‘記事’ カテゴリーのアーカイブ

加齢黄斑変性の遺伝要因アップデート

2019年2月28日 木曜日

加齢黄斑変性の遺伝要因アップデートUpdateonGeneticComponentsAssociatedwithAge-relatedMacularDegeneration秋山雅人*はじめに病気は,喫煙や加齢など環境要因と遺伝的な要因により,そのなりやすさが影響される.加齢黄斑変性(age-relatedmaculardegeneration:AMD)もこのように,環境要因と遺伝要因からなる多因子疾患(complexdis-ease)であり,年齢や性別,喫煙が発症リスクに関与することは疫学研究により示されており,遺伝的な要因が病気のなりやすさにかかわることは双子を用いた研究(双生児研究)によって1990年代から示されている1).多因子疾患の遺伝要因をゲノム上から特定する方法として,ゲノムワイド関連解析(genome-wideassocia-tionstudy:GWAS,ジーバスと発音)という手法がおもに用いられる.AMDでは2005年に,この手法が用いられた論文が“Science誌”に報告された2).それから10年以上が経過した現在では,多量の塩基配列を読解可能な次世代シークエンサー(nextgenerationsequencer:NGS)という機器の登場に加えて,GWASの解析手法も進歩しており,たくさんの生物学的新規知見が得られている3).さらには,病気の発症にかかわる遺伝要因だけではなく,AMDの病型や治療への反応性に関与する遺伝要因の検索も試みられるようになってきた(図1)4,5).本稿では,これまでに明らかとなったAMDの遺伝要因ついて概説し,これからのゲノム研究の役割について考察する.Iゲノムワイド関連解析が明らかにした疾患感受性領域とその解釈GWASについて,まず簡単に説明を行う.本手法は,2002年に理化学研究所が世界に先駆けて報告した手法6)であり,手法の開発から15年以上が経過した今でも,多因子疾患のゲノム解析手法として広く一般的に用いられている.方法については図2に示した.GWASは,一塩基多型(singlenucleotidepolymorphism:SNP)(用語解説参照)をマーカーとして,網羅的にゲノムのスクリーニングを行い,疾患だけでなく眼圧や眼軸など量的な形質に関連する領域も同定することが可能である.ここで注意が必要なことは,GWASにより同定が可能なのは,病気のなりやすさにかかわるゲノム領域であり,GWAS単独では発症に寄与する遺伝子を特定することは困難であることである.しかし,後で述べるように,生物学的情報との統合や候補遺伝子のシークエンスによって,発症の原因となる遺伝子を絞り込む手法も開発されてきており,GWASが起点となって原因遺伝子の同定につながっている例も増えてきている.AMDでは,これまでに国際コンソーシアムを中心とした活躍により,おおよそ40の感受性領域が同定されている.本稿の執筆時点で最大規模の研究は,2016年にInternationalAMDGenomicConsortium(IAMDGC)が報告したものであり,約1万6千人を超えるAMD患者と1万8千人程度の対照群を用いて,AMD発症に関*MasatoAkiyama:九州大学大学院医学研究院眼科学分野〔別刷請求先〕秋山雅人:〒812-8582福岡市東区馬出3-1-1九州大学大学院医学研究院眼科学分野0910-1810/19/\100/頁/JCOPY(73)203AMD患者対照群AMD発症にかかわるVS遺伝要因AMD患者AMD患者病型や治療反応性VSなどAMD患者間の違いにかかわる遺伝要因図1AMDのゲノム解析ゲノムワイド関連解析では,患者対照群の比較だけではなく,患者間の臨床的な違いにかかわる遺伝要因の同定を目的に,病型や治療反応性などについて検索を行うことも可能である.DNAアレイによるゲノム上のマーカーの遺伝子多型測定(数十万~数百万塩基)全ゲノム配列情報を用いた遺伝的変異の推定(genotypeimputation)ゲノムワイド関連解析(アレル頻度の網羅的な比較)病気のなりやすさや,薬の効きやすさなどに影響する感受性領域の同定図2ゲノムワイド関連解析の手順ゲノムワイド関連解析では,収集したDNAサンプルに対して,アレイを用いて数十万から数百万塩基の遺伝型を網羅的に測定する.測定した遺伝型について品質管理を行ったあとに,全ゲノムシークエンス情報を用いて,測定が行われていない遺伝型をコンピュータにより推定(genotypeimputation)する.これにより,数十万程度の遺伝型から一千万を超える遺伝型を推定し解析に用いることが可能となる.推定で得られた遺伝型を用いて統計学的な検定(関連解析)によるスクリーニングを実施する.このスクリーニングにより,対象とした形質に関する感受性領域を同定することができる.が存在する可能性が高いことを示唆する.同研究では,領域に存在する遺伝子について,網膜での発現やCAMDに関与し得る分子生物学的パスウェイへの関与,GWASで同定されたマーカーの遺伝子の機能的変化など,さまざまな生物学的な知見に基づいて,遺伝子が病態に関与し得る情報を付与しスコア化することにより,よりCAMDの発症に関与する可能性が高いと考えられる遺伝子を抽出している.特記すべきは,生物学的情報から推測されたCAMD候補遺伝子における薬剤の開発状況を提示していること,つまりゲノム解析から得られた情報に基づいて,治療ターゲットとなり得ると考えられた遺伝子群が参照可能である.今後,生物学的な研究にこれらの情報を役立てることにより,ゲノム研究から得られた研究成果に基づいたCAMDの創薬が加速することが期待される.CII次世代シークエンサーにより同定されたまれな遺伝子変異次世代シークエンサーは,一言で説明すると,多量の塩基配列を一度に読解可能な機器である.ヒト疾患研究では,多量に読める長所を生かして,全ゲノムシークエンスや全エクソンを対象としたエクソームシークエンスなどの網羅的なシークエンスが可能であるが,関心のある領域に限定してシークエンスを行うターゲットリシークエンスという方法が存在する.ターゲットリシークエンスでは,次世代シークエンサーの多量に読めるという特性を生かして,数千人から数万人規模でも塩基配列を決定することが可能である.GWASでは網羅的なスクリーニングが可能である一方で,頻度が低い変異については実験的に遺伝型が測定されていなければ,コンピューターでの推定(genotypeimputation)精度の問題により形質との関連を同定することが容易ではなく,GWASの弱点を補完できる手法であるといえる.先ほど説明したCIAMDGCのCGWASC3では,まれな変異も同定されているが,これはここで紹介するターゲットリシークエンスや,全ゲノムシークエンスの結果などを参考にして,AMDに関連しそうな低頻度な変異を直接測定可能な遺伝型測定アレイが開発されたためであり,シークエンスがその基盤となっている.次世代シークエンサーを用いた研究では,低頻度の変異を評価することにより,二つの成果が期待される.一つは患者群と健常者を比較し,どちらかに変異が偏って観察される遺伝子をみつけること(図3)であり,もう一つは,頻度は低いが発症への影響が強い変異をみつけることである.前者については,前述の通りCGWAS単独では,どの遺伝子が原因遺伝子であるかを決定することが困難であるためである.しかし,GWASにより発症への影響が示された領域に存在する候補遺伝子であり,かつ変異を有するものが患者群や健常人に偏っていれば,その遺伝子は発症に寄与する遺伝子である可能性が高いといえる(図3).後者について,AMDでは2011年にCRaychaudhuriらにより,CFH遺伝子に発症リスクをC20倍も高めるようなまれな変異(p.R1210C)が欧米人で報告されている7).この変異の発見は,非常に重要であり,欧米ではCAMD患者に常染色体優性遺伝のような遺伝形式で発症している者が存在することを示すだけでなく,変異を有する症例では,他の患者に加えて発症年齢がC8.6年早いことも明らかになっている.ターゲットリシークエンスを用いた研究として,三つをここで紹介する.二つは,欧米人を対象としたものであり,一つは日本人を対象として筆者らの研究グループが報告したものである.2013年に,Seddonらは,1,676名のCAMD患者群,745名の対照群,36名の同胞について,その時点でCGWASにより同定された領域に存在する遺伝子や,それに関連する生物学的パスウェイにあるC681の遺伝子を対象に,次世代シークエンサーによるスクリーニングを実施した8).この結果,CFIの翻訳領域に変異を有する患者が対照群と比較してC3倍以上多いこと,さらにCC3とCC9これらはいずれも補体系の遺伝子であるが,これまでに関連が知られていない低頻度な変異(C3Cp.K155Q,CC9p.P167S)を報告している.同様に,Zhanらも,57遺伝子について,2,335名のAMD患者群,789名の対照群を対象に次世代シークエンスを実施し,Seddonらが報告したものと同一のCC3の変異(C3p.K155Q)を報告している9).しかし,日本人を含むアジアで頻度が低い変異がCAMD発症のリスクになっているか,この時期には明らかではなかった.2016年に筆者らは,日本人を対象に次世代シークエ(75)あたらしい眼科Vol.36,No.2,2019C205AMD患者VS対照群AMD発症にかかわる遺伝子の同定遺伝子変異あり遺伝子変異なし図3遺伝子レベルの関連解析GWASでは,一つの塩基が発症に関与するかを網羅的に検討するが,シークエンスデータを用いた解析では,ある特定の遺伝子が疾患などの形質に関与するか検討する手法も開発されている.さまざまな方法が開発されているが,ここではもっとも単純な手法を紹介する.解析の対象とするある遺伝子について,蛋白質の機能に影響すると考えられる遺伝子変異を有している人の割合を患者群と対照群で比較する.機能喪失を起こすCETP遺伝子変異の頻度(%)1.00ナンセンス変異スプライスサイト変異フレームシフト変異0.750.500.250.00AMD患者対照群図4CETP遺伝子に機能喪失を生じる変異CETPの機能喪失を生じることが予想されるナンセンス変異,スプライスサイト変異,フレームシフト変異について,文献10に基づいて図示化した.AMD患者では対照群と比較し,統計学的有意に機能喪失をきたすと考えられる変異を有するものが多く観察された.強い(OR>3)中程度(OR:1.5~3.0)弱い(OR<1.5)まれで影響が強いCFHp.R1210C,C3p.K155Qまれで影響中等度C9p.P167S頻度高く中等度の影響CFH,ARMS2影響が弱いVEGFA,LIPC,TIMP3,APOE,COL4A3,TRPM3MMP9,etc…まれ低頻度高頻度アレル頻度図5これまでに同定されたAMD感受性領域と遺伝子変異本稿で取り上げた遺伝子変異や感受性領域についてアレル頻度と効果の強さに注目して要約した(文献:3,7,9,10.12).アジア人に特有と思われる遺伝子変異を赤で示している.OR:オッズ比.ics),ゲノム薬理学(pharmacogenomics)とよばれ,これまでにさまざまな薬の効き目や副作用に関する論文が報告されている13).AMDにおいても,光線力学療法や抗血管内皮増殖因子(vascularCendothelialCgrowthCfac-tor:VEGF)治療の反応性に遺伝要因が関与する可能性を検証した研究がこれまでに報告されている14.16).しかし,過去の報告はおもに研究者が関心のある遺伝子のみを対象とした候補遺伝子アプローチとよばれる方法であり,網羅的に遺伝要因の検索を行った報告は今でも限られている.筆者らは国内のC7施設と共同で,滲出型CAMDに対する抗CVEGF治療の反応性に影響する遺伝要因の同定を目的に,GWASを行い報告している.本研究ではC434名の滲出型CAMDについて,ラニビズマブにてC3カ月治療した後に,視力が改善もしくは維持できているC361名と,視力が低下したC73名の患者について,ゲノム上のC700万程度のマーカーを網羅的に比較した5).再現性の検証と統合解析の結果,抗CVEGF治療反応性に影響する四つのCSNPが示唆(p<1.0C×10.5)されたが,GWASで用いられる有意水準(p<5.0C×10.8)には到達しなかった.しかし,このC4領域に存在する位置的候補遺伝子とCVEGFに関連するパスウェイに属する遺伝子群との関係性について解析したところ,4領域のうちC3領域に存在する遺伝子(KCNMA1,SOCS2,OTX2)が過去にCVEGF関連の遺伝子への影響が報告されていることから,これらの遺伝子が機能的にも治療反応性に影響する可能性が示唆された.また,国内では,Yamashiroらによって,導入期後の滲出性病変の消失と追加治療の有無,治療開始からC12カ月後の視力変化などについて,GWASが実施されているが,同研究においても統計学的に有意に関連する座位はみつからなかった4).薬理遺伝学研究は,同一の治療を受けた患者を収集する必要があるために,大規模な研究を実施することは容易ではない.しかし,筆者は薬剤反応性に関する遺伝学研究の重要性は今後ますます増加すると考えている.近年では,数千円から二万円程度でゲノムの網羅的な遺伝型測定が可能である.1回の抗CVEGF治療に必要な金額を考えてみると,治療方針に影響する有用なマーカーを発見できれば,個人に最適な治療プロトコールの実践が可能となり,注射回数の削減やそれに伴う金銭的負担の軽減,合併症の予防に貢献するであろう.また,GWASのような網羅的なスクリーニングだけではなく,分子標的薬のターゲットとなる遺伝子の変異が治療反応性に影響することもこれまでに報告されており17),分子標的薬の開発が進む今日では,臨床的な要因だけでなく,遺伝学的な要因による治療感受性の違いについても検討を行うことが個人に応じた医療を提供するために必要である.CIVこれからのゲノム研究ゲノム研究の医療への還元とはおもに,1)発症予測に役立てること,2)生物学的な理解を深めることで新規治療法の開発につなげること,であると筆者は考えている.発症予測に関しては,これまでの研究では,統計学的な有意水準を満たすマーカーを用いてその有用性について議論がなされてきた.一方で,ゲノム上に存在する数千を超える非常にたくさんの塩基が弱い効果をもっており,病気の原因や形質の違いの元になるとするポリジェニックモデルという概念が存在する.この概念に基づいて,多因子疾患のリスク予測のブレイクスルーとなり得る報告が“NatureGenetics誌”に報告された.Kheraらは,5つの疾患に対してゲノム全体から数百万までの塩基情報によるC31の疾患予測モデルを構築し,それらの疾患発症予測における有用性を検討した18).本研究で対象としたC5疾患のうち,4疾患でC700万程度の塩基を用いたモデルがもっとも予測精度が高かった.これまでの方法との大きな違いとしては,過去の方法は有意水準を超えた塩基情報のみで予測してきた点である.AMDでは,有意な関連を示している領域がC40程度しかないことを考えると,このようなモデルを適応することで予測能が向上する可能性は十分にあると思われる.AMDでは,CFHやCARMS2など影響が比較的強く,頻度が高いCSNPがみつかっているため,他の多因子疾患と比較して発症予測の有用性が高いことが示唆されてきたが,このような新しい概念も取り入れて,遺伝的な知識が現在の段階でどの程度発症の予測が可能なのかを,そ208あたらしい眼科Vol.36,No.2,2019(78)■用語解説■一塩基多型:ある集団において,1%以上の頻度で認められる個人間の塩基の違いを一塩基多型(single-nucleotidepolymorphism:SNP)という.

