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アマンタジン塩酸塩内服により片眼性の角膜浮腫を生じた一症例

2018年9月30日 日曜日

《原著》あたらしい眼科35(9):1263.1267,2018cアマンタジン塩酸塩内服により片眼性の角膜浮腫を生じた一症例井村泰輔鈴木智地方独立行政法人京都市立病院機構眼科CACaseofAmantadine-associatedUnilateralCornealEdemaTaisukeImuraandTomoSuzukiCDepartmentofOphthalmology,KyotoCityHospitalOrganization目的:片眼性に生じた角膜浮腫を経験し,アマンタジン塩酸塩(以下,アマンタジン)の休薬とCROCK(Rhokinase)阻害薬の点眼により,短期間で軽快した症例を経験したので報告する.症例:69歳,男性.初診時,右眼の角膜中央から下方にかけて限局性の実質.上皮浮腫を認め,矯正視力は(0.15)と低下し,角膜中央部の内皮細胞密度(ECD)は測定不能であった.左眼は角膜所見に異常なく,視力は(1.2),ECDはC2,239/mmC2であった.アマンタジンを休薬し,フルオロメトロンC0.1%点眼液およびリパスジル塩酸塩水和物点眼液にて加療したところ,休薬C4週後に角膜浮腫は消失し,6週後にCECDはC1,334/mmC2まで回復し,8週後には視力(1.2)まで改善した.結論:アマンタジンによる角膜内皮障害は片眼性に生じることもあり,休薬とともにCROCK阻害薬点眼が早期回復に有用な可能性があると考えられた.CPurpose:ToCreportCaCunilateralCcaseCofCamantadine-associatedCcornealCedemaCthatCwasCsuccessfullyCtreatedCwithROCKinhibitoraftercessationofamantadinetreatment.Case:A69-year-oldmalewasreferredtoourhos-pitalforrightcornealedemawithDescemetfoldsof2months’duration.HisBCVAwas0.15ODand1.2OS.Intra-ocularpressurewas10CmmHgOU.Slit-lampexaminationrevealedfocalstromaledemafromcentraltoinferiorcor-neaCofCtheCrightCeye,CbutCnoCobviousCin.ammationCinCtheCanteriorCchamber.CEndothelialCcellCdensity(ECD)wasCunmeasurableCinCtheCcentralCcornea,CbutC2,547/mm2CinCtheCsuperiorCcornea.CAfterCconsultationCwithCtheCpatient’sneurologist,amantadinehydrochlorideadministrationwasceased.Additionaltreatmentinvolvedtopical0.1%.uo-rometholoneandripasudilhydrochloridehydrate.Thecornealedemaresolvedin4weeksaftercessationofaman-tadineChydrochloride.CInC6Cweeks,CECDCbecameC1,334/mm2.CBCVACimprovedCtoC1.2CODCinC8Cweeks.CConclusion:CTheCcornealCendothelialCdysfunctionCcausedCbyCamantadineCmayCoccurCunilaterally,CandCtogetherCwithCtheCwith-drawal,theROCKinhibitorinstillationmaybeusefulforearlyrecovery.〔AtarashiiGanka(JournaloftheEye)C35(9):1263.1267,C2018〕Keywords:抗CParkinson病薬,アマンタジン塩酸塩,角膜浮腫,角膜内皮障害,ROCK阻害薬.anti-Parkinsonagent,Amantadinehydrochloride,cornealedema,cornealendotheliumdamage,ROCKinhibitor.Cはじめにアマンタジン塩酸塩(amantadineChydrochloride:以下,アマンタジン)は,当初インフルエンザCA型の予防と治療のために開発されたが,その後ドパミン作動性作用が解明され,現在は抗CParkinson病薬としても使用されている1).眼局所への副作用はC1%以下とされているが,角膜浮腫,斑状上皮下混濁による視覚障害,注視発作,角膜炎や瞳孔散大などが報告されている1).とくにアマンタジンによる角膜浮腫は「両眼性の双子様浮腫」が特徴とされ,角膜内皮細胞密度(endothelialCcellCdensity:ECD)の減少をきたす2.9).一般的に,アマンタジンの休薬と低濃度ステロイド点眼治療により,角膜浮腫は数カ月で軽快するが,ECDの低下は残存する1.10).角膜内皮細胞は再生能をもたず,外傷などで細胞が脱落し〔別刷請求先〕鈴木智:〒604-8845京都市中京区壬生東高田町C1-2京都市立病院眼科Reprintrequests:TomoSuzuki,M.D.,Ph.D.,DepartmentofOphthalmology,KyotoCityHospital,1-2Higashitakada,Mibu,Nakagyo-ku,Kyoto604-8845,JAPANた部分は,周囲の正常内皮細胞が徐々に伸展し細胞面積を拡大することで修復し,角膜の透明性を維持している11,12).ECDがC500/mmC2以下になると代償機能が破綻し,水疱性角膜症を生じるが,治療はこれまで角膜移植しか選択肢がなかった.近年,動物実験において,ROCK(RhoCkinase)阻害薬点眼による角膜内皮細胞障害に対する創傷治癒促進作用が報告されており,またヒトに対しても同様の効果が得られる可能性が示唆されている11,12).今回,アマンタジン内服中の患者に片眼性に進行性の角膜浮腫を生じ,アマンタジンの休薬とCROCK阻害薬点眼により,短期間で視力が回復し,ECDも改善した症例を経験したので報告する.CI症例症例はC69歳,男性.近医神経内科で抗うつ薬,抗てんかん薬,抗CParkinson病薬などを内服中であった.2016年C5月に右眼のしみるような痛みと視力低下を主訴に近医眼科を受診した.右眼の角膜下方にCDescemet膜皺襞を伴う上皮びらんを認め,点眼治療が開始された.10日程度で上皮びらんは治癒するも角膜浮腫の改善を認めないため,7月C16日当院へ紹介受診となった.初診時,右眼の矯正視力はC0.15で,前房内炎症は明らかではなく,角膜中央から下方にCDescemet膜皺襞を伴う角膜実質.上皮の浮腫を認めた(図1).ECDは,右眼は角膜中央部では測定不能であったが,上方ではC2,547/mmC2であった.左眼矯正視力はC1.2,ECDは角膜中央でC2,239/mmC2であった.眼圧は両眼ともにC10CmmHgであった.右眼病変部のCECDを計測できなかったことから,片眼性の局所的な内皮細胞の脱落が考えられ,ウイルス性角膜内皮炎の可能性を疑い,前房水を採取しポリメラーゼ連鎖反応法(polymerasechainreaction:PCR法)に供した.内皮細胞障害の進行抑制を目的として,適応外使用ではあるが医師の裁量のもとに0.4%リパスジル塩酸塩水和物(グラナテックCR)点眼液C1日2回,角膜上皮浮腫による自覚軽減を目的にC2%レバミピド(ムコスタCR)点眼液をC1日C4回で開始した.1週間後の再診時にはCDescemet膜皺襞,角膜浮腫はやや軽快し,矯正視力はC0.3となった.前房水CPCR法では単純ヘルペスウイルス,帯状疱疹ウイルス,サイトメガロウイルス,すべて陰性であった.念のため,ヘルペスウイルスの関与を除外する目的でバラシクロビル塩酸塩(バルトレックスCR)錠C1,000Cmg/日で5日間内服を行ったが,効果はみられなかった.その後,0.1%フルオロメトロン(フルオメソロンCR)点眼液1日2回を開始した.非炎症性,非感染性の角膜内皮細胞障害を積極的に疑い,全身疾患に対して処方されている内服薬を詳細に確認したところ,抗CParkinson病薬として投与されているアマンタジン(シンメトレルCR)が原因薬である可能性が考えられた.かかりつけ神経内科へ内服調整を依頼し,アマンタジンを休薬したところ,1週間後の再診時には右眼のCDes-cemet膜皺襞,角膜浮腫ともに著明な改善を認め(図2),矯正視力もC0.8と改善し,薬剤性角膜内皮障害との診断に至った.その後は,症状の増悪なく良好な経過をたどり,休薬C4週後には角膜浮腫は完全に消失し(図3),休薬C6週後に,右眼のCECDも中央部で測定可能となり(1,334/mmC2),休薬C8週後には右眼の矯正視力はC1.2まで改善した.CII考按本症例は,Parkinson病治療薬であるアマンタジンによる片眼性の角膜浮腫と考えられた.アマンタジンによる角膜浮腫は販売当初から報告されており,両眼性であること,内服期間の長短にかかわらず発症すること,1日当たりの内服量が多いほど発症しやすいこと,などが特徴としてあげられている9).