●連載171緑内障セミナー監修=岩田和雄山本哲也171.OCT各機種の緑内障診断能金森章泰神戸大学大学院医学研究科外科学講座眼科学OCTはいくつかの機種があり,撮影法のみならず,その測定結果にも違いがある.同一のサンプルを対象に3機種のOCTで撮影したデータをもとに,機種間での緑内障診断能を比較した.●はじめに緑内障診療において,光干渉断層計(opticalcoherencetomography:OCT)は非常に有用なツールである.乳頭周囲網膜神経線維層(circumpapillaryretinalnervefiberlayer:cpRNFL)解析は以前からOCTでの主な評価項目であったが,スペクトラルドメインOCT(SDOTC)では,黄斑部網膜内層解析が可能となった.黄斑部網膜神経線維層(macularretinalnervefiberlayer:mRNFL)や網膜神経節細胞層+内顆粒層(ganglioncelllayerandinnerplexiformlayer:GCLIPL),さらにmRNFLとGCLIPLの和であるganglioncellcomplex(GCC)を測定することができる.RNFL走行に基づいた黄斑部の構造的変化の検出も可能である1).SD-OCTは現在,主に6社から発売され,各機種とも基本的原理は同じであるが,いくつかの違いがある.●cpRNFLの各機種間の比較cpRNFLは各機種とも同様の解析を行っているはずであるが,同一患者を対象に3機種でOCT解析を行った研究により,機種間の違いが指摘されている.シラス(Cirrus),スペクトラリス(Spectralis),RTVue-100を比較した報告では,RTVueでは他の2機種に比べcpRNFLが厚く測定されることが報告されている2).また,Cirrus,RTVue,3DOCT-2000を比較した筆者らの研究では,Cirrusが他の2機種より薄くcpRNFLが測定され,また,測定円の中心がRTVueでは他の2機種に比べ若干上鼻側に存在することがわかった3).これらの違いは,網膜各層を分離する方法の違いによると推定される.また,各機種とも視神経乳頭中心を自動的に設定することでcpRNFL測定部位を決定するが,視神経乳頭中心の判定のための具体的方法は各機種とも明らかにされておらず,機種間の差につながっているものと(91)0910-1810/14/\100/頁/JCOPYCirrus3D-OCTRTVueRS-3000図1解析対象範囲の比較Cirrus(赤色),3D-OCT(青色),RTVue(緑),RS-3000(黄色)の黄斑部解析範囲を示す.思われる.このように,OCTによるcpRNFL測定値は機種間によって異なり,互換性はないことに留意する必要がある.●黄斑部解析の各機種間の違い黄斑部解析は各機種でかなりの違いがある.まず解析対象範囲が異なり,Cirrusがもっとも狭い領域を解析している(図1).それぞれ解析結果として出力されるパラメータも異なるが,正常眼からの逸脱具合を示すデビエーションマップはどの機種とも搭載しており,緑内障性障害のパターンとしての変化を捉えることができる.●各機種の緑内障診断能緑内障(平均MD=.5.85dB)を対象にCirrus,Spectralis,RTVueで測定したcpRNFLの診断能を比較した報告では,全周cpRNFLの診断能は各機種間で有意な差はなかったものの,鼻側90°象限cpRNFLはCirrusが他の2機種に比べ診断能が低かったとしている4).また,筆者らも強度近視を伴わない(.6D以上)の緑内障(平均MD=.7.12dB)を対象にCirrus,RTVue,あたらしい眼科Vol.31,No.9,20141339AveragecpRNFLthickenssAverageGC/IPLthickenssAveragemRNFLthickenss100-Specificitiy100-Specificitiy100-Specificitiy100-SpecificitiyAverageGCCthickenssSensitivitySensitivitySensitivitySensitivityABCDAveragecpRNFLthickenssAverageGC/IPLthickenssAveragemRNFLthickenss100-Specificitiy100-Specificitiy100-Specificitiy100-SpecificitiyAverageGCCthickenssSensitivitySensitivitySensitivitySensitivityABCD図2緑内障診断能の比較正常87眼を対象として,強度近視を伴わない初期緑内障75眼の検出能を3機種で比較した.A:全周cpRNFL厚,B:averageGCC厚,C:averageGCLIPL厚,D:averagemRNFL厚の受信者操作特性曲線(ROCカーブ)を示す.