長期経過を考えたポリープ状脈絡膜血管症治療-光線力学療法+抗VEGF薬併用療法

2019年2月28日 木曜日

長期経過を考えたポリープ状脈絡膜血管症治療─光線力学療法+抗VEGF薬併用療法TreatmentStrategyforPolypoidalChoroidalVasculopathytowardObtainingGoodLong-TermPrognosis─Anti-VEGFTherapyCombinedwithPhotodynamicTherapy本田茂*Iポリープ状脈絡膜血管症わが国においてポリープ状脈絡膜血管症(polypoidalchoroidalvasculopathy:PCV)は滲出型加齢黄斑変性(age-relatedmaculardegeneration:AMD)の特殊型として分類されている1).眼底検査で橙赤色隆起病巣あるいはインドシアニングリーン蛍光眼底造影検査(indo-cyaninegreenangiography:ICGA)で特徴的なポリープ病巣を認めたときに確実例と診断される.2015年になって脈絡膜厚の増加を一義的変化とする網膜後極部の萎縮性あるいは滲出性病変としてpachychoroidspec-trumdisease(PSD)(用語解説参照)という疾患概念が提唱されたが2),PCVは脈絡膜厚の増加や脈絡膜血管の拡張および透過性亢進を伴うケースが多くみられることからPSDの一つともされている.実際にはPCVの中に多くのサブタイプが認められ,ポリープ病巣の性状(集属性や大きさ),異常血管網の大きさ,脈絡膜厚や血管透過性に相当のばらつきがみられることから,PCVはさまざまな病態が混在した一種の症候群とも考えられる.本稿ではPCVのサブタイプについての記述は最小限にとどめる.II光線力学療法眼科における光線力学療法(photodynamictherapy:PDT)においては光感受性物質のベルテポルフィン(ビスダインR)を静脈内投与し,15分後に非発熱性近赤外レーザー光を眼底治療部位に照射する3).作用機序としては,ベルテポルフィンが血中low-densitylipoprotein(LDL)に結合し,脈絡膜新生血管(choroidalneovascu-larization:CNV)の血管内皮細胞に多数発現しているLDLレセプターを介してCNVの内皮細胞に高率に取り込まれる.そこにレーザー光が照射されるとCNV中のベルテポルフィンに光化学反応が起こり,発生した一重項酸素によって傷害された血管内皮細胞に血小板などが付着し,血栓形成によってCNVが閉塞すると考えられている(図1).PDT導入にあたって行われた欧米における大規模臨床試験の結果では,PDTによってAMDによる視力低下を抑制する効果が認められた3).しかしながら,後に登場する抗血管内皮増殖因子(vascularendothelialgrowthfactor:VEGF)療法では視力の改善が得られたことから4),欧米では現在AMD治療にはほとんど用いられなくなった.その一方で,わが国のAMD症例に対するPDTでは視力の維持および改善効果が認められ5),その理由としてとくにアジア人に多いPCVに対する病巣縮小効果が高いことがあげられる.ただ,PCVに対してPDTを単独で施行することは脈絡膜毛細管板および網膜色素上皮細胞(retinalpigmentepithelium:RPE)の萎縮(図2)や術後早期の多量網膜下出血などの合併症による著明な視力低下を15%ほどの確率で生じること6)からは,現在では一般的でないといえる.*ShigeruHonda:大阪市立大学大学院医学研究科視覚病態学〔別刷請求先〕本田茂:〒545-8585大阪市阿倍野区旭町1-4-3大阪市立大学大学院医学研究科視覚病態学0910-1810/19/\100/頁/JCOPY(61)191光感受性物質(ベルテポルフィン)非発熱レーザー血中LDLと結合新生血管への集積新生血管のLDLレセプター活性酸素血管内皮障害新生血管閉塞血栓形成図1PDTの作用機序5年後図2PCVに対するPDT単独治療経時的変化量ベースラインから12カ月後の変化量(文字)ラニビズマブ0.5mg+vPDT(n=168)非劣性のp値*<0.001,優越性のp値=0.013(片側検定)(文字)1098BCVAのベースラインからの平均変化量(95%信頼区間)76543210123456789101112経過(月)ベースラインラニビズマブ0.5mg+vPDTラニビズマブ0.5mg(n=167)(n=151)図3EVERESTII試験における最高矯正視力(BCVA)スコアの変化量(KohA.etal:JAMAOphthalmol2017)=抗VEGF薬単独療法抗VEGF薬導入療法PDT+抗VEGF薬併用療法図4抗VEGF薬単独療法無効でPDT併用療法が奏効したPCV症例(83歳,男性)図4つづき視力中心領域網膜厚MeanChangeinBCVA(ETDRSLetterScore)-2200-20-40-60-80-100-120-1401216243240485212162432404852WeekWeek図5PLANET試験においてPDTを行った症例群のサブ解析(LeeWK.etal:JAMAOphthalmol2018)図6PCVに対するPDT+抗VEGF薬併用療法12カ月後視力1010.10.010.010.1110治療前視力0.010.1110治療前視力図7PDT単独とPDT+抗VEGF薬併用療法の視力変化分布(Hondaetal:Ophthalmologica,2009)PDT+抗VEGF薬併用療法24カ月間再発なし図8大きな漿液性色素上皮.離を伴うPCV症例(72歳,男性)PDT+抗VEGF薬併用療法図9Pachychoroidを伴うPCV(61歳,男性)■用語解説■Pachychoroidspectrumdisease(PSD):脈絡膜厚の増加(pachychoroid)を一義的変化とする眼底後極部の病変群のこと.脈絡膜血管の拡張や透過性亢進を伴うことが多い一方,ドルーゼンを伴わないことが多い.Pachychoroidに色素上皮異常のみ伴うものをpachychoroidCpigmentCepitheliopathy(PPE),脈絡膜血管新生を伴うものをCpachychoroidCneovasculopa-thy(PNV),ポリープ病巣を伴うものをポリープ状脈絡膜血管症(polypoidalCchoroidalvasculopathy:PCV)とするほか,中心性漿液性脈絡網膜症(centralserouschorioretinopathy:CSC)を同じカテゴリーの疾患として扱う概念である.—