そこで,2004.2015年に報告されたアマンタジンによる角膜浮腫の症例報告(9論文,計C11症例)1.8,10)の系統的レビューを行い,1)発症年齢,2)アマンタジンのC1日投与量,3)角膜浮腫が現れるまでの投与期間,4)角膜浮腫が現れてからアマンタジンの休薬までに要した期間,5)休薬後から眼所見の軽快傾向が認められるまでに要した期間,6)眼所見が完全に軽快した段階でのCECD,の臨床的特徴について検討し,本症例と比較した(表1,2).11症例はすべて両眼性で,発症年齢はC1例のみC14歳と若年であったが平均はC55歳,アマンタジンC1日投与量は245Cmg,角膜浮腫が出現までの投与期間はC736日,角膜浮腫出現からアマンタジンの休薬までに要した期間はC73日であり,休薬後角膜浮腫の軽快傾向が認められるまでに要した期間はC49日であった.すべての症例でアマンタジンの休薬によって角膜浮腫は軽快したが,ECDは低下したままであった.右眼C643C±139/mm2,左眼C679C±208/mm2と左右差は認めなかった(表1).本症例は片眼性であったが,発症年齢,1日投与量,発症までの内服期間とアマンタジン休薬までに要した期間は既存の報告との間に差はなかった.軽快傾向がみられるまでに要した期間はC7日と短く,最終的に測定可能となったCECDはC1,334/mm2にまで回復していた.僚眼のCECDは観察期間中に明らかな変化を認めなかった(表2).アマンタジンによる角膜浮腫の発症機序に関してはいまだ不明である.薬剤性角膜障害であり,休薬すれば経時的に角膜浮腫は軽快するため,病理組織学的評価が行われにくいことや,内服中の前房内アマンタジン濃度などの状態を評価するのが困難なことが要因と考えられる.アマンタジン内服中に,原因不明の角膜浮腫として全層角膜移植が行われた症例では,摘出角膜の内皮細胞に何らかの損傷は確認できるものの,特異的な変化は認めなかったと報告されている6).図1右眼前眼部写真(初診時)a:角膜中央.下方にCDescemet膜皺襞を伴う角膜実質.上皮浮腫を認める.Cb:フルオレセイン染色所見.局所的な上皮浮腫が認められる.C図2右眼前眼部写真(アマンタジン休薬1週間後)a:Descemet膜皺襞がやや軽快し,角膜浮腫の範囲も縮小傾向を認める.Cb:フルオレセイン染色所見.上皮浮腫の軽快傾向が認められる.C図3右眼前眼部写真(アマンタジン休薬4週間後)a:Descemet膜皺襞は消失し,角膜浮腫も認めない.Cb:フルオレセイン染色所見.上皮の不整も認めない.表1アマンタジンによる角膜浮腫をきたした過去の報告著者年齢性別主病名内服畳(内服期間)休薬までの期間予後(軽快までの期間)ECD(/mmC2)CYang1)46歳男性うつ病200mg/日(3年間)4カ月軽快(4カ月)右眼:7C02左眼:7C07CAvendano2)64歳女性Parkinson病300mg/日(2年間)4日軽快(4C0日)右眼:7C98左眼:8C53CHotehama3)77歳女性振戦150mg/日(1C5日)3カ月軽快(1C4日)右眼:9C01左眼:C1,134CGha.arlyoh4)68歳女性Parkinson病200mg/日(2年間)6カ月軽快(6カ月)不明CChang5)52歳女性Parkinson病250mg/日(6C5年間)2カ月軽快(1C4日)右眼:5C74左眼:4C60C55歳女性多発性硬化症200mg/日(6年間)17カ月全層角膜移植施行その後,休薬右眼:4C95左眼:5C64Jeng6)57歳男性多発性硬化症200mg/日(2カ月)2カ月軽快(1C4日)右眼:6C01左眼:6C1644歳女性双極性障害200mg/日(3カ月)2カ月軽快(5週間)右眼:4C70左眼:4C80CKubo7)64歳男性Parkinson病300mg/日(8カ月)不明軽快(8日)不明CHughes8)14歳男性不明300mg/日(1年間)数カ月軽快(1カ月)不明CKim10)63歳女性Parkinson病400mg/日(7カ月)1週間軽快(1カ月)右眼:6C08左眼:6C21表2本症例と過去の報告との比較過去の報告C11例平均±標準偏差(範囲)本症例年齢(歳)C54.9±15.9(C14.C77)C69内服量(mg/日)C245±68.9(C150.C400)C200内服期間(日)C736±796(C15.C2,370)C730休薬までの期間(日)C72.6±54.2(C4.C180)C78軽快傾向までの期間(日)C角膜内皮細胞密度右眼(/mm2)左眼C48.5±53.4(C8.C180)C643±139(C470.C901)C679±208(C460.C1,134)C71,334(C2,388)本症例は,片眼性に角膜浮腫が出現し,患眼のみでCECDの低下が認められた.本来,両眼性に発症するとされている角膜浮腫が片眼のみに出現した原因として,アマンタジンの内服前から,何らかの理由で患眼のみCECDの低下が生じていた可能性,あるいは前房内微小環境に左右差があり,患眼のみに角膜浮腫が先に出現し,片眼性となった可能性が考えられる.ECDの低下の原因としては,角膜ヘルペスや虹彩毛様体炎の既往,続発緑内障や偽落屑の存在,内眼手術歴やレーザー虹彩切開術などが考えられるが,本症例ではいずれも認められなかった.ROCK阻害薬の一つであるC0.4%リパスジル塩酸塩水和物(グラナテックCR)点眼液は線維柱帯細胞の形状を変化させ,前房水の流出量を増加することから緑内障治療薬として使用されている12).一方,ROCK阻害薬は角膜内皮細胞同士の接着を高め,増殖を促進し,細胞死を抑制する可能性も報告されている11,12).本症例は,既存の報告と比較して,アマンタジンによる角膜浮腫が出現後休薬に至るまでの経過に明らかな差を認めなかったが,休薬直後から短期間で角膜浮腫は軽快し,休薬C6週間後にはCECD>1,000/mmC2に改善が認められた.その要因として,0.4%リパスジル塩酸塩水和物(グラナテックR)点眼液による角膜内皮細胞への創傷治癒促進作用が関連している可能性が推測される.すでに,リパスジル塩酸塩水和物を用いた家兎実験では,角膜内皮細胞の保護作用,創傷治癒の促進作用が認められており12),今後角膜内皮障害治療薬としての開発が期待される.アマンタジンによる薬剤性角膜内皮障害は片眼性に生じることもある.非感染性角膜内皮障害を認めた場合には,併用薬の確認を詳細に行い,原因薬の休薬とともに,現在はまだ適応外使用ではあるがCROCK阻害薬の点眼を行うことで角膜浮腫の早期の消退とCECDの改善が期待できる可能性があり,今後さらなる検討が望まれる.文献1)YangY,TejaS,BaigK:Bilateralcornealedemaassociat-edwithamantadine.CMAJC187:1155-1158,C20152)AvendanoCC,CCelisCS,CMesaCVCetCal:CornealCtoxicityCdueCtoamantadine.ArchSocEspOftalmolC87:290-293,C20123)HotehamaCA,CMimuraCT,CUsuiCTCetCal:SuddenConsetCofCamantadine-inducedCreversibleCbilateralCcornealCedemaCinanelderlypatient:casereportandliteraturereview.JpnJOphthalmolC55:71-74,C20114)Gha.arlyohCA,CHonarpishehCN:Amantadine-associatedCcornealedema.ParkinsonismRelatDisordC16:427,C20105)ChangCKC,CKimCMK,CWeeCWRCetCal:CornealCendothelialCdysfunctionCassociatedCwithCamantadineCtoxicity.CCorneaC27:1182-1185,C20086)JengCBH,CGalorCA,CLeeCMSCetCal:Amantadine-associatedCcornealedemapotentiallyirreversibleevenaftercessationofthemedication.OphthalmologyC115:1540-1544,C20087)KuboCS,CIwatakeCA,CEbiharaCNCetCal:VisualCimpairmentCinCParkinson’sCdiseaseCtreatedCwithCamantadine:caseCreportCandCreviewCofCtheCliterature.CParkinsonismCRelatCDisordC14:166-169,C20088)HughesCB,CFeizCV,CStebenCBCetCal:ReversibleCamanta-dine-inducedcornealedemainanadolescent.CorneaC23:C823-824,C20049)LeeCPY,CTuCHP,CLinCCPCetCal:AmantadineCuseCasCaCriskfactorCforCcornealCedema:ACnationwideCcohortCstudyCinCTaiwan.AmJOphthalmolC171:122-129,C201610)KimCYE,CYunCJY,CYangCHJCetCal:AmantadineCinducedCcornealedemainapatientwithprimaryprogressivefreez-ingCofgait.JMovDisordC6:34-36,C201311)OkumuraN,KoizumiN,KayEPetal:TheROCKinhibi-toreyedropacceleratescornealendotheliumwoundheal-ing.InvestOphthalmolVisSciC54:2493-2502,C201312)OkumuraN,OkazakiY,InoueRetal:E.ectoftheRho-associatedkinaseinhibitoreyedrop(Ripasudil)oncornealendothelialwoundhealing.InvestOphthalmolVisSciC57:C1284-1292,C2016***

