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緑内障:Topcon 3D OCT-2000

2013年12月31日 火曜日

●連載162緑内障セミナー監修=岩田和雄山本哲也162.Topcon3DOCT.2000齋藤瞳公立学校共済組合関東中央病院眼科トプコン社の3DOCT-2000の使用経験からその特徴をあげると以下のようになる.1)眼底写真を同時撮影できる,2)黄斑部のパラメータの上下の差分を表示しており,初期緑内障眼における局所的変化をとらえやすくしている,3)日本人のデータベースが入っている,4)新たに進行解析プログラムが搭載されていることなどがあげられる.●3DOCT.2000の緑内障用撮影モード3DOCT-2000(図1)には緑内障解析用の撮影モードとして,視神経乳頭周囲の網膜神経線維層厚(retinalnervefiberlayerthickness:RNFLT)や,視神経乳頭形状を測定するためのdisc3Dモードと,黄斑部の網膜内層厚を測定するためのmacula(V)モードの2つが搭載されている.Disc3Dモード(図2)では,視神経乳頭周囲を6mm×6mmの3Dscanで撮影する.乳頭中心から直径3.4mmの円周上のRNFLTを求め,それをTSNITgraphや分割プロットに表示する.OCTの器械内には正常人データベースが搭載されており,年齢と性別に合わせた正常眼データと比較し測定値の異常確率をカラーマップで表示している.さらに,SD-OCTでは,短時間で大量の情報を取得・解析できるため,3Dscanした全範囲における各測定点の異常確率をsignificancemapの形で表示し,nervefiberlayerdefectの存在範囲を可視化することができる.また,乳頭面積やrim,cupパラメータなどの視神経乳頭の立体形状を計測することも可能である.Macula(V)モード(図3)では,緑内障性変化が出現する黄斑部の網膜内層厚を測定している.黄斑部RNFLT,網膜神経節細胞(ganglioncelllayer:GCL)厚,内網状層(innerplexiformlayer:IPL)厚などが測定される.本来緑内障変化を鋭敏にとらえているのはRNFLとGCL厚と思われるが,GCLは画像の精度により必ずしも分層できないことが多いため,IPLとの複合層(3DOCT-2000ではGCL+と名付けている)もしくはmRNFL,GCL,IPLの3層の複合層(一般的にganglioncellcomplexと呼ばれているが,3DOCT-2000(57)0910-1810/13/\100/頁/JCOPY図1トプコン3DOCT.2000の外観ではGCL++と名付けている)を代替的に用いている.また,通常の網膜疾患の観察に用いられる黄斑部の撮影では横向きのA-scanを行うが,初期緑内障は上下のいずれかの半網膜に異常が始まるため,緑内障用の黄斑部撮影はあえて縦向き(vertical)のA-scanを行っている.●3DOCT.2000の特徴3DOCT-2000の乳頭周囲RNFLTおよび黄斑部パラメータの再現性は良好と報告されている1).また平均MD値.2.5dBの初期緑内障における乳頭周囲の緑内障感度・特異度は90%を超えるとの報告もあり2),その緑内障診断能は高く評価されている.しかし,各社SD-OCTで網膜分層の定義が若干異なるため実測値の互換性は必ずしもなく,注意が必要である3).他社のSD-OCTと比較した際に3DOCT-2000の特徴として,1)眼底写真を同時撮影できるため,眼底と網膜断層図の所見部位を正確に合わせることが可能である,2)黄斑部のパラメータでは,厚みの実測値,正常あたらしい眼科Vol.30,No.12,20131705 実測値のカラーマップ正常データベースとの比較上下の差分のカラーマップ*実測値のカラーマップ正常データベースとの比較上下の差分のカラーマップ*視神経乳頭形状解析Significancemap分割プロットTSNITgraphとの比較以外に上下の差分を表示しており,初期緑内障眼における局所的変化をとらえやすくしている,3)日本人のデータベースが入っている,4)新たに進行解析プログラムが搭載されていることなどがあげられる.文献1)HirasawaH,AraieM,TomidokoroAetal:Reproducibilityofthicknessmeasurementsofmacularinnerretinallay1706あたらしい眼科Vol.30,No.12,2013図2Disc(3D)の解析結果のプリントアウト左上方に同時撮影された眼底写真,撮影範囲のRNFL厚のカラーマップ,正常データベースとの比較を示したsignificancemapが表示されている.左下方には乳頭周囲直径3.4mm上のRNFL厚をTSNITgraphや4,12,36分割で示した分割plotが表示される.右には視神経乳頭形状の解析結果が表示されている.図3Macula(V)の解析結果のプリントアウト黄斑部を縦に6mm×6mmでスキャンしている.右側には上段から,実測値のカラーマップ,正常データベースとの比較を示したsignificancemap,上下の差分量のカラーマップ(差分が大きいほど青で表示)を表示している.ersusingSD-OCTwithorwithoutcorrectionofocularrotation.InvestOphthalmolVisSci54:2562-2570,20132)MayamaC,SaitoH,HirasawaHetal:Circle-andgrid-wiseanalysesofperipapillarynervefiberlayersbyspectraldomainopticalcoherencetomographyinearly-stageglaucoma.InvestOphthalmolVisSci54:4519-4526,20133)PakravanM,PakbinM,AghazadehamiriMetal:Peripapillaryretinalnervefiberlayerthicknessmeasurementby2differentspectraldomainopticalcoherencetomographymachines.EurJOphthalmol23:289-2952013(58)*差が大きいと青で表示される.

屈折矯正手術:フラップレス屈折手術SMILE

2013年12月31日 火曜日

屈折矯正手術セミナー─スキルアップ講座─監修=木下茂●連載163大橋裕一坪田一男163.フラップレス屈折手術SMILE五十嵐章史北里大学医学部眼科学教室SMILEの初期臨床成績は良好であり,フラップを作製しないことから,従来のLASIKと比較し術後の三叉神経への侵襲は少ない新たな角膜屈折矯正手術である.はじめにLaserinsitukeratomileusis(LASIK)は,高い安全性と安定した臨床成績から,現在も屈折矯正手術の主流であるが,外傷によるフラップトラブルや遷延するドライアイなどフラップに伴う合併症は長期的にも認められている.そこで近年,フラップを作製しないsurfaceablationが見直されていたなか,新たな角膜屈折矯正手術であるsmallincisionlenticuleextraction(SMILE)が登場し,注目されている.SMILEはLASIKと異なり次世代フェムトセカンドレーザーのみを使用し,角膜実質内にレンチクルを作製し除去することによって角膜形状を変化させる手術である.LASIKのように角膜表面にフラップは作製せず,3.4mmの小切開のみを作製することから,より角膜に対する侵襲が少なく,良好なオキュラーサーフェスを獲得することが期待されている.本稿では,実際のSMILEの手術方法とその臨床成績について概説する.●手術方法①通常の内眼手術と同様に消毒を行ったのちに,ドレーピング,点眼麻酔を行う.②矯正量,レーザーの設定の確認を行う.③専用のアイコーンを瞳孔中心を目標にして角膜表面に接触させ吸引固定する.④レーザー照射を行う.⑤専用のスパーテルを用いてレンチクルの上皮側を鈍的に.離する(図1).⑥同様にレンチクルの内皮側を鈍的に.離する.⑦.離したレンチクルをセッシにて除去する(図2).⑧層間を洗浄して終了.●SMILEの臨床成績Kamiyaらの報告をもとに,当院におけるSMILE術(55)0910-1810/13/\100/頁/JCOPY後6カ月の成績を述べる1).対象は26名26眼.術前の平均年齢,等価球面度数,乱視度数はそれぞれ31.5±6.2歳,.4.21±1.63D,.0.54±0.74Dであった.a.安全性,有効性矯正視力が1段階の上昇例が8%,不変例が77%,1段階の低下を認めたものが15%,2段階以上低下した例は0%であった.裸眼視力は小数視力にて0.5以上を100%,1.0以上を96%に認めた.b.予測性(矯正精度)自覚等価球面度数が0.5D以内に100%であった.c.安定性術後1週間から6カ月の自覚等価球面度数変化は0.00±0.30Dであった.d.合併症術後1週に一過性の層間混濁を19%に認めたが,その後ステロイド点眼にて全例改善を認めている.●フラップレス手術のアドバンテージ前述のとおりSMILEにおいてLASIKともっとも異なる点は,フラップを作製しない点である.フラップレスであることは角膜への侵襲が少なくなり,術後のオキュラーサーフェスや角膜強度という点でとくにアドバンテージを得られるのではないかと期待される.一般に角膜内の三叉神経はBowman膜付近にsubbasalnerveplexusと呼ばれる密な神経叢を形成しており,角膜フラップを作製する手術では,一部ヒンジを残しほぼ全周この神経叢を障害することになる.そのためLASIK術後にはドライアイが必発し,時間経過とともに改善はするものの症状が遷延する例も存在する.SMILEでは3.4mm程度の小切開のみのため神経に対する侵襲は少なく,自験例においても術後の神経線維密度は比較的温存される傾向を認める(図3).Vestergaardらの報告によるとフラップを作製するFLEx(femtosecondlentiあたらしい眼科Vol.30,No.12,20131703 図1レンチクルの.離フェムトセカンドレーザーの切断面はミシン目状に癒着しているため,スパーテルを用いて鈍的に.離を行う.100μm100μm図3術後1カ月の神経線維(共焦点顕微鏡)術後1カ月のsubbasalnerveplexusを示す.左はFLEx術後,右はSMILE術後である.術後1カ月ではフラップ作製を行うFLExでは短い神経線維(矢印)がわずかに観察できるほどだが,SMILEでは長い神経線維(矢印)が多く観察できる.culeextraction)とSMILEのオキュラーサーフェスへの影響を比較したところ,術後6カ月においてSMILE群では有意に角膜知覚低下が少なく,神経線維数・密度ともに少ない減少だったとしている.一方でSchirmer試験やBUT検査には有意な差はなく,どの程度オキュラーサーフェスに影響を与えるかは今後中長期的に自覚症状を含め評価しなければいけないだろう2).また,角膜強度に関してもいくつか報告されている.Agcaらは,ORA(OcularResponseAnalysis,ReichetInc)を用いてSMILE群とLASIK群の生体力学特性を比較したところ,有意な差は認めなかったとしている3).Reinsteinらは,SMILE,PRK(photorefractivekeratectomy),図2レンチクルの除去レンチクルの両面の.離後,セッシを用いてレンチクルを除去する.LASIKのtensilestrengthを比較したところPRKやLASIKに比べSMILEでは有意に強度が高く,よりkeratectasiaのリスクが少ないかもしれないと報告している4).臨床的に角膜強度の測定はむずかしく客観的な評価は困難であるが,外傷に対する強度という点では明らかに優位性があり,長期的にフラップトラブルの危険性はなく格闘技やボクシングを行う患者にとっては新たな選択肢となり得るであろう.文献1)KamiyaK,ShimizuK,IgarashiAetal:Visualandrefractiveoutcomesoffemtosecondlenticuleextractionandsmall-incisionlenticuleextractionforMyopia.AmJOpthalmolEqubaheadofprint,20132)VestergaardAH,GronbechKT,GrauslundJetal:Subbasalnervemorphology,cornealsensation,andtearfilmevaluationafterrefractivefemtosecondlaserlenticuleextraction.GraefesArchClinExpOphthalmol251:25912600,20133)AgcaA,OzgurhanEB,DemirokAetal:Comparisonofcornealhysteresisandcornealresistancefactoraftersmallincisionlenticuleextractionandfemtosecondlaser-assistedLASIK:Aprospectivefelloweyestudy.ContLensAnteriorEye.Equbaheadofprint,20134)ReinsteinDZ,ArcherTJ,RandlemanJB:MathematicalmodeltocomparetherelativetensilestrengthofthecorneaafterPRK,LASIK,andsmallincisionlenticuleextraction.JRefractSurg29:454-460,20131704あたらしい眼科Vol.30,No.12,2013(56)

眼内レンズ:縫着眼内レンズ下での脱臼水晶体破砕

2013年12月31日 火曜日

眼内レンズセミナー監修/大鹿哲郎328.縫着眼内レンズ下での脱臼水晶体破砕西村知久美川眼科医院脱臼水晶体の白内障手術では,的確に角膜内皮保護処置を行わないと,術後に角膜内皮細胞減少をきたしてしまう.先行して眼内レンズ縫着を行い,その後に脱臼水晶体や硝子体の処理を行うことで,角膜内皮保護を的確に行うことができる.脱臼水晶体の白内障手術では,水晶体脱臼の程度,水晶体の核硬化の程度,網膜硝子体疾患の有無,角膜内皮細胞の状態,散瞳の状況,乱視の状況など,さまざまな状態を考慮して適切な手術計画を立て,計画に基づいた手術を的確に遂行する必要がある.完全脱臼の状態で,水晶体核硬化がある程度ある場合には,通常はパーフルオロカーボンを用いて後房まで脱臼水晶体を浮遊させて,超音波乳化吸引を用いて水晶体を処理する必要がある.水晶体処理とともに眼内レンズ縫着,さらに硝子体切除も必要となる.このような場合,脱臼水晶体の処理,眼内レンズ縫着および硝子体切除を行うために手術時間が長くなることと,水晶体が本来の正常な位置に存在しないために角膜内皮保護を行う粘弾性物質の前房内への充.が的確にできない(図1)ために,術後に角膜内皮細胞減少をきたすことが懸念される.今までの図1脱臼水晶体眼および無水晶体眼での粘弾性物質の挙動*:粘弾性物質.脱臼水晶体の白内障手術では,硝子体切除→パーフルオロカーボン使用→水晶体処理→眼内レンズ縫着という手順で行っていたが,術後に比較的高度な角膜内皮細胞の減少をきたす症例を経験していた.そこで今までとは手順を変え,最初に眼内レンズ縫着を行ってから脱臼水晶体および硝子体の処理を行うことを試みた.今回の症例は51歳,男性.Marfan症候群で,右眼の水晶体脱臼を認めた.約20年間,硝子体腔内に水晶体が落下しており,水晶体の形態は球状を呈し,核硬化度も高度であった.また,脱臼水晶体は眼内を浮遊しており,ときおり前房内にも脱臼し(図2),角膜内皮細胞の減少が著明であった.今回の手術では,最初に眼内レンズの毛様溝縫着を行い,前房内を粘弾性物質で満たして角膜内皮保護を行った(図3).その後,硝子体切除を行って,パーフルオロカーボンを眼内に注入し,脱臼水晶体を後房まで浮遊させて,眼内レンズの後方で超音波白内障手術を行った(図4,5).脱臼水晶体の超音波白内障手術では,水晶体の挙動が大きく,水晶図2Marfan症候群で水晶体脱臼をきたした症例の前眼部写真(53)あたらしい眼科Vol.30,No.12,201317010910-1810/13/\100/頁/JCOPY 図4縫着眼内レンズ下での脱臼水晶体破砕図3眼内レンズ縫着を行った場合の粘弾性物質の挙動*:粘弾性物質.体核の硬化度が高度の場合には,超音波での処理にも時間がかかり,超音波使用量も多くなる.今回の症例では,散瞳状態も良好であったため,術中の視認性にも問題なく手術を行うことができた.フォールダブル眼内レンズを縫着したことにより小切開手術を施行することができ,術後乱視への影響を抑えることもでき,術後早期の視力回復が可能となった.また,本来の目標であった角膜内皮保護を的確に行えたため,術後に角膜内皮細胞も保持されていた.今回の経験をもとに考察をすると,脱臼水晶体眼の白内障手術や無水晶体眼の硝子体手術を行うときには,最初に眼内レンズ縫着を行い,前房内を的確に粘弾性物質で充.することにより,しっかりと角膜内皮細胞を保護することができる.術中の眼内灌流液の使用量が多くな法である.今回の症例では散瞳状態が良かったため直径る長時間の手術や,硝子体術中に液空気置換を行う場6.0mmの眼内レンズを用いたが,散瞳不良例では直径合,パーフルオロカーボン,シリコーンオイルやガスを5.5mmの眼内レンズを選択する必要もあると考える.注入する場合にも,角膜内皮保護を行ううえで有効な方図5縫着眼内レンズ下での脱臼水晶体破砕のシェーマ*:粘弾性物質,**:水晶体,***:パーフルオロカーボン.