長期経過を考えたポリープ状脈絡膜血管症治療-抗VEGF薬単独療法

2019年2月28日 木曜日

長期経過を考えたポリープ状脈絡膜血管症治療─抗VEGF薬単独療法Long-TermManagementofPolypoidalChoroidalVasculopathy─Anti-VEGFAgentMonotherapy玉城環*古泉英貴**はじめに滲出型加齢黄斑変性(age-relatedmaculardegenera-tion:AMD)の治療として,抗血管内皮増殖因子(vas-cularendothelialgrowthfactor:VEGF)薬が認可されてから約10年が過ぎた.その恩恵を受け,治療目標は視力維持から視力改善をめざす時代となり,現在の滲出型AMD治療において抗VEGF薬療法がゴールドスタンダードとなったことに疑念の余地はない.一方,改善した視力を維持するために,多くの症例で抗VEGF薬の頻回投与や長期の治療継続が必要なことも明らかとなり,また長期管理に伴う問題として,副作用や医療経済への影響などの問題が浮き彫りになってきた.従来,滲出型AMDの治療では,病態に応じた症例ごとの個別化管理の重要性が謳われてきたが,本稿ではポリープ状脈絡膜血管症(polypoidalchoroidalvasculopa-thy:PCV)にフォーカスを絞り,そのなかでも抗VEGF薬単独療法の長期治療管理について述べる.Iポリープ状脈絡膜血管症(PCV)PCVはYannuzziらによって提唱された概念であり1),その後アジア人に多く2),インドシアニングリーン蛍光眼底造影(indocyaninegreenangiography:IA)が診断に有用であることも報告された3).わが国でのhospi-dal-basedの研究において,滲出型AMD患者の54.7%がPCVであったとの報告もある4).PCVは検眼鏡的には橙赤色隆起病巣,IAで異常血管網とその先端の拡張したポリープ状病巣を特徴とする.PCVに対しては光線力学的療法(photodynamicthera-py:PDT)で高いポリープ状病巣の閉塞効果が示されていることもあり5),わが国での治療ガイドラインでも中心窩下に病変を有するPCVでは,視力(0.5)以下では抗VEGF薬とPDTの併用療法,視力(0.6)以上では抗VEGF薬単独療法も考慮する,とされている6).近年は抗VEGF薬単独療法でも良好な治療経過が得られるという報告も相次いでおり,実臨床では以前と比較して抗VEGF薬の位置づけが大きくなっていると考えられる.II抗VEGF薬の投与方法抗VEGF薬療法は,毎月1回,もっとも標準的には3カ月連続の投与を行う「導入期」と,その後の「維持期」からなる.維持期の投与方法は,以下の3パターンが代表的である(図1).①PRN(prorenata)法:受診時の解剖学的変化(網膜下液・網膜浮腫・出血など)と視力などに基づき,必要時にのみ追加投与を行う.②固定投与法:通院間隔を一定の間隔に決めて投与を継続する.③TAE(treatandextend)法:受診時に投与を継続しながら,個々の病態に応じて通院と投与間隔の調整を行う.*TamakiTamashiro:豊見城中央病院眼科,琉球大学大学院医学研究科医学専攻眼科学講座**HidekiKoizumi:琉球大学大学院医学研究科医学専攻眼科学講座〔別刷請求先〕古泉英貴:〒903-0125沖縄県中頭郡西原町字上原207琉球大学大学院医学研究科医学専攻眼科学講座0910-1810/19/\100/頁/JCOPY(51)181固定投与法毎月投与8週ごと投与病態によらず投与PRN法病態悪化時に投与TAE法病態安定時は延長病態悪化時は短縮Modi.edTAE法初回のみPRN法治療間隔を計りTAE法受診注射どちらでも病態安定病態悪化図1抗VEGF薬療法維持期の投与方法治療前(0.6)×33カ月後(0.7)×41年後4年3カ月後(1.0)×3(1.0)×32年後4年6カ月後(1.0)(1.0)×45年6カ月後:モニタリング(1.0)緑字:ラニビズマブ注射回数赤字:アフリベルセプト注射回数図2ポリープ状脈絡膜血管症に対してtreatandextend法で治療した症例76歳,男性.治療前視力はC0.6.中心窩下にポリープ状病巣と出血性CPEDを認め,ラニビズマブを用いて治療を開始した.導入期終了後,滲出はCdryになったため,2週間ごとのCtreatandextend(TAE)法で治療を継続した.視力はC1.0まで改善し,12週間隔の連続C4回投与で病態が安定していたため,84週間後に治療を中断しモニタリングへ移行した.その後C2年C6カ月は安定し視力も維持できていたが,PEDが増大したため(),再燃と考えラニビズマブによる治療を再開した.しかし,むしろ漿液性網膜.離が出現し消退しなかったため,アフリベルセプトへ変更(switch)したところCdryの状態となり,現在はそれを維持しながら再度CTAE法で管理している.=初診時(0.7)1カ月後(1.0)2カ月後(1.0)3カ月後(1.0)3年後(1.0):モニタリング図3Modi.edTAE法で過剰投与せずにすんだ症例77歳,男性.治療前視力はC0.7.中心窩下にポリープ状病巣と漿液性網膜.離,網膜内浮腫を認め,アフリベルセプトで治療を開始した.初回投与からC1カ月後,漿液性網膜.離と浮腫は完全に消失し,視力もC1.0へ速やかに改善した.病変サイズが小さかったため導入期終了後はCmodi.edTAE法を選択したが,再燃せず経過良好であった.徐々に通院間隔を延長し,現在はC3カ月ごとの通院で約C3年追加投与をせずに視力も良好に維持できている.標準的なCTAE法ならば,順調に経過し中止基準を満たすまで9.10回投与しなければならないところを,導入期のみC3回の投与ですんだ症例である.現在までのエビデンスに基づけば,ラニビズマブを用いたCPCV治療に対しては,単独療法よりもCPDT併用療法が有利かもしれない.C3.アフリベルセプト(アイリーアR)2012年に認可されてから,PCVに対するアフリベルセプト単独療法も多く行われており,ラニビズマブ同様に滲出性変化を減少させ,視力改善に有効なだけでなく,ポリープ状病巣の退縮率も他の抗CVEGF薬と比較しても高率であるとされる18).APOLLO試験では,導入期C3回と,維持期はC2カ月ごとにアフリベルセプト固定投与を行い,97.6%の症例でC1年後に視力改善・維持が得られ,ポリープの完全退縮率はC72.5%,drymacula達成率もC78.1%と非常に良好な結果であった19).最近,アフリベルセプトで導入期治療後,PDTをレスキュー治療として併用したCPLANET試験のC1年結果が報告された20).視力改善の程度に関しては,レスキューCPDT併用群に対しアフリベルセプト単独群は非劣勢であり,またC85%以上の症例でCPDTレスキュー治療を必要としないばかりか,レスキューCPDTに視力改善の付加的効果がないことも示された.これらの結果からも,アフリベルセプトに関しては単独療法でもCPCVに対する治療選択として有用なオプションであるといえる.CIV長期治療管理の諸問題1.安全性眼局所では,注射C1回あたりC0.02%の眼内炎発症率が報告されている.ほかにも硝子体出血や網膜.離,緑内障など視機能の予後に影響しうる有害事象も報告されているため,留意しながら診療にあたらなければならない.全身性の有害事象として動脈血栓塞栓症が重要であるが,シャム群と注射群とを比較しても有害事象の発生率に有意差はつかない結果であった21).ただし,AMD患者は高齢者がほとんどであり,既往歴や治療後の症状などに十分留意する必要がある.2.治療抵抗性ラニビズマブ単独療法で導入期に滲出が消失しなかった“導入期ノンレスポンダー”症例は,網膜色素上皮(retinalpigmentCepithelium:RPE)下に脈絡膜新生血管(choroidalneovascularization:CNV)がある,いわゆるC1型CCNVでC19.7%,PCVでC10.7%の割合で認めたと報告されている22).PCVの臨床像でみると,大きなポリープ状病巣,1乳頭径面積以上の網膜色素上皮.離(pigmentCepithelialdetachment:PED),IAでの脈絡膜血管透過性亢進(choroidalCvascularChyperperme-ability:CVH)などが抗CVEGF薬の治療抵抗因子であることも報告されている23.27)(図4).導入期でCdrymaculaを得られたものの,その後の維持期において再発し,治療経過とともに効果が減弱していき“耐性(タキフィラキシー,トレランス)”を獲得する症例もある.その場合,①他の薬剤に変更する,②休薬期間を設ける,③CPDT併用療法を検討するなどの対応が必要である.これらの対応をしても治療に難渋する場合には,僚眼の視力や患者背景などを考慮したうえで,消極的な治療中断を選択せざるを得ない場合もある8).C3.RPE萎縮と瘢痕病巣視力予後の重要な規定因子とされるCRPE萎縮は,CATT試験のC2年経過においてC18.3%に新規発症を認め,毎月投与とCPRNでは,毎月投与で発症リスクが高いと報告された28).ただし,抗CVEGF薬自体がCRPE萎縮を引き起こすかどうかについての結論は出ていない29,30).RPE萎縮の他の危険因子として,治療前視力がC0.1未満・高齢・大きな病変サイズ・網膜内液の存在・網膜下高反射病巣(subretinalChyperre.ectivematerial:SHRM)の存在・患眼や僚眼におけるCRPE萎縮の存在などもいわれている.病型では,脈絡膜の薄い網膜血管腫状増殖(retinalangiomatousproliferation:RAP)や,RPEより上にCCNVがある,いわゆるC2型CCNVのほうが萎縮を起こしやすい28,31,32).SHRMは,光干渉断層計(opticalCcoherenceCtomog-raphy:OCT)画像で感覚網膜とCRPEの間に確認でき(55)あたらしい眼科Vol.36,No.2,2019C185初診時(0.7)3カ月後(0.7)5カ月後(0.7)8カ月後(0.7)11カ月後(0.7)70歳,男性.一見すると中心性漿液性脈絡網膜症を疑う画像所見だが,IAでポリープ状病巣を認めたため,PCVと診断してアフリベルセプトで治療開始した.導入期終了後,わずかに漿液性網膜.離が改善したかどうか,という程度でアフリベルセプトの効果が乏しく,OCTで脈絡膜大血管の拡張(),IA後期で脈絡膜血管透過性亢進所見()を認めた.視力および所見が安定しているため,現在C3カ月ごとでアフリベルセプト投与中だが,今後視力低下や滲出性変化の増悪を認めるようなら,PDT併用を検討する方針である.図4脈絡膜血管透過性亢進のあるPCV初診時(0.3)初診から1カ月後治療開始時(0.2)12週後(0.2)16週後(0.2)28週後(0.2)50週後(0.2)62週後(0.15)78週後(0.15)中止図5治療介入が遅れ瘢痕病巣のために視力不良となり治療中断した症例86歳,男性.初診時視力C0.3.諸事情により治療開始がC1カ月遅れ,治療開始時には初診時と比べ,ポリープ状病巣と網膜下出血の顕著な増大を認めた.アフリベルセプトで治療を開始するも,導入期終了後もCSHRM(矢印間)は残存し,TAE法で順調に投与間隔を延長できたが,これ以上の視力改善が見込めないために治療中断を希望された.exudativeCage-relatedCmacularCdegenerationCinCJapaneseCpatients.AmJOphthalmolC144:15-22,C20075)KohCA,CLeeCWK,CChenCLJCetal;EVERESTSTUDY:CE.cacyCandCsafetyCofCvertepor.nCphotodynamicCtherapyCinCcombinationCwithCranibizumabCorCaloneCversusCranibi-zumabCmonotherapyCinCpatientsCwithCsymptomaticCmacu-larCpolypoidalCchoroidalCvasculopathy.CRetinaC32:1453-1464,C20126)TakahashiCK,COguraCY,CIshibashiCTCetal:TreatmentCguidelinesCforCage-relatedCmacularCdegeneration.CNipponCGankaGakkaizasshiC116:1150-1155,C20127)RofaghaS,BhisitkulRB,BoyerDSetal:Seven-yearout-comesCinCranibizumab-treatedCpatientsCinCANCHOR,CMARINA,CandHORIZON:aCmulticenterCcohortCstudy(SEVEN-UP).OphthalmologyC120:2292-2299,C20138)FreundCKB,CKorobelnikCJF,CDevenyiCRCetal:Treat-and-extendCregimensCwithCanti-vegfCagentsCinCretinalCdiseas-es:aCliteratureCreviewCandCconsensusCrecommendations.CRetinaC35:1489-1506,C20159)ArendtP,YuS,MunkMRetal:Exitstrategyinatreat-and-extendCregimenCforCexudativeCage-relatedCmacularCdegeneration.RetinaC39:27-33,C201910)OhnakaCM,CNagaiCY,CShoCKCetal:ACmodi.edCtreat-and-extendregimenofa.iberceptfortreatment-naivepatientsCwithneovascularage-relatedmaculardegeneration.Grae-fesArchClinCExpOphthalmolC255:657-664,C201711)ShiragamiC,OnoA,KobayashiMetal:E.ectofswitch-ingCtherapyCtoCpegaptanibCinCeyesCwithCtheCpersistentCcasesCofCexudativeCage-relatedCmacularCdegeneration.Medicine(Baltimore)C93:e116,C201412)HikichiCT,CHiguchiCM,CMatsushitaCTCetal:One-yearCresultsCofCthreeCmonthlyCranibizumabCinjectionsCandCas-neededCreinjectionsCforCpolypoidalCchoroidalCvasculopathyCinCJapaneseCpatients.CAmCJCOphthalmolC154:117-124,Ce111,C201213)OishiCA,CKojimaCH,CMandaiCMCetal:ComparisonCofCtheCe.ectCofCranibizumabCandCvertepor.nCforCpolypoidalCcho-roidalvasculopathy:12-monthCLAPTOPCstudyCresults.CAmJOphthalmolC156:644-651,Ce641,C201314)OishiA,MiyamotoN,MandaiMetal;LAPTOPstudy:CAC24-monthCtrialCofCvertepor.nCversusCranibizumabCforCpolypoidalCchoroidalCvasculopathy.COphthalmologyC121:C1151-1152,C201415)MiyamotoN,MandaiM,OishiAetal:Long-termresultsofCphotodynamicCtherapyCorCranibizumabCforCpolypoidalCchoroidalCvasculopathyCinCLAPTOPCstudy.CBrCJCOphthal-mol2018〔Epubaheadofprint〕16)KohCA,CLeeCWK,CChenCLJCetal;EVERESTstudy:CE.cacyCandCsafetyCofCvertepor.nCphotodynamicCtherapyCinCcombinationCwithCranibizumabCorCaloneCversusCranibi-zumabCmonotherapyCinCpatientsCwithCsymptomaticCmacu-larCpolypoidalCchoroidalCvasculopathy.CRetinaC32:1453-1464,C2012C17)KohCA,CLaiCTYY,CTakahashiCKCetal:E.cacyCandCsafetyCofranibizumabwithorwithoutvertepor.nphotodynamictherapyforpolypoidalchoroidalvasculopathy:Arandom-izedCclinicalCtrial.CJAMACOphthalmolC135:1206-1213,C201718)YamamotoA,OkadaAA,KanoMetal:One-yearresultsofCintravitrealCa.iberceptCforCpolypoidalCchoroidalCvascu-lopathy.OphthalmologyC122:1866-1872,C201519)OshimaCY,CKimotoCK,CYoshidaCNCetal:One-yearCout-comesfollowingintravitreala.iberceptforpolypoidalcho-roidalCvasculopathyCinCJapanesepatients:TheCAPOLLOCStudy.OphthalmologicaC238:163-171,C201720)LeeCWK,CIidaCT,COguraCYCetal:E.cacyCandCsafetyCofCintravitrealCa.iberceptCforCpolypoidalCchoroidalCvasculopa-thyCinCtheCPLANETstudy:aCrandomizedCclinicalCtrial.CJAMAOphthalmol136:786-793,C201821)KitchensCJW,CDoCDV,CBoyerCDSCetal:ComprehensiveCreviewofocularandsystemicsafetyeventswithintravit-realCa.iberceptCinjectionCinCrandomizedCcontrolledCtrials.COphthalmologyC123:1511-1520,C201622)OtsujiT,NagaiY,ShoKetal:Initialnon-responderstoranibizumabCinCtheCtreatmentCofCage-relatedCmaculardegeneration(AMD)C.CClinCOphthalmolC7:1487-1490,C201323)KoizumiCH,CYamagishiCT,CYamazakiCTCetal:PredictiveCfactorsCofCresolvedCretinalC.uidCafterCintravitrealCranibi-zumabCforCpolypoidalCchoroidalCvasculopathy.CBrCJCOph-thalmolC95:1555-1559,C201124)KoizumiCH,CYamagishiCT,CYamazakiCTCetal:RelationshipCbetweenCclinicalCcharacteristicsCofCpolypoidalCchoroidalCvasculopathyCandCchoroidalCvascularChyperpermeability.CAmJOphthalmolC155:305-313,Ce301,C201325)ChoCHJ,CKimCHS,CJangCYSCetal:E.ectsCofCchoroidalCvas-cularChyperpermeabilityConCanti-vascularCendothelialCgrowthfactortreatmentforpolypoidalchoroidalvasculop-athy.AmJOphthalmolC156:1192-1200,Ce1191,C201326)NagaiCN,CSuzukiCM,CUchidaCACetal:Non-responsivenessCtoCintravitrealCa.iberceptCtreatmentCinCneovascularCage-relatedCmaculardegeneration:implicationsCofCserousCpig-mentepithelialdetachment.SciRepC6:29619,C201627)HaraC,WakabayashiT,ToyamaHetal:Characteristicsofpatientswithneovascularage-relatedmaculardegener-ationCwhoCareCnon-respondersCtoCintravitrealCa.ibercept.BrJOphthalmol2018〔Epubaheadofprint〕28)GrunwaldJE,DanielE,HuangJetal:RiskofgeographicatrophyCinCtheCcomparisonCofCage-relatedCmacularCdegen-erationCtreatmentsCtrials.COphthalmologyC121:150-161,C201429)GrunwaldCJE,CPistilliCM,CYingCGSCetal:ComparisonCofCage-relatedCmacularCdegenerationCtreatmentsCtrialsresearchG:growthofgeographicatrophyinthecompari-sonofage-relatedmaculardegenerationtreatmentstrials.OphthalmologyC122:809-816,C2015188あたらしい眼科Vol.36,No.2,2019(58)–

