392.低加入度数分節眼内レンズ大鹿哲郎筑波大学医学医療系眼科「レンティスコンフォート」の基礎レンティスコンフォートは+1.5Dの加入度数を有する屈折型の2焦点眼内レンズで,遠方から中間距離まで焦点が合うよう設計されている.その設計上の特徴から,ハロー/グレアといった不快な光学現象が生じにくく,またコントラスト感度の低下もほとんどみられない.広い明視域をもちながら不具合が少なく,保険診療の枠内で単焦点眼内レンズと同じ感覚で使用できる新しいタイプの眼内レンズであり,大きな注目を集めている.遠用ゾーン後面中間用ゾーン(+1.5D)前面図2光学デザイン遠用ゾーンと中間用ゾーンが非対称・扇形に配置されている.図3エッジデザイン360oスクエアエッジとなっている.●はじめに近年,遠近二つの焦点をもつ従来の多焦点眼内レンズとは異なったコンセプトの眼内レンズが,市場に登場してきている.低加入度数分節眼内レンズ「レンティスコンフォート」(参天製薬)もその一つで,+1.5Dの差がある二つの光学部をasymmetricな扇状に配した独自の形状を有するレンズである(図1).先進医療の枠組みではなく,保険診療で使用できる.●デザインの特徴二つの異なる度数の単焦点レンズを繋ぎ合わせたような光学デザイン(dualmonofocaldesign)となっている(図2).このことから分節型(segmented)とよばれている.従来の多焦点眼内レンズが同心円状のデザインであったのに対して,非対称の配置となっているところが特徴的である.瞳孔径によって遠用/中間用ゾーンの面積比率が大きく変わらないため,遠中の見え方のバランスは瞳孔径に影響されにくい.後発白内障を抑制するために,周辺部は360oスクエアエッジ(シャープエッジ)となっている(図3).図1低加入度数分節眼内レンズ「レンティスコンフォート」●光学的特徴+1.5Dの加入であり,遠方と中間距離に焦点が合うというのがコンセプトである.焦点深度曲線をみると,遠方を中心になだらかな曲線を描いており,明視域が広いことがよくわかる(図4)1).裸眼視力0.8で区切ると,眼前67cmまでその視力が得られることになる(図5).裸眼視力0.5ならば,眼前45cmまでその視力が得られる(図6).光学部の形状は非球面設計で,球面収差は0μlとなっている(aberrationneutral).光学部素材のAbbe数は57と高く,色収差の低減が図られている.●光学的不具合の少なさ従来の同心円状の屈折型や回折型の多焦点眼内レンズと異なり,二つの度数の移行部分が1本のラインとなり最少面積である.しかも移行部の境目が確認しにくいほど滑らかであることから(図7),光エネルギーのロスが抑制されている.また,空間周波数特性(modulationtransferfunction:MTF)曲線をみると,二つの焦点の山の間隔が狭く,その間の谷が浅いことも特徴である(図8).これらが相まって,ハロー/グレアがきわめて少なく,コントラスト感度の低下も起こしにくいレンズとなっている.ハロー/グレアは従来の多焦点眼内レン(69)あたらしい眼科Vol.36,No.7,20199070910-1810/19/\100/頁/JCOPY-0.4-0.2-0.200.20.40.4VisualAcuity(logMAR)0.60.811.21.40.60.811.21.4+2+1.5+1+0.50-0.5-1-1.5-2-2.5-3-3.5-4-4.5-5+2+1.5+1+0.50-0.5-1-1.5-2-2.5-3-3.5-4-4.5-5Defocus(diopters)Defocus(diopters)図4焦点深度曲線図5裸眼視力0.8が得られる範囲(文献1より引用)眼前67cmまで0.8の裸眼視力が得られている.+2+1.5+1+0.50-0.5-1-1.5-2-2.5-3-3.5-4-4.5-5Defocus(diopters)図6裸眼視力0.5が得られる範囲眼前45cmまで0.5の裸眼視力が得られている.図7挿入眼の前眼部写真二つの度数の移行部が見てわからないほど滑らかである.ズよりはるかに少なく,単焦点眼内レンズと同程度である1).コントラスト感度は,年齢をマッチさせた正常有水晶体眼と差のない値である1).●おわりに独自のテクノロジーによって低加入度数を分節させた従来の遠近眼内レンズレンティスコンフォート解像力解像力遠方中間近方遠方中間近方図8MTF曲線従来の遠近2焦点眼内レンズに比べて,二つの焦点の山の間隔が狭く,谷が浅い.レンティスコンフォートは,遠方から中間距離まで連続的な明視域を提供する一方で,光学的不快現象が従来の多焦点眼内レンズよりはるかに少なく,単焦点眼内レンズと同程度といった特徴を有する.明視域の拡大と光学的不快現象は,これまでトレードオフと考えられていたが,本レンズはそのジレンマを払拭した新しいカテゴリーの眼内レンズとして,臨床への貢献が大いに期待される.文献1)OshikaT,AraiH,FujitaYetal:One-yearclinicalevalu-ationofrotationallyasymmetricmultifocalintraocularlenswith+1.5dioptersnearaddition.SciRep,inpress