特集●カラーコンタクトレンズの安全性を問うあたらしい眼科31(11):1613~1619,2014特集●カラーコンタクトレンズの安全性を問うあたらしい眼科31(11):1613~1619,2014カラーコンタクトレンズ使用者のコンプライアンスColoredContactLensUserCompliance宇津見義一*はじめに日本眼科医会(以下,日眼医)は,コンタクトレンズ(CL)の眼障害調査から,CL使用者の7~10%に眼障害が発生していると予想している1).その原因はCLの処方,定期検査,装用法,ケア方法にて,患者が眼科医の指導や添付文書の内容を守らなかったというコンプライアンスの低下が挙げられ,特におしゃれ用カラーコンタクトレンズ(カラーCL)で問題と考えられている2).カラーCLによるトラブルは急増している.カラーCLはレンズ側と使用者側の問題点が指摘されている.さらに販売側,処方医側の問題がある.カラーCLは薬事法で認可された高度管理医療機器であってもトラブルが非常に多く注意が必要である.個人輸入などでは認可されていない粗悪品も少なくなく,レンズ規格など多くの問題点がある.また,インターネット・通信販売店,雑貨店,大型ディスカウントショップなどでは,眼科医師の処方を受けていない者などにカラーCLを販売しているために,使用者は使用方法もわからないでいる者も少なくないのが現状である.使用者の問題点としてはコンプライアンスの低下がある.日常診療においてカラーCL使用者はコンプライアンスの低い者に多く遭遇する.一般のCL使用者とは病識,常識,知識などが異なっている場合が少なくない.今回はCL(カラーCL含む)の各調査において得られたCL使用者のコンプライアンスの現状,さらにコンプライアンスへの対応を述べる.IカラーCLの使用状況カラーCLの一般での正確な使用率のデータはない.しかし,学校での使用率は徐々に報告されている.一般の使用率は,平成15年(2003年)に日本コンタクトレンズ学会,日眼医,日本コンタクトレンズ協会が共同で組織した日本コンタクトレンズ協議会の母集団を特定した46施設4,974例の報告では0.4%3)がある.学校での使用率は,日眼医の調査では,全国の学校でのカラーCL使用者では中学生は平成21年(2009年)が0.2%,平成24年(2012年)が0.4%,高校生は平成21年(2009年)が0.6%,平成24年(2012年)が3.2%と年度毎に増加し,高校生では有意に増加していた.また,使用経験のある中学生は平成21年(2009年)が2.2%,平成24年(2012年)が4.4%,高校生は平成21年(2009年)が3.3%,平成24年(2012年)が11.6%と中高生ともに有意に増加していた4~5).使用経験では学校により使用率の頻度差が大きく,某大阪府立高校が83.3(全体のCL使用率13.87〔以下同様〕)%,某埼玉県立高校が73.3(19.3)%,某東京都立高校が34(32.85)%など高い使用率のある高校もある.また,坂本ら都市部の1高校の報告では使用率は20.8%6)などがある.以上のように,カラーCL使用経験者が高率の高校もあり大きな問題であり,生徒のコンプライアンス,学校関係者,学校医の啓発,指導などの点に考慮する必要がある.従来,使用者は接客業の者が多かったが,学校現*YoshikazuUtsumi:宇津見眼科医院〔別刷請求先〕宇津見義一:〒231-0066横浜市中区日ノ出町2-112宇津見眼科医院0910-1810/14/\100/頁/JCOPY(47)1613場でも増加し問題となっている.IICL調査でのコンプライアンス平成21年(2009年)に日眼医はインターネット・通信販売によるCL眼障害を調査した.インターネット・通信販売により障害を生じたCL種類は図1に示すが,度数のあるカラーCLが16.7%,度数のないカラーCLが29.2%で,カラーCL眼障害が全体の45.9%を占めていた.