基礎研究コラム 16.制御性T細胞(Treg)について

2018年9月30日 日曜日

制御性T細胞(Treg)について制御性T細胞とは制御性T細胞(regulatoryTcell:Treg)は坂口志文らによって1995年に同定された比較的新規のT細胞のサブセットで,免疫応答に抑制的に働きます.Tregは自己免疫疾患,炎症性疾患,アレルギー反応,臓器移植における拒絶反応などで免疫抑制的に働く一方で,Tregが過剰に働くと癌細胞に対する免疫応答を抑制して,癌の成長を助けてしまいます(図1).このことから,Tregの機能を人為的に操作する方法の開発は,免疫疾患,臓器移植,癌に対する新しい治療法につながると期待されています.T細胞やTregは,CTLA-4(cytotoxicT-lymphocyteassociatedantigen-4)やPD-1(programmedcelldeath1)などの免疫チェックポイント受容体を介して,その免疫能を制御しています.癌細胞は免疫系からの攻撃を回避するために,この免疫チェックポイント分子による免疫抑制機能を積極的に活用し,免疫逃避しています(図1).抗PD-1抗体のニボルマブ(商品名:オプジーボ)や抗CTLA-4抗体のイピリムマブ(商品名:ヤーボイ)はこの免疫チェックポイント受容体をブロックしてT細胞を活性化し,癌細胞を攻撃する目的で使用されています.眼の領域ではどうでしょうか眼の領域では,角膜移植免疫,ドライアイ炎症,ぶどう膜炎などで多くの研究が行われています.角膜移植における拒絶反応は,角膜移植によって新生した血管由来のレシピエントの免疫系細胞が,移植したドナー角膜を異物として認識し,エフェクターT細胞は標的である猪俣武範順天堂大学医学部眼科学教室角膜移植片を破壊します(図1).Tregは,エフェクターT細胞に対して抗原特異的働き,拒絶反応を抑制します.このTregを人為的に生体外で増幅し,抗原特異的にドナー角膜に誘導させることができれば,副作用なく角膜移植片に免疫寛容を成立させることができると期待されています.筆者らはこれまでに,血管新生を誘導した角膜に対する角膜移植(ハイリスク角膜移植)において,角膜移植片におけるTregの減少と,Tregの分化・維持に必須の遺伝子であるFoxp3の発現の低下が,拒絶反応の主座を担うエフェクターT細胞の抑制能の低下を引き起こしていることを明らかにしました.また,同研究から,抑制性サイトカイン(IL-10やTGF-b)の減少や免疫抑制性分子であるCTLA-4の発現の低下が,炎症性サイトカイン(IFN-g)を増加し,拒絶反応を誘導していることが明らかになりました.しかし,最近の研究結果からTregの分化状態はこれまで考えられてきたほど安定ではなく,ドライアイや炎症などの環境の変動に対し,Foxp3の発現および免疫抑制機能を失うことが明らかになってきました.ヒト生体内でのTregの増幅はむずかしく,Tregを用いた新規免疫抑制療法の臨床応用には,Tregの有効な体外増幅方法の開発やTregを安定的に誘導する免疫抑制経路を解明し,移植臓器に効率的に誘導することが重要です.今後の展望Tregは免疫抑制的に働き,副作用なく角膜移植片に免疫寛容を成立させることができると期待されていますが,ヒト生体内でのTregの増幅はむずかしく,有効な体外増幅法の開発が必要です.図1制御性T細胞(Treg)を介した新規免疫療法Treg:制御性T細胞,APC:抗原提示細胞,CTLA-4:cytotoxicT-lymphocyteassociatedanti-gen-4,PD-1:programmedcelldeath1,PDL-1,-2:pro-grammedcelldeath-ligand1,2.角膜移植では,CTLA.4やPD.1/PDL.1・PDL.2経路を介してTregを活性化させるこTregを介した新規免疫療法とでT細胞を抑制し,角膜移植片への免疫抑制を誘導する.癌細胞はCTLA.4やPD.1/PDL.1・PDL.2とTregの経路を活性化させることでT細胞からの免疫応答から逃避している.→抗CTLA.4抗体や抗PD.1抗体を使用して癌細胞によるT細胞の抑制を阻害する.(99)あたらしい眼科Vol.35,No.9,201812550910-1810/18/\100/頁/JCOPY

硝子体手術のワンポイントアドバイス 184.硝子体手術後の交感性眼炎(初級編)

2018年9月30日 日曜日

硝子体手術のワンポイントアドバイス●連載184184硝子体手術後の交感性眼炎(初級編)池田恒彦大阪医科大学眼科●はじめに交感性眼炎は片眼のぶどう膜損傷を伴う穿孔性眼外傷あるいは内眼手術後に,両眼の急性肉芽腫性ぶどう膜炎をきたす疾患である.内眼手術の原疾患としては,白内障,緑内障,網膜.離に加えて,硝子体手術の普及に伴い,硝子体手術の交感性眼炎の報告が増加している.筆者も過去に,網膜.離や増殖糖尿病網膜症に対する硝子体手術後に発症した交感性眼炎の症例を報告したことがある1~4).●硝子体手術後に発症する交感性眼炎の臨床的特徴自験例および既報を合わせて,硝子体手術後の交感性眼炎の臨床的特徴を列挙すると以下のようになる.1)複数回手術やシリコーンオイル注入眼,眼球癆に至ったような症例が起交感眼として多い.2)術後炎症の遷延が交感性眼炎の発症に何らかの誘因となっている可能性が考えられる.3)増殖糖尿病網膜症などでは,両眼とも視力不良眼が多く,交感性眼炎発症時の自覚症状に乏しいため,発見が遅れることがある.あるいは無症状のまま夕焼け状眼底に移行することもある(図1).4)術後の中間透光体の混濁などで眼底所見が捉えにくく,とくに両眼とも硝子体手術を施行した場合には,交感性眼炎発症時の所見を見逃しやすい.5)糖尿病黄斑浮腫例では,術後のフルオレセイン蛍光眼底検査(.uoresceinangiographyFA)所見が黄斑浮腫と紛らわしいことがある.6)交感性眼炎によって生じる眼痛や頭痛を,硝子体手術後の遷延痛と誤診することがある.図1増殖糖尿病網膜症の硝子体手術後に発症した交感性眼炎a:術前に糖尿病黄斑浮腫と線維血管性増殖膜を認める.b:術後炎症が遷延し,僚眼の視力も不良だったため,無自覚のまま経過して夕焼け状眼底に移行した.(文献3より引用)●早期発見のポイント片眼の手術施行例では,僚眼の状態に留意しながら注意深い経過観察を行う必要がある.種々の網膜硝子体疾患では,既存の眼底変化のため,通常の交感性眼炎や原田病のような典型的な滲出性網膜.離の所見が捉えにくいので,OCTやFA所見を参考にしながら的確に診断することが重要である.文献1)池田恒彦,張国中,今居寅男ほか:硝子体手術後に発症した脈絡膜.離を主病変とする交感性眼炎の3例.眼紀40:1258-1263,19892)田尻健介,南政宏,今村裕ほか:硝子体手術後に交感性眼炎をきたしたアトピー性網膜.離の1例.眼紀54:1001-1004,20033)小林崇俊,佐藤文平,今村裕ほか:自覚症状なく発症した硝子体手術後交感性眼炎の2例.眼科45:1321-1325,20034)木村大作,石崎英介,家久来啓吾ほか:硝子体再手術前に交感性眼炎を発症した網膜.離の1例.眼科手術21:385-388,2008(97)あたらしい眼科Vol.35,No.9,201812530910-1810/18/\100/頁/JCOPY

