特集●網膜レーザー光凝固治療の進化あたらしい眼科31(1):29~35,2014特集●網膜レーザー光凝固治療の進化あたらしい眼科31(1):29~35,2014マイクロパルス閾値下凝固SubthresholdMicropulseLaserPhotocoagulation大越貴志子*はじめに網膜疾患のレーザー治療は長い間,破壊をもって効果を得る治療であった.しかし,近年,破壊することなしに治療効果を得るレーザーが開発されている.マイクロパルス閾値下凝固は,短い凝固時間のレーザーを連続発振することにより,選択的に網膜色素上皮に熱のエネルギーが伝わるという性質を応用して開発された凝固斑の出ないレーザー治療である.マイクロパルス閾値下凝固の登場により黄斑浮腫のレーザー治療の奏効機序に関するこれまでの概念が見直され,今日,非侵襲的に網膜疾患を治療する方向に発展しつつある.本稿では,マイクロパルス閾値下凝固の開発の歴史,治療の奏効機序,治療適応と手術手技,効果とその限界,問題点と今後の展望について述べる.I開発の歴史1990年にPankratovが初めて従来の連続波に代わって短い時間のパルス照射,すなわち“micropulses”を報告した.その後1992年にChongら1)が800nmMicroPulseダイオードレーザーにより網膜色素上皮(RPE)に限局した凝固が可能であることを動物実験で示し,この新しい方法がRPEに病態の首座がある疾患の治療にふさわしいレーザー治療法となる可能性を示唆した.臨床応用としては1997年にFribergら2)が初めて黄斑浮腫に対する810nmマイクロパルスダイオードレーザーの治療成績を報告している.その後,糖尿病黄斑浮腫3~8),網膜静脈閉塞症の黄斑浮腫9),そして中心性漿液性脈絡網膜症10)などに本治療が有効であるとの報告がなされた.わが国では2010年に筆者ら7)が初めて日本人に対する本治療が有効であることを報告した.マイクロパルス閾値下凝固は,IRIDEX社が中心となり機械の開発に当たった.初めてマイクロパルスを搭載した機械は,1991年に発売されたOcuLightSLxであり,わが国では1993年に承認され販売されている.OcuLightSLxはマイクロパルス専用機ではなく,810nmダイオードレーザーを発振する特殊なレーザー機器であった.当時810nmダイオードレーザーが脈絡膜病変の治療に適していることから,加齢黄斑変性に対する経瞳孔的温熱療法(TTT)やG-プローブを用いた毛様体破壊術などの目的で利用されていたが,マイクロパルス閾値下凝固として用いるためには,専用のスリットランプアダプターが必要であっため,使用される施設は限られていた.2000年代に入ると,マイクロパルス閾値下凝固のランダム化コントロールスタディなど,エビデンスレベルの高い臨床論文が次々に報告5,6)され,また,黄斑微小視野検査11)やスペクトラルドメイン光干渉断層計(SDOCT)による評価12)も加わり,安全性に対する評価も確立されてきた.そして,2011年11月,IRIDEX社がマイクロパルスを搭載した機械としては国内では2号機であるIQ577という新しいレーザー機器を発売し,マイクロパルス閾値下凝固が通常の網膜レーザー治療と同*KishikoOhkoshi:聖路加国際病院眼科〔別刷請求先〕大越貴志子:〒104-8560東京都中央区明石町9-1聖路加国際病院眼科0910-1810/14/\100/頁/JCOPY(29)29TEMPERATURERISEIRRADIANCERETINARPECHOROID10-1sec10-2sec10-110-3sec10-210-4sec10-310-5sec10010-410-6sec10-5040μm20μm20μm40μm10010-110-6sec10-5sec10-4sec10-3sec10-2sec1sec10-1sec10-210-310-41000μm1000μm100μm200μmDIAMETERSPOTSIZE100μm10μm10μmTEMPERATURERISEIRRADIANCELATERALDISTANCEFROMCENTEROFLASERSPOT図1レーザーの凝固時間と組織の温度上昇〔文献18)より〕凝固時間が短いほど,網膜色素上皮に限局して温度上昇が起こり,周囲の網膜へは垂直方向,水平方向ともに温度が伝達しない.