インターネット・通信販売使用者は10~30代が多く,購入先はインターネット販売が76.9%,通信販売が19.8%であり,これらのCL使用者の60.0%は医師の処方を受けておらず(図2),定期検査はまったく受け0.0%0.0%1.0%3.1%0.0%HCL従来型SCL1日使い捨てSCL0.0%1週間連続装用使い捨てSCL2週間交換SCL30日間連続装用使い捨てSCL定期交換(1~3カ月)SCL度数のあるカラーSCL度数のないカラーSCLオルソKレンズその他5.2%0.0%無回答図1インターネット・通信販売のCL眼障害症例のCL種類237医療機関中66機関から回答(眼障害94症例).カラーCLの眼障害が全体の45.9%を占めている(文献7より改変)0.0%0.0%0.0%1カ月に1回3カ月に1回不定期6.7%6カ月に1回1年に1回不定期に受けていたほとんど受けていなかったまったく受けていないその他無回答図3インターネット・通信販売のCL眼障害症例の定期検査状況237医療機関中66機関から回答(眼障害94症例).(文献7より改変)29.2%度数なしカラーSCL16.7%1DSCL28.1%FRSCL16.7%度数あるカラーSCL3.4%55.1%まったく受けない27.0%ほとんど受けず3.4%4.5%ていないが55.1%,ほとんど受けていないが27.0%と半数以上は医師の管理を受けていなかった(図3).さらにCL使用期限の超過,終日装用CLの連続装用,不適切なレンズケアをしているものが数多くおり,コンプライアンスが著しく低下していた7).インターネット・通信販売による購入者は眼障害が悪化してから眼科を受診する傾向がある.長時間装用・洗浄不良・消毒不適・使用期限を超えた装用など使用の問題や,定期検査の不徹底・不適切な説明指導・不適切な処方などの問題が多くある.インターネット・通信販売利用者の大半はカラーCL使用者であり,患者のコンプライアンスの低下が非常に懸念されるところである.CL自体の問題は少ないが,アンケート調査ではCL自体の問題は抽出しにくいと考える(表1).平成20年(2008年)に日眼医はインターネットを利用してCL使用者9,904名のアンケート調査を行った8).表2のようにインターネットでのCL購入者は12.4%,18%眼科診療所60%医師の処方なし2%1%4%6%0%眼鏡店隣接診療所9%CL量販店隣接診療所一般病院(大学病院を除く)大学病院一般眼科診療所眼鏡店隣接の眼科診療所CL量販店に隣接する眼科診療所医師の処方は受けていないその他無回答図2インターネット・通信販売のCL眼障害症例のCL処方場所237医療機関中66機関から回答(眼障害94症例).(文献7より改変)表1CL眼障害の主な原因.眼障害のおもな原因はCL自体よりむしろ・コンプライアンスの問題長時間装用,洗浄の不良,消毒の不適,使用期限を超えた装用など・定期検査の不適・不適切な説明指導・不適切な処方など→アンケート調査ではCL自体の問題は現れにくい1614あたらしい眼科Vol.31,No.11,2014(48)あたらしい眼科Vol.31,No.11,20141615(49)%であるのに対してカラーCLによる眼障害が大幅に増加している.平成24年(2012年)の日眼医のCL眼障害調査のカラーCL使用者は10~20代の女性が多く,定期検査を受診している者が僅か3.6%など,コンプライアンスに問題があることが明らかになった10).平成24年(2012年)日本コンタクトレンズ学会のカラーCL眼障害調査報告(395例)では,年齢層は10~14歳が2.0%,15~19歳が40.5%,20~24歳が30.1%,25~29歳が15.9%であり,中高生から使用する者が多いと考えられた.購入先はネット・通信販売が52.7%,ディスカウントショップ,雑貨店・化粧品店が28.4%,量販店が9.6%,眼科隣接CL販売店が5.1%であり,15歳以下はネット・通信販売が60%,ディスカウントショップ,雑貨店・化粧品店が35%で,眼科隣接CL販売店での購入はなかった.若い者ほどインターネット・通信販売などで購入する傾向がある(図4).また,購入時に眼科受診をしなかった者は全年齢で80.3%,15歳以下が95.0%で,ほとんどの中学生は初めてのCLがカラーCLと推測された.カラーCL使用者の大半はコンプライアンスなど関係なく,眼科医を受診する必要のあることを理解していない(図5).