眼瞼・結膜:熱化学外傷と結膜変化

2018年9月30日 日曜日

眼瞼・結膜セミナー監修/稲富勉・小幡博人42.熱化学外傷と結膜変化相馬剛至大阪大学大学院医学系研究科眼科眼の熱化学外傷では,熱傷や化学物質によって角結膜が腐蝕し,重症例では広範な結膜や強膜壊死,輪部障害をきたし,高度な視力低下をもたらす.急性期では原因物質の洗眼,ステロイドによる消炎治療が重要である.慢性期においては輪部疲弊症に対する内科的,外科的な介入を要する.●はじめに眼の熱傷もしくは化学外傷では,角結膜が腐蝕することによって,眼表面の種々の障害の原因となる.とくに輪部が広範囲に壊死をきたす重症例では,角膜が結膜で被覆され著しい視力障害をきたす原因となる.本稿では眼における熱化学外傷とその結膜変化について概説する.C●化学外傷の原因化学外傷は工場や建設現場,実験室などにおいて化学薬品が眼に飛入することによって生じる.重症度は化学物質の種類,量,pH,接触時間に依存する.男性が約70%を占め,場所別では職場での発生が約C60%,家庭が約C30%と報告されている1).化学外傷は原因物質の種類から酸外傷,アルカリ外傷に分かれる.酸外傷の原因としては硫酸や硝酸,塩酸などがあり,酸は蛋白質を不可溶物質に変性させるため,組織透過性はアルカリと比較して低いといわれる.一方,アルカリ外傷は水酸化ナトリウムや石灰,セメント,アンモニア,水酸化カリウムなどの物質が原因となる.酸と異なり組織浸透性が高いため,重症化,長期化しやすい.C●化学外傷の眼所見問診にて原因物質の種類,量,接触時間および範囲,温度について聴取する.検眼鏡的診察を行う前に,まず,視診にて眼表面のみならず眼瞼や顔面皮膚などを確認する.検眼鏡的検査では角膜および結膜を中心にオキュラーサーフェスを注意深く観察する(図1).角膜ではまず上皮欠損の範囲を確認する.とくに輪部上皮がどの程度障害されているかは,後述するように重症度に大きく関係する.角膜実質については,軽度の熱化学外傷(95)0910-1810/18/\100/頁/JCOPY図1複数のアルカリ薬品による化学外傷の急性期広範囲の角膜上皮欠損,実質の白濁,結膜壊死を認める.耳側の輪部は一部残存している.表1熱・化学外傷急性期の重症度分類Grade結膜所見角膜所見C1結膜充血角膜上皮欠損なしC2結膜充血角膜上皮欠損ありC3a結膜充血あるいは部分的壊死全角膜上皮欠損輪部上皮一部残存C3b結膜充血あるいは部分的壊死全角膜上皮欠損輪部上皮完全消失C4半周以上の輪部結膜壊死全角膜上皮欠損輪部上皮完全消失であれば実質の影響は少ないが,中等度以上ではコラーゲン,蛋白が変性するため受傷部位の白濁が観察される.化学物質が内皮細胞に浸透すると,内皮細胞が変性し,内皮細胞密度の減少,重症例では水疱性角膜症に至る場合がある.一方,結膜については,充血,上皮欠損,壊死に注目して観察する.木下らは結膜所見(結膜充血,結膜壊死,輪部壊死)および角膜所見(角膜上皮欠損,輪部上皮欠損)を基にした化学外傷の重症度分類(表1)を提唱している2).部分的な角膜上皮欠損と結膜充血を認めるCgrade2までは軽症とし,全角膜上皮が欠損するも輪部上皮が一部残存あたらしい眼科Vol.35,No.9,2018C1251図2水酸化ナトリウムによる化学外傷の慢性期角膜輪部疲弊症となり,全周性に結膜が角膜内に侵入している.するCgradeC3aは中等度,輪部上皮が完全消失し,輪部の壊死を伴うCgradeC3b以上は重症としている.重症度は予後と相関し,gradeC3b以上では将来的に輪部疲弊症に至るリスクが高い.C●化学外傷の治療法受傷直後は,最低C15分以上,水道水などの汚染されていない流水で洗い流すよう指示する.診察時に結膜.のCpHを測定し,中性に近づくまで生理食塩水や滅菌精製水,BSSなどで洗眼する.初期の消炎が病勢のコントロールにきわめて重要である.感染症の発症に注意しながらステロイドの全身および局所投与を十分に行う.消炎と同時に速やかな角膜上皮の修復をはかることも重要である.上皮欠損が遷延すると感染症,角膜実質の融解やそれに伴う実質混濁のリスクがある.治療用ソフトコンタクトレンズの併用感染予防のため抗菌薬の点眼を併用する.GradeC3a以下の症例では輪部機能が残存しているため,治療用ソフトコンタクトレンズを含めた内科的治療によって上皮化が得られる場合が多い.Grade図3作業中の熱傷眼の慢性期角膜輪部疲弊症に伴い,下眼瞼が高度に瞼球癒着している.3b以上の症例で角膜輪部疲弊症に至り,眼表面が結膜で被覆された場合は,角膜上皮幹細胞を供給するためにドナー角膜を用いた角膜輪部移植や,角膜上皮もしくは培養口腔粘膜上皮細胞シート移植の適応となる(図2).C●熱傷原因としては加熱された固体(花火など)や液体(食用油,金属)の飛入,またまれではあるが爆発の火炎や輻射熱があげられる.熱傷による角膜障害の程度は対象物の温度および接触時間に比例する.基本的な治療戦略は化学腐蝕と同様であるが,熱傷の場合は眼瞼の組織の受傷を伴っている場合が多い.眼瞼外反症や内反症,拘縮などを合併している場合,オキュラーサーフェスの治療に先駆けて眼瞼の外科的治療を行う必要がある(図3).文献1)MorganSJ:Chemicalburnsoftheeye:causesandman-agement.BrJOphthalmolC71:854-857,C19872)木下茂:化学腐食,熱傷.角膜疾患への外科的アプローチ(眞鍋禮三,北野周作監),p46-49,メジカルビュー社,C19923)TsaiCRJ,CTsengCSC:HumanCallograftClimbalCtransplanta-tionCforCcornealCsurfaceCreconstruction.CCorneaC13:389-400,C1994☆☆☆1252あたらしい眼科Vol.35,No.9,2018(96)

