●連載220監修=岩田和雄山本哲也220.OCTangiographyの基本鈴木克也野崎実穂名古屋市立大学大学院医学研究科視覚科学(眼科)OCTangiography(OCTA)は非侵襲的に網脈絡膜血管を描出できる検査法である.従来の蛍光眼底造影検査より短時間で実施でき,病変の三次元的な評価が可能である.さまざまな疾患の評価に有用であるが,造影剤の漏出は描出できず,造影検査と完全に一致するものではない.OCTAの特性を理解した正しい読影が肝要である.●OCTAの原理と特徴光干渉断層計(opticalCcoherencetomography:OCT)のスキャンスピード高速化や高解像度化が進み,さらに新たな技術として,造影剤を用いることなく非侵襲的に網脈絡膜血管を描出できる光干渉断層血管撮影(opticalcoherencetomographyCangiography:OCTA)が登場した.OCTAは同一部位のCBスキャン画像を複数回撮影し,その画像の差分から動きのあるシグナル(血流)を検出し,再構築し画像化(Cスキャン)している1).OCTAは検査時間も従来の造影検査より短時間で実施でき2),かつ非侵襲的な検査法であるため,頻回の検査も可能で,経時的な変化を評価することが容易にできる.また,従来の蛍光眼底造影検査で得られる画像は二次元であるが,OCTAは断層像に基づいて画像を再構成するため,網脈絡膜血管の層別解析が可能で,さらには立体的な構造を描出することができる.CRTVueCXRAvanti(Optovue社)では,黄斑部では網膜表層毛細血管層(super.cialCcapillaryCplexus),網膜深層毛細血管層(deepCcapillaryCplexus),網膜外層(outerretina),脈絡膜血管層(choroidcapillary)のC4層に自動的に分けて描出され(図1),病変の三次元的な評価が可能である.また,視神経乳頭部でも,視神経乳頭(nervehead),硝子体(vitreous),放射状視神経乳頭周囲毛細血管(radialperipapillaryCcapillaries),脈絡膜(choroid)のC4層に自動表示され(図2),網膜黄斑部や視神経乳頭周囲では血管密度を評価することもできる.図1RTVueXRAvantiを用いた正常人の黄斑部OCTA画像(3mm)三次元的な網脈絡膜血管構造をC4層に分離して描出することが可能である.図2RTVueXRAvantiを用いた正常人の視神経乳頭部OCTA画像(4.5mm)乳頭周囲の血管構造もC4層に分離して表示可能である.(77)あたらしい眼科Vol.35,No.10,2018C13890910-1810/18/\100/頁/JCOPY図3右眼加齢黄斑性の症例(65歳,男性)抗CVEGF薬の投与によりCOCT(Bスキャン)(c)では漿液性.離は消失しているが,OCTAではCouterretina(Ca),choroidcapillary(Cb)に脈絡膜新生血管が描出されている.図4左眼網膜静脈分枝閉塞症の症例(63歳,女性)OCTA(DRIOCTTriton)では,super.cialcapillaryplexus(Ca),deepcapillaryplexus(Cb)に閉塞部位の無灌流領域と毛細血管瘤を認める.フルオレセイン蛍光眼底造影像(Cc)と比較しても,病変の描出は鮮明である.C●現在のOCTAの限界OCTAは加齢黄斑変性における脈絡膜新生血管の描出や,糖尿病網膜症,網膜静脈閉塞症の毛細血管瘤や無灌流領域の評価には有用であり,病変検出率は従来の造影検査と比較し,同等か場合によってはCOCTAのほうが優れるとの報告もある2,3)(図3).しかし,OCTAはフルオレセイン蛍光眼底造影でみられる血管外への造影剤の漏出という所見は描出できず,血流速度が遅い血管も検出できないため,現状では従来の造影検査と完全に一致するものではない.一方,OCTAでは漏出所見が得られないため,従来の蛍光眼底造影と比べ,鮮明な毛細血管病変を描出できるという利点もある3)(図4).OCTAの登場当初は,画角は黄斑部ではC3CmmあるいはC6Cmmに限られ,画角を広げると解像度はやや低下する傾向にあった.最近では,画角C12Cmmまで広がってきてはいるが,現状では周辺部の無灌流領域を評価することはできない.また,複数箇所を撮影したCOCTA画像からモンタージュ画像を作成することで,解像度を落とさずに広範囲の評価が可能にはなってきたが,検査や画像処理にかかる時間が問題である.また,近赤外光を前方から照射して画像を取得していC1390あたらしい眼科Vol.35,No.10,2018るため,表層の血管陰影が網膜外層や網膜色素上皮へ映り込み,実際には血管が存在しない層にあたかも血管があるかのように描出されるというプロジェクションアーチファクトに注意が必要である4).さらに,層別解析では,漿液性網膜.離や浮腫によりセグメンテーションエラーが生じることもあるため,常にCBスキャン画像でセグメンテーションをチェックし,表示される血流シグナルからプロジェクションアーチファクトではないことを確認しながら,病変を解析評価する必要がある4).文献1)JiaY,TanO,TokayerJetal:Split-spectrumamplitude-decorrelationCangiographyCwithCopticalCcoherenceCtomog-raphy.OptExpressC20:4710-4725,C20122)野崎実穂,園田祥三,丸子一郎ほか:網脈絡膜疾患における光干渉断層血管撮影と蛍光眼底造影との有用性の比較.臨眼71:651-659,C20173)SuzukiCN,CHiranoCY,CYoshidaCMCetal:MicrovascularCabnormalitiesConCopticalCcoherenceCtomographyCangiogra-phyinmacularedemaassociatedwithbranchretinalveinocclusion.AmJOphthalmolC161:126-132,C20164)SpaideCRF,CFujimotoCJG,CWaheedNK:ImageCartifactsCinCopticalCcoherenceCangiography.CRetinaC35:2163-2180,C2015(78)