続発小児緑内障SecondaryChildhoodGlaucoma山田裕子*はじめに小児期に発症した病態に起因する緑内障について,改訂された『緑内障診療ガイドライン』第4版では,定義と分類が変更され,新たに診断基準が加わり(表1,2),背景や病態をもとに整理された1,2).小児緑内障は原発と続発に分かれ,さらに続発小児緑内障は,①先天的な眼形成異常に関連したもの,②先天全身疾患に関連したもの,③後天要因によるもの,④白内障術後に大別される.①~④に分け,以下に概説し,要点は表2にまとめた.I先天眼形成異常に関連した緑内障全身所見との関連が明らかではない眼形成異常が出生時から存在する.この中には,Axenfeld-Rieger異常,Peters異常,ぶどう膜外反,虹彩形成不全,無虹彩症,硝子体血管系遺残(persistenceoffetalvascularture:PFV),旧名:第1次硝子体過形成遺残(persistenthyperplasticprimaryvitreous:PHPV),眼皮膚メラノーシス(太田母斑),後部多形性角膜ジストロフィ,小眼球症,小角膜症,水晶体偏位などが含まれる.Axen-feld-Rieger異常,Peters異常といった前眼部形成異常,無虹彩症は指定難病となっている.代表的な疾患の特徴や治療を述べる.1.Axenfeld.Rieger異常(図1a,b)神経堤由来の間葉系細胞の発生異常と考えられてお表1WorldGlaucomaAssociation(WGA)における小児緑内障の診断基準・眼圧が21mmHgより高い(全身麻酔下であればあらゆる眼圧測定方法で).・陥凹乳頭径比(cup-to-discratio,C/D比)増大の進行,C/D比の左右非対称の増大,リムの菲薄化)・角膜所見(Haab線または新生児では角膜径11mm以上,1歳未満では12mm以上,すべての年齢で13mm以上)・眼軸長の正常発達を超えた伸長による近視の進行,近視化・緑内障性視神経乳頭と再現性のある視野欠損を有し,視野欠損の原因となる他の異常がない・2回以上の眼圧測定で眼圧が21mmHgより大きい・C/D比増大などの緑内障を疑わせる視神経乳頭所見がある・緑内障による視野障害が疑われる・角膜径の拡大,眼軸長の延長があるり,後部胎生環(posteriorembryotoxon)に周辺虹彩が一部付着する.後部胎生環,周辺虹彩前癒着(peripheralanteriorsynechia:PAS)に加えて,虹彩萎縮,瞳孔偏位,偽多瞳孔などさまざまな程度の虹彩異常を伴う場合がある.緑内障を発症する頻度は50%とされ,幼少期あるいは10~30歳で生じやすいが,あらゆる年齢で起こりうる.Axenfeld-Rieger症候群では,歯牙異常,顔面骨異常,臍異常,下垂体病変といった全身異常を伴うため,精査を小児科へ依頼する.常染色体優性遺伝が多く,FOXC1遺伝子あるいはPITX2遺伝子の異常が40%にみられる1).治療は原発小児緑内障に準じ,発症時*YukoYamada-Nakanishi:神戸大学大学院医学研究科外科系講座眼科学分野〔別刷請求先〕中西(山田)裕子:〒650-0017神戸市中央区楠町7-5-2神戸大学大学院医学研究科外科系講座眼科学分野0910-1810/18/\100/頁/JCOPY(51)1057表2続発小児緑内障1)先天眼形成異常に関連した緑内障Axenfeld-Rieger異常,Peters異常,無虹彩症全身の合併症の有無につき小児科診察緑内障はほぼ半数に合併するため,長期に経過観察必要.羞明の軽減にCL,無虹彩症では,黄斑低形成の合併,経過中に角膜輪部疲弊も生じる.ぶどう膜外反,虹彩形成不全第1次硝子体過形成遺残,眼皮膚メラノーシス(太田母斑)後部多形性角膜ジストロフィ,小眼球症,小角膜症,水晶体偏位など2)先天全身疾患に関連した緑内障母斑症Sturge-Weber症候群濾過手術において合併症が生じやすくなるため,脈絡膜血管腫の存在に注意.NF1眼瞼や眼窩に神経線維腫あると緑内障頻度増す.虹彩外反合併することあり.