コンタクトレンズ:コンタクトレンズ診療のギモン⑦

2013年12月31日 火曜日

提供コンタクトレンズセミナーコンタクトレンズ診療のギモン②7本コーナーでは,コンタクトレンズ診療に関する読者の疑問に,臨床経験豊富なTVCI※講師がわかりやすくお答えします.※TVCIは「ジョンソン・エンド・ジョンソンビジョンケアインスティテュート」の略称です.眼科医および視能訓練士を対象とするコンタクトレンズ講習会を開催しています.コンプライアンスの悪いコンタクトレンズ患者がよく来院します.こうした患者への指導のポイントを教えてください講師植田喜一ウエダ眼科コンタクトレンズ(CL)の購入が医師の処方に基づくことが法的に定められていないため,勝手にCLを購入する使用者が増えている.処方せん不要をうたった広告が拍車をかけている.医療機関を受診すればCLの使用やレンズケアのポイントなどを説明できるが,定期検査を受けない患者も多い.誤ったCLの使用によりトラブルが生じて眼科を受診するといった患者が増えている.こうした患者への対応には頭を悩ませる.筆者の施設では,CL患者に対して専用の問診票を渡して記入を求めている.使用中のCL製品名,装用時間,使用期限のあるCLの場合は開封してからの日数(装用期間),ケア用品名,CLのこすり洗いの状況,レンズケースの取り扱いなどについて質問している.診察の前に知りたい情報が入手できるだけでなく,患者の自己チェックにもなる.●CLの製品名再診の患者の場合,必ずしも処方したCLを装用しているとは限らない.製品名を確認するとともに,患者には勝手に製品を変更しないように指導する.初診では自分が使用している製品名を知らない患者がいる.とくにカラーCL装用者にそういったケースが多い.できればスマートフォン,タブレットなどで製品名を調べてもらうと良い.トラブルが生じた患者の場合は,製品名を特定する必要がある.次回の受診時に外箱,あるいはブリスターケースを持参するように指導する.(51)●装用時間1日の装用時間が長いようであれば生活の状況を聴取して,眼鏡を掛ける時間を具体的に指導する.遅くても入浴前には眼鏡にするように説明する.眼鏡を所有していない患者や眼に合った眼鏡を使用していない患者には適正な眼鏡を処方する.来院した日の装着を開始した時間とはずす予定の時間も聴取する.前眼部所見から患者の日頃の装用時間が適当であるかを判断する.装着直後であると問題のないことが多いので,なるべく長時間装用した状況で来院するよう説明する.●装用期間再診の場合は処方したCLの枚数と受診の間隔から,装用期間を延長して使用していないかチェックする.患者はCLを毎日使用していないこともあり,CLと眼鏡の使用状況を確認する必要がある.●ケア用品の種類不適切なレンズケアによる角膜感染症が増えている.説明したケア用品とは異なる製品を使用している場合があるので,患者が現在使用しているケア用品名を確認する.製品によって洗浄・消毒効果に差がある1.4)ので,患者にもっとも有用だと考えられる製品をすすめる.●CLのこすり洗いCLの汚れ(蛋白質,脂質,微生物,花粉など)を落とすには,こすり洗いがもっとも効果的である.普段行っているこすり洗いの頻度と回数を確認する.筆者の施設では,CLをはずした後だけでなく,装着する前の2度行うように指導している.ソフトコンタクトレンズ(SCL)については表と裏を各20.30回こすり洗いする.回数を守るために1回,あたらしい眼科Vol.30,No.12,201316990910-1810/13/\100/頁/JCOPY 2回,3回……と声に出して洗うように説明している.ハードコンタクトレンズ(HCL)については手のひらでレンズの表面を(図1a),3本指でレンズの裏面を(図1b)しっかりこするように説明している.こうした指導をしているにもかかわらずCLが汚れている場合には,実際に患者に日頃行っているレンズケアをみせてもらい,問題点を具体的に指摘する.また,SCLの化学消毒剤のボトル汚染が問題になっているので,開栓後は1カ月以内に使用するように指導する5).CLを調子良く使用していると思っている患者であっても,細隙灯顕微鏡で検査すると前眼部に異常所見やCLに汚れなどを認めることはよくある.SCLの場合,装用感が良いため異常所見があっても自覚していないことも多い.言葉で説明しても患者に理解してもらえないことがあるので,画像を撮り,それらをみせて説明すると効果的である.●レンズケースレンズケースに付着する微生物が問題になっている.レンズケースも1日に2度こすり洗いして,CLを保存しないときは自然乾燥するように説明する.SCLは,ケア用品にレンズケースが付属されているので,3カ月程度で交換していると思われる.HCLのレンズケースは別売になっていることがほとんどであるため,短期間に交換するように指導する.次回の受診時に指導した内容が守られていれば,そのことを褒めてモチベーションを上げることも大切である.改善されていない場合にはさらに具体的な指導を行うことになる.ab図1HCLのこすり洗いa:手のひら洗浄b:3本指洗浄文献1)植田喜一:コンタクトレンズケアの実際.あたらしい眼科17:935-944,20002)植田喜一,柳井亮二:ハードコンタクトレンズのケアの問題点とその対策.あたらしい眼科28:1673-1680,20113)植田喜一,柳井亮二:マルチパーパスソリューション.あたらしい眼科24:747-757,20074)植田喜一:角膜感染症の予防から考えるハードコンタクトレンズのケア.日コレ誌55:120-123,20135)日本コンタクトレンズ協議会,ソフトコンタクトレンズ用消毒剤検討委員会:ソフトコンタクトレンズ用消毒剤に対する提言.日本の眼科83:101-103,20121700あたらしい眼科Vol.30,No.12,2013(00)ZS693

写真:睫毛内反による続発性アミロイドーシス

2013年12月31日 火曜日

写真セミナー監修/島﨑潤横井則彦355.睫毛内反による続発性宮本佳菜絵*1木下茂*2*1バプテスト眼科クリニックアミロイドーシス*2京都府立医科大学大学院医学研究科視覚機能再生外科学アミロイド沈着図2図1のシェーマ図1初診時の前眼部所見角膜中央やや下方に,灰白色の限局した隆起性病変を認める.図3下眼瞼睫毛内反図4フルオレセイン染色所見下眼瞼の睫毛内反を認め,睫毛の接触部位に一致して,角膜の隆起性病変のほか,鼻側下方に睫毛内反による角膜上皮障害を隆起性病変が生じていることがわかる.本症例では,表層角膜認める.切除とともに下眼瞼内反症手術を施行した.(49)あたらしい眼科Vol.30,No.12,201316970910-1810/13/\100/頁/JCOPY 角膜アミロイドーシスは,原発性と続発性に分類される.原発性アミロイドーシスは,おもに遺伝子異常が原因でアミロイドが産生されると考えられ,格子状角膜ジストロフィや膠状滴状角膜ジストロフィで観察される.一方,続発性アミロイドーシスは,外的因子が原因でアミロイドが産生されると考えられ,睫毛内反や睫毛乱生,円錐角膜を基礎疾患として生じることが多く,睫毛の接触や円錐角膜におけるコンタクトレンズ装用などの慢性刺激により,角膜上皮のバリアが破壊され,そこになんらかの蛋白が沈着してアミロイドを形成すると考えられる.続発性アミロイドーシスは女性に多く,臨床所見は,膠状滴状角膜ジストロフィに類似した灰白色の隆起性病変,格子状角膜ジストロフィに類似した格子状病変,もしくは両者の合併の3タイプに分類される1,2).アミロイドーシスの診断は,臨床所見に加えて,病理組織学的検査が必要であるが,実際の臨床では,臨床所見のみで診断されることも多い.本症例では,切除標本の病理組織学的検索にて,ヘマトキシリンエオジン染色で橙色,コンゴレッド染色で赤橙色,偏光顕微鏡では緑色を呈する物質を認めたことより,病変がアミロイド物質の沈着であることが確認された.沈着するアミロイド物質については,佐々木らが,561番目のコドンがグルタミンからアスパラギン酸へ変化した変異ラクトフェリンが前駆蛋白であると報告している3).ラクトフェリンは,精巣においてアミロイドの前駆蛋白であることがすでに報告されており4),invitroにおいてラクトフェリンがアミロイド形成能を有することも確認されている5).しかし,近年,ケラトエピテリンが前駆蛋白であるという報告もなされており6),現在もまだ明確な病態解明には至っていない.続発性アミロイドーシスの治療は,視機能への影響,またそのほかの自覚症状の有無により判断する.自覚症状がなければ必ずしも切除する必要はないが,異物感や流涙があれば,表層角膜切除の適応と考えられる.病変が大きく視力低下を伴う場合は,表層角膜移植が選択されることもある.また,再発予防のため,睫毛手術や定期的な睫毛抜去,円錐角膜であればコンタクトレンズのフィッティングの見直しといったように,原因となる外的因子の除去も行うことも重要であると考える.本症例では,表層角膜切除および下眼瞼内反症手術を行い,術後約1年が経過する現在も再発を認めず良好に経過している.文献1)佐々木香る,小幡博人,山田昌和ほか:続発性アミロイドーシスの臨床像について.臨床眼科61:1641-1644,20072)Araki-SasakiK,HiranoK,OsakabeYetal:Classificationofsecondarycornealamyloidosisandinvolvementoflactoferrin.Ophthamology6:1166-1172,20133)Araki-SasakiK,AndoY,NakamuraMetal:LactoferrinGlu561Aspfacilitatessecondaryamyloidosisinthecornea.BrJOphthalmol89:684-688,20054)TsutsumiY,SerizawaA,HoriS:Localizedamyloidosisoftheseminalvesicle:identificationoflactoferrinimmunoactivityintheamyloidmaterial.PathologyInternational46:491-497,19965)NilssonMR,DobsonCM:Invitrocharacterizationoflactoferrinaggregationandamyloidformation.Biochemistry42:375-382,20036)SuesskindD,Auw-HaedrichC,SchorderetDFetal:Keratoepithelininsecondarycornealamyloidosis.GraefesArchClinExpOphthalmol244:725-731,20061698あたらしい眼科Vol.30,No.12,2013(00)