また,カラーCL使用者に眼障害が多い理由は,患者のコンプライアンスが低いこと,一部のカラーCLの性能に問題があることを挙げている11).平成26年(2014年)5月22日に国民生活センターはカラーCLの使用注意を呼びかけた.薬事法で認可された17製品を調査し,着色部分がレンズ最表面に確認されたものが17銘柄中11銘柄あり,色素が角膜,まぶたに直接触れていた.9銘柄は色素が表面に確認されているにもかかわらず,色素がレンズ内部に埋め込まれていると広告表示していた.6銘柄はレンズの厚さ,直径,曲率半径,度数などの基準を満たしていなかった.酸素透過性の低い低含水性素材のレンズは短期使用でも眼障害を生じやすい.度数入りの16銘柄中15銘柄が8時間使用で角膜浮腫,角結膜上皮障害,輪部充血などの治療や使用中止が必要な眼障害を生じた.カラーCLは酸素の通りにくい素材が多く,着色の影響が透明のCLより眼障害を生じやすいなど製品の危険性について警告している12).さらに,カラーCLを使用している者(10代,定期検査を医師の指示どおりに受けているは23.5%,医師・添付文書の指示どおり,ほぼ指示どおりCLを使用しているのは57.3%であり,コンプライアンスの低下が目立った.日本コンタクトレンズ協議会は,平成21年(2009年)にインターネットを利用したCL使用者のコンプライアンス調査を実施した.対象としてインターネットを利用している102,624名にアンケートを行い,CL使用者29,194名の中からハードCLと従来型ソフトCL(SCL)使用者を除いた,1日使い捨てSCL,2週間頻回交換SCL,おしゃれ用カラーCL使用者10,008名を調査した2).表2のようにインターネット販売・通信販売など非対面販売でCLを購入している者が24.8%と前述の平成20年(2008年)のインターネット調査の約2倍と増加していた.1カ月または3カ月ごとに定期検査を受けている者は18.8%,普段使用方法を守っている者は21.7%と著しくコンプライアンスが低下していた.さらに視力補正用SCLに比較し視力補正用カラーCLのコンプライアンスは多くの項目で低下しており(表3),視力補正用SCLに比較し,度なしおしゃれ用SCLはほとんどの項目で有意にコンプライアンスが低下しており,特に「医師の定期検査を受けている」が僅か6.4%であった(表4).初診時医師の処方を受けてCLを購入している者は92.4%であるのに定期検査を受けている者が19.0%であることは,初回は医師の処方を受けても,その後は医師の処方を受けずにインターネット・通信販売でCLを購入している者が多いと考えられる.実際,今までに定期検査に来ていた患者が受診しなくなり,その間はインターネット・通信販売でCLを購入し1年後位に再診する場合が多い.筆者はこのような患者が増加しているのを実感している.再診する患者の共通点は医師の診察を受けないのが心配であるとのことであり,インテリジェンスが高い者が多く,コンプライアンスはまだ少しは保たれており再診するのだと考える.平成23年(2011年)の日眼医のCL眼障害調査では,インターネット・通信販売でCLを購入し眼障害を生じた者の中でカラーCL使用者が64.8%であった9).前述の平成21年(2009年)度の日眼医の同調査では7)45.91616あたらしい眼科Vol.31,No.11,2014(50)を理解した上で,必ず眼科医を受診し,眼科医の処方に従ったレンズを選び,粗悪品を消費者が見分けることは困難なので,必ず眼科を受診して眼科医と相談の上で選んで欲しい.異常時は眼科を受診し,異常がなくても必ず眼科医の定期検査を受診するよう推奨している.さらに,業界団体に安全な商品開発を望み,厚生労働省には20代の各500名,計1,000名)にアンケート調査を実施した.カラーCL購入時に43.5%が眼科を受診したことがなく,3カ月に1回以上の定期検査を受診している者が17%と少なく,まったく受けていない人が30.6%であり,眼異常があった約23%のうち半数は眼科を受診しなかった.