長期経過を考えた網膜内血管腫状増殖治療

2019年2月28日 木曜日

長期経過を考えた網膜内血管腫状増殖治療TreatmentStrategyforRetinalAngiomatousProliferationtoImproveLong-TermVisualPrognosis松本英孝*I網膜内血管腫状増殖(RAP)とは1992年にHartnettらは,網膜内新生血管を伴う加齢黄斑変性(age-relatedmaculardegeneration:AMD)を初めて報告した1).そして,1996年にこの網膜内新生血管を“deepretinalvascularanomalouscomplex”と名付けた2).さらに,2001年にはYannuzziらによって,AMDの特殊型である網膜内血管腫状増殖(retinalangi-omatousproliferation:RAP)として分類された3).彼らは,RAPの起源は網膜内新生血管であると報告し,進行過程により3ステージに分類した(Stage1:網膜毛細血管からの網膜内新生血管発生,Stage2:新生血管の網膜下への進展と網膜色素上皮.離の発生,Stage3:脈絡膜新生血管の発生).しかし,この報告とは対照的に,2003年にGassらはRAPの起源はGass分類(用語解説参照)type1脈絡膜新生血管であると報告した4).2008年にFreundとYannuzziらは,彼らのオリジナル分類を改定し,RAPの新生血管は網膜からだけでなく脈絡膜からも発生しうるとして,これをtype3新生血管と名付けた5,6).RAPにおける新生血管の起源については,現在も議論の余地はあるものの,近年の病理組織学的研究において網膜内新生血管は確認されているが,脈絡膜新生血管の存在は証明されていない7,8).RAPは日本人の滲出型AMDの4.5%を占めると報告されており9),多発性軟性ドルーゼンを伴う高齢者の黄斑部に発生する.また,両眼発生率が非常に高く10),急速進行性で予後不良な疾患とされている.さらに,reticularpseudodrusen(用語解説参照)や黄斑萎縮の合併率が高いことや11),脈絡膜循環障害,脈絡膜菲薄化がみられることも報告されている12,13).IIRAP治療の変遷RAPに対しては,レーザー光凝固,経瞳孔温熱療法,硝子体手術による栄養血管切断,光線力学的療法(pho-todynamictherapy:PDT),トリアムシノロン硝子体注射または後部Tenon.下注射,そして,これらの併用療法が試みられてきた.しかし,抗血管内皮増殖因子(vascularendothelialgrowthfactor:VEGF)薬の登場により,他の滲出型AMDサブタイプと同様にRAPの治療成績は大きく改善した14).視力改善が得られ,それを維持できるようになったのである.高齢者ではBruch膜の肥厚と脈絡毛細管板の萎縮が確認されている15).生理的な状態では,網膜色素上皮から脈絡毛細管板に向かってVEGFが分泌され,脈絡毛細管板の透過性が制御されている16).しかし,高齢者では,色素上皮からのVEGFが加齢によって肥厚したBruch膜によってブロックされるため,脈絡毛細管板の萎縮が起こると考えられている17).RAPでは,前房水中のVEGF濃度が,他のAMDサブタイプと比較し有意に高値であると報告されている18).RAP眼では,肥厚したBruch膜でブロックされた色素上皮からのVEGFによって網膜外層から前房にかけてVEGF濃度*HidetakaMatsumoto:群馬大学大学院医学系研究科脳神経病態制御学講座眼科学〔別刷請求先〕松本英孝:〒371-8511群馬県前橋市昭和町3-39-15群馬大学大学院医学系研究科脳神経病態制御学講座眼科学0910-1810/19/\100/頁/JCOPY(43)173が上昇しているのかもしれない.前述したように,RAPでは多発性軟性ドルーゼンの合併が多くみられ,これはCBruch膜の肥厚が進行していることを支持する所見である.これらのことから,RAPに対する抗VEGF薬硝子体注射は,理にかなった治療といえる.CIII抗VEGF薬の投与レジメン滲出型CAMDに対するラニビズマブ硝子体注射の大規模臨床試験であるCMARINA,ANCHORstudyで,毎月C1回のラニビズマブ硝子体注射は視力の改善,維持に有効であることが示された19,20).しかし,この方法では患者の負担が大きく,これを軽減させる目的でCPIER,CPrONTOstudyが行われた21,22).PIERstudyでは,最初のC3回は毎月ラニビズマブ硝子体注射を行うが,その後はC3カ月ごとに追加を行うという方法をとった.しかし,1年後の視力は治療前とほぼ同等となってしまい,視力改善は得られなかった.一方,PrONTOstudyでは,最初のC3回は毎月ラニビズマブ硝子体注射を行うが,その後は視力,眼底所見,OCT所見から病変の活動性を毎月評価し,必要な場合のみ追加投与を行うという方法をとった.そして,ラニビズマブの投与回数を減らしてもCMARINA,ANCHORstudyと同様に改善した視力を維持できることが証明された.しかし,この方法では依然として毎月の受診が必要であり,患者の負担を十分に軽減できるようになったとはいえない.このため,近年,treatandextend(TAE)という方法が主流になってきている14).この方法では,導入期に月C1回の抗CVEGF薬硝子体注射をC3回施行し,その後の維持期は受診時に毎回追加治療を行うが,受診間隔をC2.4週ずつ延長していき,最長C12.16週間隔で治療を行う.再燃がみられた場合には,受診間隔をC2.4週短縮することによって,最適な治療間隔を見きわめる.Freundらのグループはこの方法でCRAPを治療し,改善した視力をC3年間維持できたと報告している14).RAPで良好な視力を維持するためには,発病早期に治療を開始することが重要である23).病期が進行してからでは,たとえ病変が鎮静化しても視力回復は困難である.このため,両眼発生率が高い疾患であるCRAPでは,僚眼も注意深く診察する必要がある.そして,網膜内出血や網膜浮腫がみられた際には,可及的速やかに抗VEGF薬硝子体注射を施行することが望ましい.抗VEGF薬硝子体注射によるCTAEで治療を行う場合には,投与間隔を延長できたとしても,僚眼のCRAP発生に注意して診察間隔はあまり延長しないほうが無難である24).CIVRAPと黄斑萎縮滲出型CAMDの治療においては,undertreatmentとならないよう,できる限り滲出を抑えることが重要である.Undertreatmentになると黄斑萎縮を形成し,中心窩に黄斑萎縮が及んだ場合,重度の視力低下をきたすためである25).一方で,RAPに関しては,発症時すでに黄斑萎縮の合併が多く,抗CVEGF薬硝子体注射やCPDT後に黄斑萎縮が拡大することが報告されている26.28).つまり,RAPで長期に視力を維持するためには,undertreatmentを防ぐことはもちろんだが,overtreat-mentにならないための配慮も必要である.滲出型CAMDに対するラニビズマブ硝子体注射によるTAEの前向き研究では,治療中の黄斑萎縮発生のリスクファクターとして治療前の薄い脈絡膜厚があげられている29).滲出型CAMDに対するアフリベルセプトを用いたCTAEの効果を評価した筆者らの研究でも,RAPは他の病型より脈絡膜が薄く,黄斑萎縮の拡大が速いことが確認されている28)(図1~3).抗CVEGF薬硝子体注射やCPDT後には,脈絡毛細血管板や脈絡膜血管の閉塞が起こることが知られており30,31),もともと脈絡膜が菲薄化しているCRAPでは,これらの治療によってさらに脈絡膜循環が減少することになる.そして,この脈絡膜循環の減少によって,黄斑萎縮とそれに伴う視力低下が起こる可能性が高い.これらのことから,RAPにおいて長期的に視力を改善,維持させるためには,治療に伴う脈絡膜循環の減少を最小限に抑えることが肝要といえる.RAP治療におけるラニビズマブとアフリベルセプト硝子体注射の効果を前向きに比較した研究はまだないが,各薬剤の脈絡膜への影響を十分考慮して治療を行う必要がある.Julienらは,ラニビズマブまたはアフリベルセプト硝子体注射後の脈絡毛細管板の変化をサル眼球174あたらしい眼科Vol.36,No.2,2019(44)図1網膜内血管腫状増殖(RAP)stage1,79歳,女性,左眼視力(1.0)a:眼底写真.中心窩耳側に網膜内出血,黄斑部に軟性ドルーゼンの集簇,アーケード血管の上方を中心にCreticularpseudodrusenがみられる.Cb:眼底自発蛍光.中心窩耳側に網膜内出血による蛍光遮断,視神経乳頭の耳側と中心窩上方に色素上皮萎縮を反映する低蛍光領域がみられる.Cc:光干渉断層計.中心窩耳側の.胞様黄斑浮腫と脈絡膜の菲薄化がみられる.視神経乳頭近傍では高度に脈絡膜が菲薄化し,色素上皮から外顆粒層までが消失している.Cd:フルオレセイン蛍光造影.中心窩耳側に網膜内出血による蛍光遮断と網膜内新生血管から網膜内への蛍光漏出がみられる.また,色素上皮萎縮の領域にCwindowCdefectがみられる.Ce:インドシアニングリーン蛍光造影.網膜内新生血管を反映するChotspotがみられ,網膜血管との吻合(retinal-retinalanastomosis)が確認できる.図2図1の3カ月後,アフリベルセプト硝子体注射3回後,左眼視力(1.2)a:眼底写真.網膜内出血はほぼ消退している.Cb:眼底自発蛍光.網膜内出血による蛍光遮断はほとんどなくなっている.網膜色素上皮萎縮を反映する低蛍光領域に変化はみられない.Cc:光干渉断層計..胞様黄斑浮腫は消退している.その他の所見に変化はみられない.Cd:フルオレセイン蛍光造影.網膜内出血による蛍光遮断はほとんどなくなり,網膜内新生血管から網膜内への蛍光漏出も消退している.Windowdefectの領域に変化はない.Ce:インドシアニングリーン蛍光造影.網膜内新生血管を反映するChotspotは消失している.図3アフリベルセプト硝子体注射による治療経過a:1年後,アフリベルセプト硝子体注射C8回後,左眼視力(1.0).Cb:2年後,アフリベルセプト硝子体注射C14回後,左眼視力(0.9).Cc:3年後,アフリベルセプト硝子体注射C21回後,左眼視力(0.6).Cd:4年後,アフリベルセプト硝子体注射C27回後,左眼視力(0.07).眼底写真・眼底自発蛍光:眼底写真ではC4年間で大きな変化はみられないが,眼底自発蛍光では顕著な色素上皮萎縮の拡大がみられる.光干渉断層計:脈絡膜の菲薄化が進行し,色素上皮と外顆粒層の消失範囲が中心窩方向へ拡大している.網膜前膜の形成も確認される.滲出性変化はコントロールされていたが,色素上皮萎縮が徐々に拡大して中心窩に達し,治療開始からC4年後には高度の視力障害をきたしている.-■用語解説■脈絡膜新生血管の組織学的分類(Gass分類):組織学的な位置による脈絡膜新生血管の分類.網膜色素上皮下の脈絡膜新生血管をCtype1,網膜色素上皮上の脈絡膜新生血管をCtype2と分類する.CReticularpseudodrusen:1990年にCMimounらによってCmaculardrusenとして初めて報告されたドルーゼンの一種.2010年のCZweifelらの光干渉断層計による研究で,網膜色素上皮下ではなく網膜下に存在することが明らかとなった.また,滲出型,萎縮型加齢黄斑変性のリスクファクターであることや網膜感度低下の原因になることがわかっている.CReduced.uencePDT:照射するレーザーのエネルギーを減らして行う光線力学的療法.照射エネルギーを50%に設定することが多い.C’C-