抗VEGF治療:網膜静脈分枝閉塞症に伴う黄斑浮腫に対する抗VEGF療法の早期導入の有用性

2018年9月30日 日曜日

●連載監修=安川力髙橋寛二56.網膜静脈分枝閉塞症に伴う黄斑浮腫に対する抗VEGF療法の早期導入の有用性安田優介平野佳男名古屋市立大学大学院医学研究科視覚科学教室網膜静脈分枝閉塞症(BRVO)における視力低下の主因は黄斑浮腫である.抗CVEGF療法の登場で劇的な治療効果が得られているが,再発例,遷延例などでたびたび苦渋する.本稿では,BRVOの黄斑浮腫遷延の原因解明とそれに対する治療への応用に関して,筆者らの見解を概説する.BRVOにおける黄斑浮腫の遷延と毛細血管瘤抗血管内皮増殖因子(vascularCendothelialCgrowthfactor:VEGF)療法の登場で,網膜静脈分枝閉塞症(branchCretinalCveinCocclusion:BRVO)の黄斑浮腫治療は一変した1).抗CVEGF療法は非常に有効であるが,再発と遷延化,それに伴う頻回の通院と注射が問題である.筆者らはCBRVOの黄斑浮腫の遷延に毛細血管瘤形成が関与することを報告した2).また,抗CVEGF療法がステロイド治療よりも毛細血管瘤形成を抑制すること,抗CVEGF療法を発症後C3カ月以内の早期に開始することで毛細血管瘤形成や黄斑浮腫遷延が抑制されることも報告した2).以前の動物実験の報告3)では,VEGF蛋白を硝子体内に投与することで毛細血管瘤や網膜無灌流領域が形成されることが示唆されており,VEGFが毛細血管瘤などの微小血管障害に関与している可能性がある.さらに,BRVOにおいて毛細血管瘤が形成された症例では抗CVEGF療法が効きにくいとの報告4)もあり,毛細血管瘤が形成される前にCVEGFをしっかりと抑制することが,黄斑浮腫の遷延化には有効である可能性がある.以下に実際の症例を提示する.対象BRVOに伴う黄斑浮腫に対し,ラニビズマブ硝子体内注射を導入期なしで必要時に投与し,12カ月間経過観察可能であったC2症例について提示する.診断後C1カ月以内にラニビズマブ硝子体内注射を施行し,その後毎月診察し,中心網膜厚(centralCretinalCthickness:CRT)がC250Cμm以上か,黄斑部の滲出性変化残存を再投与基準とした.症例142歳,女性.高血圧治療中.1カ月前から右眼の視力低下を自覚し,当院を受診.初診時右眼矯正視力は0.1で,右眼の前眼部,中間透光体に特記すべき異常はなく,眼底検査で網膜出血,軟性白斑,黄斑浮腫を認めた(図1a).光干渉断層計検査で.胞様黄斑浮腫と漿液性網膜.離を認め,CRTはC699Cμmであった(図1c).フルオレセイン蛍光眼底造影(.uoresceinCangiogra-phy:FA)では網膜血管からの著明な蛍光漏出と網膜無灌流領域と思われる低蛍光がみられた(図1b).以上よりCBRVOと診断し,発症後C1.5カ月でラニビズマブ硝子体内注射を行った.治療後C12カ月で右眼矯正視力は1.2に改善した.網膜出血と軟性白斑は減少し(図1d),黄斑浮腫も消失した(図1f,CRTはC225Cμm).眼底後極部には毛細血管瘤の形成は認めなかった(図1e).その間,ラニビズマブ硝子体内注射をC3回施行し,その他の治療は行わなかった.早期の治療介入により,毛細血管瘤の形成を認めず,比較的少ない注射回数で視力改善が可能であった.症例271歳,女性.既往歴なし.4カ月前から右眼の視力低下を自覚し,当院を受診.初診時右眼矯正視力はC0.6で,両眼ともに軽度の白内障があり,右眼の眼底所見は網膜出血と黄斑浮腫であった(図2a).光干渉断層計検査で黄斑浮腫を認め,CRTはC513Cμmだった(図2c).FAで網膜血管からの蛍光漏出と網膜出血による蛍光遮断を認めたが,網膜無灌流領域と思われる所見はみられなかった(図2b).以上よりCBRVOと診断し,発症後4.5カ月でラニビズマブ硝子体内注射を行った.3回注射後に一時黄斑浮腫は消退したものの(図2f),治療後12カ月で黄斑浮腫の再発がみられた(図2g,CRTは269Cμm).矯正視力はC1.0に改善し,網膜出血は減少していた(図2d).FAでは,眼底後極部に毛細血管瘤の形成とそこからの蛍光漏出を認めた(図2e).12カ月間でラニビズマブ硝子体内注射をC7回施行し,その他の治療は行わなかった.治療介入が遅れ,毛細血管瘤が形成され,視力は改善したものの黄斑浮腫が遷延し,多くの注射回数を必要とした.(93)あたらしい眼科Vol.35,No.9,2018C12490910-1810/18/\100/頁/JCOPY図1症例1:早期治療介入例(majorBRVO)a:初診時の眼底所見.Cb:初診時のフルオレセイン蛍光眼底造影(FA)所見.後期像.Cc:初診時の光干渉断層計所見.Cd:12カ月後の眼底所見.Ce:12カ月後のCFA所見.早期像.Cf:12カ月後の光干渉断層計所見.発症後C12カ月で,毛細血管瘤の形成は認めず黄斑浮腫は消退した.C図2症例2:治療介入遅延例(macularBRVO)a:初診時の眼底所見.Cb:初診時のフルオレセイン蛍光眼底造影(FA)所見.後期像.Cc:初診時の光干渉断層計所見.Cd:12カ月後の眼底所見.Ce:12カ月後のCFA所見.早期像.Cf:3回ラニビズマブ硝子体注射後の光干渉断層計所見.Cg:12カ月後の光干渉断層計所見.3回ラニビズマブ注射後に黄斑浮腫は一時消退したものの,発症後C12カ月で後極部に毛細血管瘤が形成され,同部からの蛍光漏出所見を認め,黄斑浮腫は残存した.おわりにBRVOにおける黄斑浮腫に対する抗CVEGF療法早期導入の有用性について,代表症例を提示して説明した.BRVOにおける黄斑浮腫の遷延化抑止,患者の負担軽減につながることを期待する.文献1)CampochiaroCPA,CHeierCJS,CFeinerCLCetCal:RanibizumabCformacularedemafollowingbranchretinalveinocclusion.1250あたらしい眼科Vol.35,No.9,2018Six-monthprimaryendpointresultsofaphaseIIIstudy.OphthalmologyC117:1102-1112,C20102)TomiyasuT,HiranoY,YoshidaMetal:MicroaneurysmscauseCrefractoryCmacularCedemaCinCbranchCretinalCveinCocclusion.CSciRep6:29445,C20163)TolentinoCMJ,CMillerCJW,CGragoudasCESCetCal:Intravitre-ousCinjectionsCofCvascularCendothelialCgrowthCfactorCpro-duceretinalischemiaandmicroangiopathyinanadultpri-mate.Ophthalmology103:1820-1828,C19964)HasegawaT,KawanoT,MarukoIetal:Clinical.ndingsofCeyesCwithCmacularCedemaCassociatedCwithCbranchCreti-nalCveinCocclusionCrefractoryCtoCranibizumab.CRetinaC38:C1347-1353,C2018(94)C

緑内障:OCTによる乳頭周囲脈絡網膜萎縮解析

2018年9月30日 日曜日

●連載219監修=岩田和雄山本哲也219.OCTによる乳頭周囲脈絡大久保真司おおくぼ眼科クリニック/金沢大学医薬保健研究域医学系眼科学網膜萎縮解析宇田川さち子金沢大学医薬保健研究域医学系眼科学従来,乳頭周囲脈絡網膜萎縮(PPA)と近視性コーヌスの鑑別は,臨床的に重要にもかかわらず,検眼鏡的には困難とされてきた.しかし,組織学的には鑑別可能とされ,近年,OCTにより臨床的に同定可能となり,CPPAb域とCPPACg域に分類されるようになった.臨床的には,従来のCPPAがCPPACb域に,近視性コーヌスがCPPAg域に対応する.C●乳頭周囲脈絡網膜萎縮と近視性コーヌス乳頭周囲脈絡網膜萎縮(parapapillaryCatrophy:PPA)は,健常者に比して緑内障眼で高頻度にみられ,その面積も大きいと報告されている1).PPAの面積は,視野指標のCmeanCdeviation(MD)とCcorrectedCpatternstandarddeviation(CPSD)によく相関し,PPAの存在の有無と緑内障の進行が関連し,緑内障の視野障害の進行に従ってCPPAも拡大すると報告されており2),PPAは緑内障性視神経障害に必ずしも特異的な変化ではないとしても,乳頭部のなんらかの脆弱性を示唆する所見と考えられている2,3).従来,検眼鏡的にはCPPAは視神経乳頭に近いCPPACb域とその周辺にあるCPPACa域に分類され,PPACa域は色素のムラとされ,PPACb域はその内側の強膜や脈絡膜血管の透見性が亢進している部位とされてきた.PPACa域はほとんどすべての正常眼においてもみられるが,PPACb域は正常眼ではC15~20%程度にしかみられないとされている.緑内障眼では,CPPAa域もCPPACb域も正常眼に比べて有意に広がりが大きく,加えてCPPACb域の頻度は正常眼に比べて高いとされている.したがってCPPAのなかでも,とくにCPPAb域は病的意義が大きい4).一方,従来CPPAと近視眼における近視性コーヌスの鑑別は検眼鏡的には困難であるとされてきたが,とくにわが国では近視眼が多く,さらに近視が緑内障のリスクファクターのひとつとされており,その鑑別は臨床的に重要である.PPAが加齢性変化および緑内障性変化に伴う変化であるのに対して,近視性コーヌスは眼軸長の延長に伴う変化と考えられてきた.摘出眼による組織学的検討では,緑内障眼のCPPACb域にはCBruch膜が存在するが,高度近視眼にみられる近視性のコーヌスの部位にはCBruch膜が存在せず,両者は組織学的に異なることが報告されている5).しかし,臨床的には組織を見ることはできず,両者の鑑別は困難であった.C(91)●OCTを用いたPPAの分類2012年にCJonasらは,これまでのCPPACb域は,Bruch膜端から乳頭縁までのCPPACg域と,Bruch膜端から網膜色素上皮(retinalCpigmentCepithelium:RPE)端までのCPPACb域に組織学的に分類可能であると報告した6).すなわち,光干渉断層計(opticalCcoherenceCtomogra-phy:OCT)で見てCBruch膜が存在しないCPPACg域が,従来の組織学的にCBruch膜が存在しない近視性のコーヌスに対応し,OCTでCBruch膜が存在するCPPACb域が,従来の組織学的にもCBruch膜が存在する緑内障に関連するとされるCPPACb域に対応することになる.臨床的には検眼鏡では鑑別が困難であったので,従来のCPPAb域はCPPACg域とCPPACb域が合わさったものであった.OCTではCBruch膜端やCRPE端が同定可能であるので,OCTを用いれば,組織を採らなくてもCPPACb域とCPPACg域の分類が可能になった(図1).C●PPAg域とPPAb域の解析と近視と緑内障の関係OCTでCPPACg域とCPPACb域が分類可能であることより,それに基づいた研究が報告されている.Kimら7)は,CPPAb域をCOCTにてCBruch膜の有無で分類し,PPACb域(Bruch膜のあるCPPACb域)のある眼は,PPACb域がない眼やCPPACg域(Bruch膜のないCPPACb域)のある眼に比べて網膜神経線維層厚の菲薄化速度が速かったことを報告している.また,ViannaJRら8)は近視緑内障眼と近視コントロール眼でCPPACg域とCPPACb域を比較し,CPPAb域は近視緑内障眼で近視コントロール眼に比べて有意に大きく,PPACg域は近視緑内障眼で近視コントロール眼に比べて有意に小さいが,その分布は両群で大きくオーバーラップすることを報告している.OCTを用いたCPPAの分類により,今後,近視と緑内障の関係が飛躍的に明らかになることが期待される.あたらしい眼科Vol.35,No.9,2018C12470910-1810/18/\100/頁/JCOPY図1左開放隅角緑内障眼(59歳,女性)屈折:円柱レンズ-2.75D,円柱レンズ-0.25DCAx50°.眼軸長:24.46Cmm.Ca:乳頭写真.眼底写真ではCPPACg域とCPPACb域を識別することは困難と思われる.b:SpectralisCOCT(HeidelbergCEngineering社)の乳頭周囲絡膜網脈萎縮(PPA)解析ソフトによる乳頭解析のCBスキャン画像のC1枚.水色線が臨床的乳頭縁の位置である.赤点はCBruch膜端.青点線は網膜色素上皮端.赤両矢印が,PPACg域(Bruch膜が含まれない),青両矢印はCPPACb域(Bruch膜が含まれる)を示す.OCTにてCPPACg域とCPPACb域の同定が可能である.c:PPA解析結果.PPACg域(赤色の部分)の面積はC1.23CmmC2,PPACb域(紫色の部分)の面積はC3.87CmmC2と表示される.文献aryCangleCclosureCglaucoma.CBrCJCOphthalomolC82:286-289,C19981)JonasCJB,CBuddeCWM,CPanda-JonasCS:OphthalmoscopicC6)JonasCJB,CJonasCSB,CJonasCRACetCal:ParapapillaryCatro-evaluationoftheopticnervehead.SurvOphthalmolC43:Cphy:histologicalCgammaCzoneCandCdeltaCzone.CPlosCOneC293-320,C20097:e47237,C20122)UchidaCH,CUgurluCS,CCaprioliCJ:IncreasingCperipapillaryC7)KimCYW,CLeeCEJ,CKimCTWCetCal:MicrostructureCofCatrophyisassociatedwithprogressiveglaucoma.COphthal-b-zoneCparapapillaryCatrophyCandCrateCofCretinalCnerveCmologyC105:1542-1545,C1998.berlayerthinninginprimaryopen-angleglaucoma.Oph-3)日本緑内障学会緑内障診療ガイドライン作成委員会:緑内thalmologyC121:1341-1349,C2014障診療ガイドライン(第C4版).日眼会誌122:5-53,C20188)ViannaJR,MalikR,DanthurebandaraVMetal:Betaand4)JonasJB:ClinicalimplicationsofperipapillaryatorophyingammaCperipapillaryCatrophyCinCmyopicCeyesCwithCandCglaucoma.CurrOpinOphthalmolC16:84-88,C2005withoutCglaucoma.CInvestCOphthalmolCVisCSciC57:3103-5)DichtlCA,CJonasCJB,CNaumannCGO:HistomorphometryCofC3111,C2016Ctheopticdiscinhighlymyopiceyeswithabsolutesecond-1248あたらしい眼科Vol.35,No.9,2018(92)C