カラーCLを使用する場合はそのリスク表3視力補正用SCLと視力補正用カラーSCLの比較(%)視力補正用SCL視力補正用カラーSCL2週間交換1日ディスポ2週間交換1日ディスポ医師の処方を受けている93.191.094.092.5対面販売で購入している74.871.776.282.1定期検査を受けている20.018.610.712.3装用方法を守っている24.322.523.813.2規定の交換時期で交換39.378.844.065.1過去1年でトラブルなし51.349.747.641.5トラブル時に眼科を受診41.945.236.454.8毎日こすり洗いを実施55.0─44.0─ケースを3カ月以内で交換37.2─20.2─(文献2より改変)表4視力補正用SCLと度なしおしゃれ用SCLの比較(%)視力補正用SCL度なしおしゃれ用SCL比率の差の検定医師の処方を受けている92.494.3定期検査を受けている19.06.4購入時に定期検査を受けることが伝達されている54.837.6p<0.01トラブル時1週間以内眼科受診43.625.9p<0.05レンズケース3カ月以内交換36.96.6p<0.05SCLを毎日消毒57.545.4p<0.05(文献2より改変)表2インターネットを利用したCL使用者調査インターネットでのCL購入者初診時医師の処方を受けてCL購入定期検査を医師の指示どおりに受けている医師・添付文書の指示どおり,ほぼ指示どおりCLを使用普段装用方法を守っている平成20年(2008年)(9,904名)インターネットCL使用調査*112.4%23.5%57.3%平成21年(2009年)(10,008名)インターネットCL使用者のコンプライアンス調査*224.8%92.4%18.8%21.7%(*1文献8より,*2文献2より.)表3視力補正用SCLと視力補正用カラーSCLの比較(%)視力補正用SCL視力補正用カラーSCL2週間交換1日ディスポ2週間交換1日ディスポ医師の処方を受けている93.191.094.092.5対面販売で購入している74.871.776.282.1定期検査を受けている20.018.610.712.3装用方法を守っている24.322.523.813.2規定の交換時期で交換39.378.844.065.1過去1年でトラブルなし51.349.747.641.5トラブル時に眼科を受診41.945.236.454.8毎日こすり洗いを実施55.0─44.0─ケースを3カ月以内で交換37.2─20.2─(文献2より改変)表4視力補正用SCLと度なしおしゃれ用SCLの比較(%)視力補正用SCL度なしおしゃれ用SCL比率の差の検定医師の処方を受けている92.494.3定期検査を受けている19.06.4購入時に定期検査を受けることが伝達されている54.837.6p<0.01トラブル時1週間以内眼科受診43.625.9p<0.05レンズケース3カ月以内交換36.96.6p<0.05SCLを毎日消毒57.545.4p<0.05(文献2より改変)表2インターネットを利用したCL使用者調査インターネットでのCL購入者初診時医師の処方を受けてCL購入定期検査を医師の指示どおりに受けている医師・添付文書の指示どおり,ほぼ指示どおりCLを使用普段装用方法を守っている平成20年(2008年)(9,904名)インターネットCL使用調査*112.4%23.5%57.3%平成21年(2009年)(10,008名)インターネットCL使用者のコンプライアンス調査*224.8%92.4%18.8%21.7%(*1文献8より,*2文献2より.)5%:15歳以下不明2.0%:全年齢0%その他2.3%0%眼科隣接CL販売店5.1%0%CL量販店9.6%雑貨店・35%28.4%大型ディスカウントショップ60%ネット・通信販売52.7%図4カラーCL購入先状況カラーCL眼障害例:395例〔男性2.3%(9例),女性97.7%〕(文献11より改変)不明受診した受診していない6.3%13.4%5.0%80.3%95.0%0%:15歳以下:全年齢図5カラーCL購入時の眼科受診の有無カラーCL眼障害例:395例〔男性2.3%(9例),女性97.7%〕(文献11より改変)1618あたらしい眼科Vol.31,No.11,2014(52)コンタクトレンズの安全性」についての要望が通知17)された.