●連載監修=安川力髙橋寛二22.滲出型加齢黄斑変性の治療維持期阿部早苗市立秋田総合病院眼科におけるペガプタニブの使用ペガプタニブの特徴現在,日本において滲出型加齢黄斑変性の治療薬として認可されている血管内皮増殖因子(vascularendothe-lialgrowthfactor:VEGF)阻害薬,ペガプタニブ(マクジェンR),ラニビズマブ(ルセンティスR),アフリベルセプト(アイリーアR)の3つである.このうちペガプタニブはVEGFアイソフォームのひとつであるVEGF165に選択的に結合するRNAアプタマーであり1),ラニビズマブとアフリベルセプトがアイソフォーム非選択的にすべてのVEGFを阻害する点で大きく異なる.それに対し,ペガプタニブは他の2剤に比べ黄斑部の構造的および機能的改善効果が小さいが,全身および眼内の恒常性維持に必要なVEGFの生理的作用(神経保護作用や脈絡膜毛細血管板の内皮細胞窓形成による網膜外層の維持など)には影響が少ないと考えられる.そのため,脳梗塞を発症して間もない症例や高齢者などで使用しやすいほか,ラニビズマブなどで報告されている地図0.70.6状萎縮の発症リスクも少ない可能性がある2).ペガプタニブは治療の第一選択として導入期から使用されることは少ない.実際の臨床でベガプタニブが選択されることが多いのは,①導入期の治療で滲出性所見や視力が改善した症例の維持期の治療,②他の2剤による治療に抵抗性を示す症例の治療,の2つではないだろうか.これらの場合において,日本からの報告をそれぞれまとめてみる.維持期治療への活用維持期の治療としてペガプタニブを選択し経過をみた臨床試験としてLEVEL-Jstudyがある.導入期が終了した維持期の滲出型加齢黄斑変性患者75例に対し,6週ごとにペガプタニブを投与して1年の経過をみた報告である3).経過中,臨床所見の悪化がみられた場合は,他の薬剤によるbooster治療を取り入れることが可能となっている.53%の症例でbooster治療を必要とせず,ペガプタニブのみで導入期直後の視力が1年間維持され500400中心窩網膜厚(μm)平均logMAR視力0.53000.40.32000.21000.10初診時0週156週図1維持期にペガプタニブを投与し,3年間経過をみた結果平均視力,中心窩網膜厚ともに導入期直後の状態を3年間維持できている.(文献4を改変して引用)(63)あたらしい眼科Vol.32,No.11,201515750910-1810/15/\100/頁/JCOPY0.75000.6400平均logMAR視力0.53000.4中心窩網膜厚(μm)0.32000.21000.100初診時ベースライン12カ月図2治療抵抗例に対し,ペガプタニブに切り替えて12カ月経過をみた結果平均視力は維持され,中心窩網膜厚は維持期開始時よりも減少している.(文献5を改変して引用)た.また,ラニビズマブで導入期治療を行い,維持期の治療として6週ごとにペガプタニブを投与し3年の経過を追えた16眼では,視力,中心窩網膜厚ともに導入期直後の状態を3年間維持できていた(図1)4).ただし,ラニビズマブによるbooster治療が行われたのは16眼中13眼で,その時期は平均して維持期治療開始から24週後であった.これらの結果から,適宜booster治療は必要となるが,ペガプタニブによる維持療法が長期にわたって有効である可能性が示唆された.治療抵抗例への活用一方,ラニビズマブや光線力学的療法による導入期治療に抵抗性を示した症例に対し,6週間ごとにペガプタニブを投与して1年間経過観察を行った50例についての報告がある5).98%の症例でペガプタニブに切り替える前と比べて視力の維持または改善がみられた.中心窩網膜厚も維持期治療開始時と比べ有意に減少していた(図2).12カ月の時点で54%の症例で滲出が消失し,42%の症例で滲出性変化は減少していた.以上の結果から,治療抵抗症例に対する治療の選択肢のひとつとしてペガプタニブを取り入れることも有用である可能性が示唆された.おわりにペガプタニブは作用が他の抗VEGF薬より弱いが,生理的なVEGFの作用に影響しにくいため,地図状萎縮や脳血管障害のリスクのある症例にも使いやすい.また,導入期治療でいったん状態が落ち着いた症例では,維持期の治療の選択肢のひとつになりうる.さらに,他の薬物治療での導入期治療に反応しない症例にも有効である可能性がある.文献1)石田晋:網膜疾患におけるVEGFの生物活性とVEGF阻害薬の特色.日の眼科86:1088-1094,20152)CATTResearchGroup;GrunwaldJE,DanielE,HuangJetal:Riskofgeographicatrophyinthecomparisonofage-relatdmaculardegenerationtreatmentstrials.Oph-thalmology121:150-161,20143)IshibashiT;LEVEL-JStudyGroup:Maintenancethera-pywithpegaptanibsodiumforneovascularage-relatedmaculardegeneration:anexploratorystudyinJapanesepatients(LEVEL-Jstudy).JpnJOphthalmol57:417-423,20134)InoueM,KadonosonoK,ArakawaAetal:Long-termoutcomeofintravitrealpegaptanibsodiumasmaintenancetherapyinJapanesepatientswithneovascularage-relatedmaculardegeneration.JpnJOphthalmol59:173-178,20155)ShiragamiC,OnoA,KobayashiMetal:E.ectofswitch-ingtherapytopegaptanibineyeswiththepersistentcasesofexudativeage-relatedmaculardegeneration.Medicine93:e116,20141576あたらしい眼科Vol.32,No.11,2015(64)