写真セミナー監修/島﨑潤横井則彦406.急性角膜水腫に伴う角膜穿孔細谷友雅兵庫医科大学眼科学講座図1角膜穿孔時の左眼前眼部写真角膜中央部に角膜浮腫と不均一な実質混濁を認める.Descemet瘤はなく,穿孔部位は明らかでない.炎症細胞浸潤は目立たず,眼脂,前房蓄膿などの感染徴候はないが,結膜充血を認める.図4前眼部OCT写真(SS.1000CASIA)角膜実質に複数の空隙を認めるが,穿孔部位は不明であった.図3前眼部フルオレセイン染色写真角膜中央部から房水流出を認め,周辺上皮は浮腫状である.上皮欠損は認めない.(67)あたらしい眼科Vol.35,No.3,2018C3490910-1810/18/\100/頁/JCOPY急性角膜水腫(acutehydrops)は,円錐角膜の重症例でしばしば認められる角膜浮腫である1).Des-cemet膜破裂を生じた部位で前房水に対するバリアがなくなり,角膜実質浮腫と上皮浮腫を生じたものであり,まれに角膜穿孔や感染をきたすことが報告されている2,3).急性角膜水腫に角膜穿孔を伴った症例を紹介する.症例:49歳,男性.主訴:左眼視力低下.現病歴:以前から円錐角膜を指摘されており,ハードコンタクトレンズ(hardcontactlens:HCL)を装用して加療中であった.視力は右眼(0.3C×HCL),左眼(0.3C×HCL)であった.夜間に眼のかゆみを感じて擦った後,起床時に左眼の急激な視力低下に気づいたが,急性角膜水腫と自己判断し,圧迫眼帯を行いC2日後に受診した.既往歴:急性角膜水腫右眼C2回,左眼C1回,アトピー性皮膚炎.受診時所見:左眼視力はC20Ccm指数弁(矯正不能)で,角膜中央部に実質浮腫と不均一な混濁を認めた(図1,2).前房深度は深く,前房蓄膿などの感染徴候はなかったが,結膜充血を認めた.Descemet瘤はなく,穿孔部位は明らかでなかったが,角膜中央部から房水流出を認め,周辺上皮は浮腫状であった(図3).上皮欠損は認めなかった.前眼部光干渉断層計(opticalCcoherencetomography:OCT)では,角膜実質に複数の空隙を認め,Descemet膜の.離も観察されたが,穿孔部位は不明であった.経過:レボフロキサシン点眼,炭酸脱水酵素阻害薬内服,治療用ソフトコンタクトレンズ装用で保存的に加療したところ,2日後には房水漏出はなくなり,3カ月後には瘢痕治癒したが,実質混濁が残存し,左眼視力は0.01(矯正不能)であった.Fuentesらは,平均C30カ月間の観察期間中にC5.8%の症例が急性角膜水腫を生じたと述べている4).目を擦ること,男性,アレルギー性結膜疾患,喘息,アトピー性皮膚炎,急性角膜水腫の既往,視力不良眼,ダウン症候群,前眼部COCT所見での急性角膜水腫発症前からの実質の菲薄化,大きな上皮/実質厚比,高輝度なCBowman層の描出などが急性角膜水腫発症のリスクファクターであるといわれている2,4,5).本症例も上記のリスクファクターを多数もっており,ハイリスク症例であったと考えられる.リスクファクターをもつ円錐角膜患者には日頃から目を擦らないように指導することがとくに必要であり,アトピー性眼瞼皮膚炎,アレルギー性結膜疾患をもつ患者にはかゆみのコントロールが急性角膜水腫の発症リスク減少に重要と考えられる.本症例では明らかな穿孔部位が細隙灯顕微鏡や前眼部OCTでは確認できなかったが,複数の実質内空隙を認め,Descemet膜の.離も観察されたことから,前房水がこの間隙を伝って上皮の脆弱な部位から漏出したものと考えられた.自己判断での圧迫眼帯が房水漏出を助長した可能性もあり,急性角膜水腫の治療として圧迫眼帯を励行するのは再考したほうがよいと考えさせられる症例であった.急性水腫を生じると角膜は膨化し,角膜厚は増加するが組織は疎であり,外傷や感染などの障害が加わると容易に穿孔しうるため,厳重に経過観察する必要がある.文献1)木下茂,下村嘉一:角膜浮腫,角膜クリニック(井上幸次,渡辺仁,前田直之ほか編),第C2版,p111,医学書院,20032)GrewalCS,CLaibsonCPR,CCohenCEJCetCal:AcuteChydropsCinthecornealectasias:Cassociatedfactorsandoutcomes.TrAmCOphthalmolSocC97:187-198,C19993)MeyerJJ,McGheeCN:Acutecornealhydropscomplicat-edbymicrobialkeratitis:CCaseseriesrevealspoorimme-diateCandClong-termCprognosis.CCorneaC35:1019-1022,C20164)FuentesCE,CSandaliCO,CElCSanharawiCMCetCal:AnatomicCpredictiveCfactorsCofCacuteCcornealChydropsCinCkeratoco-nus:CAnOpticalCoherenceTomographyStudy.Ophthal-mologyC122:1653-1659,C20155)BarsamCA,CBrennanCN,CPetrushkinCHCetCal:Case-controlCstudyCofCriskCfactorsCforCacuteCcornealChydropsCinCkerato-conus.BrJOphthalmolC101:499-502,C2017