内容は,消費者がカラーCLを適正に購入,使用できるよう,カラーCLの販売業者が販売時に適切な情報提供などを行うよう指導することの要望である.さらに消費者庁消費者安全課長から「カラーコンタクトレンズの安全性」について要請する通知18)が発出され,国民生活センター通知と同様にカラーコンタクトレンズ販売業者に対する指導の要請があった.内容は前述の平成24年(2012年)7月18日通知14)と平成25年(2013年)6月28日の再周知16)の指導に基づき,CLについての適切な情報提供などが行われるよう再度周知徹底することを要望し,特に未成年者へのカラーCLの販売の際には,適正な使用方法について十分な説明を行うとともに,購入時の医療機関への受診勧奨を徹底することなどの注意喚起を要望している.前述のように,行政による再三の注意喚起によってもカラーCL使用者のコンプライアンスの向上は困難と考える.カラーCL販売業者の中には店頭,販売所(ネット含む)での購入にはCL処方せんは不要と広告する営利優先の販売が横行している.したがって,眼科ではCL処方目的にて来院する患者の減少を実感している.以上の行政通知はいずれも法的な罰則がないために,行政の今後の適切な対応が必要である.Vカラーコンタクトレンズの処方筆者は平成20年(2008年)頃まではカラーCL処方には否定的であった.しかし,一般眼科での処方を拒めば,使用者は不適切な販売所で眼科医の介在なしに購入し,さらなる眼障害の増加が懸念されたために,どうしてもカラーCLを希望する場合には処方している.現在,薬事法で認可されたカラーCLは約300品目である.3社からの販売以外は酸素透過性の低い素材で1カ月の従来型使用方法が多い.そのために筆者はコンプライアンスが保たれている者,酸素透過性の高い素材,1日使い捨てタイプ,1日6~8時間の短い時間での使用,そして通常は透明なCLを使用し,カラーCL使用が必要な場合のみの使用を推奨している.カラーCLの使用は美容目的であり風紀上の問題もあるため,学校現場には好ましくないと考える.たが,現在は同様の質問をすると多数の者が正解する.学校,地区などでの啓発活動そしてマスコミ報道などにより,正しいCLの知識が周知されつつある.しかし,一部の地区でコンプライアンス向上のために啓発活動を実施しても限度がある.カラーCLを含むCLコンプライアンスの向上を図るために日本コンタクトレンズ学会,日眼医,日本コンタクトレンズ協会,日本コンタクトレンズ協議会は,今迄に学会発表,論文,ポスター,冊子・チラシの作成,インターネットのホームページを通じての注意喚起,テレビ,ラジオ,新聞,雑誌などメディアによる啓発,学校現場での健康教育,行政によるものなど膨大な啓発活動を実施してきた.しかし,現実には眼科医の診察を受けないでCLを購入するものがさらに増加し,眼障害を生じている.最近の行政の対応としては,平成24年(2012年)7月に厚生労働省医薬品食品局長から各都道府県に発せられた「CL販売時の取り扱いについて」の通知において,CL販売では,CLを購入する者に,医療機関の受診状況を確認し,それを記載,保存し,医療機関を受診していない場合は,CLの健康被害などの情報提供を行い,医療機関を受診するよう勧奨した.さらに,日本コンタクトレンズ協会が制定した「CLの販売自主基準」を徹底するように通達した.その基準には,CL販売店はCLの販売にあたっては,眼科医療機関のCL指示書(CL処方せんと同様)に基づいて販売するよう努めること,CL使用者に対しては,眼科医の指示を受け,それを守ることが記載されている14).その後,平成24年(2012年)度厚生労働科学研究(医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究事業)による「コンタクトレンズ販売の実態調査に基づく販売規制のあり方に関する研究」の研究報告書15)により,CLの販売に際し,使用者への必要事項の確認や適切な情報提供が不十分な事例があるという実態が報告され,平成25年(2013年)6月28日付にて,各都道府県知事に対してCLの販売業者に平成24年(2012年)7月の通知14)の遵守が図られるように再通知16)がされた.