屈折矯正手術:EDOF眼内レンズIC-8

2018年9月30日 日曜日

監修=木下茂●連載220大橋裕一坪田一男220.EDOF眼内レンズIC.8小島隆司慶應義塾大学医学部眼科学教室名古屋アイクリニックIC-8(AcuFocus社)は眼内レンズの中に老視矯正用の角膜内リングと同様のリングが挿入されたピンホール眼内レンズである.焦点深度を深くすることで,中間から近方の裸眼視力の改善を目的としており,extendeddepthoffocus(EDOF)眼内レンズのカテゴリーに分類される.ピンホール効果により,弱い不正乱視にも対応できることや,グレアやハローといった夜間視の問題が小さいことが特徴である.C●はじめに現在,白内障手術の際に用いられる多焦点眼内レンズ(intraocularClens:IOL)は,屈折型と回折型に大きく分けられ,また回折型のなかにも,焦点距離が異なるタイプやC3個の焦点距離をもつC3焦点CIOL(トリフォーカルIOL)がある.また,もう一つのタイプとして,単焦点に近い見え方を保ちつつ,中間から手元の距離の裸眼視力を向上させたCextendedCdepthCofCfocus(EDOF)IOLも登場している.現段階ではシンフォニー(ジョンソン・エンド・ジョンソン)がわが国で用いられている.今回紹介するCIC-8(AcuFocus社)は,EDOFIOLのカテゴリーに入るレンズである.しかし,多焦点性を確保している原理は他と異なり,ピンホール効果によって焦点深度を深くしている.C●IC.8の概略ワンピース型の疎水性アクリルCIOLである.屈折率はC1.48,前面が非球面形状である.IOL中心部に,ナノ粒子の炭素素材が入ったポリフッ化ビニリデン(PVDF)製のリングが挿入されている(図1).この部分の直径はC3.23Cmmで,アパーチャー(開口部)はC1.36Cmmである.図からはわからないが,リングの黒色部分にはC3,200個の小孔が開いている.細隙灯顕微鏡で拡大して観察すると小孔が認められる.この小孔は網膜照度が低下するのを防ぐために設けられている.C●IC.8の特徴ピンホールCIOLの特徴として,遠方から近方まで良好な裸眼視力が得られることが報告されている1).しかし,他のCEDOFCIOLと同様,近方視力はC2焦点回折型多少点CIOLよりは劣る傾向がある.またもう一つの特徴として,回折型多焦点CIOLに認められるようなワク(89)0910-1810/18/\100/頁/JCOPY1.36mm3.23mmシービジョン,グレアやハローなどの夜間視の問題が小さいというメリットがあげられる.C●IC.8の基本的な使用方法メーカー推奨の方法としては,優位眼は単焦点CIOLを正視狙いで挿入する.非優位眼にCIC-8を-0.75D狙いで挿入する.通常のCIOLで-0.75Dに合わせると遠方裸眼視力が低下するが,IC-8の場合,ピンホール効果が遠方視力にも影響するため,ほとんど遠方裸眼視力の低下は起こらない.手術は通常の白内障手術で行うが,ピンホールが偏位すると視機能低下が起こる可能性があるので,連続円形切.は確実に行い,IOLが前.で完全にカバーできるように行うことが重要である.フォーダブルCIOLでインジェクターを用いて挿入可能であるが,リング部分へのダメージを防ぐために,あまり小さく折りたためず,このためにC3.5Cmmの切開が必要になる.このため,筆者あたらしい眼科Vol.35,No.9,2018C1245図2提示症例における白内障手術前の角膜トポグラフィー所見両眼に角膜中央部に角膜不正乱視を認める.は強主経線切開を用いている.C●IC.8が向く症例術後のグレアやハローなどの夜間視の問題をできるだけ避けたい場合はよい適応と思われる.また,近方視に関しては,細かい文字を見る際は眼鏡をかけることを許容できることも必要と思われる.角膜不正乱視が多少あり,通常の多焦点CIOL挿入をためらう場合もよい適応と思われる.ピンホール効果によって不正乱視の影響を軽減できるので,より効果的である.ただし,重度の不正乱視は術後にハードコンタクトレンズがないと矯正できないこともあるので,あくまで軽度の不正乱視が適応である.多焦点CIOL希望であるが,レーシック後や放射状角膜切開術後など,IOL度数計算の誤差が大きくなりそうな症例もよい適応と思われる.ある程度の誤差であれば,その影響をピンホール効果によって軽減可能である.C●IC.8が向かない症例ほとんどの患者は左右の明るさに違和感がないが,トンネルの中など暗所で少し暗く感じると患者が訴える場合がある.IC-8のリング部分には小孔が設けられているものの,網膜照度の低下が起こりうる.このため,網膜疾患や緑内障などを合併している場合は,他の多焦点IOLと同様に適応外であると考えたほうがよい.グレア,ハローなどの夜間視の問題は小さいとされるが,単焦点に比較すると若干感じる場合もあるので,あまりにグレア,ハローに神経質である場合も慎重に考えるべきである.C1246あたらしい眼科Vol.35,No.9,2018図3IC.8挿入術後の細隙灯顕微鏡写真●症例76歳,男性.白内障手術希望で初診となる.手術後はできるだけ眼鏡で過ごしたいと,多焦点CIOLでの手術を希望された.視力は右C0.5(矯正不能),左C0.5(0.7C×sph+0.75D(cyl-1.5DCAx95°)であった.術前検査で図2に示すように,両眼ともに角膜中央部に不正乱視を認めた.ドライアイなど角膜上皮障害などは認めず,眼底検査でもとくに異常を認めなかった.通常の多焦点CIOLは避けたほうがよいことを伝え,ピンホールCIOLであれば,不正乱視の影響を回避しつつ,近方視力も単焦点CIOLよりも良好な視力が得られる可能性があることを説明し,また上記のデメリットについても詳しく説明したのち,同意を得てCIC-8を用いた白内障手術を計画した.角膜不正乱視は右眼のほうが強いため,右眼にCIC-8,左眼に単焦点CIOLを挿入した.術後C1カ月時点での遠方視力は右眼C1.2(1.5C×sph-0.5D),左眼C0.7(1.0C×sph+0.5D(cyl-1.5DA90°)であり,中間(70cm),近方(40cm)の裸眼視力は,それぞれ右眼C0.8,0.7,左眼0.6,0.5であった.両眼での中間,近方の裸眼視力はそれぞれC0.9,0.8であった.右眼のほうが,術後アンケートでもグレア,ハローなどの訴えはなく,左右の明るさ感覚でも差を感じないとのことで,満足度はC10点満点でC10点であった(図3).文献1)GrabnerCG,CAngCRE,CVilupuruCS:TheCsmall-apertureIC-8intraocularlens:AnewconceptforaddeddepthoffocusCinCcataractCpatients.CAmCJCOphthalmolC160:1176-1184,C2015(90)