じ機械で施行できるようになった.IQ577は577nm照射時間(pureyellow)の連続波またはマイクロパルスを発信できるレーザー機器である.577nmが通常の網膜光凝固出力に適した波長であることから,810nmの欠点を補い,黄斑凝固に限らず,汎網膜光凝固など幅広いレーザー治療が同じ機械でできるようになった.また,海外ではQuantel社が同様に577nmマイクロパルスを搭載したレーザーを発売しており,今後マイクロパルス閾値下凝固がより身近に使用可能な時代になるものと期待されている.II特徴と奏効機序これまでのレーザーは熱で網膜を破壊することにより,網膜外層の酸素の消費が減少し,酸素不足が解消され,黄斑浮腫が減少するものと推定されていた.この奏効機序からすれば,網膜の破壊は浮腫を引かせるために必要かつ不可欠な条件である.しかし,マイクロパルス閾値下凝固後の網膜は細胞死をもたらすほどの障害を加えていないにもかかわらず,浮腫が引くことから,細胞死をもたらさない程度の網膜色素上皮細胞の温度上昇がさまざまなサイトカインの動態に影響することが浮腫減少のメカニズムと推定されている.レーザーの性質からすれば,凝固時間が短いほど,色素上皮に選択的温度上昇が生じる(図1).しかし十分な熱の上昇を得るためには,短い凝固時間を連続発振する必要がある.マイクロパルス閾値下凝固は,短い時間のレーザーを連続し発信することで,1回の照射とするレ30あたらしい眼科Vol.31,No.1,2014時間Pulseenvelope・・・・・出力オンオフ図2連続波による凝固(上)とマイクロパルス閾値下凝固(下)上:連続波(CW:continuouswave)は照射時間中連続して発振している.下:マイクロパルスは100μsec単位でレーザーをパルス状に発振.Pulseenvelopeのなかに,多数のontimeとofftimeが繰り返される.Dutycycleとは,pulseenvelopeのなかのontimeの比率である.Ontimeが300μsec,offtimeは1,700μsecであれば15%dutycycleとなる.ーザーであり,これをpulseenvelopeとよぶ(図2).Pulseenvelopeのdutycycleすなわち,レーザー発振のオン,オフの配分はコントロールすることができ,IRIDEX社のレーザーもQuantel社のレーザーも自由に設定できるが,IRIDEX社のレーザーでは5%,10%,15%の3種類のdutycycleをプリセットから選択できる.Dutycycleは組織の温度上昇と関連しており,数(30)値が大きいほどレーザーを発振している時間が長く,網膜の温度が上昇するものと考えられている.RPEの温度上昇は,49℃以上でヒートショック蛋白が発現し,59℃がRPEの生存限界であることが知られており13),マイクロパルス閾値下凝固でこのレベルの温度上昇が実現可能と推定されている.マイクロパルス閾値下凝固では,網膜の細胞死をもたらすことなしに,ヒートショック蛋白が発現する以上の温度まで上昇させることが可能と考えられており,浮腫減少のメカニズムに何らかの関与をしているのではないかと推定されている.IIIマイクロパルス閾値下凝固の適応黄斑浮腫をきたす疾患,たとえば糖尿病黄斑浮腫,網膜静脈分枝閉塞症の黄斑浮腫が適応となる.しかし,レーザーの性質からして,毛細血管瘤に対する直接凝固は,熱による血管の凝固が必要であるため,適応にならない.また,出血が多い静脈閉塞症や,重症なびまん性黄斑浮腫,色素上皮が隠蔽されてレーザー光が到達しないような症例も適応外である.汎網膜光凝固をマイクロパルスで行ったという論文もあるが,基本的に閾値下凝固では凝固斑が出ないことより,適切に照射できるとは考えにくく適応外と思われる.そのほか,凝固斑の拡大がないことから,中心窩付近,または乳頭黄斑線維束から漏出のある中心性漿液性脈絡網膜症も良い適応である.網膜静脈分枝閉塞症による黄斑浮腫の場合は,抗VEGF(血管内皮増殖因子)療法を行った後,浮腫の減少を待って施行するのが良い.IV治療手技閾値下凝固とは,凝固斑が出ないレーザーであるので,適切に凝固するためには,閾値を正確に把握する必要がある.