維持期の長期管理

2013年12月31日 火曜日

特集●加齢黄斑変性診療ガイドあたらしい眼科30(12):1689.1693,2013特集●加齢黄斑変性診療ガイドあたらしい眼科30(12):1689.1693,2013維持期の長期管理Long-TermManagementintheMaintenancePhaseofAnti-VEGFTherapy永井由巳*I抗VEGF療法滲出型加齢黄斑変性(exudativeage-relatedmaculardegeneration:AMD)に対する治療として,血管内皮細胞増殖因子(vascularendothelialgrowthfactor:VEGF)を抑制する抗VEGF剤の硝子体内投与が広く行われるようになった.厚生労働省研究班の加齢黄斑変性治療指針1)でも,中心窩を含む脈絡膜新生血管(choroidalneovascularization:CNV)を認めるAMDに対する治療は,抗VEGF療法あるいは光線力学療法(photodynamictherapy:PDT)と抗VEGF療法の併用療法が推奨されている.この抗VEGF療法はCNVの活動性を抑制して視力を回復させる導入期と,その後に回復した視力を維持させる維持期とに分けて治療戦略や治療効果を考える必要がある.特に,わが国で抗VEGF剤が承認されて5年が過ぎ,長期にわたる治療戦略が課題となっている.AMDは慢性疾患であり,維持期における再発を認める症例も多く,またその時期については病型や個々の病態によっても異なっている.その維持期における観察,再投与についての現時点での考え方を述べる.II維持期の再投与における考え方現在,国内ではペガプタニブ,ラニビズマブ,アフリベルセプトの3種の抗VEGF剤が承認され,AMDに対して一定の成績を認めている.その投与法はどの薬剤も導入期が設けられており,ペガプタニブであれば初回投与から6週間あけて2回,ラニビズマブとアフリベルセプトは4週間おきに3回投与することが基準となっている.導入期の投与で滲出抑制効果を得られれば経過観察となるが,症例によっては再発を認めるものもあり,再発時には同じ薬剤あるいは別の薬剤に変更して再治療を行うことになる.しかしながら,この維持期における治療は,症例によって病状が異なるため個々に対応が必要となる.維持期の再投与における考え方として,投与のタイミングに関しては,病状の悪化を防ぐために事前に計画した間隔で投与する「計画的投与:Proactive」と,病状の悪化を認めたときに事後的に投与する「事後対応的投与:Reactive」とがある.さらに個々の患者への対応として,最大の治療効果を得るために個々の病状によらずに一定の間隔で投与する「標準化:Standardized」と“Proactive”“Reactive”(計画的投与)(事後対応的投与)“Standardized”(標準化)“Individualized”(個別化)Fixeddosing(定期的投与)PRN,asneeded(PRN投与)ObserveandTreatTAE(TreatandExtend)図1抗VEGF療法:維持期における投与の考え方*YoshimiNagai:関西医科大学医学部眼科学教室〔別刷請求先〕永井由巳:〒573-1010枚方市新町2丁目5番1号関西医科大学医学部眼科学教室0910-1810/13/\100/頁/JCOPY(41)1689 ANCHOR試験15視力の平均変化量(文字数)1050-5-10-15:ラニビズマブ0.5mg:ラニビズマブ0.3mg:ベルテポルフィン:シャム注射p<0.001vsベルテポルフィン(ANOVA)月ラニビズマブ0.5mgn=139ラニビズマブ0.3mgn=140ベルテポルフィンn=143ラニビズマブ0.5mgn=240ラニビズマブ0.3mgn=238シャム注射n=238p<0.001vsシャム注射(ANOVA)03691215182124月03691215182124MARINA試験10視力の平均変化量(文字数)50-5-10-15図2抗VEGF療法:ANCHOR試験・MARINA試験ラニビズマブの月1回投与により,有意な視力改善をもたらし24カ月にわたって維持した.15個々の病状や事情に合わせて投与間隔を変更する「個別化:Individualized」とがある(図1).III維持期における投与法①:PRN(prorenata)現在,わが国でおもに行われている維持期の再投与方視力の変化量(文字数)12963:平均値:中央値法は図1で示したPRN(prorenata:必要時投与)であり,事後対応的投与が多く行われている.このPRNが行われるようになるにあたっては,以下のようなさまざまな臨床試験の結果によるところが大きい.まず,ラニビズマブの大規模臨床試験である,ANCHOR試験2),MARINA試験3),アフリベルセプトのVIEW試験4)では維持期に毎月投与することで,導入期で改善させて視力を維持し続けることができた(図2).このことから維持期の投与間隔をあける投与法が検討され,投与間隔を3カ月としたPIER試験5)が行われたが,導入期で改善した視力はその後徐々に低下した.1690あたらしい眼科Vol.30,No.12,20130024681012141618202224最初の注射からの月図3抗VEGF療法:PrONTO試験ラニビズマブの維持期における投与を8週ごとで行ったところ,視力スコアの平均値,中央値は有意に改善した.そこで投与間隔を8週ごとにしたPrONTO試験6)が行われ,ラニビズマブ8週ごとの投与で改善された視力が2年間にわたって維持されることが証明された(図3).この8週ごとの投与での視力維持効果はVIEW試験でも確認されている.しかしながら,すべての症例に2カ(42) ラニビズマブ導入期3回投与IVR①LV=(0.8)IVR②LV=(0.8)IVR③LV=(0.9)IVR④LV=(0.7)IVR⑤LV=(0.7)IVR⑥LV=(0.5)IVR⑦LV=(0.9)経過観察4カ月ラニビズマブ導入期3回投与IVR①LV=(0.8)IVR②LV=(0.8)IVR③LV=(0.9)IVR④LV=(0.7)IVR⑤LV=(0.7)IVR⑥LV=(0.5)IVR⑦LV=(0.9)経過観察4カ月図4PRNで経過をみた症例症例は70歳の男性.典型AMDのオカルトタイプ.ラニビズマブの導入期3回投与を行うも滲出の消退を得ず,2回再投与を行い漿液性網膜.離は吸収した.4カ月後に漿液性網膜色素上皮.離の拡大を認め視力も(0.5)に低下.再度ラニビズマブを投与し網膜色素上皮.離は吸収して視力も(0.9)に回復した.月ごとの経過観察と硝子体内投与を行うことは,通院回数や治療に必要な医療費の増加などの患者負担や,医療現場の外来患者数や治療件数の増加に伴う医療スタッフの負担増加など問題点が多い7).また,疾患の性質上高齢者が多いことから投与回数が増えることで,薬剤による全身副作用の頻度が増えることも懸念される.これらの結果から,毎月診察を行って,個々の症例の病状の変化に応じて再投与を行うPRNの方法が広く行われることになった(図4).先に示した毎月投与の試験とPRNを比較した大規模臨床試験としてCATT試験8),HARBOR試験9),IVAN試験10)などが公表され,毎月投与群とPRN群との間に視力維持の効果については差がないことが示されている(図5).ただし,PRNで経過をみるには厳密に再発の有無を判読する必要があり,(43)151413121110:ラニビズマブ月1回投与:ベバシズマブ月1回投与:ラニビズマブPRN投与:ベバシズマブPRN投与9876543210週8.87.76.75.0p=0.046,104週目に月1回投与とPRN投与を比較視力の平均変化量(文字数)0412243652647688104図5抗VEGF療法:CATT試験ラニビズマブ,ベバシズマブを毎月投与群とPRN投与群で比較すると,2年にわたって両群ともに同等の視力改善をみた.どちらの群も,PRN投与群よりも毎月投与群に比して若干視力は低かった.あたらしい眼科Vol.30,No.12,20131691 診察医の判断によっては再治療に適した時期を逃して結果的に視力が下がってしまう可能性があること,毎月経過をみる必要があること,患者も受診した日の結果を知らされるまで投与の有無が分からず心理的負担が大きいこと,先に示した毎月投与との比較試験8.10)において劣性は証明されなかったがPRNのほうが若干視力経過が悪いことなどの問題点も多い.PRNで経過観察を行うにあたっては,これらの問題点も念頭において厳密な病状の判断を行い的確な再治療を行う必要がある.また,毎月の経過観察を全患者に行うのは外来の混雑や患者自身の通院の問題もあり,病院-病院連携や病院診療所連携を強化して経過観察を行うというシステムの改善も必要である.IV維持期における投与法②:Treat&ExtendPRNは前述のように,きめ細かい診察を行い厳密に再投与基準に合致しないかの判断を必要とする.実臨床の現場では,再発を認めたときに即座に再投与できないことも多く(患者や付き添い者の事情,自宅との距離や移動手段などの事情,外来混雑による再投与日の予約困難,患者の経済的事情),また診察医による再投与判断のぶれなどもあって,的確な時期に再投与を行うのはむずかしい状況にある.実際に,ANCHOR試験2),MARINA試験3)の追跡試験(HORIZON試験11),SEVEN-UP試験12))で長期に経過観察すると視力が段階的に低下するとの報告もある(図6).こういった問題点を解消すべく,滲出性所見が消退していても計画的投与(Proactive投与)を行い,安定している期間を考慮して投与間隔を延長しながら経過観察を行うTreat&Extendという考え方が提唱され欧米では広まりつつある13).この方法は,ラニビズマブやアフリベルセプトの3回導入期投与の4週後に滲出が消退して眼底がドライになっていても再投与を行い,2週経過観察期間を延ばして6週後の受診として再投与を行い,眼底がドライである間は再投与と経過観察期間の延長を繰り返して最長3カ月まで間隔をあける管理方法である.中途で滲出の再燃を認めたら再投与のうえ,観察期間を4週に戻すかあるいは2週観察期間を短くして診察と再投与を行い,また2週ずつ期間延長を繰り返していく.1692あたらしい眼科Vol.30,No.12,2013MARINA,ANCHORHORIZONSEVEN-UPMonthlyRealworldtreatment-10-5051015+11.2+1.7-8.6+9.0+4.1+2.01234567.3year-15-20*****:Ranibizumabtreated:SEVEN-UP:Ranibizumabtreated:HORIZONETDR文字数(n=65)(n=50)(n=65)(n=388)**p<0.005**p<0.0001***p<0.001(vsSEVEN-UP7.3y)図6抗VEGF療法:HORIZON試験・SEVEN.UP試験ANCHOR試験・MARINA試験の後,継続して3または4年間のフォローアップにおいて,最初の試験でラニビズマブ治療を受けた群では視力の段階的な低下が認められた.さらに7年目まで経過観察したところさらに視力の低下をみた.この方法によって投与日を決めることにより,症例に適した通院間隔を決めることができ,また来院日には再投与を行うということで患者の再投与をするか否かというPRNでの経過観察時における通院時の不安も解消できる.そういったことからも,多くの硝子体内投与を受けるAMD患者が増え続けている現状のなかで,必要以上の通院回数を削減でき,来院時には再投与の準備をするということで医療サイド側の診療効率も上がると考えられる.しかしながら,症例のなかには抗VEGF剤の導入期3回以降,まったく再発を起こさず落ち着いている人もいるので,Treat&Extendで再投与を行うことで過剰投与になることもありうる.この点についてはさらに今後の検討が必要であると考える.V維持期における今後の治療現在の抗VEGF剤投与の維持期における投与法について考察した.PRNでは厳しく再燃の判断を行い速やかに再投与を行うことができれば,導入期に改善した視機能を維持できるが,通院回数,外来の煩雑さの問題などがある.Treat&Extendでは診察と投与日を前もって決めることができ,患者側と医療者側の負担の軽減を見込めるが,過剰投与を行う症例があって医療費の増加の問題に繋がる.こういったPRNとTreat&Extendとの長所と短所を考慮し,よりきめ細やかな個別化医療(44) を検討する必要がある.文献1)髙橋寛二,小椋祐一郎,石橋達朗ほか:加齢黄斑変性の治療指針.日眼会誌116:1150-1155,20122)BrownDM,MichelsM,KaiserPKetal:Ranibizumabversusverteporfinphotodynamictherapyforneovascularage-relatedmaculardegeneration:Two-yearresultsoftheANCHORstudy.Ophthalmology116:57-65,20093)RosenfeldPJ,BrownDM,HeierJS,etal;MARINAStudyGroup:Ranibizumabforneovascularage-relatedmaculardegeneration.NEnglJMed355:1419-1431,20064)HeierJS,BrownDM,ChongV,etal;VIEW1andVIEW2StudyGroups:Intravitrealaflibercept(VEGFTrapEye)inwetage-relatedmaculardegeneration.Ophthalmology119:2537-2548,20125)RegilloCD,BrownDM,AbrahamPetal:Randomized,double-masked,sham-controlledtrialofranibizumabforneovascularage-relatedmaculardegeneration:PIERstudyyear1.AmJOphthalmol145:239-248,20086)LalwaniGA,RosenfeldPJ,FungAEetal:Avariable-dosingregimenwithintravitrealranibizumabforneovascularage-relatedmaculardegeneration:year2ofthePrONTOstudy.AmJOphthalmol148:43-58,20097)StewartMW,RosenfeldPJ,PenhaFMetal:Pharmacokineticrationalefordosingevery2weeksversus4weekswithintravitrealranibizumab,bevacizumab,andaflibercept(vascularendothelialgrowthfactortrap-eye),Retina32:434-457,20128)MartinDF,MaguireMG,YingG-Setal;CATTResearchGroup:Ranibizumabandbevacizumabforneovascularage-relatedmaculardegeneration.NEnglJMed364:1897-1908,20119)BusbeeBG,MurahashiWY,LiZetal:Efficacyandsafetyof2.0mgor0.5mgranibizumabinpatientswithsubfovealneovascularAMD:HARBORstudy[abstract].Presentedat:AnnualMeetingoftheAmericanAcademyofOphthalmology(AAO);October22-25,2011;Orlando,FL.SessionPA031,201110)ChakravarthyU,HardingSP,RogersCAetal;TheIVANStudyInvestigatorsWritingCommittee:Ranibizumabversusbevacizumabtotreatneovascularage-relatedmaculardegeneration:one-yearfindingsfromtheIVANrandomizedtrial.Ophthalmology119:1399-1411,201211)SingerMA,AwhCC,SaddaSetal;HORIZONStudyGroup:HORIZON:anopen-labelextensiontrialofranibizumabforchoroidalneovascularizationsecondarytoage-relatedmaculardegeneration.Ophthalmology119:1175-1183,201212)RofaghaS,BhisitkulRB,BoyerDSetal(SEVEN-UPStudyGroup);Seven-YearOutcomesinRanibizumab-TreatedPatientsinANCHOR,MARINA,andHORIZON:AMulticenterCohortStudy(SEVEN-UP).Ophthalmology120:2292-2299,201313)GuptaOP,ShienbaumG,PatelAHetal:Atreatandextendregimenusingranibizumabforneovascularage-relatedmaculardegenerationclinicalandeconomicimpact.Ophthalmology117:2134-2140,2010(45)あたらしい眼科Vol.30,No.12,20131693