視神経膠腫opticgliomaの発症にも注意.OCT活用.Klippel-Trenaunay-Weber症候群先天性風疹症候群先天白内障や緑内障では合併を疑う.最初症状なくても経過観察.小角膜,小眼球では高率に緑内障合併.Down症などの染色体異常Rubinstein-Taybi症候群結合組織異常(Marfan症候群,Weill-Marchesani症候群,Stickler症候群)代謝異常(ホモシスチン尿症,Lowe症候群,ムコ多糖症)水晶体偏位の合併に注意.水晶体の異常がなくても緑内障合併あり.結合組織異常では,年齢が高くなってからも眼球拡大する場合も.3)後天要因による続発緑内障ぶどう膜炎JIAの頻度が高い.十分な消炎必要.隅角切開術から行われる.低眼圧になりやすい.ステロイド成人より眼圧が上がりやすい.他科や保護者との連携が大切.ROP閉塞隅角緑内障が多い.前眼部の構造が正常と差あり.瘢痕期ROPでも起こる.外傷(前房出血,隅角離解,水晶体偏位)腫瘍(良性/悪性,眼内/眼窩)網膜芽細胞腫や若年性黄色肉芽腫など.4)白内障術後の緑内障合併頻度が高い.生涯にわたる経過観察が必要.開放隅角の頻度が高い.IOLでも無水晶体眼でも起こる.生後早期の手術,小角膜では発症リスクが高い.中心角膜が厚い.薬物治療から開始するが,手術に至ること多い.隅角手術が奏効せずチューブシャント手術に至ることも少なくない.図1先天眼形成異常に関連した緑内障の代表例Axenfeld-Rierger異常a:前眼部写真.後部胎生環(posteriorembryotoxon).角膜周辺部に白色の線が観察される().b:隅角.Schwalbe線の肥厚と前方偏位,周辺部虹彩の索状の癒着がみられる.Peters異常c:前眼部写真.角膜中央部から上方の混濁を認める.d:前眼部OCT.角膜中央部の菲薄化と角膜内皮の欠損部に向けて虹彩の癒着がみられる.無虹彩症e:前眼部写真.無虹彩症.白内障の合併例.f:Eの前眼部OCT.周辺に部分的に虹彩がみられる.g:眼底写真と黄斑部OCT,視神経乳頭の緑内障性変化に黄斑部の低形成を伴う(eとは別の症例).h:虹彩付きコンタクトレンズの装用.期が3歳以下で眼球の拡大を伴う場合は手術を先行し,若年以降では,薬物治療から開始するが,隅角形成異常や高眼圧が著しい場合は手術への速やかな移行を考慮に入れ治療にあたる.隅角が開放していて周辺虹彩付着による線維柱帯の被覆範囲が広くなければ,隅角手術を選択し,PASのため隅角切開術が行いにくい際には,線維柱帯切開術を行うが,成功率は原発小児緑内障より低く,線維柱帯切除術やプレートのあるチューブシャント手術が,隅角手術が無効と予測される場合,第一選択となることもある1,2).2.Peters異常(図1c,d)角膜混濁,角膜中央部の内皮の欠損,虹彩の前方癒着,白内障が特徴である.その混濁や虹彩,水晶体の異常の程度はさまざまで,角膜の混濁の程度は生後早期から経過に伴い徐々に軽減する場合があることが知られ,Yoshikawaらは9例15眼を平均7.9年経過観察し,4眼は徐々に混濁が減少したとしている3).角膜移植に関しては,角膜混濁以外の異常が合併する場合や6カ月未満の手術,緑内障を合併する場合は予後不良の因子とされ4),手術の際に,前眼部OCTを用いた工夫もなされてきているが,手術適応の基準は明確には確立されていない.緑内障発症の頻度は約50%で,生涯にわたって眼圧の管理を要する.Petersplus症候群では,口唇裂・口蓋裂,成長障害,発達遅滞,心奇形などを合併するため,小児科での精査も行う.治療はAxenfeld-Rieger異常同様であるが,良好な術後眼圧が得られるのは手術例の1/3程度にとどまり,角膜異常などを伴うため,実用的視力を得るのがむずかしいことが多い2,5).3.無虹彩(図1e~h)虹彩が完全または不完全な欠損が主徴で(図1e,f),PAX6遺伝子などの異常による.孤発性の無虹彩をみたらWilms腫瘍-無虹彩症-泌尿生殖器奇形-精神発達遅滞(Wilmstumor-aniridia-genitourinaryanomalies-mentalretardation:WAGR)症候群(11p13欠失症候群)の合併の有無につき,Wilms腫瘍のスクリ-ニングを行う.