このため,浮腫のない部分で,まずテスト照射をする必要がある.テスト照射はcontinuouswave,照射径200μm,0.1秒でアーケード外の浮腫の存在しない部分に行う.90mW程度から出力を次第に上げながら凝固斑が観察される最低の出力を閾値とする.閾値の出力は機種により異なるが,IRIDEX社のダイオードレーザー810nm(OcuLightSLx)では,およそ300~400mW,IQ577では,90mWから120mWで淡いフレックが出る.閾値が決定したら,マイクロパルスモードに切り替え,15%dutycycle,0.2秒で出力を閾値の200%に設定し,再度最終的なテスト照射を行ってフレックが出ないことを確認する.閾値の出力を正確にとらないと,マイクロパルスモードで淡いフレックが出ることがあるので,注意が必要である.万が一マイクロパルスモードでフレックが出た場合は再度閾値の出力を調整する.最終出力は810nmOcuLightSLxでは600~900mW,IQ577では200から300mW程度である.光凝固は基本的に従来の格子状凝固と同様に浮腫の存在する部分と蛍光漏出の強い部分に豆まき状に照射するのであるが,低出力広間隔格子状凝固14)を含め,従来の格子状凝固が広間隔にフレックを置くのに反し,マイクロパルス閾値下凝固はフレック同士が連続するように間隔をあけずに照射する(図3).照射した部位にレーザーの凝固斑はまったく観察されないので凝固部位を記憶しながら照射しかつ,終了後に必ず照射部位を記載しておくことが重要である(図4).マイクロパルス閾値下凝固では毛細血管瘤の直接凝固は基本的に行わないが,輪状硬性白斑を伴う黄斑浮腫では,白斑の中心に毛細血管瘤が存在するので,そこだけ,直接凝固をしておくのが良い.810nmダイオードレーザーでは直接凝固が困難なので,できればグリーンまたはイエローの波長の発信できるレーザーに変えて行うほうが良い.IQ577では577nm黄色であるので,オキシヘモグロビンへの吸収が良好で,毛細血管瘤の直接凝固図3低出力広間隔格子状光凝固(左)とマイクロパルス閾値下凝固(右)低出力広間隔格子状光凝固では凝固斑同士の間隔を1.5フレック以上広くとる.マイクロパルス閾値下凝固では凝固斑同士は接するように間隔はあけずに照射する.(31)あたらしい眼科Vol.31,No.1,201431acbde図4びまん性糖尿病黄斑浮腫に対しIQ577でマイクロパルス閾値下凝固を施行した1例54歳,糖尿病女性..胞様黄斑浮腫を伴うびまん性糖尿病黄斑浮腫にて視力は0.3に低下している.中心窩を除く黄斑部全体にマイクロパルス閾値下凝固を行った.a:光凝固直後.マイクロパルス閾値下凝固を行った部分に凝固斑は観察されない.凝固条件:577nm,15%dutycycle,200μm,0.2sec,200mW,543発.b:光凝固前の蛍光眼底写真.びまん性蛍光漏出を認める.c:光凝固前の光干渉断層計.中心窩を中心に.胞様浮腫を認める(中心窩網膜厚:668μm).d:光凝固後3カ月の光干渉断層計..胞様浮腫は改善し中心窩網膜厚は著明に減少した(中心窩網膜厚:407μm).e:光凝固後3カ月のカラー眼底写真.凝固斑は観察されない.視力は0.3から0.7に改善した.にはきわめてふさわしい波長であり,直接凝固とマイクロパルス閾値下凝固を同時に行うことが可能である15).中心性漿液性脈絡網膜症では,蛍光眼底撮影で確認できた漏出部位に複数回照射する(図5).閾値下凝固で行う限り,黄斑中心より200μmまで照射できる.また,基本的に神経線維層を破壊しないので,乳頭黄斑線維束の下も凝固できる.網膜中心静脈分枝閉塞症の黄斑浮腫では,陳旧性の黄32あたらしい眼科Vol.31,No.1,2014斑浮腫の場合はそのまま閉塞領域の黄斑グリッドの形で治療するが,新鮮例の場合は,浮腫が厚く出血などで色素上皮が隠蔽されている.そのため抗VEGF療法にて浮腫を減少させてからリバウンドの防止目的にて行うほうが良い.V効果判定マイクロパルス閾値下凝固は術直後に凝固斑が見えな(32)acbd図5再発性中心性漿液性脈絡網膜症にマイクロパルス閾値下凝固を施行した1例46歳,男性で,2年前から中心性漿液性脈絡網膜症を繰り返している.FAでは傍中心窩からの漏出があり,通常のレーザーでは凝固できないため,漏出点(矢印)にマイクロパルス閾値下凝固を施行した.