網膜血管腫状増殖の治療と管理

2013年12月31日 火曜日

特集●加齢黄斑変性診療ガイドあたらしい眼科30(12):1681.1688,2013特集●加齢黄斑変性診療ガイドあたらしい眼科30(12):1681.1688,2013網膜血管腫状増殖の治療と管理TreatmentandManagementofRetinalAngiomatousProliferation白潟ゆかり*白神千恵子*はじめに網膜血管腫状増殖(retinalangiomatousproliferation:RAP)は,滲出型加齢黄斑変性(age-relatedmaculardegeneration:AMD)の一病型で,2001年Yannuzziらにより提唱された疾患概念1)である.RAPは,網膜血管由来の網膜内新生血管を起源とし,網膜下へ進展して脈絡膜新生血管と吻合する.RAPは日本人の滲出型AMDのうち,5%程度と少ないものの,他のAMDと比較して予後は不良で,レーザー凝固や光線力学的療法(PDT)に抵抗性を示す.抗血管内皮増殖因子(VEGF)療法でも単独ではRAPの病変の完全閉塞は困難で,再発が多く,治療回数が多くなりがちである.またRAPでは,早期から網膜内病変が出現するため,初期から著しい視力低下をきたしやすく,より早期からの治療が望まれる.RAPは両眼発症も多く,フォローアップ中は僚眼の傍中心窩の毛細血管の拡張や網膜内出血,軟性ドルーゼンなどの初期病変にも注意する必要がある.このように,RAPの管理では,治療抵抗性で両眼発症が多いことが問題となる.RAPの管理の概要を,診断,治療,治療後のフォローアップという流れで説明する.I診断拡張した網膜血管と網膜内新生血管との吻合retinal-retinalanastomosis(RRA)やretinal-choroidalanastomosis(RCA)が最も重要なRAPの所見である.フルオレセイン蛍光眼底造影検査(FA)やインドシアニングリーン蛍光眼底造影検査(IA)にてRAP病巣に血流を供給している所見があり,RRAが確認できればRAPと確定できる.IA造影晩期にはRAP病巣はhotspotとして認められる.StageIの症例はFAのみで診断できることもあるが,FAのみでは周囲の滲出性変化や出血による蛍光ブロックのために新生血管がわかりにくいことも多い.IAのほうが明瞭にRRAや網膜内新生血管(IRN)を検出できるので,可能であればIAも施行したほうが治療前に正確な評価ができる.RAPは垂直方向に進展するため,光干渉断層計(OCT)の所見も診断,ステージ分類に非常に有用となる.また,フォロー中においても,OCTではわずかな滲出性変化をとらえることができるため,早期診断や再発の早期発見につながる.1.ステージ分類Yannuzziのステージ分類に沿って各ステージにおける所見を解説する.StageI網膜内新生血管(intraretinalneovascularization:IRN):拡張蛇行した網膜微小血管がみられ,網膜内に網膜血管由来の微小な異常血管が生じる.ごく初期の病変をみつけることはむずかしいが,注意深く観察すると,拡張した網膜毛細血管や網膜内の小出*YukariShirakata&ChiekoShiragami:香川大学医学部眼科学講座〔別刷請求先〕白潟ゆかり:〒761-0793香川県木田郡三木町大字池戸1750-1香川大学医学部眼科学講座0910-1810/13/\100/頁/JCOPY(33)1681 血,IRNの赤いRAP病巣が検眼鏡で検出できることがある.IRNはOCTでは網膜内の中等度.高反射の病変として検出され,その周囲に.胞様黄斑浮腫(CME)を伴うと視力が低下する.造影検査では拡張した網膜血管,IRNを検出できる.IRNにつながるRRAが造影で確認できれば確定診断となる.傍中心窩毛細血管拡張症でも同様に傍中心窩に毛細血管の拡張や黄斑浮腫を認めるため,鑑別に苦慮することがあるが,色素上皮の異常所見やドルーゼンの沈着があればRAPの初期病変の可能性が高く,参考になる.StageII網膜下新生血管(subretinalneovascularization:SRN):IRNが網膜内から感覚網膜下まで進展し,網膜全層に新生血管が及ぶ.漿液性網膜.離(SRD)や漿液性網膜色素上皮.離(PED)を伴うこともある.新生血管の垂直方向への進展は,検眼鏡や造影所見,OCTで判定するが,OCTで見ると最もわかりやすい.新生血管が色素上皮と接すると漿液性PEDを生じることがある.StageIII脈絡膜新生血管(choroidalneovascularization:CNV):SRNの色素上皮下への進展とともにCNVを伴い,吻合してRCAを形成する.OCTでPEDの内部にも中等度.高反射を認め,網膜色素上皮(RPE)の上下に新生血管が存在していることがわかる.IRNの進展方向(IRNの下)にRPEの断裂があり,断裂部分の上下に連続して新生血管を示す反射を検出できることもある.PEDの内部に新生血管を確認できればstageIIIということになるが,PEDを伴うstageIIの症例では,OCTや造影検査でもstageIIIと見分けがつかないことがある.RCAもstageIIIのRAPの重要な所見であるが,RCAの存在が造影所見で明瞭に確認できる症例は少ない.また,AMDの経過でdisciformscarとなったものには網膜血管とCNVの吻合がみられることもあるので注意が必要である.2.RAPの前駆病変軟性ドルーゼンの併発が多い.最近では,他のAMD1682あたらしい眼科Vol.30,No.12,2013と比較し,reticularpseudodrusenを併発することが多いという報告があり2),両眼にドルーゼンが多発している所見は診断の参考所見となる.II治療RAPの治療の概要以前は,RRA切断術,PDT単独療法,トリアムシノロン硝子体内注射併用PDTが行われてきたが,再発が多く,いずれも長期的には高いエビデンスは得られなかった.VEGFを標的とする薬剤が使用可能となり,治療の中心となってからは,RAPの治療成績は大きく改善した.AMDの3病型のうち,RAPではVEGFの関与が特に大きいと考えられていること3),網膜内病変には硝子体内に注入した抗VEGF薬が到達しやすいことも有利な点である.現在日本でおもに使用されている抗VEGF抗体はpegaptanibsodium(MacugenR),ranibizumab(Lucen-tisR),aflibercept(EYLEAR)である.これらが使用可能となる前はbevacizumab(AvastinR)をオフラベルで使用していた.これまでの報告では,bevacizumab,ranibizumabが用いられているものが多く,両薬剤は分子量が異なるが,両方ともすべてのアイソフォームのVEGF-Aを阻害する薬剤であり,良好な治療成績が示されている.しかし,抗VEGF療法単独ではRRAが完全に閉塞しにくく,硝子体内注射の回数が多くなりがちということが問題となる.注射に伴う合併症のリスク増加を考慮することはもちろんであるが,RAPは高齢者に多く,治療回数の増加による患者負担も考慮しなければならない.Afliberceptは2012年11月に国内で使用可能となった最も新しい抗VEGF薬で,VEGF-Aのみでなく,VEGF-B,胎盤増殖因子(PlGF)も阻害する.この点において他の抗VEGF薬よりも有利な治療が可能かどうかはまだ不明だが,今後の治療成績の評価に期待したい.PDT-抗VEGF薬併用療法では,抗VEGF療法単独よりRRAの閉塞率が高く,治療回数が少なくてすむことが期待できる.Saitoらによる,日本人のRAPの症例に対するPDT-抗VEGF薬併用療法の2年成績の報(34) 告では,日本人のRAPの症例13眼に対し,抗VEGF薬硝子体内注射後PDTを施行し,平均PDT回数2.8回,平均抗VEGF薬投与回数は3.4回と良好な成績であった4).PDTの問題点としては,PDTによるphotochemicalstressや照射領域の脈絡膜循環障害が,長期的な視力低下や,さらなるVEGFの発現に伴うCNV再発につながることが指摘されている.PDTは必要最小限におさえなければならず,視力良好例には抗VEGF薬単独療法を選択するのがよいと考える.また,PDTの侵襲を軽減するために,通常のPDTではなく,照射エネルギーを半分にした低照射エネルギーPDT(reduced-fluencePDT:RFPDT)を用いる場合もある.他には,トリアムシノロンを併用したPDTを行う場合がある.抗VEGF薬が使用可能になる以前にはトリアムシノロン硝子体内注射を併用したPDTが行われ,良好な成績を得ていたが,抗血管新生作用は抗VEGF薬のほうが優れることや,長期的には白内障の併発によって視力が低下すること,さらに高眼圧の問題から,あまり行われなくなった.抗VEGF薬併用PDTのほうがトリアムシノロン併用PDTよりも再発が少ないという報告も示されている5).しかしながら,ステロイドは抗VEGF薬とは作用機序が異なるため,場合によってはトリアムシノロンの硝子体内注射やTenon.下注射を併用してPDTを行う場合もある.日本眼科学会が推奨するAMD治療指針のガイドライabcdefg図1症例1:89歳,男性初診時の矯正視力は(0.3),インドシアニングリーン眼底造影写真(IA)(a)にて新生血管(矢頭)に連なる流出入血管(矢印)を認め,光干渉断層計(OCT)(b)で新生血管が網膜下に進展し,網膜色素上皮(RPE)と接しているのがわかる.StageIIのRAPと診断し,ラニビズマブ硝子体内注射を併用した低照射エネルギー光線力学的療法(RFPDT)を行った.治療後3カ月のIA(c)で流出入血管の閉塞と新生血管の退縮が確認でき,OCT(d)にて滲出性変化は消失しており,矯正視力は(0.3)を維持していた.治療後6カ月(e)でも再発はなかったが,治療後9カ月(f)で網膜の.胞様変化を認めた.矯正視力は(0.3)で,造影検査にて明らかな新生血管の再発はなく,ラニビズマブ硝子体内注射を行った.以後2カ月に1回のラニビズマブ硝子体内注射を継続している.網膜の.胞様変化は変わらないが,増悪はなく,視力治療後15カ月(g)が経過しているが矯正視力(0.3)のまま維持できている.(35)あたらしい眼科Vol.30,No.12,20131683 ン6)では,RAPに対しては初回治療からPDT-抗VEGF薬併用療法が推奨されている.また,視力0.6以上の視力良好例においては抗VEGF療法の単独療法の選択もありうると付記されている.筆者らの施設では,網膜内病変のみにとどまるstageIの症例や視力良好例には抗VEGF薬単独療法を,stageII以上の症例にはRFPDT-抗VEGF薬併用療法を行うことを基本としている.症例1(図1)は,RFPDT-抗VEGF薬併用にて治療したstageIIの症例である.1回の併用療法でRRAの完全閉塞を確認し,以後9カ月まで滲出性変化の再発はなく,少ない治療回数でコントロールできた症例である.また,afliberceptが使用可能になってからは,stageII以上の症例にもafliberceptの硝子体内注射単独を試みている.前述したが,VEGF-AだけでなくVEGF-B,PlGFも阻害するafliberceptが,RRAの閉塞率や治療回数で他の抗VEGF薬よりも有利な治療が可能か,まだ結果は出ていない.Afliberceptの硝子体内注射単独にて治療した例を症例2(図2),症例3(図3)に示す.両症例ともstageIIの症例であるが,1カ月ごとに3回の連続投与終了時に症例2では流入血管が完全閉塞せず残存し,症例3では完全なRRAの閉塞を認めた.治療後早期の重篤な合併症として,RPE裂孔があり,著明な視力低下に至ることがある.治療による新生血管の収縮に伴い,RPEに裂孔が生じると考えられる.丈の高いPED,面積の大きなPED,RPEに皺襞のある症abcdefg図2症例2:84歳,男性初診時,矯正視力は(0.2)で,カラー眼底写真(a)で網膜出血,ドルーゼンの沈着を認める.IA(b)では,新生血管(矢頭)に連なる流出入血管(矢印)を認める.OCT(c)では,新生血管が網膜下まで進展し,SRDと色素上皮の隆起を認める.StageIIのRAPと診断し,アフリベルセプト硝子体内注射の単独療法を行った.アフリベルセプト硝子体内注射は,1カ月ごとに3回の導入期治療と,その後2カ月ごとの維持投与を施行している.初回3回治療後,カラー眼底写真(d)で網膜出血はわずかに残存している.本症例ではIA(e)で新生血管は不明瞭となり閉塞してると考えられるが,流入血管(矢印)は完全閉塞せず残存している.OCT(f)にて,滲出性変化は完全に消失している.初回治療後6カ月が経過しているが,滲出性変化は再発していない(g).1684あたらしい眼科Vol.30,No.12,2013(36) defghijabcdefghijabc図3症例3:82歳,女性初診時の矯正視力は(0.2)で,カラー眼底写真(a)で網膜出血を認め,IA(b)にて新生血管(矢頭)とそれに連なる流入血管(矢印)を認める.OCT(c)では新生血管が網膜下まで達しているのがわかり,SRDを認める.StageIIのRAPと診断し,アフリベルセプト硝子体内単独療法を計画した.1回目のアフリベルセプト硝子体内投与より1カ月で,滲出が減少してきているのがわかる(d).同日,2回目の注射を行った.初回投与から2カ月で,滲出性変化は完全に消失し(e),同日,3回目の投与を行った.初回投与から3カ月(f),4カ月(g)では,滲出性変化の再発はなく,新生血管が徐々に収縮してきているのがわかる.4カ月目では,矯正視力(0.5)と改善し,維持のため4回目の注射を施行した.初回投与より6カ月の矯正視力は(0.5),カラー眼底写真(h)で出血は完全に吸収されており,IA(i)で新生血管,流入血管ともに閉塞していることがわかる.OCT(j)でも,滲出性変化の再発を認めない.維持のため5回目の注射を施行した.例ではリスクが高いといわれており7,8),特に注意が必要である.RAPでは,stageの進行とともに新生血管が網膜下に達し,RPEに接してPEDを生じるため,治療後にRPE裂孔を生じやすいと考えられる.症例4(図4,5)はstageIIIのRAPの症例で,治療前に丈の高く,面積の大きいPEDを伴っており,RFPDT-抗VEGF薬併用療法後早期にRPE裂孔をきたした.IIIフォローアップのポイントRAPは,再発・再燃が多く,網膜浮腫などの網膜内病変が初期に出現するため,早期から著しく視力が低下する.早期発見に努めること,再発のサインを見逃さないこと,僚眼の初期病変を見逃さない工夫が必要である.維持期には,おもに視力とOCTの所見を基本としてフォローを続ける.最も鋭敏に滲出性変化の再発を検出できるのはOCTであるが,中心窩を通るクロススキャンだけでなく,病変全体のボリュームスキャンを撮らなければ,わずかな所見を見逃してしまいやすい.また,必ず検眼鏡で眼底をよく観察することも重要である.滲出性変化の再発がなくても,わずかな網膜出血が再発のサインとなることがある.併用療法による初回治療後,再発が疑われたときは,造影検査にて新生血管の有無と進展の度合いを確認する.当院では,明らかな新生血管がない場合や,網膜内病変のみの場合は抗VEGF薬単独の追加,新生血管が網膜下まで進展している場合にはRFPDT-抗VEGF薬(37)あたらしい眼科Vol.30,No.12,20131685 acdbacdb図4症例4:77歳,男性初診時の矯正視力は(0.1),カラー眼底写真(a)にて硬性白斑,ドルーゼンを認める.IA(b)にて新生血管(矢頭)に連なる流出入血管(矢印)を認める.水平断のOCT(c)で網膜内新生血管が網膜下へ進展し,RPEと接しているのがわかり(矢印),網膜色素上皮.離(PED)を認める.新生血管を通る垂直断のOCT(d)にて,RPEが断裂し,新生血管がRPE下へ進展しているように見える(矢頭).StageIIIのRAPと診断し,ルセンティス硝子体内注射と低照射エネルギー量PDTの併用を行った.→図5症例4(2)症例4の治療後1カ月のカラー眼底写真(a),眼底自発蛍光(FAF)(b),OCT(c)にて,滲出性変化は消失したが,RPEtear(矢印)をきたしていることがわかる.矯正視力は(0.09)となった.治療後のRPEtearは,治療前に大きなPEDを認めていた症例でリスクが高いといわれている.治療後3カ月では,カラー眼底写真(d),FAF(e)でRPE欠損部(矢印)が自然経過にて拡大している.矯正視力は(0.1)であった.OCT(f)にてrollingしたRPEが重責した所見(矢印)を認める.併用療法を再度行う.抗VEGF薬単独療法の場合,通常のAMDの場合と同様,1カ月ごとに3回の連続投与後,維持期に定期的に抗VEGF薬投与を継続する方法,滲出性変化の再発が認められた時点で再投与する方法(prorenata:PRN),維持のための投与を継続しながら滲出性変化の再発がなければ投与間隔を延ばすというTreat&abcExtendという方法があるが,欧米ではTreat&Extenddef1686あたらしい眼科Vol.30,No.12,2013(38) efgabchdefgabchd図6症例5:80歳,女性初診時,右眼の矯正視力は(0.4),カラー眼底写真(a)では,ドルーゼンの沈着を認める.検眼鏡的には網膜内の異常血管は検出できなかったが,IA(b)にて網膜内新生血管(IRN)を認めた.IRNを通る垂直断のOCT(c)では,IRNが網膜下まで達しているように見える(矢印).滲出性変化がないため当初は経過観察とした.経過中白内障手術を行い,矯正視力は(1.0)となったが,初診時より12カ月で網膜浮腫が出現し(d),ラニビズマブ硝子体内注射の単独療法を行った.初診時の左眼の矯正視力は(1.0),カラー眼底写真(e)にて網膜内出血,ドルーゼンの沈着を認める.IA(f)で新生血管と連なる流出入血管が確認できる.新生血管を通る垂直断のOCT(g)では,網膜浮腫を認め,新生血管が網膜下まで進展しているのがわかる.StageIIのRAPと診断したが,視力が良好なため,ラニビズマブ硝子体内注射の単独療法を3回施行後,滲出性変化は消失した(h).が主流になりつつある.前述のように,RAPは両眼発症も多いので,患眼のフォローの際,時々僚眼も散瞳してチェックしておく.特に,造影検査をするときには,僚眼も必ず撮影しておく.検眼鏡やOCTで異常を検出できなかった場合でも,網膜内の異常血管がみつかることもある.特に,軟性ドルーゼンやreticularpseudodrusenなどの前駆病変があ(39)abc図7症例5(2)症例5の初診時の眼底自発蛍光(FAF)写真(a)では,右眼で色素上皮が萎縮した部分が低蛍光となっている.左眼では,出血の部位が蛍光のブロックとなっているが,RPEが萎縮して低蛍光となっている部分もある.初診時より24カ月間で,右眼は計6回,左眼は計8回のラニビズマブ硝子体内注射を施行しており,24カ月後の右眼矯正視力は(0.07),左眼矯正視力は(0.2)であった.FAF(b)では,左右眼とも低蛍光の面積が広がっており,経過に伴って地図状萎縮が進行していることがわかる.同日のOCT(c)では,滲出性変化は完全に消失している.る症例では要注意である.実際,当院で治療したstageIの症例のほとんどがstageII以上のRAP症例のフォロー中,僚眼に認めたものであった.僚眼をきちんとフォローすることで早期発見,早期治療ができ,良好な視力を維持できる症例がある.初診時に僚眼にもIRNを認めた例として,症例5(図6,図7)を示す.この症例は,初診時に検眼鏡にて左眼に網膜浮腫と網膜出血,両眼にドルーゼンの沈着を認めた.検眼鏡では左眼のみRAPを発症していると思われたが,造影検査をすると滲出性変化のない右眼にもIRNを認めた.左眼のフォロー中,右眼の観察も続けたが,初診時より12カ月で網膜浮腫が出現し治療を開始した.AMDでは,治療後,地図状萎縮(geographicatrophy:GA)がみられることが知られており,滲出消失後もGAは経時的に拡大する.RAPでは,GAの発生率あたらしい眼科Vol.30,No.12,20131687 が高いという報告9)がある.滲出性変化の再発がなく,追加治療が不要であってもGAは拡大し,視機能の低下につながると考えられるが,現在,GAの進行に対する治療は確立されていない.おわりに現在日本では,RAPの治療のメインはPDT-抗VEGF薬併用療法である.Afliberceptが使用可能となり,抗VEGF薬の選択肢が増えた.難治性で再発の多いRAPに対し,再治療回数などの点でより有利な治療法が確立されていくことが期待される.文献1)YannuzziLA,NegraoS,IidaTetal:Retinalangiomatousproliferationinage-relatedmaculardegeneration.Retina21:416-434,20012)Ueda-ArakawaN,OotoS,NakataIetal:Prevalenceandgenomicassociationofreticularpseudodruseninage-relatedmaculardegeneration.AmJOphthalmol155:260-269.e2,20133)OkamotoN,TobeT,HackettSFetal:Transgenicmicewithincreasedexpressionofvascularendothelialgrowthfactorintheretina:anewmodelofintraretinalandsub-retinalneovascularization.AmJPathol151:281-291,19974)SaitoM,IidaT,KanoM:Two-yearresultsofcombinedintravitrealanti-VEGFagentsandphotodynamictherapyforretinalangiomatousproliferation.JpnJOphthalmol57:211-220,20135)SaitoM,ShiragamiC,ShiragaFetal:Comparisonofintravitrealtriamcinoloneacetonidewithphotodynamictherapyandintravitrealbevacizumabwithphotodynamictherapyforretinalangiomatousproliferation.AmJOphthalmol149:472-481.e1,20106)髙橋寛二,小椋祐一郎,石橋達朗ほか:加齢黄斑変性の治療方針.日眼会誌116:1150-1155,20127)ChiangA,ChangLK,YuF,SarrafD:PredictorsofantiVEGF-associatedretinalpigmentepithelialtearusingFAandOCTanalysis.Retina28:1265-1269,20088)NagielA,FreundKB,SpaideRFetal:Mechanismofretinalpigmentepitheliumtearformationfollowingintravitrealanti-vascularendothelialgrowthfactortherapyrevealedbyspectral-domainopticalcoherencetomography.AmJOphthalmol156:981-988.e1,20139)McBainVA,KumariR,TownendJetal:Geographicatrophyinretinalangiomatousproliferation.Retina31:1043-1052,20111688あたらしい眼科Vol.30,No.12,2013(40)