長期予後を考えた加齢黄斑変性治療-典型加齢黄斑変性

2019年2月28日 木曜日

長期予後を考えた加齢黄斑変性治療─典型加齢黄斑変性ExudativeAge-relatedMacularDegenerationTreatmentConsideredinTermsofLong-TermOutcome─TypicalAge-relatedMacularDegeneration山本亜希子*はじめに典型加齢黄斑変性(typicalage-relatedmaculardegeneration:AMD)の治療方針については2012年に厚生労働省網膜脈絡膜・視神経萎縮症調査研究班が示しているように抗血管内皮増殖因子(vascularendothelialgrowthfactor:VEGF)薬での治療が中心となっている1).ここでは,長期予後をふまえた抗VEGF薬を用いた治療の進め方および考え方を述べる.治療を開始する際に必ず意識しておくべきことは,AMDが慢性疾患であるということである.長期予後を考えるうえで筆者が大切にしていることは患者のQOL(qualityoflife)を維持することであり,それには視力維持が不可欠と考えている.治療を止めるということを目標にするのではなく,いかに視力を維持することができるかに目標をおいて治療方針を計画することが望ましい.I治療方針の立て方―reactive治療かproactive治療か視力維持を考えるにあたり,もっとも大切なことは再発を起こさないことである.AMDに対し抗VEGF薬の使用が始まった当初は,導入期3回投与後,毎月診察をし,再発がみられてから治療するPRN(prorenata)(用語解説参照)という方針が多く用いられていた.ただし,この方針では悪化してからの対処となるため,場合によっては不可逆的な視力低下をきたすことがあった.SEVEN-UPstudy2)ではラニビズマブを毎月投与後,視力改善が得られていたのちにPRNの方針に変更したところ,視力が低下したと報告されている(図1).そこで最近では,再発が起こる前に計画的に治療をするproactive治療(用語解説参照)を採用している施設が増えている.Proactive治療には固定投与とtreatandextend(TAE)(用語解説参照)という方法がある.固定投与は8週ごとなど決められた間隔で治療を続けていく方針である.固定投与では治療計画を立てやすいというメリットはあるが,悪化した場合には治療不足となり,また場合によって治療過多となることもあるため,個別化治療にはならない.一方,TAEは患者の状態に合わせて投与間隔を調整するため,治療過多・不足を最小限にすることができる.TAEの問題点は,PRNに比べ治療回数が多くなることである.また,患者や担当医の都合により計画した通りに行うことがむずかしい場合もあり,患者の経過や僚眼の状況をふまえながら調整をしていくことが求められる.表1にreactive治療(用語解説参照)とproactive治療の利点・問題点をまとめた.患者の背景,病状に合わせ求められる治療を提供していくことが望ましい.IITreatandextendの進め方次にTAEについてさらに詳しく述べる.まずどのような治療方針についても大切なポイントは,滲出がなくなるまで毎月の投与を継続することである.網膜色素上*AkikoYamamoto:杏林大学医学部眼科学教室〔別刷請求先〕山本亜希子:〒181-8611東京都三鷹市新川6-20-2杏林大学医学部眼科学教室0910-1810/19/\100/頁/JCOPY(37)167ETDRSLettersreactive治療proactive治療proactive治療(PRN)(固定投与)(TAE)・治療回数を減らすことが・治療計画が立てやすい・個別化治療が可能利点できる・通院回数を減らすことが可能・再発後の治療のため視力・治療不足・過多が起きや・治療回数が多くなること問題点低下のリスクあり・厳密な再投与基準が必要すい・悪化した場合,治療計画が多い・通院回数が多いの変更が必要延長期間12~16週までDry&Wetの判断基準Dry:OCTで網膜内・網膜下に滲抗VEGF薬投与出性変化がない.PEDは丈がもっとも低くなるまで,出血は消失するまでWet:OCTで滲出性変化が存在,新たな網膜出血,PDEの拡大図2杏林アイセンターにおけるTAEの方針Dryになるまで毎月投与し,その後,投与間隔をC6週間に延長する.同じ投与間隔でC2回drymaculaを確認したあとにC2週間ずつ延長する.W:週MeanVisualChange(numberoflines)VisualChangefromBaseline1.81.61.41.210.80.60.40.20Month061218243036424854606672Visualchange(lines)─1.0020.8731.2451.1491.0291.0610.9270.8960.9770.7820.8771.626Visualchange─-0.1002-0.0873-0.1245-0.1149-0.1029-0.1061-0.09270.0896-0.0977-0.07820.0877-0.1626(logMAR)n(eyes)2102102101881741441281088868544027図3滲出型AMDに対しベバシズマブ・ラニビズマブ・アフリベルセプトのいずれかを用いたTAEの継続期間が延長するにつれ経過観察できた症例数は減少しているが,視力が維持されていることがわかる.(文献C5より転載)表2TAE(T&E)とPRNの比較(既報のレビューより)T&ERegimenCPRNRegimenPRNRegimen(RCT)Difference(Mann-Whitney’stest)CPRN/PRNRCTCWeightedmean/mean9.17/10.4C3.5/5.4C5.1/5.8Cp=0.0006/0.0051Signi.cantCETDRSlettersgained(SD=3.8,Cl7.4to13)(SD=4.5,CClC4.28Cto6.43)(SD=2.7,Cl4.4to7.2)CWeightedmean/mean8.34/8.09C5.3/5.6C6.6/6.5Cinjectionsin1year(SD=0.66,CClC7.6Cto8.6)(SD=0.99,CClC5.32Cto5.79)(SD=0.88,CClC6.0Cto6.9)Cp=0.0001/0.0002Signi.cantCWeightedmean/mean85.71/87.7C99.2/100.32C122.2/110CchangeinCRT(SD=27.67,CClC64.58Cto110.8)(SD=40.69,CClC89.1Cto111.54)(SD=32,Cl90to120)Cp=0.41/0.1784NotSigni.cantCDatafortheRCTemployinganasneededregimenareincludedinaseparatecolumm.CThesigni.cancelevelwassetatp<0.05.CRT,centralretinalthickness;RCT,randomisedclinicaltrial;PRN,prorenata,T&E,treatandextend.TAE(T&E)とCPRNを比較し,TAEのほうが有意に視力改善していると報告されている.(文献C6より転載)表3治療方針別費用対効果の比較TreatmentCIAI2Cmgevery8weeks(afterthreeinitialmonthlyinjections)CRanibizumab0.5Cmgevery4weeksCRanibizumabasneededCPegaptanibsodium0.3Cmgevery6weeksCPDTwithvertepor.nCBestsupportivecareCTotalcosts(JPY)C4,807,230C5,983,667C5,219,596C6,252,842C5,583,394C6,464,544TreatmentcostsC1,768,170C2,858,245C2,121,804C2,147,336C1,166,231C0MonitoringcostsC69,228C92,892C92,892C71,282C60,197C38,316AdverseeventcostsC0C2,411C1,476C6,075C2,187C0CostsofblindnessC2,969,832C3,030,118C3,003,424C4,028,149C4,354,778C6,426,227CQALYgainedC6.90C6.87C6.88C6.53C6.41C6.09CIncrementalcosts(JPY)C─C.1,176,436C.412,366C.1,445,612C.776,163C.1,657,313CIncrementalQALYgainedC─C0.027C0.014C0.369C0.486C0.804ICUR(JPY/QALY)C─CIAIdominatesCIAIdominatesCIAIdominatesCIAIdominatesCIAIdominatesNMB(JPY)C─C1,314,619C482,691C3,357,924C3,297,796C5,827,939CIAI,CintravitrealafilberceptCinjection(s);ICUR,CincrementalCcost-utilityratio;JPY,CJapaneseyen;NMB,CnetCmonetaryCbenefit,CPDT,Cphotodynamictherapy;QALY,quality-adjustedlifeyear.77歳からCAMD治療を開始しC12年間での費用換算を示している.(文献C8より転載)InductionphaseMonthlyinjectionsuntiladrymaculawasachieved.(atleast3times)InjectionOnlyvisit(Drymacula)DiseaserecurrenceIntialtreatmentintervalinterval≦6weeks4weeks6~8weeks6weeks8~10weeks8weeks10~12weeks10weeks12weeks<12weeks図4Modi.edtreatandextendの方法(文献C7より転載)ObservationphaseMonthlyvisitsuntilsignsofexudativeactivityappeared.(atleast3times)DiseaseRecurrenceintervalTAEphaseMonthlyinjectionsuntiladrymaculawasachieved.InjectionafterInitialtreatmentintervalbasedondiseaserecurrenceintervals.Exudativechange(-)intervalextendedExudativechange(+)intervalshortenby2weeks■用語解説■PRN:proCrenataというラテン語から発生している.英語ではCasneeded.必要時(再発がみられた場合)に投与するという意味をさす.CProactive治療:再発がみられる前に投与間隔を事前に決定し,治療する方法である.CTAE(treatandextend):患者の治療反応に合わせて治療間隔を調整する方法である.CReactive治療:再発がみられてから治療する方法である.Cdrymacula:OCTにおいて網膜下液,網膜浮腫などの滲出性変化がみられない状態をさす.-

萎縮型加齢黄斑変性の診断-わが国の萎縮型加齢黄斑変性の診断基準

2019年2月28日 木曜日

萎縮型加齢黄斑変性の診断─わが国の萎縮型加齢黄斑変性の診断基準DiagnosisofAtrophicAge-relatedMacularDegeneration─DiagnosticCriteriaofAtrophicAge-relatedMacularDegenerationinJapan永井由巳*はじめにわが国の加齢黄斑変性(age-relatedmaculardegen-eration:AMD)の診断基準においては,AMDは滲出型と萎縮型の二つのタイプを定義している(表1)1).実際の臨床では,AMDの患者の約9割を占め,積極的に治療を行うことができる滲出型AMDが診療の中心となっていて,滲出性所見を認めない萎縮型AMDの患者については,現在のところ経過観察するのみとなっている2).しかしながら近年,萎縮型AMDの治療についての研究や治療薬の開発が進みつつあり,萎縮型AMDの注目度が高まっている.このような背景を受けて,2015年に「萎縮型加齢黄斑変性の診断基準」が公表された3).I萎縮型AMDとは萎縮型AMDでは,滲出型のような漿液性網膜.離や出血などの滲出性所見を認めず,地図状萎縮(geograph-icatrophy:GA)を生じる.その発生の主原因は,滲出型AMDと同じく網膜色素上皮(retinalpigmentepi-thelium:RPE)やBruch膜の加齢性変化と考えられている.このGAは境界鮮明な円形または楕円形で,低色素,脱色素もしくはRPE欠損領域であり,周囲網膜よりも鮮明に脈絡膜血管を透見できるものと考えられている4).なお,日本における萎縮型AMDは,久山町研究において50歳以上の0,2%に認め,5年発症率は0.3%と報告されている5).GAについては萎縮型AMD以外にも,滲出型AMDの滲出消退後のRPE傷害による萎縮性変化や,黄斑ジストロフィや鎮静化した各種黄斑疾患などで似たような萎縮巣を認めることがあり,萎縮型AMDと混同されることもあるので区別して考える必要がある.II萎縮型AMD発症前の眼底の特徴的な所見萎縮型AMDの眼底で必須所見とされているGAは,ドルーゼンを認める眼底に多い.AREDSstudyもドルーゼンに色素沈着を生じ,さらに脱色素,ドルーゼンの消退と進展してGAを生じるとしている4).これらのドルーゼンや色素沈着,色素脱失は,加齢黄斑変性の診断基準で定義されている前駆病変に相当する.この前駆病変における所見からは滲出型AMDに進展することもあり,萎縮型AMDか滲出型AMDかへの進展に注意して経過観察する必要がある.III萎縮型AMDの定義(診断基準による)2015年に厚生労働省網膜脈絡膜・視神経萎縮症調査研究班の萎縮型加齢黄斑変性診療ガイドライン作成ワーキンググループによって萎縮型AMDの診断基準が作成され公表された(表2)3).診断にあたっては,眼底所見のGAが必須条件となっている.診断基準に沿って各項目を解説する.*YoshimiNagai:関西医科大学眼科学教室〔別刷請求先〕永井由巳:〒573-1010大阪府枚方市新町2-5-1関西医科大学眼科学教室0910-1810/19/\100/頁/JCOPY(31)161表1加齢黄斑変性の診断基準(2008年)注:滲出型加齢黄斑変性の特殊型:ポリープ状脈絡膜血管症(PCV),網膜内血管腫状増殖(RAP)(文献1より転載)図1萎縮型AMDの眼底写真黄斑部に円形の境界鮮明なRPEの地図状萎縮(GA)を認める().周囲にドルーゼンを多数認める(◯で囲んだ範囲).表2萎縮型加齢黄斑変性の診断基準(2015年)(文献3より転載)図2萎縮型AMDの造影写真(図1の症例)a:FA(後期).GAの領域は境界鮮明なwindowdefectによる過蛍光を示す().b:IA(晩期).GAの領域は脈絡膜毛細血管の閉塞による低蛍光を示し(),脈絡膜中大血管を透見できる().図3萎縮型AMDのOCT(図1の症例)GAの領域のRPEや網膜外層の菲薄化,ellipsoidzone,interdigitationzone,外境界膜が消失している(に挟まれた範囲).GA領域の脈絡膜や強膜の信号が,RPEの萎縮による撮影光の深部への透過性亢進の結果,増強している(※印).図4萎縮型AMDのFAFGAの領域は周囲との境界鮮明な低蛍光として観察される.bはaを撮影してから1年半後の写真であるが,低蛍光の範囲が拡大している.GAの経過観察に有用な検査といえる.-