黄斑低形成,眼振,斜視や白内障,水晶体脱臼を合併する場合がある(図1e,g).角膜は幼少時には正常であるが,成長につれ角膜輪部機能不全から角膜上皮疲弊症により結膜組織が角膜に侵入して,視力をより低下させる.緑内障の頻度は,隅角の形成不全により50~75%と高く,生後早期よりは,小児期以降になってからの発症が多い(図1g).原発小児緑内障同様に治療を行うがその成績は原発性に比べて劣り,線維柱帯切除術では,角膜と水晶体が接触しやすい構造のため過剰ろ過に注意する.また,チューブシャント手術に至った際は,虹彩の形状からチューブの挿入部位,位置の選択など工夫がいる.視力は,黄斑低形成,白内障や角膜パンヌスによりしばしば不良であるが,羞明・眼精疲労の軽減のために,遮光眼鏡や軟膏の使用,整容的コンタクトレンズの処方(図1h)も行う.II先天全身疾患に関連した緑内障出生時から眼所見に関連する先天性全身疾患があるもので,先天全身疾患には,Down症などの染色体異常,母斑症や先天性風疹症候群,結合組織異常(Marfan症候群,Weill-Marchesani症候群,Stickler症候群),代謝異常などが含まれる(表2).指定難病に含まれる疾患も多い.代表的な疾患を以下にあげる.1.母斑症a.Sturge.Weber症候群Sturge-Weber症候群は,脳内の軟膜血管腫と,顔面のポートワイン斑,緑内障を有する神経皮膚症候群で(図2a),緑内障の頻度は30~70%で,発症は1歳までが60%ともっとも多い(図2b).三叉神経V1およびV2領域に血管腫がある場合は緑内障が生じやすい.眼圧上昇は,原発性隅角形成異常,Schlemm管萎縮,上強膜静脈圧上昇,PAS形成,脈絡膜血管腫関連の菲薄化血管壁の透過性亢進によって生じると考えられている.治療は,先天性や乳幼児期発症であれば線維柱帯切開術や隅角切開術を選択する.年長者では上強膜静脈圧が上昇しているので,薬物治療が第一選択となる1,2).薬物治療や流出路再建術が奏効しない場合,線維柱帯切除術やプレートのあるチューブシャント手術を考慮す1060あたらしい眼科Vol.35,No.8,2018(54)図2先天全身疾患に関連した緑内障の代表例Sturge-Weber症候群(a~dは別の症例)Ca:顔面の血管腫.b:顔面の血管腫と同側の緑内障による角膜径拡大.c:緑内障性視神経乳頭拡大および上方には脈絡膜血管腫を伴う.脈絡膜血管の透見の違いを観察する.d:濾過手術後に生じた旺盛な滲出性網膜.離.神経線維腫症C1型Ce~g:眼瞼(e)ならびに眼瞼結膜(f)に生じた叢状神経線維腫.同症例にみられた緑内障による角膜径の拡大(g).h:Lisch結節().e~gとは別の症例.先天風疹症候群(先天白内障術後の緑内障)Ci:小角膜,無水晶体眼,バルベルトチューブインプラント術後.水晶体偏位Cj:未散瞳の状態.k:散瞳した状態.~た,眼圧上昇がない場合でも眼軸長の延長,眼球拡大や虹彩外反がみられるとの報告がある.経過観察において眼圧のみならず,定期的にCOCTで乳頭周囲網膜神経線維層厚や黄斑部内層厚をモニターすることは視神経膠腫の発見にも有用である.治療は原発小児緑内障に準じ,線維柱帯切開術が奏効しない際には,線維柱帯切除術やチューブシャント手術あるいは毛様体破壊術などについて検討するが,眼瞼や眼窩の神経線維腫の進展,蝶形骨など眼窩を形成する骨の異常を伴う場合もあり7),チューブシャント手術時のプレート挿入や合併症への影響を評価するため,MRIやCCTで事前に評価しておく.片眼の生後早期からの緑内障では多くが眼瞼,眼窩に神経線維腫の進展と弱視を伴い,有効な視機能の獲得はしばしば困難である.C2.先天性風疹症候群(congenitalrubellasyndrome:CRS)妊婦が風疹ウイルスに感染し,その胎児が風疹ウイルスに感染した結果,眼,耳,心臓などに特有の障害をきたす.CRS患児の約C40%に眼合併症を生じる.