ポリープ状脈絡膜血管症の管理

2013年12月31日 火曜日

特集●加齢黄斑変性診療ガイドあたらしい眼科30(12):1669.1680,2013特集●加齢黄斑変性診療ガイドあたらしい眼科30(12):1669.1680,2013ポリープ状脈絡膜血管症の管理ManagementofPolypoidalChoroidalVasculopathy森隆三郎*はじめにポリープ状脈絡膜血管症(polypoidalchoroidalvasculopathy:PCV)は網膜色素上皮レベルの橙赤色隆起病巣を特徴とし,再発性の漿液性,出血性網膜色素上皮.離を生じ,インドシアニングリーン蛍光眼底検査(indocyaninegreenangiography:IA)では,特徴的なポリープ状病巣を認めるYannuzziらが提唱した疾患概念で1),わが国では滲出型加齢黄斑変性の特殊型に分類されている2).PCVの頻度は,日本PCV研究会の診断基準3)が発表された以降のMarukoらの報告では,日本人の加齢黄斑変性の54.7%がPCVである4).Uyamaらの自然経過の報告では,33カ月の経過観察中,視力の維持,改善率は約半数であるが,35%で重篤な視力低下をきたしており5),PCVの自然経過が良好であるとは言えない.PCVの黄斑部の滲出性変化は,不可逆性の視力低下の原因ともなり,大量の網膜下出血や硝子体出血を生じ重篤な視力低下をきたす症例もある.PCVを管理するために必要な診断と治療について述べる.I診断2005年に日本PCV研究会によりポリープ状脈絡膜血管症の診断基準が作成された3)(表1).IAを行わなくても眼底検査で橙赤色隆起病巣を認めた場合には確実例として診断が可能である.PCVの病巣はIAで異常血管網とポリープ状病巣から成るが,異常血管網は判別できない場合もあり,特徴的なポリープ状病巣を認めれば確実例となる.IAで異常血管網のみを認めた場合と眼底検査で再発性の出血性,漿液性網膜色素上皮.離を認めた場合は不確実例となる.また,わが国の加齢黄斑変性の診断基準では,50歳以上と明記されているが,PCVの診断基準では年齢の記載はなく,40歳代のPCVも稀ではない.筆者の施設ではPCVを脈絡膜血管異常である狭義PCVと網膜色素上皮下脈絡膜新生血管(Gass分類Type1CNV)にポリープ状病巣を伴うpolypoidalCNVの2つに分類している6,7).1.眼底検査後極部を超える網膜下出血や漿液性網膜.離を認めることもあり,倒像鏡で眼底全体を観察して,ついで,前置レンズを用いて黄斑部の詳細を観察する.診断基準にある橙赤色隆起病巣は,PCVの病巣の本体であり,網膜色素上皮が限局性に隆起している(図1).網膜下出血を伴う場合や出血性網膜色素上皮.離の辺縁に存在する場合は検出できないこともある.また,橙赤色隆起病巣がフィブリンに覆われると辺縁が不整な灰白色隆起病巣として認められる.辺縁が明瞭で小さい網膜色素上皮の丈の低い白色隆起病巣は,橙赤色隆起病巣が退縮した状態で,さらに,時間が経過し,色素沈着を伴い茶褐色になる場合もある.異常血管網の範囲に一致して網膜色素上皮の萎縮がみられる場合があるが,異常血管網自体による網膜色素上皮の変化によるものか異常血管網の滲出性変化に伴う2次的な変化によるものかは鑑別できな*RyusaburoMori:日本大学医学部視覚科学系眼科学分野〔別刷請求先〕森隆三郎:〒101-8309東京都千代田区神田駿河台1-8-13駿河台日本大学病院眼科0910-1810/13/\100/頁/JCOPY(21)1669 表1PCVの診断基準確実例以下のいずれかの1項目を満たすものとする.1.眼底検査で橙赤色隆起病巣*を認める.2.インドシアニングリーン蛍光造影検査で,特徴的なポリープ状病巣**を認める.不確実例以下のいずれかの1項目を満たすものとする.1.インドシアニングリーン蛍光造影検査で異常血管網***のみを認める.2.再発性の出血性,漿液性網膜色素上皮.離を認める.*:.橙赤色隆起病巣は,網膜色素上皮レベルの境界明瞭な隆起病巣であり,充実性で,漿液性あるいは出血性網膜色素上皮.離とは区別できる.**:.ポリープ状病巣は,インドシアニングリーン蛍光造影で瘤状あるいはぶどうの房状の病巣である..造影時間の経過とともに大きくなり,ある時点から形,大きさは変わらない..早期には,内部に小さな過蛍光を認めることもある..後期に輪状の過蛍光を示すことがある.***:.異常血管網は,インドシアニングリーン蛍光造影で早期に分枝した脈絡膜内層の血管として造影され,血管の走行,口径から正常の脈絡膜血管と区別できる..異常血管網の範囲は後期に面状の過蛍光を示すことが多い.〔日本ポリープ状脈絡膜血管症研究会:ポリープ状脈絡膜血管症の診断基準.文献4)より〕い.2.インドシアニングリーン蛍光眼底造影(IA)PCVは,網膜色素上皮下の病変であるのでIA所見が重要となる.ポリープ状病巣はIAでみられる瘤状病巣であり,造影の始まりは脈絡膜動脈と同時であったり,やや遅れて脈絡膜静脈と同時であったりとさまざまであるが,いずれも造影時間の経過とともに大きくなり,ある時点から形,大きさは変わらない.早期には,細血管の形態を示すもの(図1)や内部に小さな過蛍光点を認めることもある.後期にポリープ状病巣は均一な過蛍光を示すものが多いが(図2),輪状の過蛍光を示すものもある.異常血管網のIA早期所見は,PCVを狭義PCVとpolypoidalCNVに分類する際に重要である.狭義PCVでは栄養血管がなく,血管の数は少なく,拡張,蛇行などの走行異常を示すが(図1),polypoidalCNVでは,栄養血管が検出され,起始部から放射状に血管が広がり血管の数が多い(図2).いずれも造影後期像は面状の過蛍光を示すものが多い(図1,2).3.光干渉断層検査(opticalcoherencetomograph:OCT)ポリープ状病巣や異常血管網の特徴的な3次元的構造と網膜.離,網膜色素上皮.離,黄斑浮腫の有無と範囲や高さが確認できるが,PCVの診断基準にはOCT所見は含まれていない.ポリープ状病巣はポリープ状病巣が網膜色素上皮を押し上げることによって,網膜色素上皮が急峻な立ち上がりを示す隆起性高反射として認められる8,9)(図1).網膜色素上皮.離の辺縁に連なる不正な網膜色素上皮の隆起として認める場合もあり10)tomographicnotchsignとよばれる11)(図3).ポリープ内の瘤状の血管も確認できることがある(図1).ポリープ状病巣がフィブリンに覆われる場合には網膜色素上皮の隆起性高反射の上に厚い高反射の所見がみられる.また,網膜下出血によりIAでポリープ状病巣が検出できない場合でも,出血下の網膜色素上皮の急峻な立ち上がりを示すポリープ状病巣を捉えることができることもある.異常血管網の範囲は網膜色素上皮を示す高反射帯とそれより外層にみられる高反射帯の間に間隙が認められる場合があり,その所見はdouble-layersignとよばれる(図1670あたらしい眼科Vol.30,No.12,2013(22) abcdabcd図1狭義PCVa:カラー眼底写真.黄斑部に橙赤色隆起病巣(矢印)を認める.耳側の病巣は白色化している.b:OCT.ポリープ状病巣は,網膜色素上皮が急峻な立ち上がりを示す隆起性高反射として認められる(矢印).鼻側の病巣は内部の血管構造が確認できる.異常血管網の範囲は網膜色素上皮を示す高反射帯とそれより外層にみられる高反射帯の間に間隙(double-layersign)が認められる(矢頭).c:インドシアニングリーン蛍光造影(IA)早期.ポリープ状病巣は細血管の形態を示し(矢印),異常血管網は拡張,蛇行などの走行異常が認められる(矢頭).d:IA後期.ポリープ状病巣は瘤状の過蛍光を示し(矢印),異常血管網は面状の過蛍光を示す(矢頭).ab図2PolypoidalCNVa:IA早期.ポリープ状病巣は異常血管網の辺縁血管の拡張蛇行部に認め(矢印),異常血管網は起始部から放射状に血管が出て血管の数が多い(矢頭).b:IA後期.ポリープ状病巣は瘤状の過蛍光を示し(矢印),異常血管網は面状の過蛍光を示す(矢頭).(23)あたらしい眼科Vol.30,No.12,20131671 abab図3PCVのOCT(tomographicnotchsignとdouble.layersign)a:IA5分.ポリープ状病巣の矢印と異常血管網の2点の矢頭を結ぶラインはOCTと一致した部位.b:OCT.ポリープ状病巣は,網膜色素上皮.離の辺縁に連なる不正な網膜色素上皮の隆起として認めtomographicnotchsignとよばれる(矢頭).異常血管網の範囲は網膜色素上皮を示す高反射帯とそれより外層にみられる高反射帯の間に間隙が認められ,その所見はdouble-layersignとよばれる(2点の矢印を結ぶライン).→図4再発と緊急治療:レーザー光凝固(大出血の原因となるポリープ状病巣が中心窩外に検出)(54歳,女性)初診時.矯正視力0.7.a:カラー眼底写真.黄斑部橙赤色隆起病巣(矢印)と出血性色素上皮.離を認める(矢頭).b:IA後期.ポリープ状病巣(矢印)を認める.c:OCT.網膜色素上皮.離を認める(※).Ranibizumab硝子体注射(IVR)単独療法7回後にIVRと光線力学的療法(PDT)併用療法の変更3カ月後.矯正視力0.7.d:カラー眼底写真.e:OCT.黄斑部に認めた橙赤色隆起病巣と網膜色素上皮.離は消失している.併用療法1年後に突然の大出血が生じる.矯正視力0.2.f:カラー眼底写真.黄斑部に橙赤色隆起病巣(矢印)と出血性網膜色素上皮.離(大矢頭),網膜下出血(小矢頭)を認める.g:IA後期.中心窩外のポリープ状病巣からの蛍光色素の漏出を強く認める(矢印).ポリープ状病巣に対する直接レーザー光凝固直後.翌日IVRを行う.h:カラー眼底写真.凝固部位は灰白色となっている(矢印).2カ月後.i:カラー眼底写真.出血の拡大は防止でき,出血は器質化し,吸収傾向にある.1年後.矯正視力0.5.j:カラー眼底写真.出血の再発はない.凝固瘢痕病巣を認める(矢印).1672あたらしい眼科Vol.30,No.12,2013(24) abcdefghij※abcdefghij※図4(図説明は前ページ)(25)あたらしい眼科Vol.30,No.12,20131673 1,3)12).II治療1.治療の適応PCVと診断したら,治療するのか経過観察とするのかを判断する.治療の適応となるのは,出血,漿液性網膜.離,網膜色素上皮.離,網膜浮腫などの滲出性所見を認める活動性のあるPCVである.活動性の所見がなければその時点では適応とならないが,視力にかかわらず,また加療後に活動性がなくなり安定した場合も含め,後に活動性の所見が出現することがあるため(図4),定期的な経過観察は必要となる.黄斑部がすでに線維性瘢痕病巣になり高度の視力低下を生じていても,視野の残存により,患者は読み書き以外のことができ,安定している患者も多い.しかし,病巣の再発により,周辺の視機能に影響を及ぼすこともある.定期的な診察で黄斑部とその周辺部を確認することで患者の失明への不安を軽減することができる.さらに自覚的な変化が生じた場合にすぐに迅速な診察ができるような受診態勢にしておくことが,治療の遅れを防ぐのに必要である.2.治療指針活動性のあるPCVは,上記のわが国の加齢黄斑変性の治療指針に沿って13),図5のアルゴリスムで示す治療を行う.抗血管内皮増殖因子(anti-vascularendothelialgrowthfacter:VEGF)硝子体注射で使用する薬剤は,ranibizumabあるいは,afriberceptである(afriberceptは,わが国で保険収載されたのは2012年11月であり,未治療のPCVに対する効果については,現時点では明らかになっていない).光線力学的療法(photodynamictherapy:PDT)は,通常の設定で行う.〔図5のアルゴニズムは,筆者の施設で行われているものである.図,本文の治療内容は文献14)から引用〕3.緊急治療PCVは,突然の出血を生じることがある.その出血により視機能のさらなる低下を早急に防ぐ必要がある場合が緊急治療の適応となる.つぎの2つのケースがある.1674あたらしい眼科Vol.30,No.12,2013PCVの治療適応;滲出性所見を伴う活動性のあるPCV病巣の位置(異常血管網とポリープ状病巣)緊急治療の必要(出血に伴う視機能の低下を早急に防ぐ必要)有り無し光凝固大出血をきたす可能性が高い黄斑下血腫0.6以上視力良好0.5以下視力不良出血原因病巣光凝固中心窩外中心窩中心窩外中心窩抗VEGF注射※抗VEGF注射※ガス硝子体注入抗VEGF注射※黄斑下血腫移動術あるいは(抗VEGF注射※併用)PDT併用※※図5ポリープ状脈絡膜血管症(PCV)の治療アルゴリズム(文献14図1と同一)※抗VEGF注射:抗血管内皮増殖因子(VEGF)硝子体注射.※※PDT:光線力学的療法.a.大出血を生じる可能性が高い緊急に治療しないと広範囲に網膜下出血が拡大あるいは硝子体出血となる可能性が高い場合は,ただちにIAを行い,IAで出血の原因となるポリープ状病巣を検出する.ポリープ状病巣を中心窩外に認めれば,レーザー光凝固を行い(図4),中心窩に認めた場合や出血によるブロックでポリープ状病巣が検出できない場合には抗VEGF硝子体注射を行う(図6).b.黄斑下血腫(中心窩下網膜下出血)中心窩の網膜下出血は,早期に視細胞に不可逆性変化を生じさせるため,緊急性が高い.発症から2週間以内,2乳頭径以上,脈絡膜中大血管が透見できない程度の厚い出血の場合は,ガス硝子体注入による黄斑下血腫移動術を行う15,16).ガス注入後は,うつ伏せ姿勢が必須となるため,うつ伏せ姿勢ができることも治療条件となる.ガス注入と同時にあるいは前・後数日以内に抗VEGF硝子体注射を行うことも多い(図7).発症から2週間以上経過して,出血の器質化が生じ始めている場合は,血腫が移動しにくく,またすでに視細胞の障害が不可逆性となっている場合もあり,中心視力の低下を防ぐことができないため適応とならない.(26) abc※abc※defg図6緊急治療:抗VEGF硝子体注射(大出血の原因となるポリープ状病巣が検出されない)(66歳,女性:文献14図3と同一症例).経過観察中に突然の網膜下出血と出血性網膜色素上皮.離が生じた.即日ranibizumab硝子体注射を行う.矯正視力1.2.a:カラー眼底写真.黄斑部耳側に網膜下出血と出血性網膜色素上皮.離を認める.b:IA後期,異常血管網は中心窩を含めて検出されるが(矢頭),ポリープ状病巣は確認できない.c:OCT.中心窩に網膜下出血は及んでいない(※).3週間後.矯正視力1.2.d:カラー眼底写真.e:OCT.軽度の硝子体出血は生じたが,出血の拡大は防止でき,出血は器質化している.6カ月後.矯正視力1.2.f:カラー眼底写真.g:OCT.出血は吸収している.III緊急治療とならない通常の治療治療方針が異なる.IAで認める病巣(異常血管網とポリープ状病巣)が中1.病巣が中心窩を含まない場合心窩を含まない場合(中心窩外)と中心窩を含む場合で病巣全体へのレーザー光凝固の適応となる.異常血管(27)あたらしい眼科Vol.30,No.12,20131675 abcde※abcde※図7緊急治療:ガス硝子体注入による黄斑下血腫移動術(中心窩下網膜下出血)(68歳,女性:文献14図3と同一症例).初診日即日にranibizumab硝子体注射(IVR)を行い,翌日SF6ガス硝子体注入を行う.矯正視力0.4.a:カラー眼底写真.黄斑部鼻側に橙赤色隆起病巣(小矢頭)と出血性網膜色素上皮.