加齢黄斑変性に対する新しい疾患概念-Pachychoroid Spectrum Disease

2019年2月28日 木曜日

加齢黄斑変性に対する新しい疾患概念─PachychoroidSpectrumDiseaseNewConceptofAge-relatedMacularDegeneration─PachychoroidSpectrumDisease川野純廣*園田祥三*はじめに加齢黄斑変性(age-relatedmaculardegeneration:AMD)やその関連疾患の診断の際には,必ず脈絡膜構造に注目し,その形態を解析することで,的確な診断や治療法の決定に有用な情報が得られる.I脈絡膜観察・解析の重要性従来のAMDの研究では,蛍光眼底造影検査やOCTBスキャン,とくに網膜色素上皮細胞(retinalpigmentepithelium:RPE)周囲を中心とする脈絡膜新生血管(choroidalneovascularization:CNV)に注目した解析に基づいた1型,2型のCNVの分類,典型AMD,ポリープ状脈絡膜血管症(polypoidalchoroidalvasculopa-thy:PCV)や網膜内血管腫状増殖(retinalangiomatousproliferation:RAP)といった病型分類が行われている.これまで多くの研究が行われてきたが,従来分類では病型を完全に定義できておらず,依然として分類に関する議論が続いている.その後enhanceddepthimagingOCTやsweptsourceOCTの登場によって,生体の脈絡膜が観察可能になり,AMD研究における脈絡膜観察の重要性が示されている.生体脈絡膜が観察できるようになると,まず厚みの観察が行われ,中心性漿液性脈絡網膜症(centralserouschorioretinopathy:CSC)やPCVにおいて,脈絡膜厚が増加していることが報告された.筆者らは,厚みのみでなく,脈絡膜の構造変化に注目し,血管腔や間質を分けて解析できる二階調化の手法や,血管形態に基づく脈絡膜の層別の解析を行った結果1),とくにCSCやPCVでは脈絡膜大血管(Haller層)の拡張および脈絡膜内層(脈絡膜毛細血管板とSattler層)の狭小化や血管腔面積比率の低下などから,脈絡膜構造の変化と病態メカニズムについて報告を行った2)(図1).これらの報告と相まって,Freundらはpachychoroidspectrumdiseaseという新しい疾患概念を報告し,注目を集めている.なぜならば,この概念は脈絡膜の形態的な特徴に加え,発病のメカニズムをあらわしている可能性があり,これまでのAMDの病型分類や治療を大きく転換するかもしれないからである.本稿では,pachy-choroidspectrumdiseaseの概要を示すとともに,筆者の行っている研究について紹介する.IIPachychoroidspectrumdiseaseと現状の問題点Pachychoroidspectrumdiseaseの現在の定義は,中心窩脈絡膜厚が200~250μmを超え,Haller層血管の拡張を認め,造影検査で脈絡膜血管透過性の亢進所見を認め,RPEの異常を伴い,比較的眼底にドルーゼンが少ないという特徴を有するものとされている3).そもそも,pachychoroidは脈絡膜厚が正常を超えて拡大している状態を表現しており,これまでの解析によって,pachychoroidはHaller層の脈絡膜血管が拡張した状態(pachyvessels)によって引き起こされていると*SumihiroKawano&*ShozoSonoda:鹿児島大学大学院医歯学総合研究科感覚器病学眼科学〔別刷請求先〕川野純廣:〒890-8520鹿児島市桜ヶ丘8-35-1鹿児島大学大学院医歯学総合研究科感覚器病学眼科学0910-1810/19/\100/頁/JCOPY(21)151図1過去に筆者らが行ってきた画像解析a:OCTBスキャン画像.b:OCTBスキャンで二階調化処理を行うことで,実質と管腔を分離し解析可能とした.c:正常眼(CTRL),中心性漿液性脈絡網膜症眼(CSC),CSCの僚眼(csc-fellow)を比較したもの.CSC発症眼のみ脈絡膜内層(点線上部)の管腔面積が減少している.図2正常人の脈絡膜各層のenface画像a:脈絡膜毛細血管板のenface画像.b:Sattler層のenface画像.c:Haller層のenface画像,脈絡膜の深さの違いによって血管構造の違いがわかる.Enface画像はBスキャンと異なり,広い範囲の観察が可能である.図3Pachychoroidpigmentepitheliopathy(PPE)の代表症例a:図1の眼底写真.オレンジの色調である.b:インドシアニングリーン蛍光造影検査(IA)後期での画像.血管透過性亢進を認める.図4Pachychoroidpigmentepitheliopathy(PPE)の代表症例(続き)a:OCTBスキャン画像に血流信号を表示させたもの.赤点線で区切られた範囲についてCenface画像として表示させることができる.網膜色素上皮.離(pigmentepithelialdetachment:PED)を認め,PED直下にはCHaller血管の拡張があるが,Sattler層の血管の圧排までは起きていない.Cb:の箇所がCaでのCPEDに相当する箇所で,aの赤点線範囲内では新生血管を疑う血流信号を認めない.Cc:同症例で脈絡膜血管層に赤点線範囲を移動したもの.Cd:bのに一致する箇所でCHaller血管の拡張を認める.図5PNVの代表症例a:OCTのCIR画像.Cb:aでの緑矢印に沿った位置でのCOCTBスキャン画像.網膜色素上皮.離(PED)を認め,その直下に脈絡膜血管の拡張が起きている.Sattler層は圧排されている.Cc:bのCPEDに一致させた範囲でのCenface画像.黄斑上鼻側に新生血管()を認める.Cd:同症例の眼底自発蛍光像.本症例ではCgravitationaltractsを認めない.すなわち,この症例は中心性漿液性脈絡網膜症(CSC)既往ではないということになる.図6Pachychoroidneovasculopathy(PNV)の代表症例a:OCTBスキャン画像に血流信号を表示させたもの.赤点線で区切られた範囲についてCenface画像として表示させることができる.ここでは網膜色素上皮.離(PED)に赤点線範囲を合わせている.Cb:aの赤点線範囲のCenface画像.PED内に新生血管を認める.Cc:赤点線範囲を脈絡膜血管層にあわせたもの.Cd:cの赤点線範囲内のCenface画像.Haller血管がびまん性に非常に拡張している様子が観察される.図7Pachychoroidspectrumdiseaseと正常人とのHaller血管のenface画像の比較a:正常人のCHaller血管.Cb~d:PachychoroidspectrumdiseaseのCHaller血管,Haller血管が一部あるいは全体的に拡張がみられ,血管の上下対称性が失われている.図8筆者らが開発した脈絡膜enface画像解析ソフト筆者らの独自に開発した解析ソフトによってCHaller層の脈絡膜構造について血管の形態や,走行を再現性が高くかつ客観的に数値化可能になった.-

