監修=大橋裕一連載.MyboomMyboom第39回「菅原岳史」本連載「Myboom」は,リレー形式で,全国の眼科医の臨床やプライベートにおけるこだわりを紹介するコーナーです.その先生の意外な側面を垣間見ることができるかも知れません.目標は,全都道府県の眼科医を紹介形式でつなげる!?です.●は掲載済を示す(●は複数回)連載.MyboomMyboom第39回「菅原岳史」本連載「Myboom」は,リレー形式で,全国の眼科医の臨床やプライベートにおけるこだわりを紹介するコーナーです.その先生の意外な側面を垣間見ることができるかも知れません.目標は,全都道府県の眼科医を紹介形式でつなげる!?です.●は掲載済を示す(●は複数回)自己紹介菅原岳史(すがわら・たけし)千葉大学大学院医学研究院眼科学以前,帰省先の田舎で小4男児が,家庭用打ち上げ花火が点火しないためにのぞきこみ,顔面直撃,救急搬送されました.両目の間が撃ちぬかれ,髪は焼けただれ,皮膚は火傷,角膜には無数の火薬が残存,一晩中麻酔され,両角膜異物除去を施行.翌日まで両眼帯でした.少年は,育ててくれた親への罪悪感,人生の喪失感を味わったそうです.私は日眼雑誌の談話室に「PMDAとレギュラトリーサイエンス」で何度か投稿しているのでご存知の方もいると思われますが,厚労省所管の医薬品医療機器総合機構(PMDA)に2年半在籍し,その後は千葉大学臨床試験部に異動したので,眼科医は通常経験しないことを多数経験しております.筑波大学の加治先生からのバトンを受け,薬事目線で記載します.興味を抱いてくれる眼科医がいれば,ぜひご連絡をお願いします.Letitgo的なmyboom現在,眼科の枠を超え,千葉大のみならず国家行政案件に関与しており,PMDA遠征?帰りというだけで,貴重なキャリアと人脈が増え続けております.相手をリスペクトし,理解しつつ,言いたいことは伝える,ありのまま的なmyboomをしているだけですが.グローバル的なmyboom世界眼科学会(WOC2014)時に日本を訪問されたFDAデバイス部門(眼科・耳鼻科)長官のMalvina先生(澤先生らとの宴席,写真1)と各国規制当局によるセミナーを実施,PMDAにも招いてセミナーをしても(63)0910-1810/15/\100/頁/JCOPYらいました.WOCにはミシガン大学時代のボスであるSieving先生(現NIE長官)と奥様も来ていたので,スカイツリーの下でミシガン会(近藤&町田先生同席,写真2)をしました.今でも英語を使う機会は少なくないので,英語を使う2週間前から,「3倍速の英会話テープ」聴きまくりで英語スイッチ入れ,ゾーンに入るようにしているのが,以前からの英会話的なmyboomです.アカデミア的なmyboom眼科と二足の草鞋ですが,臨床試験部の業務はPMDAとはまったく異なっており,新鮮です.各科のプロトコールを見て,本質的に直させるのが主たる業務です.コピペ・一夜漬けで皆さん作成してきますが,プロトコール作成スキルはPMDAに数年いないと得られません.一流企業ですらプロトコール作成には何カ月もかかっており,それでもPMDA側にかなり修正させられます.プロトコール作成に関しては,2013年および2014年の日本臨床眼科学会インストラクションコース,千葉大学,東北大学および慶應大学の一部スタッフ,さらに神戸の臨床研究情報センター(TRI)で勉強会をいたしました.呼んでいただければ全国どこにでも講義に行きます.一般臨床医的にはまったく知らない,開発の世界を啓発する活動です.レギュラトリーサイエンス的なmyboomレギュラトリーサイエンスには二つの面があります.一つは承認審査上のモノサシです.開発はp値では決められず,左右するのは意義です.イメージとして,左が承認で,右が不可のシーソーとすると,左に倒して承認した科学的な判断の経緯を,シーソーに乗せた要因(さまざまな意義)を根拠として説明することです.レギュラトリーには,規制,調整,審査などの意味がありますので,社会を見据えた行政科学(判断材料)ともいえます.