離(大矢頭),2乳頭系以上の大きさの脈絡膜の中大血管が透見できない程度の網膜下出血(矢印)を認める.b:OCT.中心窩を含む網膜下出血と出血性網膜色素上皮.離(※)を認める.SF6ガス硝子体注入1日後.c:カラー眼底写真.中心窩の血腫は下方にシフトしている.上方に硝子体内のガスが確認できる(矢頭).3カ月後.IVRは計3回行っている.矯正視力1.0.d:カラー眼底写真.e:OCT.出血は吸収している.網が中心窩に存在する中心窩外のポリープ状病巣のみの本版眼科PDTガイドライン」18)ではPCVはPDTの良レーザー光凝固は,ポリープ状病巣の再発も多いため推い適応にされている.それは,PCVが治療前と比較し奨されない17).治療後は,レーザー光凝固部位に一致して1年後視力が有意に改善し,PCVなし(通常の滲出た暗点が生じるため,特にレーザー光凝固部位が中心窩型加齢黄斑変性)の群に比べ,PDT後3カ月の時点でに近い場合は,術後の暗点についてのインフォームド・有意に平均視力が良く,12カ月後まで継続していたたコンセントが必須となる(図8).めである.他の報告でも同様に,初回PDT後1年の成績は80.95%の症例で視力の維持・改善が得られてい2.病巣が中心窩に存在した場合る.しかし,視力良好例のPCVは,視力が低下するこ抗VEGF硝子体注射単独療法,PDT単独療法,PDTともあり推奨されていない.そこで,0.6以上と0.5以と抗VEGF硝子体注射併用療法の治療方法がある.「日下に分けてから治療方法を決定する.1676あたらしい眼科Vol.30,No.12,2013(28) abcdefabcdef図8病巣が中心窩外に存在した場合(病巣全体へのレーザー光凝固)(68歳,男性)治療前.矯正視力0.4.病巣(異常血管網とポリープ状病巣)を中心窩外に認めたため,レーザー光凝固を行う.a:カラー眼底写真.黄斑部に橙赤色隆起病巣(矢印)と網膜色素上皮.離(矢頭)を認める.b:OCT.ポリープ状病巣を示唆するtomographicnotchsignを認め,中心窩に病巣は及んでいないのが確認できる(矢頭).c:IA後期:異常血管網(矢印)とポリープ状病巣(矢頭)を認める.3カ月後.矯正視力0.8.d:カラー眼底写真.病巣の再発はなく,凝固瘢痕病巣(矢頭)が確認できる.e:OCT.網膜色素上皮.離は消失し,中心窩の陥凹を認める.凝固部位(2点の矢印を結ぶライン)の視細胞内節外節接合部のラインは消失している(矢頭).f:Humphrey視野検査10-2凝固部位に一致した暗点を認める.a.矯正視力が0.6以上の視力良好例なる.筆者らのIVRの検討では,IVRの単独療法は,抗VEGF硝子体注射単独療法の適応となる(図9).中心窩網膜厚は有意に減少し,視力は改善されるが,経視力不良例も含め,Hikichiらは,PCVに対する過観察中に再発やIVRに対して無反応となる症例もあranibizumabの硝子体注射(intravitrealinjectionofり,afriberceptへの変更や0.5以下になった時点でranibizumab:IVR)単独療法の2年の効果は良好であPDTとの併用も検討する必要があると考える(図10).ると報告しているが19),視力良好なPCVに限定したb.矯正視力が0.5以下の視力不良例IVRの単独療法の1年の効果について,Saitoらの18抗VEGF硝子体注射単独療法あるいはPDTと抗眼20),筆者らの50眼21)の検討では,いずれも視力は有VEGF硝子体注射併用療法の適応となる.PDTは,ポ意に改善している.導入期以後の維持期は,毎月診察リープ状病巣が閉塞しても長期経過となると治療前よりし,再治療の適応があれば,IVRを行うprorenata:も視力が悪化する症例が増えることから,PDT単独療(PRN)で行うことが原則必要である.Afriberceptを選法の選択がされなくなっている.併用療法の利点とし択した場合は,導入期以後は2カ月ごとの計画的投与とて,血栓形成によるCNVに対する選択的血管閉塞作用(29)あたらしい眼科Vol.30,No.12,20131677 ※abcd※abcd図9病巣が中心窩に存在した場合〔afribercept硝子体注射(IVA)単独療法〕(67歳,男性)治療前.矯正視力0.9であったためIVA単独療法を開始する.a:IA後期.異常血管網とポリープ状病巣(矢頭)を認める.b:OCT.ポリープ状病巣を示唆する内部に血管構造を伴う網膜色素上皮の急峻な隆起(矢印)と漿液性網膜.離を認める(※).3カ月後.計3回のIVAを行う.矯正視力1.5.c:IA後期.異常血管網は残存するが(小矢頭),ポリープ状病巣は確認できない(大矢頭).d:OCT.ポリープ状病巣を示唆する網膜色素上皮の急峻な隆起は縮小し(矢印),漿液性網膜.離は消失している.であるPDTと新生血管の血管内皮増殖阻害作用,血管上述したHikichiらの報告ではIVRの単独療法も,ポ透過性の抑制作用である抗VEGF薬の異なる奏効機序リープ状病巣の消失は25%,異常血管網は残存・拡大により治療効果を高められることと,抗VEGF薬によするが,2年間の長期期間で視力の観点からは有効でありPDTによるVEGFの増加,PDT後早期の血管外漏ることから19)IVRの単独療法も適応となる.出などの副反応を抑制できることが挙げられ,さらに治今後,afriberceptがranibizumabと異なる治療成績療回数の減少が期待できる.治療回数が減ることによりが報告される可能性もあり,抗VEGF硝子体注射に対患者の経済的負担を減らすこととなる.わが国の加齢黄してPDTの併用の可否は,現時点で結論はだせない.斑変性の治療指針では,PDTと抗VEGF薬併用療法は,しかし,抗VEGF硝子体注射単独療法で,無効例や薬PDT単独療法よりも視力成績が良好で,PDTの合併症剤耐性例に関しては,上述した理由でPDTを併用するとしての出血の頻度を低下させるという報告があることことにより,治療効果が期待できる可能性もある.から22.25),併用療法も適応になるとしている13).併用療法の方法としてIVRをPDTの7日前に行うよりも2おわりに日前に行ったほうが有意に視力の改善が得られるとの報PCVにはさまざまな所見があり,さまざまな経過を告もある23).たどるので,完全に予後をコントロールできる管理方法1678あたらしい眼科Vol.30,No.12,2013(30) abcdabcd図10病巣が中心窩に存在した場合〔ranibizumab硝子体注射(IVR)単独療法から光線力学的療法(PDT)併用に変更〕(63歳,男性)計8回のIVRを行うも漿液性網膜.離の消失と再発を繰り返し,矯正視力0.5となったため,PDTとの併用療法を行う.a:IA後期.異常血管網(矢頭)とポリープ状病巣(矢印)を認める.b:OCT.ポリープ状病巣を示唆するtomographicnotchsignを認める(矢頭).12カ月後.PDTとの併用療法後再発は認めず追加治療は行っていない.矯正視力1.0.c:IA後期.異常血管網は残存するが(矢頭),ポリープ状病巣の過蛍光は減弱している(矢印).d:OCT.網膜色素上皮.離は平坦化している(矢頭).はない.PCVと診断したら,生涯にわたり治療を含めた定期診察と自覚的な変化が生じた場合の迅速な診察,迅速な治療がPCVの管理の基本となる.文献1)YannuzziLA,CiardellaA,SpaideRFetal:Theexpandingclinicalspectrumofidiopathicpolypoidalchoroidalvasculopathy.ArchOphthalmol115:478-485,19972)髙橋寛二,石橋達朗,小椋祐一郎ほか(厚生労働省網膜脈絡膜・視神経萎縮症調査研究班加齢黄斑変性診断基準作成ワーキンググループ):加齢黄斑変性の分類と診断基準.日眼会誌112:1076-1084,20083)日本ポリープ状脈絡膜血管症研究会:ポリープ状脈絡膜血管症の診断基準.日眼会誌109:417-427,20054)MarukoI,IidaT,SaitoMetal:Clinicalcharacteristicsofexudativeage-relatedmaculardegenerationinJapanesepatients.AmJOphthalmol144:15-22,20075)UyamaM,WadaM,NagaiYetal:Polypoidalchoroidal(31)vasculopathy.Naturalhistory.AmJOphthalmol133:639-648,20026)湯澤美都子:ポリープ状脈絡膜血管症.日眼会誌116:200-232,20127)KawamuraA,YuzawaM,MoriRetal:Indocyaninegreenangiographicandopticalcoherencetomographicfindingssupportclassificationofpolypoidalchoroidalvasculopathyintotwotypes.ActaOphthalmol91:e474e481,20138)IijimaH,ImaiM,GohdoTetal:Opticalcoherencetomographyofidiopathicpolypoidalchoroidalvasculopathy.AmJOphthalmol127:301-305,19999)IijimaH,IidaT,ImaiMetal:Opticalcoherencetomographyoforange-redsubretinallesionineyeswithidiopathicpolypoidalchoroidalvasculopathy.AmJOphthalmol129:21-26,200010)TsujikawaA,SasaharaM,OtaniAetal:Pigmentepithelialdetachmentinpolypoidalchoroidalvasculopathy.AmJOphthalmol143:102-111,200711)Sato,KishiS,WatanabeGetal:Tomographicfeaturesofあたらしい眼科Vol.30,No.12,20131679 branchingvascularnetworksinpolypoidalchoroidalvasculopathy.Retina27:589-594,200712)SatoT,IidaT,HagimuraNetal:Correlationofopticalcoherencetomographywithangiographyinretinalpigmentepithelialdetachmentassociatedwithage-relatedmaculardegeneration.Retina24:910-914,200413)髙橋寛二,石橋達朗,小椋祐一郎ほか(厚生労働省網膜脈絡膜・視神経萎縮症調査研究班加齢黄斑変性診断基準作成ワーキンググループ):加齢黄斑変性の治療指針.日眼会誌116:1150-1155,201214)森隆三郎:ポリープ状脈絡膜血管症.特集:加齢黄斑変性に対する治療の選択.眼科手術26:358-365,201315)HattenbachLO,KlaisC,KochFHJetal:Intravitreousinjectionoftissueplasminogenactivatorandgasinthetreatmentofsubmacularhemorrhageundervariousconditions.Ophthalmology108:1485-1492,200116)OhjiM,SaitoY,HayashiAetal:Pneumaticdisplacementofsubretinalhemorrhagewithouttissueplasminogenactivator.ArchOphthalmol116:1326-1332,199817)YuzawaM,MoriR,HaruyamaM:Astudyoflaserphotocoagulationforpolypoidalchoroidalvasculopathy.JpnJOphthalmol47:379-384,200318)TanoY:GuidelinesforPDTinJapan.Ophthalmology115:585-585.e6,200819)HikichiT,HiguchiM,MatsushitaTetal:Resultsof2yearsoftreatmentwithas-neededranibizumabreinjectionforpolypoidalchoroidalvasculopathy.BrJOphthalmol97:617-621,201320)SaitoM,IidaT,KanoM:Intravitrealranibizumabforexudativeage-relatedmaculardegenerationwithgoodbaselinevisualacuity.Retina32:1250-1259,201221)MoriR,YuzawaM,AkazaEetal:Treatmentresultsat1yearofranibizumabtherapyforpolypoidalchoroidalvasculopathyineyeswithgoodvisualacuity.JpnJOphthalmol57:365-371,201322)GomiF,SawaM,WakabayashiTetal:Efficacyofintravitrealbevacizumabcombinedwithphotodynamictherapyforpolypoidalchoroidalvasculopathy.AmJOphthalmol150:48-54,201023)SatoT,KishiS,MatsumotoHetal:Combinedphotodynamictherapywithverteporfinandintravitrealbevacizumabforpolypoidalchoroidalvasculopathy.AmJOphthalmol149:947-954,201024)TomitaK,TsujikawaA,YamashiroKetal:Treatmentofpolypoidalchoroidalvasculopathywithphotodynamictherapycombinedwithintravitrealinjectionsofranibizumab.AmJOphthalmol153:68-80,201225)SaitoM,IidaT,KanoMetal:Two-yearresultsofcombinedintravitrealranibizumabandphotodynamictherapyforpolypoidalchoroidalvasculopathy.GraefesArchClinExpOphthalmol251:2099-2110,201326)SatoT,KishiS,MatsumotoHetal:Comparisonsofoutcomeswithdifferentintervalsbetweenadjunctiveranibizumabandphotodynamictherapyforpolypoidalchoroidalvasculopathy.AmJOphthalmol156:95-105,20131680あたらしい眼科Vol.30,No.12,2013(32)

