FemtosecondLaser-AssistedCataractSurgery(FLACS)繪野亜矢子*真野富也*はじめに近年,わが国においても,フェムトセカンドレーザーを用いた水晶体再建術(femtosecondlaser-assistedcat-aractsurgery:FLACS)が複数の施設で導入されつつある.その背景には,技術の進歩に伴って当初みられた合併症の頻度が著しく低下し,おもに欧米からFLACSの精確性や安全性の報告が数多く発信されるようになったことがあげられる.また,すでに導入されている国内の施設における成功体験も,急速に注目を集める一因になっていると考える.本稿では,最近のFLACSを実際の経験を交えて概説し,その可能性と将来性についても併せて述べる.Iフェムトセカンドレーザーの原理とFLACSフェムトセカンドレーザー(FSレーザー)は眼科領域ではすでに屈折矯正手術などで使用されているが,光切断(photodisruption)の原理を応用している1).後.切開術に利用されているNd:YAGレーザーと同じ原理で,レーザーを照射し,集光点にプラズマを発生させることで,衝撃波による破壊作用で組織を切断する.Nd:YAGレーザーと波長が近い一方で,FSレーザーはフェムト秒(10.15秒=1,000兆分の1秒)という単位の超短パルスレーザーを連続照射するため,周囲組織への侵襲は低く,精確に組織の切開が可能であるとされる1).FLACSでは,従来,マニュアルで施行していた角膜切開,水晶体前.切開をFSレーザーにて施行可能で,さらに水晶体核分割・破砕や角膜実質内乱視矯正切開もFSレーザーで実施できる.その後,超音波乳化吸引装置を使用して水晶体を除去することや,眼内レンズを移植することは,手術顕微鏡下で従来通り術者が行う必要がある.FLACSに用いる各種FSレーザー装置は,CATALYSR(Abbott社),LenSxR(アルコン社),VICTUSR(ボシュロム社),LensARTM(LensAR社),FEMTOLDVZ8(Ziemer社)の5種類が発売されている.すべて米国食品医療薬品局(FoodandDrugAdministration:FDA)の承認,欧州のCEマークを取得しているが,国内では現在のところLenSxRおよびCATALYSRのみが承認済みとなっている.筆者らの施設ではCATALYSRを使用しているが,ほかの機種で求められる設置場所の湿度や温度の管理は必要としない.その他,機種による使用上の特徴や成績の違いなどが報告されているが,ここでは割愛する.IIFLACS:FSレーザー照射の実際従来法と同じく事前に散瞳させる必要がある.通常,散瞳薬にて十分に散瞳が得られない症例や瞳孔偏位例,角膜混濁のある症例は適応外とされる.ここではFSレーザー装置における照射の実際について,手順に従って紹介する.*AyakoEno&*TomiyaMano:多根記念眼科病院〔別刷請求先〕繪野亜矢子:〒550-0024大阪市西区境川1-1-39多根記念眼科病院0910-1810/17/\100/頁/JCOPY(17)159b図1PIの装着・吸引固定とドッキングa:PIの装着と吸引固定は一部の症例を除き,容易である.b:FSレーザー装置本体とPIのドッキング.モニターを見ながら微調整している.CATALYSRの場合,患者ベッドを上昇させてドッキングする.図2OCTによる前眼部解析搭載されたOCTによって前眼部構造を詳細に解析する.瞳孔マージン,角膜前面後面,虹彩,前.後.の位置情報がモニターに描出される(CATALYSR).図3FSレーザー照射フットペダルを踏みこみ,前.切開と核の分割と破砕を施行.FSレーザーの副産物である気泡が見える(CATALYSR).図4前.円盤の摘出図5核分割通常の症例では,前.切開は完成しているが,念のため,USチップとフックを軽く添えるだけで核分割が容易にで前.鑷子で前.円盤を取り出す.FSレーザーの副産物できる.ある気泡が見える.ab図6前.円盤の断面の走査型電子顕微鏡像CCCで得られた断面(a)は平滑であるが,FSレーザーによる断面(b)は不整である.CCC:continuouscurvilinearcapsulotomy学的にもっとも影響する因子であると報告されている12).FLACSにおいては術中使用超音波量を低減することで,角膜内皮細胞減少を最小限にできる13,14).自験例でも,従来法と比較して角膜内皮細胞の減少率は有意に低かった.また,すでに角膜内皮機能障害をきたしている症例に対しFLACSを施行し,透明角膜を維持できた症例を複数経験している.4.炎症従来法と比較して優位に炎症が惹起されにくいという報告がみられる15).自験例においては術後早期の前房内フレア値が従来法より有意に低値であるが,術後1週間以降は両者に有意差がなくなるという結果を得ている.一方で,FLACS後の前房水のプロスタグランジン濃度が,従来法より高値であるという報告もあり16),さらなる検討が待たれる.V合併症FSレーザー関連の合併症は,導入初期より後期のほうで明らかに減少するという報告があり17),手技の習熟に伴って減少すると考えられる.1.縮瞳FSレーザー実施後,副産物として発生した気泡による虹彩刺激,あるいはプロスタグランジン産生によって縮瞳することがある.縮瞳を回避するためにFSレーザー前から散瞳薬と同時に非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の点眼を推奨する論文もみられ18),筆者らの施設でも事前点眼を同様にしている.2.FSレーザーの誤照射レーザー照射中にPIの吸引固定がはずれる現象(サクションブレイク)が生じた場合,レーザー装置は安全装置が作動して照射を停止する.非常に稀ではあるものの,水晶体核分割・破砕中にサクションブレイクが生じ,角膜に格子状の切開が生じたといった報告がある19).