凝固条件:810nm,15%dutycycle,200μm,0.2sec,1000mW,52発.a:光凝固直後の眼底写真.凝固斑は観察されない.b:光凝固前の蛍光眼底撮影.傍中心窩からの蛍光漏出を認める(矢印).c:光凝固前の光干渉断層計.中心窩に色素上皮.離と漿液性網膜.離を認める.d:光凝固後1カ月の眼底写真.漿液性.離は完全に消失した.いレーザー治療であるため,効果判定はOCTにて浮腫がひいている症例ではそのまま行うが,急性期で出血がの変化を観察する.糖尿病黄斑浮腫の場合,自験例でまだ残存している症例では抗VEGF療法の後に施行し,は,照射後1カ月から有意に浮腫は改善しており7),効効果判定はリバウンドの程度で判断する.中心性漿液性果判定は比較的早期,3カ月頃をめどにするのが良い.脈絡網膜症では1カ月目に漿液性.離の丈が減少してい照射後3カ月経過しても浮腫の改善が得られない場合はるか否かをOCTにて確認する(図5).1カ月しても浮もう一度同一部位に同様の出力で行うか,または低出力腫が減少しない場合は,漏出点が閉鎖していないものと広間隔格子状凝固を追加する.症例によってはまったく推定され,追加凝固が必要である.効果がでない場合もあり,浮腫の進行がコントロールできない重症例では,再治療の際に薬物による治療の併用VI効果とその限界を考慮する.黄斑浮腫に対するマイクロパルス閾値下凝これまで報告された糖尿病黄斑浮腫に対する本治療の固は3カ月以降効果が減弱し浮腫が再発するケースがあ成績は,浮腫の減少率が57%から96%であり,視力のるので,その際同様にマイクロパルスで追加凝固を行改善,または維持が85%から97%と報告されている.う.網膜静脈閉塞症の黄斑浮腫の場合は,慢性期で出血筆者ら7)は36例43眼の糖尿病黄斑浮腫(clinicallysig(33)あたらしい眼科Vol.31,No.1,201433nificantmacularedema)に本治療を行い,3カ月で浮腫は有意に改善し,94.7%の症例で1年間視力が維持されたことを報告した.その他,多数の論文があるが,modifiedETDRSレーザーと比較した論文を紹介する.2009年にFigueiraら5)はmodifiedETDRSレーザーとマイクロパルスを比較し,効果に差がなかったことを報告している.一方,2011年にRavinskyら6)は,ランダム化比較試験にてmodifiedETDRS凝固と通常の密度で打ったマイクロパルス閾値下凝固,高密度のマイクロパルス閾値下凝固の3群で効果を比較し,通常の密度で打ったマイクロパルス閾値下凝固はmodifiedETDRS凝固に比較し効果は劣っていたが,高密度なマイクロパルス閾値下凝固はmodifiedETDRS凝固に比較し良好な成績であったことを報告した.この報告は,初めてマイクロパルス閾値下凝固の従来の熱凝固に比較しての優位性を証明した論文である.一般にマイクルパルスは低侵襲なので,軽症の浮腫にしか効果がないように思われているが,平均網膜厚504μmという,比較的重症な黄斑浮腫にも効果があるとの報告8)もある.また,マイクロパルス閾値下凝固と直接凝固との併用療法の結果も報告されている.稲垣ら15)は2012年にマイクロパルス閾値下凝固と直接凝固の併用が有効であったことを報告している.VII副作用と問題点―今度の展望これまでのところマイクロパルス閾値下凝固後に暗点の自覚を訴える症例はなく,従来の光凝固に比較して明らかに低侵襲で安全性が高い治療と考えられる.筆者の経験では34眼中1眼のみ凝固部位にかすかな色素上皮の色調の変化を認める症例があった.黄斑部の機能評価として星川ら11)が2011年に短期的には凝固部位の感度の低下はなかったことを報告している.また,2012年にInagakiら12)が,凝固部位をSD-OCTで観察し,変化がなかったことを報告している.