文京区湯島1-5-45東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科眼科学分野0910-1810/20/\100/頁/JCOPY(81)583図257歳女性近視性牽引黄斑症の左眼眼軸長はC29.2Cmmである.後部硝子体()は中心窩からC3.4Cmm程度周辺の位置で網膜に癒着し,牽引している.そこから中心窩に向けて内境界膜()が吊り上げられている.中心窩網膜は輝度の上昇した内境界膜とともに持ち上げられて,外層の分離を生じている().キヤノンとの共同研究によるC23Cmmの広画角COCTの断層画像.ab図3近視性牽引黄斑症の男性の右眼のOCT画像a:63歳時.中心窩.離に伴う視力低下に対して硝子体手術にて治療を受けた.眼軸長はC30.5Cmmであった.Cb:手術C1年後.中心窩の網膜分離と網膜.離は概ね治癒した.Cc:70歳時に右眼に黄斑円孔を発症.再度手術治療を受けた.強度近視眼では術後期間が長期に経過したうえで黄斑円孔を発症することがあり,あらかじめ説明と注意が必要である.ab図4近視性牽引黄斑症の69歳男性の左眼の治療前後のOCT画像a:白内障術後の検診にて左眼眼底部の網膜分離を指摘され,中心窩温存内境界膜.離併用硝子体手術を受けた.Cb:術後網膜分離は改善しているが,術前に比して,網膜の菲薄化がみられる.図5近視性牽引黄斑症の67歳女性の治療前後のOCT画像a:治療前,中心窩.離を合併し,また後部ぶどう腫内に広範囲の網膜分離と網膜.離を呈していた.Cb:内境界膜.離併用硝子体手術翌日.硝子体腔中に気体やオイルのタンポナーデを行わずに終了した.術中の牽引によって治療前に比して網膜.離は悪化している.Cc:治療後C1年経過し,中心窩の網膜.離は概ね消失した.ぶどう腫内に限局する網膜.離が残存している.図663歳女性の左眼の眼底写真とOCT画像眼軸長はC30.2Cmmと延長している.Ca:眼底写真で豹紋状眼底,傍視神経乳頭網脈絡膜萎縮を呈する.強膜の突出は判別がむずかしい.Cb:眼底写真の白線に対応するCOCTでの断層画像.黄斑部の強膜が内方に向かって突出するdomeshapedmaculaがみられる.図760歳台で近視性牽引黄斑症に黄斑バックルによる治療を受けた83歳女性の左眼の眼底写真とOCT画像a:眼底写真で黄斑部は明瞭な豹紋状眼底を呈し,網膜分離を残す範囲に囲まれている.b:黄斑部を通過する鉛直断OCTの画像.黄斑部の形態は保たれており,脈絡膜が確認できないほどに菲薄化している.左眼の矯正視力は(0.1)程度である.-