眼合併症としては,白内障,緑内障,色素性網膜症,小眼球症などがあるが,緑内障はCCRS患児の約C10%にみられるとされる(図2i).乳児期の白内障,緑内障診療においては,常に本感染症の存在を念頭に検査を行う.眼合併症が認められない場合でも,先天性風疹感染の児の経過観察は,生後C1年まではC1~2カ月ごとに行う8).また,小眼球症は角膜径C10Cmm以下(乳児C9Cmm以下),眼軸長C21mm未満(1歳児C19mm未満)を目安とするが,白内障,緑内障,網膜・視神経の異常,強度遠視など,重篤な合併症を伴う.成人以降にも緑内障を発症する場合があり,生涯の管理が必要となる.C3.結合組織異常や代謝異常Marfan症候群やCWeill-Marchesani症候群,ホモシスチン尿症はしばしば水晶体偏位を生じ(図2j,k),これに伴う眼圧上昇が多いが,開放隅角緑内障,閉塞隅角緑内障のいずれも生じる.III後天要因による続発緑内障開放隅角緑内障が一般的で,代表的な後天要因としては,ぶどう膜炎,外傷(前房出血,隅角離解,水晶体偏位),ステロイド,腫瘍(良性C/悪性,眼内C/眼窩),未熟児網膜症(retinopathyofprematurity:ROP)があげられる.仁科らは,続発緑内障C99例C143眼について検討し,発症年齢はC0~5歳がC67%と低年齢が多く,原因疾患の頻度については,ROP24%,先天白内障術後C23%,ステロイドC23%,PHPV,家族性滲出性硝子体網膜症(familialCexudativeCvitreoretinopathy:FEVR)など16%,腫瘍C8%と報告している9).外傷,腫瘍によるものについては症例が多彩かつ頻度が少なく,本稿では割愛する.C1.ぶどう膜炎続発緑内障(図3)小児のぶどう膜炎はまれであるが,そのなかでもっとも頻度が高いのは若年関節リウマチ(juvenileidiopathicarthritis:JIA)のC41~67%,特発性C29%,次いで,サルコイドーシスがC3~6%とされる.JIAに関連したぶどう膜炎における緑内障の頻度はC4~27%,緑内障および高眼圧症の頻度はC42%と高率な報告もみられる10).遷延する炎症は緑内障発症のリスクとなり,一般には開放隅角であるが,瞳孔ブロックや続発閉塞隅角緑内障を伴う場合もある.小児ぶどう膜炎続発緑内障の治療としては,まずは眼内の炎症コントロールを命題とし,並行して,眼圧コントロールが必要となる.点眼加療が第一選択であるが,点眼のみでコントロールできるのはわずかC17%にとどまる.術式選択の第一選択としては,隅角切開術とするもの,線維柱帯切除術とするものなど報告により違いがみられるが,WorldCGlaucomaCAssocia-tion(WGA)コンセンサスブックにおいては,眼圧が点眼で下降できない際には,隅角切開術などの流出路再建術が第一選択とされ,Freedmanのグループでは,36眼での術後成績につき,隅角切開術でC10年での生存率はおよそC70%で,2回の隅角切開術でも眼圧下降が得られない場合にはドレナージデバイスによる手術を選択すると述べている11).アーメドチューブ挿入に関しては,16眼でそのうちC75%は初回手術として行った際の1062あたらしい眼科Vol.35,No.8,2018(56)C図3後天要因による続発緑内障a:Down症児の慢性虹彩毛様体炎に生じたぶどう膜炎続発緑内障.虹彩後癒着を認める.Cb:視神経乳頭の下方に網膜神経線維層欠損を伴うノッチの形成がみられ,緑内障性変化が生じている.静的視野検査の施行は困難であった.Cc:ROPにレーザー治療既往のある眼に生じた続発閉塞隅角緑内障の前眼部COCT.Cd:白内障手術により眼圧は下降し,隅角は開大した.Ce:同一症例の眼底.瘢痕期未熟児網膜症による牽引乳頭により,緑内障性変化の評価はむずかしい.2.ステロイド緑内障ステロイド緑内障の詳細は別項で述べられている.小児では,ステロイドに対する眼圧上昇が成人よりも高頻度かつ短期間で重症化しやすく,白血病やネフローゼ症候群,気管支喘息などの全身疾患,アトピー性皮膚炎や乾癬といった皮膚疾患,眼科においても周術期やアレルギー性結膜炎,ぶどう膜炎など,ステロイドの使用方法によらず眼圧上昇に留意する.