典型加齢黄斑変性の管理

2013年12月31日 火曜日

特集●加齢黄斑変性診療ガイドあたらしい眼科30(12):1661.1668,2013特集●加齢黄斑変性診療ガイドあたらしい眼科30(12):1661.1668,2013典型加齢黄斑変性の管理ManagementofTypicalAge-RelatedMacularDegeneration大島裕司*はじめに加齢黄斑変性(age-relatedmaculardegeneration:AMD)は,欧米をはじめとした先進国において成人の失明や視力低下の主原因となっており,近年ますます増加傾向が認められている.米国における視覚障害の検討では40歳以上の白人において視力0.01未満の視力障害の原因疾患の第1位が加齢黄斑変性で54.4%と最も多く,白内障,緑内障,糖尿病網膜症による視力障害の合計よりも多いと報告されている1).わが国においても,2006年の岐阜県多治見市における多治見スタディの報告で,加齢黄斑変性は視力0.05から0.3までの視力不良者の原因疾患の第4位と報告され,厚生労働省の網膜・脈絡膜・視神経萎縮調査研究班の報告では,わが国における身体障害者視覚障害の原因疾患の第4位となっている.福岡県久山町の地域住民を対象に行われている久山町スタディでは,その有病率は1998年からの9年間で0.9%から1.3%に増加していた.9年間でのAMD発症率は1.4%(男性2.6%,女性0.8%)で,特に男性においては欧米並みの発症率で,今後もさらに患者数の増加が危惧されるところである2,3).AMDは滲出型と萎縮型に大別されるが,滲出型は脈絡膜より発生する脈絡膜新生血管(choroidalneovascularization:CNV)が網膜下,および神経網膜に伸展し,CNVからの出血や滲出によって視力低下を招く予後不良のタイプである.萎縮型は脈絡膜血管が透見できる円形および楕円形の網膜色素上皮の低色素,無色素および欠損部位が認められるもので,緩徐に進行し網膜萎縮に至る.現在,萎縮病巣に対する治療法はない.滲出型AMDには典型加齢黄斑変性とその特殊型であるポリープ状脈絡膜血管症(polypoidalchoroidalvasculopathy:PCV)と網膜血管腫状増殖(retinalangiomatousproliferation:RAP)が含まれる.わが国を含むアジア人では欧米人に比べてPCVが多いことがよく知られているが,2007年の久山町スタディでは典型AMDの有病率は0.8%,PCVは0.4%であった.このことからも,典型AMDはやはり滲出型AMDのなかで一番多く占めていると言える.そこで,本稿では滲出型AMDのなかでも典型加齢黄斑変性の病型診断,および現在おもに行われている治療に関して述べる.I典型加齢黄斑変性の診断滲出型AMDは,脈絡膜より発生する脈絡膜新生血管(CNV)が網膜下,および神経網膜に伸展し,CNVからの出血や滲出によって視力低下を招く.典型AMDはそのなかで特殊型であるPCVやRAPを除いたものである.滲出型AMDはいくつかの病型分類があるが,その病態を蛍光眼底造影,光干渉断層計(OCT)を含めた種々の検査結果より総合的に判断して理解し,より良い治療へ結びつける必要がある.AMDの病型分類にはCNVの位置,および性状によっていくつかの臨床的分類がある.一つの病型分類としてCNVの部位による分類がある.CNVが色素上皮よ*YujiOshima:九州大学大学院医学研究院眼科学分野〔別刷請求先〕大島裕司:〒812-8582福岡市東区馬出3-1-1九州大学大学院医学研究院眼科学分野0910-1810/13/\100/頁/JCOPY(13)1661 り外側,脈絡膜側にのみ存在する場合,これはI型CNVとよばれている.これに反して,CNVが色素上皮よりも神経網膜側にまで達しているものはII型CNVとよばれている.Greenらは,剖検眼を用いた検討で,I型単独が15%,II型単独は30%,I+II型の混合型が50%と報告している.フルオレセイン蛍光眼底造影の所見を基にした分類では,初期から網目状過蛍光を示し後期に旺盛な蛍光漏出を示すCNVをclassicCNV,初期には蛍光が不明瞭で後期に漏出が拡大を示すCNVをoccultCNVと分類している.おもにclassicCNVは色素上皮を超えて神経網膜内にCNVが存在するもの(いわゆるII型CNV)に多く,occultCNVはCNVが色素上皮下(I型CNV)に存在するものが多い.そのclassicCNVが病変の50%以上を占めるものをpredominantlyclassicCNV,50%未満のものをminimallyclassicCNV,まったく認めないものをoccultwithnoclassicCNVと分類する.II典型加齢黄斑変性の治療滲出型AMDのみならず,眼内血管新生には血管内皮細胞の分裂・増殖に大きな役割を果たす血管内皮増殖因子(vascularendothelialgrowthfactor:VEGF)が重要な働きをしていることが知られている.滲出型AMDの治療はその原因となっているCNVを閉塞,消退させることが目標となる.現在,わが国でおもに用いられている加齢黄斑変性の治療法は,光凝固療法,光線力学的療法(PDT)と抗VEGF療法である.光凝固療法はCNV全体を凝固する有効な治療法である.しかし正常組織にも影響がでるため,中心窩を含まないCNVが治療の適応となる.そのため適応となる症例が多くはない.PDTは,抗VEGF療法が登場するまでは,滲出型AMD治療の主流であった.PCVに対してはその有効性が知られているが,典型AMDに対しては数々の臨床研究の結果,その有効性が抗VEGF療法に劣ることが報告されており,そのため現在では抗VEGF療法が主流となっている.わが国の治療指針においても中心窩を含むCNVを伴う典型AMDは抗VEGF療法が推奨されている4).1662あたらしい眼科Vol.30,No.12,2013III抗VEGF療法血管内皮増殖因子(VEGF)は,分子量約20kDaのサブユニットが結合した2量体構造の蛋白質で,その働きは正常血管の発育や病的血管新生,血管透過性亢進に大きく関与している.VEGFにはその分子量の違いから5つのアイソフォームが存在し,眼内ではVEGF121とVEGF165がおもに産生されている.血管内皮細胞にはVEGFの受容体であるVEGFR-1とVEGFR-2が発現しているが,血管内皮細胞増殖や血管透過性亢進作用はおもにVEGFR-2を介している.VEGF165がVEGFR2とその補助受容体であるneuropilin-1と結合し,共発現させるとVEGF165によるVEGFR-2のシグナルがさらに増強し,血管内皮細胞分裂が亢進する.このため,VEGF165はVEGF121よりも強力な病的新生血管に関与していると考えられている.AMDにおいては網膜色素上皮(RPE)および周辺組織,さらにはCNVから高濃度のVEGFが分泌されていることが知られており,AMD患者の硝子体液,血清中,そして手術で摘出した網膜下新生血管膜にもVEGFが有意に多く認められている5).そこで,その血管新生の主役をなすVEGFを標的とした薬物療法が抗VEGF療法である.AMDの本態であるCNVの進行,活動性を低下させるために,そのVEGFを抑える抗VEGF薬を眼内に注射(硝子体内注射)して治療する.現在,わが国でAMDに対して用いられている抗VEGF薬はペガプタニブ(マクジェンR),ラニビズマブ(ルセンティスR),アフリベルセプト(アイリーアR)の3種である.それぞれの薬剤に対して今まで多数の臨床試験が行われ,すべてのCNVタイプでその有効性が示されている(表1).そのため,現在では典型AMDに対する初回治療では抗VEGF療法が第1選択となっている.1.ラニビズマブ(ルセンティスR)ラニビズマブは,分子量約50kDa,VEGFの中和抗体のFab断片で,ヒトVEGFに親和性を高めて創薬されている.中和抗体全長であるベバシズマブ(アバスチンR,分子量約150kDa)に比べて,分子量が小さいこ(14) 表1大規模臨床研究と対象病型臨床研究名薬剤名病変CNVタイプ〔PC/MC/ONCの割合(%)〕MARINA(n=716)ラニビズマブMCおよびONC(0.1/36.9/63.0)ANCHOR(n=423)ラニビズマブPC(96.9/2.8/0.2)PIER(n=184)ラニビズマブすべてのCNVタイプ(18.0/38.6/43.0)EXTENDI(n=76)ラニビズマブすべてのCNVタイプ(24.4/41.5/34.1:0.5mggroup)ペガプタニブ国内臨床試験(n=95)ペガプタニブすべてのCNVタイプ(27.7/42.6/29.8:0.3mggroup)VIEW1&2(n=2457)アフリベルセプトすべてのCNVタイプ(26.2/35.6/37.6:2mg8週毎group)PC:predominantlyclassicCNV,MC:minimallyclassicCNV,ONC:occultwithnoclassicCNV.ともあり組織親和性が高いが,眼内半減期が短い特徴がある.わが国では2009年に認可され,臨床使用が可能となった薬剤である.使用方法は1回0.5mgを1カ月に1回,硝子体内に毎月投与する.数々の臨床試験にて最も効果が得られた初回から連続3回投与までの3カ月間を導入期とよび,その後を維持期とよぶ.海外で行われた大規模臨床試験である,MARINA試験やANCHOR試験では,毎月投与を24カ月間行い,無治療群(sham群)やPDT単独治療群に比べて有意に視力が維持され,しかも治療前のベースラインより視力改善が得られたと報告している6,7).わが国で行われたEXTEND-Iとよばれる臨床試験でも連続12カ月の投与を行い,治療前に比べて有意な視力改善が認められている8).これらの臨床試験ではラニビズマブを毎月固定投与する方法をとられているが,実際の臨床の現場では毎月投与し続けることは,患者側にも医療者側にも負担が多く,現実的には不可能に近い.そのため,3カ月ごとの固定投与が試みられた.PIER試験やEXCITE試験では導入期3回連続の後,3カ月ごとの投与を行い,無治療群や毎月治療を行った群と比較しているが,3カ月ごとの投与では無治療に比しては良好であるが導入期の視力改善効果は維持できていない9).これにより,維持期の3カ月ごとの固定投与では効果が維持できないことが示された.そこで3カ月間の導入期投与の後,維持期に毎月経過観察を行い,視力やOCT,眼底所見の変化にある一定の基準を設け悪化が認められれば投与を行うという必要時投与(prorenata:PRN)という方法がとられるようになった.この方法を用いると導入期後に得られた視力を比較的維持できたという報告が多い.よく知られている臨床研究としてPrONTO試験やSUSTAIN試験があるが,わが国でも多くの施設で用いられている手法である10,11).ラニビズマブ治療指針策定委員会により維持期における追加投与基準が作成されており,これもPRNの手法が用いられている.その基準によると,前回来院時の視力を基準としてETDRS視力検査表の文字数に換算してほぼ5文字超の悪化に相当する少数視力の視標が判別できない場合,出血あるいは滲出性変化がある場合,追加投与が推奨されるが,最終的には眼科医が総合的に判断して追加投与を決定する.わが国のラニビズマブ市販後調査における平均投与回数は治療開始1年目,年間4.5回で他の臨床研究に比べて少ないものであった.山本らは,日本人に対してもこの手法で経過観察・加療を行うと良好な経過をたどると報告している12).図1に自験例を示す.またDENALI試験やMONTBLANC試験などのラニビズマブ単独治療とラニビズマブ,PDT併用療法を比較した大規模スタディが行われているが,両試験とも併用療法の大きな有用性(治療効果および治療回数)が示されなかった13,14).よって現在は典型AMDに対しての第1選択は抗VEGF療法が推奨されている.2.ペガプタニブ(マクジェンR)ペガプタニブはVEGF165のみを選択的に阻害するアプタマー製剤で,わが国では2008年に臨床使用が可能となった,初めての加齢黄斑変性に対する抗VEGF治療薬である.使用方法は1回0.3mgを6週間に1回,(15)あたらしい眼科Vol.30,No.12,20131663 治療前3カ月後11カ月後FAIAFAIAFAIA(0.3)(0.6)(0.5)51カ月後(0.5)図1典型AMDに対してラニビズマブ硝子体内投与(IVR)を行った症例82歳,男性.左)典型AMD(predominantlyclassicCNV).治療前視力は0.3,IVR3回後視力は0.6,滲出性変化は消失した.治療開始11カ月後に再発がみられ,追加投与開始.その後PRNで合計8回のIVRを施行.治療開始51カ月後に視力0.5,滲出性変化は認められていない.硝子体内投与を行う.ラニビズマブに比べて投与間隔が長く,導入期3カ月では2回の注射を行う.ペガプタニブはVEGF121には結合せず,病的血管新生を司ると言われているVEGF165のみを選択的に阻害するため,生体に対する安全性が高いと推察されていた.欧米で行われた大規模臨床試験であるVISION試験では,ペガプタニブ投与量を0.3mg,1.0mg,3.0mgと無治療(sham群)に分け1年間投与を行った.1年後に視力が維持されたのは0.3mg群で無治療に比べて有意に高かったとしている15).わが国での臨床試験の結果でも0.3mg投与で視力変化は治療前と比べて維持が認められ,その維1664あたらしい眼科Vol.30,No.12,2013持効果はほぼPDTと同等であったと推測されている.しかし,視力改善効果は認められず,治療の目標としては視力が低下するリスクを下げ,視力を維持することにとどまる16).そのため,典型AMDのすべての患者に対して初期治療第1選択となることは多くなく,心血管・脳血管イベント既往のある患者に対して第1選択となることが多い.またその安全性,視力維持効果に着目して近年では,病態が安定している患者の維持療法として用いられている.この手法の代表的な臨床研究はLEVEL試験であり,わが国でも同様の研究が行われ,LEVELJ試験とよばれている17,18).これは導入期にラニビズマ(16) FAIA8カ月後(0.5)ブ,ベバシズマブ,PDTなどにより得られた視力改善効果を維持期に6週間ごとペガプタニブを投与し視力を維持するというものである.6週ごとの投与により,合併症のリスクを減らし,安全に視力を維持することが目0.0導入維持期0.20.40.60.81.0ベースライン経過時間(週)図2ペガプタニブを用いたLEVEL.J試験での視力変化54週終了時には治療開始前に対して有意に視力改善し,比較的ベースライン視力を維持できている.p<0.001治療前に対して(pairedt-test).(文献18より)治療前(0.6)3カ月後FA(0.4)0.290.610.26*n=75平均±SElogMARW6W18W30W42W54標である.このスタディによると導入期で得られた視力が1年後に維持することが可能だったと報告している(平均logMAR視力でベースライン視力0.26が1年後に0.29)(図2).3.アフリベルセプト(アイリーアR)アフリベルセプトはVEGFの受容体(VEGFR-1およびVEGFR-2)とIg(免疫グロブリン)GのFcの融合蛋白でVEGFのすべてのアイソフォームのみならず胎盤成長因子をも抑制する.アフリベルセプトは,VEGFおよび胎盤成長因子と強固に結合し,硝子体内半減期もラニビズマブより長いことが推定されている(ラニビズマブ3.2日,アフリベルセプト4.8日).アフリベルセプトはわが国でも2012年に認可されたばかりで大規模臨床試験であるVIEW試験以外の報告はまだ少ない.VIEW試験は世界規模で2,400名以上の登録患者で行われた臨床試験で,わが国も参加している.この試験ではIA図3典型AMDに対してアフリベルセプト硝子体内投与(IVA)を行った症例59歳,男性.右)典型AMD(occultwithnoclassicCNV).治療前視力は0.6,病変は一部器質化し広範な網膜下出血を認めていた.IVA3回施行後視力は0.4,出血は消失し,滲出性変化も減少.IVA開始8カ月後視力0.5,網膜内.胞が認められる.(17)あたらしい眼科Vol.30,No.12,20131665 IAIVA6カ月後(IVA4投与)(0.3)図4ラニビズマブ無反応例に対してアフリベルセプトに切り替えた症例60歳,男性.右)典型AMD(occultwithnoclassicCNV).治療前視力0.5,IVR3回終了後視力0.3,漿液性色素上皮.離(PED)はほぼ変化なかった.PRNにて維持期にIVR10回施行するも視力およびPEDはほぼ変わらず.IVR14カ月後視力0.3,IVAに切り替IVR治療前IVR3カ月後IVR14カ月後(IVR10投与)IVA切り替え時(0.5)FA(0.3)FAIA(0.3)FAIAえ,IVA4回施行後PEDは消失,視力0.3であった.アフリベルセプト(0.5mg,2mg)の効果が,ラニビズマブを対照薬として検討されている.また毎月固定投与群と,維持期に2mgアフリベルセプトを2カ月毎固定投与する群の比較も行われている.その結果,維持期におけるアフリベルセプト(2mg)の2カ月毎投与は,ラニビズマブ毎月投与に比して非劣勢が示された19).アフリベルセプトの効果に関しては今後種々の報告,研究がさらに行われると予想されるが,現時点では,ラニビズマブ同様に典型AMDに対して有効である印象である.1666あたらしい眼科Vol.30,No.12,2013また,他剤に対して耐性のために他剤が無効になった症例や他剤無反応例,特にoccultCNVに対してその有効性が報告されている20).図3,4に自験例を示す.IV維持期における管理前項でも述べたが,数々の臨床研究結果より,病状を安定させ,良好な視力を維持するためには,毎月来院,毎月固定投与が一番の方法であると推察される.しかし,これは患者側および医療者側にも負担が大きく,実(18) 臨床では不可能に近い.わが国では実際にはPRNによる追加投与が主流である.PRNでは,毎月投与に比べて治療成績が劣ることはよく知られている.しかし,CATT試験やHARBOR試験のようなPRNと毎月投与を比較した臨床試験では,経過観察時に厳密な管理を行えばPRNでもやや劣るものの比較的良好な結果を得ている.そのためには必然的に投与回数は増加する傾向がある.実際,これらの試験での投与回数はわが国の実臨床PRNに比べて多数回必要であった(初年度年間投与回数,CATT:PRN6.9回,毎月投与11.7回,HARBOR:PRN7.7回,毎月投与11.3回)21,22).アフリベルセプトに関しては,VIEW試験で維持期における2カ月毎の固定投与が毎月投与に比べて非劣勢が示されているが,実臨床での維持期の経過や治療方針に関してはまだ不明な点も多く,今後の研究結果が待たれるところである.近年,欧米ではTreatandExtendという管理を行う施設が増えてきている.これは,初期治療にて滲出性変化の改善が得られた後,来院間隔を少しずつ延長し,滲出性変化がない状態でも投与を行い,さらに来院間隔を延ばすという方法である.もし,滲出性変化が認められたときには投与を行うのはもちろんであるが,来院間隔の延長は行わない.これは滲出性変化が出る前に投与を行うという,病態がproactiveな状態で投与・管理を行う方法で,この手法を用いると良好な結果を維持できると報告されている23,24).しかし,一定のプロトコールなどがなく,今後の結果が待たれるところである.おわりに加齢黄斑変性は,抗VEGF薬の登場により視力維持が可能な疾患となってきている.特に典型AMDに対しての治療は,抗VEGF療法が第1選択である.視力予後を考えると定期的にproactiveな状態で投与するほうが良好な結果が得られる可能性が高いが,投与回数の増加に伴い,局所的および全身的合併症のリスクが増加することも懸念しなければならない.われわれ眼科医は,患者個々人の病態を適切に把握し,治療タイミングの選択,および治療のベネフィットと合併症などのリスクや経済的背景を考慮し治療を行わなければならない.(19)文献1)CongdonN,O’ColmainB,KlaverCCWetal:CausesandprevalenceofvisualimpairmentamongadultsintheUnitedStates.ArchOphthalmol122:477-485,20042)OshimaY,IshibashiT,MurataTetal:PrevalenceofagerelatedmaculopathyinarepresentativeJapanesepopulation:theHisayamastudy.BrJOphthalmol85:11531157,20013)MiyazakiM,KiyoharaY,YoshidaAetal:The5-yearincidenceandriskfactorsforage-relatedmaculopathyinageneralJapanesepopulation:theHisayamastudy.InvestOphthalmolVisSci46:1907-1910,20054)髙橋寛二,小椋祐一郎,石橋達朗ほか:加齢黄斑変性の治療方針.日眼会誌116:1150-1155,20125)KliffenM,SharmaHS,MooyCMetal:Increasedexpressionofangiogenicgrowthfactorsinage-relatedmaculopathy.BrJOphthalmol81:154-162,19976)RosenfeldPJ,BrownDM,HeierJSetal:Ranibizumabforneovascularage-relatedmaculardegeneration.NEnglJMed355:1419-1431,20067)KaiserPK,BrownDM,ZhangKetal:Ranibizumabforpredominantlyclassicneovascularage-relatedmaculardegeneration:subgroupanalysisoffirst-yearANCHORresults.AmJOphthalmol144:850-857,20078)TanoY,OhjiM,EXTEND-IStudyGroup:EXTEND-I:safetyandefficacyofranibizumabinJapanesepatientswithsubfovealchoroidalneovascularizationsecondarytoage-relatedmaculardegeneration.ActaOphthalmol88:309-316,20109)AbrahamP,YueH,WilsonL:Randomized,double-masked,sham-controlledtrialofranibizumabforneovascularage-relatedmaculardegeneration:PIERstudyyear2.AmJOphthalmol150:315-324.el,201010)LalwaniGA,RosenfeldPJ,FungAEetal:Avariable-dosingregimenwithintravitrealranibizumabforneovascularage-relatedmaculardegeneration:year2ofthePrONTOStudy.AmJOphthalmol148:43-58.el,200911)HolzFG,KorobelnikJ-F,LanzettaPetal:Theeffectsofaflexiblevisualacuity-drivenranibizumabtreatmentregimeninage-relatedmaculardegeneration:outcomesofadruganddiseasemodel.InvestOphthalmolVisSci51:405-412,201012)YamamotoA,OkadaAA,SugitaniAetal:Two-yearoutcomesofprorenataranibizumabmonotherapyforexudativeage-relatedmaculardegenerationinJapanesepatients.ClinOphthalmol7:757-763,201313)KaiserPK,BoyerDS,CruessAFetal:Verteporfinplusranibizumabforchoroidalneovascularizationinage-relatedmaculardegeneration:twelve-monthresultsoftheDENALIStudy.Ophthalmology119:1001-1010,201214)LarsenM,Schmidt-ErfurthU,LanzettaPetal:Verteporfinplusranibizumabforchoroidalneovascularizationinあたらしい眼科Vol.30,No.12,20131667 age-relatedmaculardegeneration:twelve-monthMONTBLANCstudyresults.Ophthalmology119:992-1000,15)VEGFInhibitionStudyinOcularNeovascularization(V.I.S.I.O.N.)ClinicalTrialGroup,ChakravarthyU,AdamisAPetal:Year2efficacyresultsof2randomizedcontrolledclinicaltrialsofpegaptanibforneovascularage-relatedmaculardegeneration.Ophthalmology113:1508.e1-25,200616)ペガプタニブナトリウム共同試験グループ(代表者:田野保雄):脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性を対象としたペガプタニブナトリウム1年間投与試験.日眼会誌112:590600,200817)FribergTR,TolentinoM,LEVELStudyGroupetal:Pegaptanibsodiumasmaintenancetherapyinneovascularage-relatedmaculardegeneration:theLEVELstudy.BrJOphthalmol94:1611-1617,201018)IshibashiT,LEVEL-JStudyGroup:Maintenancetherapywithpegaptanibsodiumforneovascularage-relatedmaculardegeneration:anexploratorystudyinJapanesepatients(LEVEL-Jstudy).JpnJOphthalmol57:417423,201319)HeierJS,BrownDM,ChongVetal:Intravitrealaflibercept(VEGFtrap-eye)inwetage-relatedmaculardegeneration.Ophthalmology119:2537-2548,201220)YonekawaY,AndreoliC,MillerJBetal:Conversiontoafliberceptforchronicrefractoryorrecurrentneovascularage-relatedmaculardegeneration.AmJOphthalmol156:29-35.e2,201321)CATTResearchGroup,MartinDF,MaguireMGetal:Ranibizumabandbevacizumabforneovascularage-relatedmaculardegeneration.NEnglJMed364:1897-1908,201122)BusbeeBG,HoAC,BrownDMetal:Twelve-monthefficacyandsafetyof0.5mgor2.0mgranibizumabinpatientswithsubfovealneovascularage-relatedmaculardegeneration.Ophthalmology120:1046-1056,201323)OubrahamH,CohenSY,SamimiSetal:Injectandextenddosingversusdosingasneeded:acomparativeretrospectivestudyofranibizumabinexudativeage-relatedmaculardegeneration.Retina31:26-30,201124)ToalsterN,RussellM,NgP:A12-monthprospectivetrialofinjectandextendregimenforranibizumabtreatmentofage-relatedmaculardegeneration.Retina33:1351-1358,20131668あたらしい眼科Vol.30,No.12,2013(20)