このように副作用のきわめて少ない凝固と考えられるが,凝固斑が凝固直後に確認できないので治療の目標点が確認しにくいことや,閾値下凝固の条件が術者によって異なり,確定した閾値下の条件が確立されていないことなど,今後の課題である.34あたらしい眼科Vol.31,No.1,2014■用語解説■ETDRS(EarlyTreatmentofDiabeticRetinopathyStudy)16):1980年代に米国で3,928人を対象とした大規模な糖尿病網膜症に対する早期治療の有効性を検証する多施設臨床研究が行われた.この研究がETDRSである.ETDRSは多数の論文を報告しており,1985年に報告されたETDRSレポート116)では,糖尿病黄斑浮腫に対してただちに黄斑局所光凝固術を施行することが,視力の低下を防ぐうえで有効であったことを証明した.それ以来,レーザー治療は糖尿病黄斑浮腫治療のゴールドスタンダードとして広く用いられている.低出力広間隔格子状光凝固14)(図3):2001年に筆者が報告した,改良版の格子状凝固.出力を閾値,すなわち凝固斑が見えるか見えないかの程度に設定し,かつ凝固斑の間隔を広めに,1.5フレック以上あけ,0.1秒の条件で行った.この方法でも十分に浮腫は改善させることができるが,基本的に凝固斑が見える凝固であり,マイクロパルス閾値下凝固と異なり,軽微な組織変化を網膜に残すことになる.ETDRSレーザーとmodifiedETDRS17)レーザー:1985年にETDRS(EarlyTreatmentofDiabeticRetinopathyStudy)15)が糖尿病黄斑浮腫に対する黄斑局所光凝固の有効性を報告したが,その際プロトコールに用いた方法が,通称“ETDRS凝固”とよばれている.ETDRS凝固は侵襲が大きかったため,凝固斑の拡大融合や線維増殖などの合併症が一部の症例でみられた.そこで,2007年に凝固条件を見直し低侵襲に改良した,いわば改良版ETDRS凝固が報告され,これがmodifiedETDRS凝固である.現在さまざまな臨床試験や日常診療にmodifiedETDRS凝固が基本的な手技として用いられている.マイクロパルス閾値下凝固は黄斑部という最も機能を温存しなければならない組織を治療するのに最も適した治療法と考えられる.マイクロパルスを用いた閾値下凝固は視機能を維持しながら浮腫をひかせる黄斑疾患の新たな黄斑疾患の治療戦略として今後の発展が期待できるものと思われる.文献1)ChongLP,KohenL,KelsoeWetal:SelectiveRPEdamagebymicropulsediodelaserphotocoagulation.InvestOphthalmolVisSci33(Suppl):s772.#150,19922)FribergTR,KaratzaEC:Thetreatmentofmaculardiseaseusingamicropulsedandcontinuouswave810-nm(34)diodelaser.Ophthalmology104:2030-2038,19973)LaursenML,MoellerF,SanderBetal:Subthresholdmicropulsediodelasertreatmentindiabeticmacularoedema.BrJOphthalmol88:1173-1179,20044)MoormanCM,HamiltonAMP:ClinicalapplicationsoftheMicroPulsediodelaser.Eye13:145-150,19995)FigueiraJ,KhanJ,NunesSetal:Prospectiverandomizedcontrolledtrialcomparingsubthresholdmicropulsediodelaserphotocoagulationandconventionalgreenlaserfordiabeticmacularedema.BrJOphthalmol93:13411344,20096)LavinskyD,CardilloJA,MeloLAetal:RandomizedclinicaltrialevaluatingmETDRSversusnormalorhigh-densitymicropulsephotocoagulationfordiabeticmacularedema.InvestOphthalmolVisSci52:4314-4323,20117)OhkoshiK,YamaguchiT:SubthresholdmicropulsediodelaserphotocoagulationfordiabeticmacularedemaforJapanese.AmJOphthalmol149:133-139,20108)TakatsunaY,YamamotoS,NakamuraYetal:Longtermtherapeuticefficacyofthesubthresholdmicropulsediodelaserphotocoagulationfordiabeticmacularedema.JpnJOphthalmol55:365-369,20119)ParodiMB,SpasseS,IaconoPetal:Subthresholdgridlasertreatmentofmacularedemasecondarytobranchretinalveinocclusionwithmicropulseinfrared(810nanometer)diodelaser.Ophthalmology113:2237-2242,200610)ChenSN,HwangJF,TsengLFetal:Subthresholddiodemicropulsephotocoagulationforthetreatmentofchroniccentralserouschorioretinopathywithjuxtafovealleakage.Ophthalmology115:2229-2234,200811)星川有子,大越貴志子,山口達夫:糖尿病黄斑浮腫に対するマイクロパルス閾値下凝固後の網膜感度の短期的検討.日眼会誌115:13-19,201112)InagakiK,OhkoshiK,OhdeS:Spectraldomainopticalcoherencetomographyimageofretinalchangesafterconventionalmulticolorlaser,subthresholdmicropulsediodelaser,orpatternscanninglasertherapyinJapanesewithmacularedema.Retina32:1592-1600,201213)SramekC,MackanosM,SpitlerRetal:Non-damagingretinalphototherapy:dynamicrangeofheatshockproteinexpression.InvestOphthalmolVisSci52:1780-1787,201114)大越貴志子:糖尿病黄斑浮腫の光凝固療法─低出力広間隔格子状光凝固.眼紀52:104-111,200115)稲垣圭司,伊勢田歩美,大越貴志子:糖尿病黄斑浮腫に対する直接凝固併用マイクロパルス・ダイオードレーザー閾値下凝固の治療成績の検討.日眼会誌116:568-574,201216)EarlyTreatmentofDiabeticRetinopathyStudyResearchGroup:Photocoagulationfordiabeticmacularedema.ArchOphthalmol103:1796-1806,198517)WritingCommitteefortheDiabeticRetinopathyClinicalResearchNetwork:ComparisonofthemodifiedEarlyTreatmentDiabeticRetinopathyStudyandmildmaculargridlaserphotocoagulationstrategiesfordiabeticmacularedema.ArchOphthalmol125:469-480,200718)MainsterMA:Decreasingretinalphotocoagulationdamage:principleandtechniques.SeminOphthalmol14:200-209,1999(35)あたらしい眼科Vol.31,No.1,201435