OCT Angiographyを用いた新しい加齢黄斑変性の診断

2019年2月28日 木曜日

OCTAngiographyを用いた新しい加齢黄斑変性の診断OCTAngiographyinAge-relatedMacularDegeneration森隆三郎*はじめにこれまで,脈絡膜新生血管(choroidalneovascular-ization:CNV)を伴う滲出型加齢黄斑変性(age-relatedmaculardegeneration:AMD)の診断や治療後の評価には,光干渉断層計(opticalcoherencetomography:OCT)のみでは不十分な症例も多いため,フルオレセイン蛍光造影(.uoresceinangiography:FA)やインドシアニングリーン蛍光造影(indocyaninegreenangiogra-phy:IA)を施行してきた.しかし,新しい機器である光干渉断層血管撮影(opticalcoherencetomographyangiography:OCTA)を用いることにより,FA,IAと同等の所見が描出でき,症例によってはFAやIAで検出できないCNVも検出できるようになった.また,造影剤を使用しないOCTAは全身的なリスクがないことから,高齢者に多い疾患であるAMDの診断における有用性に多大の期待がよせられている.本稿では,OCTAのAMDの診断についてRTVueXRAvanti(Optovue社)で撮影された画像を提示し解説する.IAMD診断におけるOCTAの有用性AMD診断におけるOCTAの有用性は,CNVの検出率が高いことにある.OCTAによるCNVの検出率についての海外での報告がいくつかあるが,わが国でも多施設で検討したものを野崎らが報告している1).その報告では,FAおよびIAとOCTAの有用性を比較しているが,滲出型AMD33眼のCNVの検出率はFA87.9%,IA84.9%,OCTA96.8%で,病変検出率に有意な差はなく,造影剤を用いずにCNVの観察が可能なOCTAはAMDの診療に有用であると述べている.つぎにOCTAの有用性として求められるのは,CNVの正確な大きさ,網膜色素上皮(retinalpigmentepithelium:RPE)の上下どの深さに存在するか(RPEより下にCNVが存在するtype1CNVか,RPEより上にCNVが存在するtype2CNVか)などCNVの状態を判定できることである.さらに,再治療の判定をOCTAで検出されたCNVの所見で判定できることである.OCTAは臨床で利用され,その有用性について報告されているが,実際にはFAやIAほど鮮明な画像が得られない場合もあり,またさまざまなアーチファクトにより,所見の読影や解釈に注意しなければならないことも報告されている2).CNVの存在の有無については,自動層別解析で得られる画像で簡便に確認できるが,CNVの大きさや位置の深さについては,マニュアル解析で詳細に確認する必要がある.II自動層別解析OCTAの強みは層別解析であるが,自動層別解析はsuper.cial層(表層),deep層(深層),outerretina層(網膜外層),choroidcapillary層(脈絡毛細血管板層)の4層のそれぞれの画像が自動に表示されるが,AMDのCNVの有無は,outerretina層とchoroidcapillary層で判定する.RTVueXRAvantiでは,解析ソフトの*RyusaburoMori:日本大学医学部視覚科学系眼科学分野〔別刷請求先〕森隆三郎:〒101-8309東京都千代田区神田駿河台1-6日本大学病院眼科0910-1810/19/\100/頁/JCOPY(11)141バージョンアップによりセグメンテーションラインの部位が変更されているが,outerretina層の画像は,外網状層(outerplexiformlayer:OPL)下部10μm.Bruch膜上部10μmの範囲となっている〔以前の同機種のセグメンテーションライン:内網状層(innerplexiformlayer:IPL)70μm.RPE30μmの範囲〕.Outerretina層は,正常眼では網膜血管が存在しないため血管が描出されればRPEから網膜側に隆起したCNVの存在が示唆されるが,下縁がBruch膜上部10μmまでの範囲で,RPEより上にCNVが存在するtype2CNVだけでなく,RPEより下にCNVが存在するtype1CNVも描出される.つまり,自動層別解析のouterretina層の画像は,CNVの有無を確認するためにある.Choroidcapillary層はBruch膜上部10μm.下部30μmの範囲となっているが(以前の当機種のセグメンテーションライン:RPE膜30.60μmの範囲),RPEよりやや深い部分に存在するtype1CNVやポリープ状脈絡膜血管症(polyp-oidalchoroidalvasculopathy:PCV)の異常血管網が検出される.症例1はPCVである(図1~3).カラー眼底写真の橙赤色隆起病巣とOCTのRPEの急峻な立ち上がりの所見からPCVと診断後,自動層別解析のouterretina層とchoroidcapillary層でポリープと異常血管網を確認している.ポリープは網膜下に突出しているためouterretina層で検出されている.異常血管網はouterretina層でも検出されているが,choroidcapillary層でBruch膜レベルのやや深部でより鮮明に検出されている.IA画像と比較してもポリープと異常血管網はほぼ同様の位置と大きさである.OCTAでは,PCVの異常血管網は平坦で検出しやすいのに対し,複数存在するポリープは大きさや深さがさまざまで,IAと比較してOCTAでは検出が困難な症例もあるが,OCTAのソフトの改良が進むにつれ,検出ができないポリープは少なくなってきていると思われる.症例2は,pachychoroidalneovasculopathy(PNV)である(図4,5).カラー眼底写真で黄斑部に漿液性網膜.離(serousretinaldetachment:SRD),黄斑部下方に長期に遷延化したSRDが存在したことを示唆するteardrop様のRPE萎縮であるdescendingtractの所見を認め,慢性中心性漿液性脈絡網膜症(centralserouschorioretinopathy:CSC)と診断したが,OCTでSRDと脈絡膜の肥厚はCSCの所見であり,RPEの丈の低い不整な隆起は,type1CNVを示唆する所見でもある.FAとIAで面状の過蛍光を認めるもCNVの存在が確定できず,OCTAの自動層別解析のouterretina層とchoroidcapillary層でCNVの血管構造が検出されたことからPNVと確定診断した.CNVは網膜下に扁平に突出しているため,outerretina層で検出されるが,choroidcapillary層でより鮮明に検出される場合は,RPE直下よりもBruch膜レベルのやや深部にCNVが大きく位置していることを示唆している.PNVは近年,提唱された疾患で,OCTAによりCNVの存在がFAとIAよりも鮮明に検出され,CSCとの鑑別に必須の検査となっている.筆者は,これまでは次項に記すマニュアル解析でOCTAを読影することの重要性を解説してきたが3,4),ソフトを含めOCTAの性能が進歩しているので,自動層別解析の画像のみでも簡便にさらに正確にCNVを診断できると考える.IIIマニュアル解析OCTAのマニュアル解析は,得られた画像を読影する際に,血流を示した赤色部位を表示したBスキャンの画像(cross-sectionalOCTA5))を確認しながら,セグメンテーションの幅を任意に設定し,それを上下にずらし解析する手法である.Cross-sectionalOCTAの画像を確認することで,CNVがRPEより上の網膜下にあるのかRPEの下にあるのかを証明できる6).さらにprojectionartifactによる偽血管の有無を確認できる(projectionartifactは,網膜内層血管がそれより深層に影となって映り込む現象で,実際にはその層には存在しない血管を描出してしまうので読影を困難にさせるアーチファクトの一つである2)).セグメンテーションの幅を任意に設定することにより,たとえばスキャン幅を大きくすることにより,部位により深さが異なるCNVでも全体像を描出でき,またそれを上下にずらすことで,その部位のCNVの構造をより鮮明に解析できる.症例3は,subretinalhyperre.ectivematerial142あたらしい眼科Vol.36,No.2,2019(12)図1症例1:ポリープ状脈絡膜血管症(PCV)a:カラー眼底写真.網膜下出血を伴う橙赤色隆起病巣を認める().b,c:OCT(①②).網膜下に出血とフィブリンの高反射病巣()とポリープ状病巣()を示唆するRPEの隆起病巣を認める.d:OCTA自動層別解析画像.③super.cial層,④deep層,⑤outerretina層,⑥cho-riocapillaris層.図2症例1:PCVのOCTA自動層別解析画像(ポリープと異常血管網)図1b⑤outerretina層,⑥choriocapillaris層(症例retina層.①:outera).1外網状(OPL)層下部10μm.Bruch膜上部10μmの範囲に検出される血管.ポリープは網膜下に突出しているためこの層でポリープと異常血管網の一部を認める.②OCT水平ライン,③OCT垂直ライン.はセグメンテーションの範囲.b:④choriocapillaris層.Bruch膜上部10μm.下部30μmの範囲に検出される血管.④異常血管網を認める,⑤OCT水平ライン,⑥OCT垂直ライン.はセグメンテーションの範囲.異常血管網はBruch膜レベルのやや深部でより鮮明に検出されている.図3症例1:PCVのOCTA(cross.sectionalOCTA)とIA(ポリープと異常血管網)OCTAとIAのポリープと異常血管網の所見が一致している.a:outerretina層.3個のポリープを認める().b:choriocapillaris層.異常血管網を認める().c:cross-sectionalOCTA.outerretina層の範囲にポリープの血流を認める().d:cross-sec-tionalOCTA.choriocapil-laris層の範囲に異常血管網の血流を認める().e,f,g:IA.e(24秒),f(46秒),g(10分).3個のポリープ()と異常血管網を認める().図4症例2:pachycho-roidalneovasculo-pathy(PNV)a:カラー眼底写真.黄斑部に漿液性網膜.離(SRD)を認め(),下方に慢性中心性漿液性脈絡網膜症を示唆するteardrop様の網膜色素上皮(RPE)萎縮であるdescendingtractを認める().b:OCT.SRD(※)とRPEの不整な隆起()を認める.脈絡膜は肥厚している().c:FA(10分).面状の過蛍光を認める().d:IA(10分).面状の過蛍光を認める().e:OCTA.自動層別解析画像,①super.cial層,②deep層,③outerRetina層,④choriocapillaris層.図5症例2:PNVのOCTA自動層別解析画像(図4b⑤outerretina層,⑥choriocapillaris層)a:outerretina層.OPL下部10μm.Bruch膜上部10μmの範囲に検出される血管.CNVは網膜下に扁平に突出しているためこの層で検出されている.①CNVの一部を認める,②OCT水平ライン,③OCT垂直ライン.はセグメンテーションの範囲.b:choriocapillaris層.Bruch膜上部10μm.下部30μmの範囲に検出される血管.④CNVを認める,⑤OCT水平ライン,⑥OCT垂直ライン.はセグメンテーションの範囲.RPE直下よりもBruch膜レベルのやや深部にCNVが大きく位置していることが示唆される.図6症例3:Subretinalhyperre.ectivematerial(SHRM)内のCNVOCTで認めるSHRMの深部のみがCNVであることがcross-sectionalOCTAで確認できる.a:カラー眼底写真.黄斑部に出血を伴う灰白色病巣を認める.b:OCT.網膜下にCNVとフィブリンを示唆する高反射病巣(SHRM)を認める().c:OCTA.マニュアル解析画像.dの2本のライン()のセグメンテーションの範囲にCNVの円形の血管網を認める.d:cross-sectionalOCTA.SHRM内のCNVの血流が確認ができる().OCTで認めるSHRMの深部のみがCNVである.e,f:FA.e(19秒),f(5分).ClassicCNVの所見を呈する.(SHRM)を伴うCtype2CNVである(図6).カラー眼底写真で黄斑部に出血を伴う灰白色病巣を認め,OCTで網膜下にCCNVとフィブリンを示唆する高反射病巣(SHRM),FAでCclassicCNVを認める.OCT,FAではCSHRM内のフイブリンとCCNVは一塊となり所見の分離はできないため,OCTAマニュアル解析をする.CCross-sectionalOCTAでCSHRM内の深部にCCNVの血流が確認できる.OCTAでCSHRM内のCCNVの血流が確認でき7),その血流を認める症例のほうが,抗血管内皮増殖因子(anti.vascularCendothelialCgrowthfactor:VEGF)であるアフリベルセプト硝子体内投与(intravit-reala.ibercept:IVA)に対する反応が弱いとする報告もある8).症例C4はCtype1+2CNVである(図7,8).OCTで網膜下CRPE上にCtype2CNV,RPE下にCtype1CNVを示唆する高反射病巣を認める.OCTA自動層別解析でCouterretina層で黄斑部にC3個のCCNVが検出されているが,それぞれの部位のCCNVのCRPEの対する位置は確認できないため,OCTAマニュアル解析をする.スキャンラインの水平ラインを移動させ,cross-sectionalOCTAで部位別のCCNVの深さを確認すると,中央部水平ラインでは網膜下CRPE上にCtype2CNVの血流が確認でき,RPE下にCtype1CNVの血流が確認できる.症例C5は,.brovascularPEDを伴うCtype1CNVである(図9,10).OCTで網膜色素上皮.離(pigmentCepithelialdetachment:PED)のCRPEの隆起の辺縁にCtype1CNVを示唆する高反射病巣を認める.OCTA自動層別解析でCouterretina層とCchoriocapillaris層でCNVが検出されているが,RPEの隆起が高いとCBruch膜を基準としたセグメンテーションラインが設定できずセグメンテーションエラーとなり,CNVがCRPE下に存在しているかが確認できないため,OCTAマニュアル解析をする.RPEを基準とし,任意で幅を設定したラインでセグメンテーションすることにより,隆起したRPE下のCCNVを確認できる.FibrovascularPEDのCNVはCIAで検出するが,IA画像と比較してもCCNVはほぼ同様の大きさである.PEDを伴うCCNVの検出は,cross-sectionalOCTAが有効であるとの報告もあるが5),これまで,.brovascularPEDのCCNVなどRPEの起伏が大きい症例のCCNVは,cross-sectionalOCTAを用いたマニュアル解析をしてもCRPEの起伏に合わせたセグメンテーションができず検出が困難であったが,RPEを基準とするセグメンテーションがより正確になれば,本症例のように検出が可能となる症例も多くなる.CIV治療効果の確認滲出型CAMDに対して抗CVEGF薬硝子体注射や光線力学療法(photodynamicCtherapy:PDT)が行われているが,その治療効果を確認するために,OCTAでCCNVの消失や縮小あるいは再発や拡大の判定をしている.しかし,CNVの残存,拡大が再治療を行うかどうかの判定所見にはなっていない.症例C1のCPCVに対してCIVA併用CPDTを施行し,ポリープと異常血管網の治療後の毎月の経過をCMultiCScanViewのソフトを用いてCouterretina層とCchorio-capillaris層で確認した(図11,12).治療前にCouterretina層で認めたポリープは,1カ月後には消失したが,4カ月で再発,5カ月で拡大,6カ月でさらに拡大している.筆者の施設での本治療の再治療基準は,OCTでSRDの悪化,再発を認めた場合にCIVAのみを施行するとしているため,このC6カ月のCSRD出現時点でCIVAを追加したが,翌月にポリープが消失したことが確認できる.また,choriocapillaris層で認めた異常血管網は,1カ月後には縮小したが,4カ月で拡大,6カ月でさらに拡大している.IVAにより翌月に異常血管網が縮小しているのが確認できる.本症例のように治療によりOCTで滲出性所見が消失しても,サイレントに病巣が再発,拡大していることもあり,このような所見を認めた場合に追加治療を行うかは今後の検討課題である.現状ではCOCTA所見で追加治療の有無の判定はできないが,このような症例を多数検討することにより,再治療の基準となるCOCTによる滲出性所見の出現時期の予想がCOCTA所見で可能になれば,過剰治療とならない程度のCproactiveな治療が可能となる.146あたらしい眼科Vol.36,No.2,2019(16)図7症例4:type1+2CNVa:カラー眼底写真.出血を伴う灰白色病巣()を認める.Cb,c:OCT(①②).網膜下CRPE上にCtype2CNVを示唆する高反射病巣()とRPE下にCtype1CNVを示唆するRPEの隆起()を認める.Cd:OCTA自動層別解析画像.③super.cial層,④Cdeep層,⑤Couterretina層,⑥Cchoriocap-illaris層,⑤Couterretina層で3個のCCNVが検出されているが(),CNVのRPEの対する位置は確認できない.⑥choriocapillaris層ではCCNVは上鼻側に広範囲に認める().図8症例4:type1+2CNV(図7のマニュアル解析)水平ラインを移動させ,Bスキャンで部位別のCNVの深さを確認する.Ca:OCTAマニュアル解析画像.bの2本のライン()のセグメンテーションの範囲にCNVの血管網を認める.Cb:CCross-sectionalOCTA.①の水平ラインでは網膜下CRPE上にCtype2CNVの血流が確認できる().Cc:OCTAマニュアル解析画像.dのC2本のライン()のセグメンテーションの範囲にCNVの血管網を認める.Cd:CCross-sectionalOCTA.②の水平ラインではRPE下にtype1CNVの血流が確認できる().分),C1(f秒),C65(e:FA.Cfe,Bスキャン.①の水平ラインはCclassicCNV()と②の水平ラインではCoccuCltCNV()の所分).広C01A(CI:Cg見を呈する.い範囲に面状の過蛍光を認める.図9症例5:FibrovascularPEDを伴うtype1CNVa:カラー眼底写真.灰白色病巣(),網膜色素上皮.離(PED)(),SRD()を認める.Cb:OCT.①網膜下に灰白色病巣に一致するフィブリン()とCtype1CNVを示唆するRPEの隆起(),SRD(※)を認める.Cc:OCT.C②CPEDに一致するCRPEの隆起の辺縁にCNVを示唆する高反射病巣()とCSRD(※)を認める.Cd:OCTA.自動層別解析画像.C③super.cial層,④Cdeep層,C⑤Couterretina層,⑥Cchorio-capillaris層.⑤CouterCretina層で灰白色病巣のCCNVが検出され,⑥choriocapillaris層でさらに広範囲にCCNVが検出されているが,隆起したCRPE下に存在しているかは確認しにくい.図10症例5:FibrovascularPED(図9のマニュアル解析)RPEを基準にしたラインでセグメンテーションすることにより隆起したRPE下のCNVを検出する.Ca:OCTAマニュアル解析画像.灰白色病巣と網膜色素上皮.離の部位に,bのC2本のラインのセグメンテーションの範囲にCCNVを認める(,).cのCIA早期よりCCNVの構造が鮮明に検出されている.Cb:CCross-sectionalOCTA.RPEを基準にCRPE下部C16μm()からCRPE下部C44μm()の範囲にマニュアルでセグメンテーションの範囲を設定.Cc:IA(23秒).FibrovascularPED内のCNVもaのCOCTA画像と同部位に検出されている().分).CNVのC01A(CI:Cd像全体,の過蛍光を認める.Ce:FA(10分).occultCNV(.brovascularPED)を認める.図11症例1:PCVに対するアフリベルセプト硝子体注射(IVA)併用光線力学的療法(PDT)ポリープの経過をCouterretina層で確認する.CMultiScanViewのソフトを用いてCouterretina層で描出されるポリープの治療後の変化を確認したところ,治療C1カ月でポリ―プは消失したが,4カ月で再発,5カ月で拡大,6カ月でさらに拡大している.この時点で,OCTでCSRDを確認したため,IVAを追加するとC7カ月でポリープが消失しているのが確認できた.図12症例1:PCVに対するIVA併用PDT異常血管網の経過をchoriocapillaris層で確認する.図C10と同様にCMultiScanViewのソフトを用いてCchoriocapil-laris層で描出される異常血管網の治療後の変化を確認したところ,治療1カ月で異常血管網は縮小したが,4カ月で拡大,6カ月でさらに拡大している.この時点でCIVAを追加するとC7カ月で異常血管網が縮小しているのが確認できた.-