病的近視の治療 2. 近視性脈絡膜新生血管

2020年5月31日 日曜日

病的近視の治療2.近視性脈絡膜新生血管DiagnosisandTreatmentofMyopicChoroidalNeovascularization佐柳香織*はじめに近年,東アジアを中心に全世界的に近視が増加しており,高度の視力,視野障害を生じうる強度近視患者の増加が懸念されている.強度近視は近視のなかでも特異な状態で,本来,球状である眼球が眼軸延長に伴って眼球後部が突出し,後部ぶどう腫を形成するとともに強膜が菲薄化している.この特異な形状変化に伴い,網膜や視神経が過剰に進展し,視覚障害を起こすと考えられている.本稿では,強度近視の合併症のうち近視性脈絡膜新生血管(myopicchoroidalneovascularization:mCNV)について解説する.I近視性脈絡膜新生血管とはそもそもmCNVの定義は国際的に統一されておらず,国内外の多くの臨床試験でも眼軸長や屈折値によって強度近視を定義し,その強度近視眼に生じたCNVをmCNVとしているものが多かった.しかし,その定義では強度近視に生じた加齢黄斑変性(age-relatedmacu-lardegeneration:AMD)も含まれてしまっていた.近年,META-PMstudyグループから近視性黄斑症の新しい分類が提唱され(表1),「病的近視はびまん性萎縮以上の萎縮性変化を眼底に有する,もしくは後部ぶどう腫を有する」眼と定義されたことにより1),「mCNVは病的近視眼に合併するCNVである」と新たに定義された.今後はこの定義が一般的に用いられるであろう.強度近視眼の眼合併症のなかでもmCNVは,自然経表1近視性黄斑症の分類カテゴリー0近視性黄斑症なしカテゴリー1カテゴリー2紋理眼底びまん性網脈絡膜萎縮lacquercracks脈絡膜新生血管カテゴリー3限局性網脈絡膜萎縮Fuchs斑カテゴリー4黄斑部萎縮過ではCNV周囲の網脈絡膜萎縮により高度の視力低下をきたすことが知られている.自然軽快はまれで,無治療の場合,多くは黒い色素沈着を伴うFuchs斑を経て周囲に広範な網脈絡膜萎縮を形成し,高度の視力障害をきたす.既報によると自然経過では10年後に96.3%の症例でCNV周囲に網脈絡膜萎縮を生じ,視力が0.1以下になるとされている2).mCNVは強度近視の約5~10%に発症する疾患で,AMDと比較して若年者に発症し,CNVは網膜色素上皮上に存在する2型CNVの形をとる.長期では30~40%が僚眼にもCNVを発症する.AMDのCNVより小型で,滲出性変化も軽度であることが多い.mCNVの正確な病態は未だ解明されていないが,脈絡膜循環障害や眼軸長延長に伴うBruch膜の断裂(lacquercracks)が発症に関与すると報告され,mCNVの95%にlacquercrackが存在しているとの報告もある3).また最近では,CNVとperforatingvessel(PV)との関係が注目されている.PVとは強度近視眼の70~80%で認められる光干渉断層計(opticalcoherencetomogra-*KaoriSayanagi:さやなぎ眼科〔別刷請求先〕佐柳香織:〒666-0017兵庫県川西市火打1-16-6オアシスタウンキセラ川西2階さやなぎ眼科0910-1810/20/\100/頁/JCOPY(73)575abcd図1近視性脈絡膜新生血管の一例a:眼底写真では中心窩に灰白色病変を認め周囲に網膜下出血を伴っている.b:OCTでみると網膜色素上皮上に広がる高輝度病変(CNV)が確認できる.Cc:フルオレセイン蛍光造影ではCCNVが蛍光漏出を伴う過蛍光として描出されている.d:インドシアニングリーン蛍光造影ではCCNVと広がるClacquercrackが認められる.Ce:OCTAでは脈絡膜毛細血管板層で高輝度病変としてCCNVが描出される.図2単純出血の一例a:眼底写真では中心窩に網膜下出血がある.b:OCTでは網膜下に高輝度隆起性病変があり,網膜内にもシグナルがみられる.Cc:フルオレセイン蛍光造影では出血による蛍光ブロックがみられる.CNVを示す過蛍光はみられない.Cd:インドシアニングリーン蛍光造影では出血による蛍光ブロックとその中を貫くようにあるClacquercrackが認められる.Ce:半年後,出血は消退している.f:OCTでは高輝度塊が網膜内に残存している.図3加齢黄斑変性の一例a:眼底写真では黄斑上方にC2乳頭径の網膜色素上皮.離を認める.Cb:OCTでは中心窩下に網膜下液貯留と網膜色素上皮.離を認める.後部ぶどう腫は認められない.Cc:フルオレセイン蛍光造影では網膜色素上皮.離による蛍光貯留を認め,下方にノッチがある.Cd:インドシアニングリーン蛍光造影でも網膜色素上皮.離による蛍光遮断とノッチ部分にCCNVを認める.図4脈絡膜新生血管再発時図C1と同じ症例.Ca:抗CVEGF療法後,CNVは鎮静化し,出血は消失,OCTでも高輝度塊となっている.Cb:眼底写真はあまり変わりがないが,OCTでは高輝度塊が崩れ,淡い高輝度となっている.これは再発を表し,追加注射が必要となる.図5黄斑部萎縮a:mCNV発症直後.Cb:10年後.CNVは黒い色素沈着を伴うCFuchs斑となり,周囲に黄斑部萎縮を形成している.OCTでは萎縮部位の脈絡膜反射が増強している.–