光干渉断層血管撮影の機種による特徴CharacteristicsofOCTangiographyDevices野崎実穂*はじめに光干渉断層血管撮影(opticalcoherencetomographyangiography:OCTA)は,2015年3月にわが国でXRAvanti(Optovue)が承認され,その後,次々と各社のOCTAが発売されてきた.各社ともソフトや性能は日々進化し続けており,今後の眼科臨床にはOCTAは欠かせない検査になると思われる.本稿では現在わが国で市販されているOCTAの各機種の特徴について述べるが,筆者の施設で実際に使用したことのある機種は3機種(XRAvanti,Triton,RS-3000Advance)であること,各機種の性能は2017年4月時点でのものであることを,あらかじめことわっておく.IOCTAの種類2017年4月現在,日本で市販されているOCTAが撮影できる機種は,XRAvanti(Optovue),RS-3000Advance(ニデック),Triton(トプコン),Cirrus5000,PLEXElite9000(カールツァイスメディテック),OCT-HS100(キヤノン),SpectralisOCT2(HeidelbergEngineering)の7機種である(図1).TritonとPLEXElite9000の2機種は,波長1,050nmのスウェプトソース(sweptsource:SS)OCT(SS-OCT)がベースとなっており,それ以外は波長約840nmのスペクトラルドメイン(spectraldomain:SD)OCT(SD-OCT)がベースとなっている.また,OCTAの原理は,血流中の赤血球の動きのちらつきを検出するものであるが,さらに分類すると,位相(phase)変化の検出,振幅(ampli-tude)変化の検出,位相と振幅両方の変化の検出の3つに分けられるが,Cirrus5000,PLEXElite9000,RS-3000Advanceでは位相と振幅両方の変化を検出,それ以外の機種は振幅変化の検出が元になっている.以下,個々の機種について特徴を述べる.また,個々の機種の比較を表1にあげる.IIXRAvantiXRAvantiは世界で最初に販売されたOCTA撮影機種である.スキャンスピード70,000A-scan/秒のSD-OCTであるXRAvantiOCTでは,OregonHealth&ScienceUniversityのDavidHuangらが開発したsplit-spectrumamplitudedecorrelationangiography(SSADA)というアルゴリズムを用いており,少ない連続撮影画像から波長を分割し,動きのある信号(振幅変化)を増強して,再構築する仕組みになっており1),約3秒という早い時間で撮影・解析が終わる.また,motioncorrectiontechnologyも搭載されているため,多少固視微動があった場合も,補正してアーチファクトが入らない比較的鮮明な画像を得ることができる.自動的にsuper.cial(網膜表層毛細血管層)(内境界膜-内網状層),deep(網膜深層毛細血管層)(内顆粒層-外網状層),outerretina(網膜外層)(外顆粒層-Bruch膜),choroidcapillary(脈絡毛細血管板)の4層に層別表示される(図2).解剖学的に,網膜毛細血管は,神経節細*MihoNozaki:名古屋市立大学大学院医学研究科視覚科学〔別刷請求先〕野崎実穂:〒467-8601愛知県名古屋市瑞穂区瑞穂町字川澄1名古屋市立大学大学院医学研究科視覚科学0910-1810/17/\100/頁/JCOPY(13)771ade図1現在日本で市販されているOCTA撮影機種a:XRAvanti,b:RS-3000Advance,c:Cirrus5000,d:PLEXElite9000,e:Triton,f:OCT-HS100,g:SPECTRALISOCT2.表1OCTA機種比較商品名XRAvantiRS-3000AdvanceTritonCirrus5000PLEXElite9000OCT-HS100SPECTRALISOCT2OCTA名称AngioVueAngioScanAngioPlexメーカーOptovueニデックトプコンカールツァイスカールツァイスキヤノンHeidelbergEngineeringSDorSS-OCTSD-OCTSD-OCTSS-OCTSD-OCTSS-OCTSD-OCTSD-OCTアルゴリズムSSADACODAAOCTARAOMAGOMAGamplitudedecorrelationFullspectrumprobabilisticapproachスキャンスピード(A-scan/秒)70,00053,000100,00068,000100,00070