加齢黄斑変性の疫学アップデート-久山町スタディ

2019年2月28日 木曜日

加齢黄斑変性の疫学アップデート─久山町スタディUpdatesontheEpidemiologyofAge-relatedMacularDegeneration:TheHisayamaStudy橋本左和子*安田美穂*はじめに加齢黄斑変性(age-relatedCmaculardegeneration:AMD)は欧米をはじめとした先進国において成人の失明や視力低下の主原因となっている.わが国においても高齢人口が急速に増加し,それに伴いCAMDが増加することが予想されている.欧米では数多くの一般住民を母集団とした研究(population-basedstudy)によるCAMDの有病率や発症率および危険因子に関する報告がある.わが国では,福岡県久山町の地域住民を対象に行われている久山町スタディにおいてCAMDのCpopulation-basedstudyが行われている.1998年から九州大学眼科学教室はこの久山町スタディに参加し,40歳以上の久山町全住民を対象に前向き追跡調査を行い,さまざまな眼科疾患の有病率,発症率および危険因子をC15年以上にわたり調査してきた.最近の久山町スタディの結果から明らかになったCAMDの疫学について概説する.CI久山町スタディ久山町スタディは福岡市東部に隣接する都市近郊型農村地域で行われている前向きコホート研究で,40歳以上の住民を対象に眼科疾患の疫学調査を現在進行中である.久山町の年齢別人口分布や職業構成および生活様式や疾病構造は全国統計と差異がなく,わが国の標準的なサンプル集団であるため,その結果は日本人一般集団の結果としてとらえることができる.また,人口移動の少ない地域であるため,長期にわたる追跡調査も可能となっている.CII加齢黄斑変性の国際分類Birdらは加齢に関連した黄斑の変化を加齢黄斑症(age-relatedCmaculopathy:ARM)としてまとめ,国際分類として提唱し,初期と後期に分けた1).初期加齢黄斑症(earlyCage-relatedCmaculopathy:earlyARM)とは,ドルーゼンや網膜色素上皮の色素異常(hyperpig-mentation,hypopigmentation)などがみられるもので,後期加齢黄斑症(lateage-relatedCmaculopathy:lateARM)がいわゆるCAMDをさす.CLateARMは,脈絡膜新生血管が関与する滲出型と,脈絡膜新生血管が関与せず網膜色素上皮や脈絡膜毛細血管の地図状萎縮病巣を認める萎縮型(dryAMD)に分類される.滲出型の定義は,網膜色素上皮.離,網膜下および網膜色素上皮下新生血管,網膜上・網膜内・網膜下および色素上皮下にフィブリン様増殖組織の沈着,網膜下出血,硬性滲出物などのいずれかを伴うものとされている.萎縮型(dryAMD)の定義は,脈絡膜血管の透見できる円形および楕円形の網膜色素上皮の低色素および無色素および欠損部位で,少なくともC175Cμm以上の直径をもつもの(30oあるいはC35oの眼底写真において)とされている(図1).一方,PCVは後期CARMの滲出型のうち,眼底写真あるいは蛍光眼底造影検査,インドシアニングリーン色素検査にて黄斑部の橙色隆起病変がみられるもので,網*SawakoHashimoto&*MihoYasuda:九州大学大学院医学研究院眼科学分野〔別刷請求先〕橋本左和子:〒812-8582福岡市東区馬出C3-1-1九州大学大学院医学研究院眼科学分野C0910-1810/19/\100/頁/JCOPY(1)135(5)C1351.初期加齢黄斑症age-relatedmaculopathy(earlyARM)ドルーゼン網膜色素上皮の色素異常2.後期加齢黄斑症age-relatedmaculopathy(lateARM)滲出型萎縮型図1加齢黄斑変性の国際分類(文献C1より引用)図2ポリープ状脈絡膜血管症(PCV)(%)15.013.6**p<0.0512.6(fortrend)10.0■1998年■2007年■2012年5.01.21.5*0.60.10.10.10.0初期ARM後期ARM図3加齢黄斑変性の有病率の推移(1998年,2007年,2012年)図4初期加齢黄斑変性の年齢階級別有病率の推移(%)2.521.510.50後期ARM(滲出型と萎縮型)図6後期加齢黄斑変性の性別有病率の推移表1後期ARM(AMD)の病型別有病率(%)図5後期加齢黄斑変性の年齢階級別有病率の推移男性(%)女性(%)計(%)後期CARM1)滲出型*C1.3*C0.5C0.82)萎縮型C0.09C0.0C0.04*滲出型の特殊型①CPCVC0.7*C0.1C0.4②網膜内血管腫状増殖C0.0C0.0C0.0C2.2*C0.6C1.2久山町男女C2,667名,50歳以上,2007年.*p<0.05(男性vs女性)図7PCVの年齢階級別有病率の推移久山町男女C2,667名,50歳以上,2007年.-

序説:完全マスター加齢黄斑変性アップデート 2019

2019年2月28日 木曜日

完全マスター加齢黄斑変性アップデート2019AdvancesinDiagnosisandTreatmentofAge-relatedMacularDegeneration2019大島裕司*石橋達朗**滲出型加齢黄斑変性(age-relatedCmaculardegeneration:AMD)の治療は劇的に変化し,視力維持が可能となる症例も少なくなくなった.しかし,現在でも成人の中途失明の主要疾患であり,身体障害者視覚障害の原因疾患の第C4位である1).患者数は世界的に増加傾向であり,Wongらは一般住民を対象とした有病率のメタアナリシスから,2020年には全世界でC1億C9,600万人に,2040年にはC2億C8,800万人に増加すると試算し,とくにアジア圏ではC2040年にはC1億C1,300万人ともっとも増加すると予想している2).わが国におけるCAMDの有病率もC1.2%と増加しており,滲出型CAMDの特殊型であるポリープ状脈絡膜血管症(polypoidalCchoroidalvasculopathy:PCV)の有病率もC0.4%と報告され,今後ますます増加することが予想されている3).滲出型CAMDの病型は,典型CAMDと特殊型としてCPCVおよび網膜内血管腫状増殖(retinalCangio-matousproliferation:RAP)に分類されるが,近年,OCTの発達により脈絡膜に注目したCpachy-choroidCspectrumdiseaseという新しい概念が登場している.厚い脈絡膜(pachychoroid)もしくはpachyvesselといわれる厚い脈絡膜血管の存在下に網膜色素上皮障害を伴った一連の疾患群である.網膜色素上皮障害だけを伴い,漿液性網膜.離を認めないものをCpachychoroidCpigmentCepitheliopathyとよび,漿液性網膜.離を伴えば,中心性漿液性脈絡網膜症(centralCserouschorioretinopathy:CSC),脈絡膜新生血管を伴えばCpachychoroidCchoroidalneovasculopathyとなる.PCVの一部もこの疾患群に含まれると考えられている.このように診断機器の進歩により新しい病態の概念が登場している4,5).また近年,OCTを用いて血管を描出する光干渉断層血管撮影(OCTangiography:OCTA)が可能となり,非侵襲的にCCNVの描出が可能となった.症例にもよるが,造影検査を頻回に行わなくても病態の観察や治療効果判定が可能となった.滲出型CAMDの治療に関しては,抗血管内皮増殖因子(vascularCendothelialCgrowthfactor:VEGF)療法が主流であることはいうまでもない.数々の大規模臨床試験が示すように,短期的には視力の改善維持が得られることが知られている6.8).しかし,実臨床において必要時投与に代表されるCPRN(proCrenata)治療を行うと導入期に得られた視力を維持することができず,長期的にはベースラインより視力が低下してしまうことも少なくないことが示され,長期にわたる視力維持のむずかしさが示された9).そこで,近年はCtreatandextend(TAE)に代表さ*YujiOshima:福岡大学筑紫病院眼科**TatsuroIshibashi:九州大学C0910-1810/19/\100/頁/JCOPY(1)C131れるプロアクティブ治療が多くの施設で導入され,導入期に獲得した視力をできるだけ維持できるよう治療が行われている.しかしその一方で,いつまで治療を行うのか,ということも問題となってきている.また,長期的な視力を考えるうえで新たな問題となっているのは,黄斑萎縮(macularatrophy:MA)である.長期視力予後とCMAの関連が認められており,できるだけCMAを小さくすることが良好な視力を保つためには不可欠である10).滲出型CAMDの特殊型の一つであるCPCVに対しては,アフリベルセプトの有用性11)や光線力学療法(photodynamicCtherapy:PDT)と抗CVEGF薬併用の有効性が見直されている.アフリベルセプト単独療法でのポリープ退縮率は高く,黄斑ドライ率も高率で,良好な治療成績が発表されている.また,PDTと抗CVEGF併用療法は,高率なポリープ閉塞率が得られ治療成績がよいというだけでなく,治療回数を減らすことができるという利点も示されている12).しかし,長期的には併用による黄斑萎縮の拡大や治療回数も単独療法と変わらなくなるという報告もみられ,今後さらなる長期的検討が必要である13).本特集「完全マスター加齢黄斑変性アップデート2019」では,最近の新しいデータや概念に基づいた加齢黄斑変性の診断,治療,予防について,広く一般臨床医にも役立てていただけるようスペシャリストの先生方にご執筆をお願いした.まず橋本左和子先生と安田美穂先生に久山町スタディのデータを中心に疫学データをまとめていただいた.現在のホットトピックスであるCOCTAを用いたCAMDの診断について森隆三郎先生に解説いただいた.脈絡膜に注目した新しい疾患概念であるCpachycho-roidCspectrumdiseasesについて川野純廣先生と園田祥三先生にまとめていただき,わが国では有病率は低いが,AMDのもう一つのタイプである萎縮型AMDについて,2015年にワーキンググループによって作成された診断基準を中心に永井由巳先生にわかりやすく解説していただいた.長期経過を考えた治療については病型別に執筆をお願いした.典型AMDについては山本亜希子先生に,網膜内血管腫状増殖(retinalangiomatousCproliferation:RAP)については松本英孝先生に執筆をお願いした.PCVに関しては,PDT併用の有無で二人の先生に解説していただいた.抗CVEGF単独療法について玉城環先生と古泉英貴先生に,抗CVEGF薬併用PDTについて本田茂先生に解説いただいた.従来よりCAMDは遺伝子多型との関連が知られているが,最近の知見に関して,秋山雅人先生にまとめていただいた.滲出型CAMDに対しては治療が可能となったが,現在でも完治できる疾患ではなく,視力障害を残さないためにはやはり予防が大切である.その加齢黄斑変性の予防に関して安川力先生に解説いただいた.今後の治療について,現在治験中,開発中のものを含めて片岡恵子先生に執筆していただいた.抗CVEGF療法登場後,滲出型CAMDは治療不可能な疾患から治療可能な,そして視力維持可能な疾患となった.しかし,いまだに根治は不可能で視力障害の重要な原因疾患である.本特集を通じて長期視力維持を目標とした治療や新しい概念,知見をご理解いただき,患者の見える喜びをいつまでもお手伝いできるよう,明日の診療の一助となれば幸いである.文献1)WakoCR,CYasukawaCT,CKatoCACetal:CausesCandCpreva-lenceofvisualimpairmentinJapan.NihonGankaGakkaiZasshiC118:495-501,C20142)WongCWL,CSuCX,CLiCXCetal:GlobalCprevalenceCofCage-relatedCmacularCdegenerationCandCdiseaseCburdenCprojec-tionCforC2020Cand2040:aCsystematicCreviewCandCmeta-analysis.LancetGlobHealthC2:e106-e116,C20143)FujiwaraK,YasudaM,HataJetal:Prevalenceandrisk132あたらしい眼科Vol.36,No.2,2019(2)–