その後,平成26年(2014年)5月22日に国民生活センター商品テスト部長から厚生労働省に対して「カラーあたらしい眼科Vol.31,No.11,20141619(53)おわりにカラーCL使用者のコンプライアンスを改善するのは難しく,さらに販売業者の不適切な販売などにより,カラーCLがインターネット・通信販売,営利優先の販売店などでは処方せんなし,眼科医の介在なしで販売している場合が多い.カラーCLの不適切販売がきっかけとなり,通常のCL使用者が同様に眼科医の介在なしでCL購入をするケースが増加しているのを筆者は実感している.ここまで来ると行政の罰則のある積極的な介入が必要と考える.文献1)植田喜一,宇津見義一,佐野研二ほか:コンタクトレンズによる眼障害アンケート調査の集計結果報告(平成20年度).日本の眼科80:940-946,20102)植田喜一,上川眞己,田倉智之ほか:インターネットを利用したコンタクトレンズ装用者のコンプライアンスに関するアンケート調査.日本の眼科81:394-407,20103)日本コンタクトレンズ協議会CL眼障害調査小委員会(糸井素純,植田喜一,宇津見義一ほか):コンタクトレンズによる眼障害アンケート調査,日本の眼科74:497-507,20034)宇津見義一,宮浦徹,柏井真理子ほか:平成21年度学校現場でのコンタクトレンズ使用状況調査.日本の眼科83:1097-1114,20125)宇津見義一,宮浦徹,柏井真理子ほか:平成24年度学校現場でのコンタクトレンズ使用状況調査.日本の眼科85:346-366,20146)坂本則敏,宇津見義一(神奈川県眼科医会):高校生におけるコンタクトレンズ汚染の感染経路の検討.平成25年度第44回全国学校保健・学校医大会第5分科会(眼科)詳録集,p39-44,20137)植田喜一,宇津見義一,佐野研二ほか:インターネット・通信販売による購入者のコンタクトレンズ眼障害の集計結果報告(平成21年度).日本の眼科81:75-84,20108)植田喜一,宇津見義一,佐野研二ほか:インターネットを利用したコンタクトレンズ使用者の実態調査,日本の眼科80:947-953,20099)高橋和博,宇津見義一,藤堂勝巳ほか:コンタクトレンズによる眼障害アンケート調査の集計結果報告(平成23年度).日本の眼科83:513-520,201210)高橋和博,魚谷純,山下秀明ほか:コンタクトレンズによる眼障害アンケート調査の集計結果報告(平成24年度).日本の眼科94:801-810,201311)渡邉潔,植田喜一,佐渡一成ほか:カラーコンタクトレンズ装用にかかわる眼障害調査報告.日コレ誌56:2-10,201412)国民生活センター報道発表:カラーコンタクトレンズの安全性─カラコンの使用で目に障害も─.独立行政法人国民生活センター報道発表資料,p1~57,平成26年(2014年)5月22日13)宇津見義一,池田桐子,戸倉純ほか:横浜市中学・高等学校のコンタクトレンズ教育による装用状況の効果.第44回日本コンタクトレンズ学会総会展示発表,平成13年6月30日~7月1日,東京,200114)厚生労働省医薬食品局長:コンタクトレンズの適正使用に関する情報提供等の徹底について.厚生労働省医薬食品局長通知,薬食発0718第17号,平成24年7月18日15)田倉智之:コンタクトレンズ販売の実態調査に基づく販売規制のあり方に関する研究.厚生労働科学研究費補助金(医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究事業(指定型)研究事業)総括研究報告書,平成24年3月31日16)厚生労働省医薬食品局長:コンタクトレンズの適正使用に関する情報提供等の徹底について(再周知).厚生労働省医薬食品局長通知,薬食発0628第17号,平成25年6月28日17)独立行政法人国民生活センター商品テスト部長:カラーコンタクトレンズの安全性.独立行政法人国民生活センター商品テスト部長通知,26独国生商第41号,平成26年5月22日18)消費者庁消費者安全課長:カラーコンタクトレンズの安全性.消費者庁消費者安全課長通知,消安全第186号,平成26年5月28日