もう一方は哲学です.このレギュラトリーサイエンスあたらしい眼科Vol.32,No.4,2015527写真1FDAのMalvina先生を囲んで世界眼科学会(WOC2014)に来日されたFDA(米国規制当局)の眼科デバイス部門長官,マルビーナ先生と夕食会.哲学はmyboomです.そもそも,わが国における臨床試験は空浮かぶサーキットのように,一般道を走れない治療法(DRUG,DEVICE)に対する研究が永遠に回り続けます.つまり,選ばれた学会サーキットを走り続けることだけでも業績は上がり研究費も獲得しますが,国民の利益に還元されず,実用化しない研究が目立つという解釈です.なぜそうなのかというと,それは薬事というカラクリを知らないからです.レギュラトリーサイエンス哲学で考えると,患者さんへの実用化への出口目線でロードマップを描き,研究プロジェクトを立ち上げ,PMDAと相談し,品質,非臨床,PI,PII,PIII,申請承認で,新しい最良の医療を真に届けられるのです.医学教育過程で薬事を習わなかった影響か,シーズ数は世界トップクラスでも,臨床応用数では激減し,改善傾向がありません.大多数の疾患領域でそうです.一方,わが国でも悪性腫瘍や循環器領域は進んでおり,学会として実用化するための術を知っています.遅れている分野の臨床研究医師が,どうやって実用化をみすえた研究をするのかには,レギュラトリーサイエンス哲学を学ぶ必要があります.僕を呼んでもらえば全国どこにでもレギュラトリーサイエンスの講義に行けます.講演的なmyboomです.ベタ,バカッコイイ的なmyboom仕事は忙しいですが,今が一番ハッピーです.いつの時代も,自分は今が一番.とくに,日本のために,大勢の患者のために,何かできるのは楽しいです.厳しい職場で仕事していても,すこしも寒くないわ♪ですね.罪悪感と喪失感のあと,どうやって生き抜くか2日間考え,幸運なことに失明しませんでした.冒頭の花火事故のおバカさんは僕自身ですが,あの時の後悔と恐怖を超える思いは,いまだに未経験です.絶望の中,どうしたら見えなくても生き抜けるか,必死で考えた2写真2米国留学時代のボスPaulSieving先生を囲んで世界眼科学会(WOC2014)に来日されたNIHの現NEI長官であるポール先生との夕食会.日間でした.千葉大眼科の治験で,最終来院日の網膜色素変性の女性患者さんに,「本当に治るようになるクスリができるのですか?私が治らないのはわかっています.」と言われぼう然,翌年の3月11日に東日本大震災が起こり,岩手医大の黒坂教授や大関先生に頼んでボランティアに駆けつけ,絶望の中で生き抜こうとしている子供たちの姿を見ました.千葉大眼科教授の山本先生にPMDAに行けといわれたのは数日後,大変な職場だったけど,行ってよかった.眼科学会の著名な先生方と親しくなりましたし,PMDA内で気が合う仲間数名と出会って,いつのまにか忘れかけていた,大事なスイッチが再び入りました.目が見えない不安をわずかな時間でも味わった者として,眼科をはじめ日本の臨床研究をレギュラトリーサイエンス哲学で実用化に導くため,ギアセカンドに入ります.貫くには,どこまでもブッ飛んでないと,限りなくポジティブじゃないと,世界は変えられません.両眼帯で車椅子の10歳のときですら,ネガティブにならないように必死で考えたのですから,ベタでバカッコイイ的な姿勢を,ブレることなく貫いて,先生たちの研究を実用化へ導くように牽引したいものです.レギュラトリーサイエンスの業界にも,myboom押し続けてくれる仲間が何人もいるから,これからも声を出して行きます.次のプレゼンターは,慶應義塾大学出身で東京歯科大学市川病院から,現在,厚生労働省に在籍中の許斐健二先生です.僕の大事な仲間の一人です.注)「Myboom」は和製英語であり,正しくは「Myobsession」と表現します.ただ,国内で広く使われているため,本誌ではこの言葉を採用しています.528あたらしい眼科Vol.32,No.4,2015(64)