監修=木下茂●連載226大橋裕一坪田一男226.SMILE後の追加矯正手術中村友昭名古屋アイクリニックフェムトセカンドレーザーのみで屈折矯正を行うCSMILEは,術後の近視への戻りが少なく,LASIKに比べ追加矯正を必要とする頻度は低いが,追加矯正が困難なことがデメリットでもある.さまざまな追加矯正法がなされているが,それぞれ得失があり,新たな方法も開発中である.●はじめにSMILE(smallCincisionCfemtosecondClenticuleCextrac-tion)はCCarlZeissMeditec社(以下,CZM社)がC2010年に開発した,フェムトセカンドレーザー(以下,FSレーザー)VisuMaxのみで屈折矯正手術を行う新技術である.角膜を光切断し,最小C2Cmmの切開創からレンチクルを抜去して屈折矯正を行う1)(図1).SMILEにはドライアイになりにくい,外力に対して強いなどのメリットがあげられるが,さらに屈折が長期に渡って安定していることもそのひとつである.そのためCSMILEは術後の近視への戻りが少なく,屈折誤差への許容度があるためか,ほとんど追加矯正する必要がない.海外での報告でも追加になった症例はC1.3%と一般にC5.10%といわれるレーシックに比べて少ない.ただし,追加矯正が困難であることがCSMILEのデメリットになっている.今回,さまざまな追加矯正法について述べる.C●SMILE後の追加矯正施行された順に,以下のものがあげられる.それぞれ得失があり(表1),どれを選択するかは術者の考えでよいと思われる(表2).①CPRK:もっとも簡便で安全であるものはCPRKやClaser-assistedsub-epithelialCkeratectomy(LASEK)などのCsurfaceablationであろう.SMILEのCcap内で矯正することができ,いわゆるフラップを作らないという意味からも,ドライアイになりにくく外力に強いなどのCSMILEのメリットが維持される.ただし,視力回復の遅さや,術後の痛みなどのCPRKの従来の課題点は残される2).②CLASIK:Capの深さを基にフラップの厚みを設定し,FSレーザーにてフラップを作製して,エキシマレーザーを照射する.SMILEの切断面とフラップの断端が干渉しないよう,フラップの厚み,サイズとヒンジの位置を決める必要がある.Capのなかで薄いフラップを作製しレーザーを行うCthin-.apLASIKや,capの厚みに合わせたフラップを作るCthick-.apCLASIKが提案されている.その設定はやや難易度が高く,若干のリスクを伴うことが報告されている.これによりLASIKの術後と同様となり,SMILEの本来の利点がなくなる.③CCircle:最近ではCCIRCLEというプログラムで,ドーナッツ状に周辺を切開し,LASIK様のフラップを作製することにより簡便に追加矯正を行うことができるようになった(図2,3).Capとフラップの厚みに気を払う必要がないので,より安全にCLASIKにコンバートできる方法といえる.ヒンジの位置は通常,SMILEのサイドカットと干渉しないよう,やや時計方向へ振った上方に作製する.結果的にはCLASIKに表1追加矯正法の比較PRK/LASEK低侵襲の維持回復に時間を要す高いFs-LASIK回復時間が短い低侵襲でなくなる中等度低侵襲乱視だけCLRIレーザーが不要予測性に乏しい低い図1SMILEの模式図フェムトセカンドレーザーにより光切断した角膜実質(レンチクル)を最小C2Cmmの切開創から抜き取る.CIRCLE回復時間が短い低侵襲でなくなる高いSubCap-LE低侵襲の維持難易度が高い高いLRI:limbalrelaxingincision.(69)あたらしい眼科Vol.36,No.3,2019C3710910-1810/19/\100/頁/JCOPY表2過去の報告著者方法例数観察期間術前CSE術後CSE術後裸眼2段階低下安全係数有効係数CSiedlecki2)CPRKC433カ月-0.86±0.43C0.03±0.57C0.08±0.15C0C1.06C0.90CReinsteinCLASIKC1003カ月-0.04±0.99C0.19±0.4695%1.0以上C0CNRCNRCSiedlecki3)CCIRCLEC223カ月-0.51±1.08C0.18±0.31C0.03±0.07C0C1.03C0.97CDonate4)CSubCap-LEC13カ月-1.5C0.125C20/16C0C─C─CCIRCLEの切断端SMILEの切断端3=Capを拡大1=SMILEcap~3カ月4=Flapサイドカット2=SMILEサイドカット5=Flapヒンジ5図2CIRCLEの模式図なってしまうが,より安全に行え,PRKと違い痛みが少なく視力の回復が早いので,今後もっとも普及する方法と思われる3).C④CSubCap-LE:SMILEのメリットを最大に活かした追加矯正は,やはりCcap下に追加分だけ再度レンチクルを作製し,それを元の小切開創から抜き取ることであろう.ただし,通常,追加矯正の度数は小さく,そのためレンチクルは薄くなり,正確にその度数で作製できるかなど,難易度の高い技術といえる.限られた施設での臨床治験が始まっている4).C●自院でのデータ名古屋アイクリニックにてCSMILEを施行した症例のうち,追加矯正手術となったのはC10名C16眼で,全症例C1,046眼中C1.5%と海外での報告と同様であった.追加症例の術前平均等価球面度数は-6.70±1.87Dと全症例の平均等価球面度数-4.5Dより高く,過去の報告5)にあるようにやや高度の近視症例に追加が必要となった.追加矯正前の平均等価球面度数は-0.73±0.96D(-1.5.+1.5D)で,その内訳は近視C13眼(うちC2眼は軽度近視狙いで術後正視希望),遠視C3眼であった.追加矯正の方法はLASEK4眼,PRK8眼,Circle3眼,CLASIK1眼であった.追加後C3カ月で平均等価球面度数は-0.07±0.87Dへとほぼ正視となり,平均裸眼視力も術前C0.56からC1.19へと改善した.術中,術後合併症はなく,矯正視力はC2段階以上低下するものはなかっC372あたらしい眼科Vol.36,No.3,2019ヒンジの長さ[mm]ヒンジ位置[°]た.PRKの症例で矯正が不足し,再々矯正となったものがC1例C2眼で,最終的には両眼裸眼視力C1.2に改善した.安全係数はC0.95C±0.22,有効係数はC0.73C±0.30と良好であった.C●おわりにSMILEは多くのメリットのある優れた技術である.デメリットである追加矯正のむずかしさも,今後さらに改善していくものと思われる.文献1)ShahR,ShahS,SenguptaS:Resultsofsmallincisionlen-ticuleextraction:all-in-oneCfemtosecondClaserCrefractiveCsurgery.JCCatractRefractSurgC37:127-137,C20112)SiedleckiCJ,CLuftCN,CKookCDCetal:EnhancementCafterCmyopicCsmallCincisionClenticuleextraction(SMILE)usingCsurfaceablation.JRefractSurgC33:513-518,C20173)SiedleckiCJ,CLuftCN,CKookCDCetal:CIRCLECenhancementCaftermyopicSMILE.JRefractSurgC34:304-309,C20184)DonateD,ThaeronR:PreliminaryevidenceofsuccessfulenhancementCafterCaCprimaryCSMILECprocedureCwithCtheCsub-cap-lenticule-extractionCtechnique.CJCRefractCSurgC31:708-710,C20155)LiuYC,RosmanM,MehtaJS:Enhancementaftersmall-incisionClenticuleextraction:incidence,CriskCfactors,CandCoutcomes.OphthalmologyC124:813-821,C2017(70)