眼内レンズ:針付きマイクロチューブを用いた眼内レンズ強膜内固定術

2018年9月30日 日曜日

眼内レンズセミナー監修/大鹿哲郎・佐々木洋382.針付きマイクロチューブを用いた湯田健太郎横浜市立大学大学院医学研究科眼科学教室眼内レンズ強膜内固定術眼内レンズ強膜内固定術における眼内レンズ支持部の眼外への引き出しは慣れを要し,不用意な操作は合併症を引き起こすことがある.本稿では,術式の安全性と簡便性の向上を目的に開発した針付きマイクロチューブによる眼内レンズ支持部の引き出し方法を紹介する.●はじめに眼内レンズ強膜内固定術は,眼内に挿入した眼内レンズの支持部を眼外に引き出し,強膜内に埋め込むことで眼内レンズを眼球内に固定することができる術式としてGaborらやAgarwalらにより報告された1,2).眼内レンズ縫着術とは異なり,縫合糸を用いずに眼内レンズを固定することができるため,縫合糸に起因する合併症なく短時間で手術を終えることができる.眼内レンズ支持部を眼外に引き出す方法として,鉗子で支持部を把持して引き出す方法と,眼内で支持部を鋭針に挿入し,鋭針とともに引き出す方法が広く普及している3,4).両手法ともに眼内で眼内レンズ支持部の先端付近を鑷子で把持する必要があるが,眼内における眼内レンズは支えがないために不安定であり,支持部の操作にストレスを感じることがある.また,不用意な眼内操作は角膜内皮損傷や出血,レンズ支持部の損傷などの合併症の原因となるため,眼内レンズの支持部引き出しには細心の注意を払う必要がある.以下に,眼内での眼内レンズ支持部の把持を必要としない術式である「針付きマイクロチューブを用いた眼内レンズ強膜内固定術」を解説する.●手術方法本術式には生体への安全性が高いシリコーン素材でできたマイクロチューブを用いる.マイクロチューブの内径は0.2mm,外径は0.3mmである.チューブには全長18mmの鋭針(以下,チューブ針)が接続されている(図1).①チューブ針を角膜輪部より1.75mmで,8時から10時方向に経結膜的に強膜を穿通する(図2a).②10時方向よりチューブ針を眼内に挿入し(図2b),(87)0910-1810/18/\100/頁/JCOPY図1マイクロチューブ瞳孔領中央で4時方向より穿通した27G針(図2c)の内腔にチューブ針の先端を挿入する(図2d).③27G針を引き抜くことで,4時方向よりチューブ針とチューブが眼外に引き出される(図2e).④チューブ針を4時方向から強膜を穿通し,2時方向より引き出す(図2f).以上の操作によりマイクロチューブは強膜内の2~4時と8~10時方向を通り,眼内の4時と10時にかけて眼球中央を通ることになる.⑤眼内レンズを挿入する切開創より,レンズフックを用いてチューブ中央部位を眼外に引き出す(図2g).⑥チューブの中央部位を切断後(図2h),インジェクター内に充.された眼内レンズ(エタニティーナチュラルNX70,参天製薬)の先行支持部を4時側のチューブ内に挿入する(図2i).⑦眼内レンズを眼内に挿入する(図2j).⑧後方支持部を10時側のチューブ内に挿入し(図2k),眼内に入れる(図2l).⑨マイクロチューブを引き出すことで眼内レンズの支持部が眼外に引き出される(図2m).⑩引き出された眼内レンズ支持部の先端をパクレンで焼灼を行った後(図2n),強膜内に固定する(図2o).●術後成績マイクロチューブを用いた眼内レンズ強膜内固定術をあたらしい眼科Vol.35,No.9,20181243施行した無水晶体眼の6例6眼(平均年齢70.5歳)において,眼内レンズの大きな傾斜は認められず,良好な視機能を得られた(平均矯正視力0.9).2例において散瞳下の瞳孔径が4mmと散瞳不良であったが,瞳孔拡張することなく眼内レンズを挿入固定することができた.1例で術後低眼圧を認めたが,術後3日目で低眼圧は改善した.他に特記すべき合併症は認められなかった.術後の角膜浮腫は少なく,角膜内皮減少量も軽度であった(術前平均2,467個/mm2,術後平均2,230個/mm2).●おわりに眼内レンズ強膜内固定術は,散瞳不良例では慣れた術者でも眼内レンズの支持部の引き出しに苦慮することがある.マイクロチューブを使用した眼内レンズ強膜内固定術は眼内でレンズ支持部を把持する必要がないため,瞳孔径に依存されることなく手術を終えることができる.本手法で用いたマイクロチューブは開発段階であり,図2手術方法チューブ針の形状,チューブの径,チューブの素材など検討すべき項目がある.また,さまざまな種類の眼内レンズでの使用経験も必要である.今後さらなる検証を行い,報告したい.文献1)GaborSG,PavilidisMM:Suturelessintrascleralposteriorchamberintraocularlens.xation.JCataractRefractSurg33:1851-1854,20072)AgarwalA,KumarDA,JacobSetal:Fibringlue-assist-edsuturelessposteriorchamberintraocularlensimplanta-tionineyeswithde.cientposteriorcapsules.JcataractRefractSurg34:1433-1438,20083)OhtaT,ToshidaH,MurakamiA:Simpli.edandsafemethodofsuturelessintrascleralposteriorchamberintra-ocularlens.xation:Y-.xationtechnique.JCataractRefractSurg40:2-7,20134)YamaneS,SatoS,Maruyama-InoueMetal:Flangedintrascleralintraocularlens.xationwithdouble-needletechnique.Ophthalmology124:1136-1142,2017