とくにC6歳以下の小児は短期間でより高眼圧になりやすい.力価の高い点眼の使用や,回数が多い場合は,より眼圧が上がりやすく,中止後に眼圧が正常化するまでの期間が長い.眼圧上昇までの期間にはばらつきがあり,慢性疾患で長期の投与となる場合や再発しやすい疾患では,一度の観察で正常範囲であっても,継続して眼圧のチェックが必要であることを小児科医や保護者らに伝え,連携を怠らないようにする13).C3.未熟児網膜症(retinopathyofprematurity:ROP)ROPに続発する緑内障では,閉塞隅角緑内障がみられやすい.機序としては,活動期にレーザー治療に関連して治療の早期に生じるものと,ステージC4,5に進行し,水晶体後部の線維性増殖膜が収縮することで水晶体や虹彩が前方へ移動し,閉塞隅角緑内障を生じるもの,水晶体前後径の増大や位置異常による瞳孔ブロックや毛様体ブロックを生じるものがある1,14).閉塞隅角緑内障に対しては,レーザー虹彩切開,周辺部虹彩切除術,隅角癒着解離術もしくは水晶体切除術および前部硝子体切除術などが行われる.ETROPCstudyにおいて,Bremerらの報告では,6歳までにC718眼中C12眼(1.7%)が緑内障と診断されたとし,7眼は前房が浅く,そのうちC5眼は網膜.離を伴っていた.後極部の網膜が正常で,前房も深く,光凝固を受けていない例にもC1眼で緑内障を認めている14).進行した未熟児網膜症に対して水晶体温存硝子体切除術を行ったC401眼において,平均C3.06C±4.11年の経過観察で緑内障の頻度は,40眼C10%にみられ,ステージ4AでC6.9%,ステージC4BでC12.0%,ステージC5でC33.3%とステージが進むとより高頻度であった.水晶体温存硝子体切除術後C1.23C±2.19年でC21%に水晶体切除を要しており,緑内障発症に関連する因子として,ステージ5であること,水晶体切除施行眼であることが示されている15).前眼部の構造についてレーザー治療既往のあるCROP眼と正常眼が比較されており,ROP眼では,虹彩がより前弯し,前方に付着し,隅角は狭いこと,前房深度は浅く,角膜曲率半径が小さく,水晶体が厚く,屈折異常が強いこと,一方で眼軸長には差はないことが報告されている16).ROP治療既往のある眼においては瘢痕期であっても続発閉塞隅角緑内障を生じやすい前眼部構造であることに注意しながら長期に経過観察が必要である.CIV白内障術後の緑内障特発,併発などの原因によらず,小児期に白内障手術を必要とする症例では,房水流出路の発達異常を伴うことがあり,眼圧上昇につながり緑内障を生じることがある1).生後C1~6カ月時に先天白内障手術を受けた乳児を対象として,コンタクトレンズで補正した無水晶体と一次的なCIOL挿入とを比較した無作為臨床研究であるInfantAphakiaTreatmentStudy(IATS)では,5年間113名において,緑内障発症はC4.8年でC17%,緑内障疑いを含めるとC31%にのぼり,無水晶体かCIOL挿入かの間には有意差はみられなかった17).また,開放隅角が95%と大半を占め,40%で手術を要した.生後早期の手術であること(28~48日以内)は,それ以降に比べて3.2倍発症リスクを高め,白内障手術時に小角膜(<10mm)であることもリスクを高める.緑内障発症のリスクは生涯にわたり,無水晶体でも偽水晶体でも生じる.より低い年齢での手術を受けた症例や小角膜,小眼球を伴う症例ではさらに発症リスクが高い.小児白内障術後眼は中心角膜が厚いことが特徴で,見かけ上の高眼圧になっている場合もあることも知られている1,2).治療は原発小児緑内障に準じ,年齢が高い場合には点眼加療を先行して,効果が不十分であれば手術加療となる.隅角が開放していて周辺虹彩付着による線維柱帯の被覆範囲が広くなければ,隅角手術を選択するが,成功率は原発小児緑内障よりも低く,線維柱帯切除術やプレートのあるチューブシャント手術が隅角手術が1064あたらしい眼科Vol.35,No.8,2018C(58)–