縦軸は敏感度(%),横軸は100-特異度(%)を示す.(文献5から改変して掲載)3DOCT-2000で同様の検討を行った結果,全周cpRNFLの診断能は各機種間で有意な差はなかったものの,RTVueにおいて,鼻側90°象限cpRNFLで他の2機種に比べ診断能が高く,耳側象限cpRNFLで3DOCTよりも高い診断能を示した5).しかし,実際の臨床では明らかな緑内障でOCTにその診断を迷うことはなく,初期緑内障(平均MD=.2.61dB)に症例をしぼったところ,どのcpRNFLパラメータでも有意な機種間の差は検出されなかった(図2)5).鼻側象限cpRNFLは初期緑内障では重要ではない領域であり,機種間の差は臨床的意義をもたないかもしれないが,鼻側cpRNFLはRTVueが鋭敏である可能性がある.全病期緑内障を対象とした黄斑部解析の比較ではaverageGCCは3機種に有意差はなかったものの,上半分GCCがRTVueが高い診断能を有していた5).これは初期緑内障に対象を限定しても同様の結果であった.RTVueではRNFLとGCLを分離できないため,mRNFLとGCLIPLをCirrusと3DOCTで比較したところ,mRNFLは3DOCTが,GCLIPLはCirrusが高い診断能を有していた5).1340あたらしい眼科Vol.31,No.9,2014●強度近視を伴う緑内障の各機種の診断能近視(.6D以上)をもつ緑内障(平均.7.36dB)に対してCirrus,RTVue,3DOCT-2000の診断能の検討を行った6).全周cpRNFLの診断能は各機種間で有意な差はなかったものの,鼻側90°象限cpRNFLはRTVueが他の2機種に比べ診断能が高かった.黄斑部解析ではGCC,GCLIPLに有意な機種間の差はなかったものの,mRNFLは3DOCTがCirrusよりも高い診断能を有していた.また,各機種でcpRNFLとGCCで診断能を比較したところ,両者間に有意差はなく,cpRNFL,GCCともにどの機種でも同等の近視緑内障の検出能をもつ結果であった.●おわりにSD-OCT各機種ともほぼ同様の緑内障診断能を示すと思われる.しかし,どのOCTが日常診療における緑内障診断に優れているかは上記の測定値のみの解析では単純に比較することができず,それぞれで得られるパラメータや撮影方法,解析時間などが異なり,一長一短がある.文献1)KanamoriA,NakaM,AkashiAetal:Clusteranalysesofgrid-patterndisplayinmacularparametersusingopticalcoherencetomographyforglaucomadiagnosis.InvestOphthalmolVisSci54:6401-6408,20132)LeiteMT,RaoHL,WeinrebRNetal:Agreementamongspectral-domainopticalcoherencetomographyinstrumentsforassessingretinalnervefiberlayerthickness.AmJOphthalmol151:85-92e81,20113)KanamoriA,NakamuraM,TomiokaMetal:Agreementamongthreetypesofspectral-domainopticalcoherenttomographyinstrumentsinmeasuringparapapillaryretinalnervefibrelayerthickness.BrJOphthalmol96:832837,20124)LeiteMT,RaoHL,ZangwillLMetal:ComparisonofthediagnosticaccuraciesoftheSpectralis,Cirrus,andRTVueopticalcoherencetomographydevicesinglaucoma.Ophthalmology118:1334-1339,20115)AkashiA,KanamoriA,NakamuraMetal:ComparativeassessmentfortheabilityofCirrus,RTVue,and3D-OCTtodiagnoseglaucoma.InvestOphthalmolVisSci54:4478-4484,20136)AkashiA,KanamoriA,NakamuraMetal:TheabilityofmacularparametersandcircumpapillaryretinalnervefiberlayerbythreeSD-OCTinstrumentstodiagnosehighlymyopicglaucoma.InvestOphthalmolVisSci54:6025-6032,2013(92)