コンタクトレンズ:コンタクトレンズの汚れ

2018年9月30日 日曜日

提供コンタクトレンズセミナーコンタクトレンズ処方さらなる一歩監修/下村嘉一47.コンタクトレンズの汚れ●はじめにコンタクトレンズ(CL)の汚れは日常臨床でよく経験する.CLの扱い方やケア方法が間違っている,あるいは手を抜いているという使用者側の問題であることも多いが,一生懸命真面目にケアをしているのに汚れが生じてしまうこともある.診察時には,汚れの原因を分析して適切な対応をとらなければならない.まずは,アレルギー性結膜炎のようなCLが汚れやすくなる疾患がないかを確認する必要がある.また,汚れの種類に応じた洗浄液の選択と,使い方の指導も必要である.ケア方法の間違いによる汚れでは,どこが問題なのかをよく聴かなければならない.レンズ素材やデザインによっても汚れ方が異なるので,素材や種類変更が必要なこともある1).●ハードコンタクトレンズの汚れハードCL(HCL)に多い,水をはじくような汚れがある(図1).フルオレセインで染色して瞬きを繰り返してもらうと,そのたびに水があるところと,ないところができてしまう.これは,表面の水濡れ性が悪いときに起こりやすい.HCLに限らず,CL表面は水濡れ性がと月山純子社会医療法人博寿会山本病院眼科,近畿大学眼科学教室ても大切である.水濡れ性が悪いと,見え方が悪いだけでなく,乾燥感や異物感が強くなってしまう.表面加工や素材そのものの工夫で水濡れ性を高めるようにされているが,方法はメーカーによってさまざまである.水濡れ性が悪くなる原因としてまず考えられるのが油性成分の付着である.化粧品などの油性成分がレンズ表面に付いてしまうと,その部分だけ水濡れ性が悪くなる.意外に落とし穴なのがハンドクリームである.レンズを扱うスタッフの手にハンドクリームの成分が残っていることもあるので,注意が必要である.水濡れ性の悪い部分ができてしまった場合は,洗浄液を用いてしっかり洗わなければいけない.油性汚れにはイソプロピルアルコールが入った洗浄液がよい.HCL用には「ジェルクリンW」(SEED社)があり,ソフトCL(SCL)にも使える.また,研磨剤+界面活性剤が入った洗浄液が有効なこともある.図1の症例は,研磨剤+界面活性剤が入った洗浄液「クリーン&ウェット」(サンコンタクトレンズ社)で洗浄することによって改善した(図2).ただし,メニコンのレンズ全般とシードの「S1」というレンズは表面に特殊加工が施されており,研磨剤により表面加工にダメージを与え,かえって図1レンズ表面の水濡れ性が低下した状態図2研磨剤+界面活性剤による洗浄液で洗浄後(85)あたらしい眼科Vol.35,No.9,201812410910-1810/18/\100/頁/JCOPY水濡れ性を低下させてしまうので注意が必要である.患者から預かったHCLの種類がわからないときには,研磨剤入り洗浄液の使用は避けるようにする.研磨剤入りのHCL用洗浄液には,ほかに「スーパークリーナー」(ボシュロム社)などがある.●ソフトコンタクトレンズの汚れSCLの汚れも,基本的にはHCLと同じであるが,フルオレセイン染色ができないため水濡れ性の低下がわかりにくい.従来素材のハイドロゲルレンズは親水性素材でできているため油性汚れは起こりにくいが,近年,処方が増えているシリコーンハイドロゲルレンズでは,シリコーンがもともと親油性なので,油性汚れが付きやすい.各メーカーはさまざまな工夫をすることで表面を親水化させて水濡れ性を高めているが,ひとたび化粧汚れなどの油性汚れが付くと落としにくくなる.SCLのケアは,1種類の液で洗浄もすすぎも保存もできるマルチパーパスソリューションというカテゴリーのものが用いられることが多い.しかし,これだけでは洗浄力が不十分なことが多いので,洗浄液を併用することを勧めたい.油性汚れにはHCLと同様にイソプロピルアルコール入りの洗浄液が有効である.前述のHCL,SCL両用の「ジェルクリンW」,SCL用では「レンズクリア」(ロート製薬)がある.●汚れを付きにくくする基本指導汚れた手でCLを扱わないように,CLを触る前には必ず石鹸で手をしっかり洗う指導をすることが大切である.また,化粧をする人には,CLを装用したまま化粧落とし(クレンジング)をしないよう,必ず先にCLをはずすこと,また化粧で汚れた手でCLを扱わないよう,先にCLを装用してから化粧をするように指導する.どちらもCLが最初なので「CLファースト」と覚えるとよい2).●おわりにインターネットでのCL購入が増えている.眼科受診をしておらず,ケアが間違っているためにCLが汚れている人も多い.眼科受診時に汚れの原因を的確に解決できると,眼科受診の重要性を理解してもらいやすい.汚れ対策に精通して,安全で快適なCL装用をめざしたい.文献1)月山純子:CLケア汚れ対策を中心に.日コレ誌54:202-207,20122)月山純子:CLケア教室第43回化粧とCL.日コレ誌55:46-48,2013PAS109

写真:涙液減少型ドライアイに合併したサルコイドーシス

2018年9月30日 日曜日

写真セミナー監修/島﨑潤横井則彦412.涙液減少型ドライアイに合併した青木崇倫永田健児横井則彦京都府立医科大学大学院医学研究科サルコイドーシス視覚機能再生外科学図2図1のシェーマ①多数の角膜糸状物C②CSPKC図1初診時フルオレセイン染色像角膜下方から中央にかけての密な上皮障害,結膜上皮障害,および多数の角膜糸状物を認める.図3治療後フルオレセイン染色像上・下涙点プラグの挿入後,著明な角膜上皮障害の改善がみられる.図4鼻側部皮疹写真鼻側部にC5~8Cmm程度の淡紅の浸潤性紅斑が集積し,紅斑はやや隆起と圧痛を呈していた.(83)あたらしい眼科Vol.35,No.9,2018C12390910-1810/18/\100/頁/JCOPYサルコイドーシスは壊死を伴わない類上皮細胞肉芽腫を全身性に発症する疾患である.肺,リンパ節,眼,皮膚,肝臓,心臓,唾液腺など全身の臓器に病変が生じ,肺病変についで眼病変は2番目に多いとされる.全身性サルコイドーシスの初期病変として,しばしばぶどう膜炎が認められ(20~50%),ぶどう膜炎の所見も多様性に富む.また,心サルコイドーシスの頻度は多くない(5%)が,致死的になりうるために留意が必要である1).眼科領域では肉芽腫性ぶどう膜炎が有名であり,国内のぶどう膜炎の原疾患でもっとも多い.そのほかに涙腺,結膜,眼窩腫瘤など眼外病変を引き起こすことも知られている2,3).症例はC67歳,女性で,前医にて虹彩炎,続発性緑内障,角膜上皮障害に対して治療していた.眼痛がレバミピド点眼で改善しないために当院に紹介となった.初診時所見として涙液メニスカス高が低く,フルオレセイン染色にて開瞼後のフルオレセインの上方移動が強く制限されており,角膜中央から下方にかけて密に点状表層角膜症(super.cialCpunctateCkeratitis:SPK)が分布し,角結膜上皮障害,および角膜糸状物がみられることから,重症涙液減少型ドライアイを呈する所見と考えられた.また,ぶどう膜炎の所見として,角膜後面沈着物,前房内細胞,隅角結節,硝子体混濁も認めた.さらに,全身検査所見として両側肺門リンパ節腫脹,ACE上昇,顔面に結節性紅斑を認めた.鼻側部の紅斑部に対して皮膚科で行われた生検組織の病理組織学的異常所見から,サルコイドーシスと確定診断された.涙液減少型ドライアイに対する治療として,本症例では,上下涙点プラグ挿入と防腐剤フリーのベタメタゾン点眼,人工涙液点眼から開始したが,角膜上皮障害,角膜糸状物,自覚症状に著明な改善がみられた.わずかな硝子体混濁は残存したが,ぶどう膜炎も改善した.サルコイドーシスとドライアイの関連は以前から指摘されており4),これは類上皮細胞肉芽腫が主涙腺に生じることで涙腺肥大を呈し(42~63%),ドライアイに関与すると考えられている.反射性涙液分泌に関与する主涙腺において造影や生検での異常の報告5)があるが,涙液基礎分泌の大部分は副涙腺によるものと考えられており,本症例のような重症の涙液減少型ドライアイにおいては,主涙腺と副涙腺の両方が障害を受けている可能性があると考えられる.サルコイドーシスに伴うドライアイは,ぶどう膜炎や続発性緑内障が背景にあるためにステロイド点眼や緑内障点眼を併用していることが多い.そのために,それらの点眼治療そのものがドライアイの悪化因子となるために,少なくとも塩化ベンザルコニウムフリーの点眼液の選択が望ましいと思われる.また,サルコイドーシスを伴うドライアイでは涙液減少型ドライアイのサブタイプを呈するため,軽症例では水分分泌/ムチン分泌・産生点眼液,重症例においては涙点プラグを考慮する必要がある.文献1)澤幡美千瑠,杉山幸比古:疫学的視点からみたサルコイドーシスの病態と病因.日サ会誌35:17-25,C20152)中嶋花子,大原國俊,陳軍ほか:眼サルコイドーシスにおける結膜生検.日サ会誌21:47,C20013)大原國俊:眼サルコイドーシス.日本臨躰C60:1807-1812,C20024)StapletonCF,CAlvesCM,CBunyaCVYCetCal:TFOSCDEWSCIICEpidemiologyreport.OculSurf15:334-365,C20175)PasadhikaCS,CRosenbaumCJT:OcularCsarcoidosis.CClinCChestCMedC36:669-683,C2015