,00085,000光源波長(nm)8408801,0508401,000855870アイトラッキングMotionCorrectionTechnologySLOによるトラッキングSMARTTrackLSOによるトラッキングLSOによるトラッキングSLOによるトラッキングDualBeamLiveEyeTracking最大撮影画角8mm9mm9mm8mm12mm10mm3mm自動セグメンテーション網膜表層/網膜深層/網膜外層/脈絡毛細血管板網膜表層/網膜深層/網膜外層/脈絡膜網膜表層/網膜深層/網膜外層/脈絡膜網膜全層網膜硝子体界面/網膜表層/網膜深層/視細胞層/脈絡膜毛細血管板/脈絡膜網膜表層/網膜深層/網膜外層/脈絡毛細血管板任意の層でプリセット可能網膜表層/網膜深層/網膜外層/(脈絡膜はユーザー定義)解像度(ピクセル)304(3mm)400(6mm)256512245(3mm)350(6/8mm)300(3mm)500(6/9/12mm)232(3mm)464(6mm)696(10mm)512横方向分解能(μm)15202010.2010.20205.7縦方向分解能(μm)572.6(デジタル)8(光学)51.95(デジタル)6.3(光学)1.6(デジタル)3(光学)3.9解析ソフト/特徴などAngioAnalytics・12×9mmパノラマ自動合成・MP-3重ね合わせ・パノラマ機能搭載予定AngioPlex市販のOCTAで画角最大(12mm)・3D表示・自動で10層セグメンテーション・FAなど他のイメージングと重ね合わせ・自動で網膜10層セグメンテーション図2XRAvantiのOCTAレポート画面糖尿病網膜症症例の3×3mmOCTA画像.自動セグメンテーションで,super.cial(網膜表層),deep(網膜深層),outerretina(網膜外層),choroidcapillary(脈絡毛細血管板)の4層に分けて結果が表示される(上段).図3同一眼の6×6mm網膜表層画像の比較a:XRAvanti以前のバージョンで撮影.解像度304ピクセル.b:XRAvanti最新バージョンで撮影.解像度400ピクセル.c:Tritonで撮影.解像度512ピクセル.図4RS.3000AdvanceのOCTAレポート画面膜静脈分枝閉塞症の3×3mmOCTA画像.自動セグメンテーションで,網膜表層,網膜深層,網膜外層,脈絡膜の4層に分けて結果が表示される.OCT厚みマップも一緒に表示される.図5網膜静脈分枝閉塞症の蛍光眼底造影画像(a)とRS3000Advanceの自動パノラマ合成機能で撮影された9×12mm網膜表層画像(b)3×3mmを計12枚撮影したものを自動合成.下方の無灌流領域がOCTAでも観察できる.2016/10/12,右眼,マイクロペリメトリ,固視標&指標表示,2016/10/12,右眼,黄斑マップAX-Y,Enface画像:網膜表層図6RS3000Advanceで撮影されたOCTA画像にMP.3結果を重ね合わせたもの網膜静脈分枝閉塞症症例.OCTAの無灌流領域に一致して感度が低下していることがわかる.図7TritonのOCTAレポート画像糖尿病網膜症例(画角3×3mm).自動セグメンテーションでsupe.cial(網膜表層),deep(網膜深層),outerretina(網膜外層),choriocapillaris(脈絡毛細血管板)の4層に分けて表示される.右下にカラー眼底写真も表示される.CompositeSRLDRLAvascularB-scanChoriocapillarisChoroid図8Cirrus5000のOCTAレポート画像自動セグメンテーションでcomposite(網膜表層-外層),SRL(網膜表層),DRL(網膜深層),avascular(網膜外層),choriocapillaris(脈絡毛細血管板),choroid(脈絡膜)に分けて表示される.(画像提供:カールツァイスメディテック)AngioPlex-RetinaStructure-Retina図9PLEXElite900012mmのOCTA画像糖尿病網膜症症例(画角12×12mm).左:OCTA(網膜)と右:enface画像.OCTAでアーケード血管外の無灌流領域や新生血管も明瞭に観察できる.(画像提供:カールツァイスメディテック)図10OCT.HS100正常人OCTA画像画角10×10mm.広い画角であるが696ピクセルと高解像度である.(画像提供:キヤノン)図11OCT.HS100による視神経乳頭OCTA画像上段が2D表示,下段が3D表示.(画像提供:キヤノン)図12SPECTRALISOCT2の正常人OCTA画像高い解像度のため,a:網膜表層,b:内網状層/内顆粒層にある毛細血管,c:内顆粒層/外網状層にある毛細血管を分けて描出できる.(画像提供:JFCセールスプラン)