監修=木下茂●連載232大橋裕一坪田一男232.RayOnetrifocalIOL荒井宏幸みなとみらいアイクリニックCRayOnetrifocalは光学特性が近方に強いC3焦点レンズである.アポダイズ構造を使用せずに光学部C4.5Cmmに16本の回折構造により近方C3.5D中間C1.75Dの加入を得ている.近方重視の症例には選択肢にあれば便利な多焦点レンズであり,インジェクターも使いやすい.世界で初めて眼内レンズを製作したCRayner社の意欲作である.●時代は2焦点から3焦点へ世界的にはC2000年頃より徐々に普及しはじめた多焦点眼内レンズ(intraocularlens:IOL)であるが,日本ではC2009年に先進医療として認められて以降,実施施設数は増加の一途をたどり,887施設が登録している(2019年C5月現在).当初の多焦点CIOLは加入度数が大きいものが多く,コントラスト感度の低下やハロー・グレアなど光学的な不具合の出現率も高かった.レンズの光学設計技術の進歩とともに,光学的ロスを中間視力に分配できるようになり,3焦点の実現と光学的な不具合の低下という二つの課題を解決するC3焦点CIOLが登場することになったのである.C●RayOnetrifocalIOLの特徴英国のCRayner社はC1949年にCDr.Ridleyが世界で初めてCIOLを開発したメーカーであり,現在でも多くのラインアップのCIOLを発売している.RayOnetrifocalIOLはC2017年にCCEマークを取得し臨床使用されるようになった.RayOnetrifocalIOLの概要を図1に,細隙灯顕微鏡写真を図2に示す.遠用部レンズ長径12.5mm回折型3焦点(中心4.5mm)光学部径6.0mm非球面レンズ26%含水アクリル加入度数近方+3.5中間+1.75球面+0D~+30D(0.5Dステップ)プリロードシステム回折部図1RayOnetrifocalIOLの概要外観の特徴は大きなループである.水晶体.赤道部との接触部分が大きいため,.内での安定性が良好になっている.また,ループ内に空隙を設けクローズドループとすることで水晶体.の直径の個体差や術後の.収縮に対応し,レンズ位置の安定性に寄与している.IOL光学部の周辺形状はスクエアエッジとなっている1).加入度数は近方が+3.5D,中間が+1.75Dである.近方加入度数の適切な加入度数がどの程度なのかという議論はあるが,国内の状況においては術後の近方視力は重要であり,高加入度数の設定は近方視力重視の症例に使いやすい.IOL光学部の中心C4.5CmmにC16本の回折格子が作られており,回折部の外側は単焦点となっている.この光学設計により,瞳孔径による光量配分はC4.5mmまではC3カ所の焦点に均一な光量をもたらし,4.5mmを越えると遠方重視の配分へと変化する.同様の加入度数をもつCFineVision(PhysIOL社)の光量配分を比較したものを図3に示す.FineVisionは光学面全面に回折構造をもち,アポダイズ設計となっているため,瞳孔径の拡大に伴い遠方への光量配分が大きくなる設計となっている.こうした光学設計の違いは,個々の症例の瞳孔径と希望する見え方のスタイルにより,どのCIOLを選択するべきかの理論背景になる重要な指標であろう.また,他の新設計CIOLと同様に光学的ロスを低く制御しており,瞳孔径C3Cmmでの光学的ロスはC11%に図2RayOnetrifocalIOLの細隙灯顕微鏡写真(59)あたらしい眼科Vol.36,No.9,2019C11610910-1810/19/\100/頁/JCOPYRayOne.FineVision.実線点線15%●とても満足38%●満足●普通●やや不満●不満46%n=27押さえられている.これは術後の良好なコントラスト感度に大きく寄与している.インジェクターはプリロードシステムである.インジェクター全体が保存液に浸かった状態で出荷されている.角膜切開C2.2Cmmからの挿入が可能で,プッシュ型のインジェクターであるが,挙動は非常になめらかで挿入に関してのストレスはない2).素材は親水性アクリルである.多くの親水性CIOLが米国のCBenzR&D社から素材供給を受けているのに対して,Rayner社の親水性素材は英国のCContamac社製であり,独自のパテント素材を用いている.着色レンズの設定はなく,クリアーレンズである.また,現時点では乱視用は準備されていない.C●RayOnetrifocalIOLの成績当院にてCRayOneCtrifocalIOLを挿入したC19例C27眼における裸眼視力の結果を図4に示す.平均年齢は62.2歳,男性C5例C6眼,女性C14例C21眼である.乱視C1162あたらしい眼科Vol.36,No.9,2019図5RayOnetrifocalIOL挿入術後の満足度1.21.01.011.081.111.031.180.80.730.750.660.640.6視力0.540.60.680.590.650.40.190.20.15━遠方━中間━近方0.20.0術前1D1W1M3M6M観察時期n=27図4RayOnetrifocalIOL挿入眼の片眼での裸眼視力の推移の変化用CIOLの設定がないため,13眼に対してフェムトセカンドレーザーによる弧状角膜切開(arcuratekeratecto-my:AK)を施行している.片眼でのデータは安定しており,観察期間を通じて良好な経緯であった.本稿では両眼視でのデータは割愛するが,両眼裸眼視力は術後C6カ月において遠方C1.2,近方C0.92,中間C0.9と良好な結果が得られている.術後満足度の分布を図5に示す.高い満足度が得られているが,不満領域の回答がゼロであったことが注目される.多焦点CIOLの満足度調査では,通常は約C3~5%程度の不満症例が存在することが多い.今回,不満症例が出なかったのは,コントラスト感度の低下が少ないためではないかと推測している.C●今後の付加価値IOLのゆくえEDoF(焦点深度拡張型)レンズの登場により,付加価値CIOLの普及は加速度的に拡大した.最近では低加入度数のCIOLが保険適応となったことも注目されている.私見であるが,今後はCEDoFおよび低加入CIOLは保険診療で使用する発展型単焦点CIOLとして位置づけられ,中等度以上の加入をもつCIOLは自費診療の対象となるのではないかと考えている.高機能型のCIOLは今後も発展することが予想され,より自然な見え方での視力改善が期待される.常に向上心を保ちながら勉強し,光学特性を見きわめながらCIOLの選択をしてゆくことが大切であろう.文献1)NanavatyMA,ZukaiteI,SalvageJ:Edgepro.leofcom-merciallyCavailableCsquare-edgedCintraocularlenses:PartC2.JCataractRefractSurgC45:847-853,C20192)NanavatyMA,Kubrak-KiszaM:Evaluationofpreloadedintraocularlensinjectionsystem:Exvivosutudy,JCata-ractRefractSurgC43:558-563,C2017(60)