サクションブレイクを起こす要因である結膜弛緩症や瞼裂狭小がみられる症例については,とくに注意を要する.また,照射にはOCTイメージ下に十分な安全域を設定するため,正常にPIが装着された場合は後.や角膜への誤照射は生じにくいとされ,筆者らの施設でも誤照射の経験はない.3.水晶体.ブロック症候群とりわけハイドロダイセクションの際,FSレーザー照射で生じた気泡が水晶体内や水晶体後面に貯留し,勢いよく流入された還流液によって逃げ場を失って,破.にいたる合併症は初期に報告された20,21).筆者らは常に前房内へ気泡を逃がすように意識しながら,やさしくハイドロダイセクションするよう努めているが,幸いこの合併症の経験はない.4.Capsulartag最近ではFSレーザー前.切開の完遂率は高くなったが,時折,ひげ状,あるいはさかむけ状の前.縁(cap-sulartag)が残存することがある.その後の過程で無意識にcapsulartagを引っ張り,前.に亀裂が入る可能性がある.実際,皮質吸引や眼内レンズ挿入時にごく細いcapsulartagの存在に気づくことがあるが,それが原因で亀裂が入った経験はない.VI難症例と適応外通常例はもちろんのこと,FLACSは難症例においてもその力を発揮する.FSレーザーで安全に前.切開が施行可能であり,膨化した成熟白内障であってもプレミアム眼内レンズ移植も選択肢のひとつとして提供できる.核硬化度の高い症例は,FLACSによって手術の難易度を下げ,また使用超音波量を低減させることで安全な手術が提供可能となる.さらにFLACSは,水晶体亜脱臼例にもZinn小帯への負荷を最小限にすることを可能にする.つまり前眼部からのアプローチで,低侵襲な手術を提供できるかもしれない.このように筆者らはとくに難治水晶体疾患において,その利用価値を実感している.また,難症例には散瞳不良例がしばしば含まれる.FSレーザーは虹彩を透過せず,虹彩下の水晶体への照射が不可能であるため,通常は適応外となる.しかしながら,事前に手術顕微鏡下で瞳孔拡張器を設置した後,(21)あたらしい眼科Vol.34,No.2,2017163FSレーザーを実施するという方法も提案されていることから,十分散瞳が得られない症例であってもFLACSの適応となりうる22).ただし,瞳孔拡張器挿入のための切開創があるため,PI装着や吸引固定の際には前房維持や感染について細心の注意を要する.一方で,角膜白斑などの角膜混濁がある症例はOCTによる前眼部解析が不能であること,またレーザーそのものの透過が困難であるため適応外である.まとめ白内障手術はもっとも目覚ましい進歩を遂げてきた術式のひとつであるが,FLACSの精確性や再現性はこれまでの進歩を凌駕するほどのインパクトをもつと考える.しかし,FLACSがさらに多くの施設に普及し,多くの患者に適応となるまでには,医療経済的諸問題が立ちはだかっているのも事実である23).今後,先進医療や混合診療などを含む保険診療の見直しが進めば,眼科的治療におけるFLACSの位置づけも変化するだろう.将来的にさらなるFLACSの普及がもたらされれば,治療方法の選択肢のひとつであるばかりか,手術指導における有益性もあり,FLACSはあらゆる可能性を秘めているといえる.FLACSが患者と術者にもたらす安全性や有効性のみならず,合併症も含めて慎重な評価を継続していくことが,今,我々に求められている.文献1)KruegerRR,KuszakJ,LubatschowskiHetal:Firstsafe-tystudyoffemtosecondlaserphotodisruptioninanimallenses:tissuemorphologyandcataractogenesis.JCata-ractRefractSurg31:2386-2394,20052)ShultzT,Conrad-HengererI,HengererFHetal:Intra-ocularpressurevariationduringfemtosecondlaserassist-edcataractsurgeryusinga.uid-.lledinterface.JCata-ractRefractSurg39:22-27,20133)FriedmanNJ,PalankerDV,SchueleGetal:Femtosecondlasercapsulotomy.JCataractRefractSurg37:1189-1198,20114)AbellRG,KerrNM,VoteBJ:Femtosecondlaser-assistedcataractsurgerycomparedwithconventionalcataractsurgery.ClinExperimentOphthalmol41:455-462,20135)Conrad-HengererI,HengererFH,SchultzTetal:E.ectoffemtosecondlaserfragmentationofthenucleuswithdi.erentsofteninggridsizesone.ectivephacotimeincataractsurgery.JCataractRefractSurg38:1888-1894,20126)DickHB,ShultzT:Onthewaytozerophaco.JCataractRefractSurg39:1442-1444,20137)AbellRG,KerrNM,VoteBJ:Towardzeroe.ectivephacoemulsi.cationtimeusingfemtosecondlaserpretreat-ment.Ophthalmology120:942-948,20138)MihaltzK,KnorzMC,AlioJLetal:Internala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