前駆病変と委縮型加齢黄斑変性の管理と予防的治療

2013年12月31日 火曜日

特集●加齢黄斑変性診療ガイドあたらしい眼科30(12):1651.1660,2013特集●加齢黄斑変性診療ガイドあたらしい眼科30(12):1651.1660,2013前駆病変と萎縮型加齢黄斑変性の管理と予防的治療ManagementandProphylacticTreatmentsforEarlyStageandAdvancedDryFormofAge-RelatedMacularDegeneration安川力*はじめに加齢黄斑変性(AMD)は,脈絡膜新生血管(CNV)の発生を主病態とする滲出型AMDと,視細胞,網膜色素上皮(RPE),脈絡膜毛細血管が徐々に萎縮(地図状萎縮)に至る萎縮型AMDに分類される.欧米では萎縮型AMDの割合が多いのに対し,わが国では滲出型AMDがほとんどで萎縮型AMDは少ない.滲出型AMDは発症すると数カ月で視力低下し放置すると約6.7割の症例で矯正視力が悪化し,しばしば0.1未満となってしまうが,最近は,抗血管内皮増殖因子(VEGF)療法と光線力学的療法(PDT)により長期的に視力維持できる症例も多くなった.一方,萎縮型AMDは国内には少ないが海外では罹病率は高く,徐々に視力低下してしまうが,有効な治療法がない.また,最近の海外の報告によると,滲出型AMDにおいても抗VEGF療法で治療している症例のほとんどで地図状萎縮が発生し,中心窩下に及ぶと不可逆的視力低下の原因となり,CNV由来の線維性瘢痕と並んで重要である.萎縮型AMDは,滲出型AMDにおけるCNV発生という比較的急性の病態を伴わず,ドルーゼンや色素上皮異常などの前駆病変が増悪していき,徐々に地図状萎縮の発生,拡大を認め,持続的な光線曝露の環境下にある眼の加齢変化の病的段階と考えられる.眼の最初の加齢変化は,RPE細胞内へのリポフスチン蓄積である1).光を感受する視細胞外節は光線曝露の環境下で酸化変性して傷むため,皮膚と同様,常に内節側から再生して,古くなった先端をRPE細胞が日常的に貪食しているが,酸化変性した物質はライソゾーム内での消化処理や物質輸送に抵抗しがちで,その溶け残りがリポフスチンとして蓄積してくる.リポフスチンは自発蛍光を有することから,近年,蛍光眼底造影機器で観察が可能となっている.特に,眼底自発蛍光の特徴的な異常所見はAMDの発症や増悪を予見する前駆所見であり,臨床上,重要である2,3).リポフスチンの蓄積は生後から始まり徐々に進行して細胞質内をおよそ満たす30代ぐらいになると,つぎの加齢変化として,RPE直下に脂質沈着を認めるようになり,Bruch膜は徐々に肥厚し,水の透過率が低下してくる4).滞留した脂質は酸化して,フリーラジカルの発生源となりRPEの細胞膜を障害したり接着障害を引き起こしたりする5,6).また,補体の活性化やマクロファージが受容体を介して過酸化脂質を認識することでVEGFなどの炎症性サイトカインを産生して慢性炎症が持続することとなる.リポフスチンを蓄えたRPEは光障害を受けやすく,このような状況で,RPEの色素異常やドルーゼンが臨床上,観察されるようになり,これらは統計上,AMDの危険因子であることから,「AMDの前駆病変」とよばれる7.9)(図1,表1).このような眼の加齢変化を抑えることは,AMD発症予防につながりうる.光線曝露による脂質沈着と酸化ストレスによる慢性炎症が病態背景にあるため,酸化ストレスを助長していると考える喫煙は明らかな危険因子で*TsutomuYasukawa:名古屋市立大学大学院医学研究科視覚科学〔別刷請求先〕安川力:〒467-8601名古屋市瑞穂区瑞穂町川澄1名古屋市立大学大学院医学研究科視覚科学0910-1810/13/\100/頁/JCOPY(3)1651 若年時30歳代40歳代メラニン頼粒Bruch膜網膜網膜色素上皮(RPE)脈絡膜毛細血管視細胞外節RPE脈絡膜毛細血管リポフスチン蓄積リポフスチン蓄積脂質沈着眼底自発蛍光(リポフスチンに由来)異常眼底自発蛍光(加齢黄斑変性前駆所見)小型(硬性)ドルーゼン50歳代以降:加齢黄斑変性前駆病変RPE色素異常(脱色素/色素沈着)大型(軟性)ドルーゼン網膜色素上皮.離図1黄斑部の加齢現象と前駆病変網膜の外層にある視細胞の外節が光線を感受して電気信号に変換している.光線曝露と脈絡膜からの酸素曝露による酸化ストレス環境下で,変性した視細胞外節を網膜色素上皮(RPE)が貪食してメンテナンスしているが,消化しきれないものが難溶性で自発蛍光を有するリポフスチンとして蓄積し始める.30歳代以降,RPE下に脂質沈着が始まり,時に,小型ドルーゼンが観察されるようになる.50歳代以降,加齢黄斑変性の前駆病変が出現すると加齢黄斑変性の発症に注意が必要である.(文献9より)1652あたらしい眼科Vol.30,No.12,2013(4) 表1加齢黄斑変性の国内診断基準とAREDSカテゴリーと診療方針国内診断基準前駆病変萎縮型AMD滲出型AMDドルーゼン(サイズ:μm)中.大(63≦)1個≦PED(サイズ:乳頭径)漿液性(<1乳頭径)漿液性(≧1乳頭径)出血性その他の病態RPE色素異常中心窩外GA中心窩下GACNVAREDSカテゴリー12(早期AMD)3(中期AMD)4(晩期AMD)ドルーゼン*(サイズ:μm)小(<63)<5個5個≦中(63≦,<125)1個≦<20個20個≦大(125≦)1個≦AREDSサプリメント推奨診療方針生活スタイルの改善**CNVの治療*AREDSでは,ドルーゼンのサイズと総面積でカテゴリー分類されている.個数は総面積の目安.**生活スタイルの改善:①禁煙,②緑黄色野菜摂取,③血圧コントロール,④肥満解消.AMD:age-relatedmaculardegeneration(加齢黄斑変性),CNV:choroidalneovascularization(脈絡膜新生血管),GA:geographicatrophy(地図状萎縮),PED:pigmentepithelialdetachment(色素上皮.離).あり禁煙が推奨され,また,抗酸化物質と光毒性の強い青色光を遮断する黄色色素(ルテインやゼアキサンチン)が予防効果を発揮しうる7).ただし,サプリメントは確かなエビデンスがなく販売されているものも多く,現在のところ,米国NIH(NationalInstituteofHealth)のNationalEyeInstitute(NEI)主導の大規模臨床試験Age-RelatedEyeDiseaseStudy(AREDS)の2001年の報告と,2013年のAREDS2の報告に基づき,AMDの前駆病変に対してと,片眼ですでにAMDを罹患している患者に対して,ビタミンC,E,亜鉛,ルテイン/ゼアキサンチンを含有するサプリメントを推奨すべきである10,11).その他,高血圧のコントロールや肥満の解消など生活スタイルの改善も間接的に重要であるとされている12,13).I加齢黄斑変性の前駆病変(図1,表1)1.ドルーゼン成人の検診で実施されることが多い眼底カメラによる眼底検査でしばしば認めるのが,山吹色の顆粒状の沈着物であるドルーゼンである.40歳ぐらいから直径63μm(網膜中心静脈の起始部の直径125μmの半分が目安)未満の境界明瞭な小型(硬性)ドルーゼンが眼底にみられるようになる.さらに,50歳以上の7人に1人に,やや境界不鮮明で直径63μm以上の中型.大型(軟性)ドルーゼンやRPEの色素異常を認めるようになる.大型ドルーゼンが中心窩から2乳頭径以内に1個でも存在すると,AMD発症率が有意に高く7),わが国の診断基準の「前駆病変」の一つである8).ドルーゼンが存在するだけの段階では自覚症状がない場合が多いが,網膜感度を調べるとドルーゼンの直上や近傍の網膜感度が低下している.便宜上,サイズでドルーゼンは分けられることが多いが,小型と大型では性状が異なる.小型(硬性)ドルーゼンは,組織学的にはPAS(過ヨウ素酸Schiff)染色陽性でヒアリン質の均一内容物の風船様の沈着物で,びまん性にRPEと基底膜の間に蓄積してくるbasallaminardepositと似ていて,リポフスチン蓄積と脂質沈着による酸化ストレス下で,RPEが基底部側で障害を受け,細胞質がちぎれて(segmentation,budding,shedding)形成され,RPEのストレスの状況を反映していると考えられる.小型ドルーゼンの直上のRPE細胞は細胞質を失いドルーゼンに押しやられて伸展して,おそらく前述の貪食機能などが障害され,(5)あたらしい眼科Vol.30,No.12,20131653 視細胞外節が処理されずに,限局性に,徐々に萎縮してくるものと考えられる14).したがって,単発の小型ドルーゼンは視機能に影響を与えないが,多発している部位では,時に,RPE/視細胞の萎縮が融合して地図状萎縮(萎縮型AMD)に進展する.最近,偽ドルーゼン(網膜下ドルーゼン様沈着物)とよばれる網膜下の顆粒状沈着物の存在が光干渉断層計(OCT)で確認されるようになった.ドルーゼンと内容物は近似していて,異所性に発生した小型ドルーゼンと考えられる.一方,大型(軟性)ドルーゼンは,組織学的にはRPEの基底膜とBruch膜の内膠原線維層の間にびまん性に蓄積してくるbasallineardepositと同様に膜性沈着物と脂質に富んだ内容物であったり,小さな網膜色素上皮.離(PED)であったりする.大型ドルーゼンが1つでも存在する状況は,前述の加齢変化としてのBruch膜への脂質沈着が高度であることを示唆していて,大型ドルーゼン自体よりも,むしろ,このような背景がAMD発症に密接に関与していると考えられる.軟性ドルーゼンが黄斑部に多発している場合,偽ドルーゼンや後述の異常眼底自発蛍光の網状パターンをしばしば併発し,網膜血管腫状増殖(RAP)と萎縮型AMDの発症率が高い.2.RPEの色素異常(色素沈着・脱色素)ドルーゼンと比べると,見逃されがちであるが,中心窩から2乳頭径以内のRPEの色素異常も統計的にAMDの危険因子であり,前駆病変と診断される重要な所見である7,8).色素沈着や脱色素斑,または色素むらとして観察される.眼底写真ではっきりしない場合でも,蛍光眼底造影上,色素沈着はインドシアニングリーン蛍光眼底造影で低蛍光,脱色素斑はフルオレセイン蛍光眼底造影でwindowdefectによる過蛍光として確認できる.ドルーゼンは加齢変化として出現する沈着物であるのに対し,RPEの色素異常はそういった加齢変化を背景に実際にRPE細胞が局所性に器質的障害を受けた状態であり,喫煙が密接に関与しているため,わが国では喫煙率の男女差を反映して男性に多い.外側血液網膜関門が破綻しやすい状況であり,AMDや中心性漿液性脈絡網膜症の病態に関与しうる.やはり自覚症状を認めない場合が多いが,色素沈着や脱色素の部位も網膜感1654あたらしい眼科Vol.30,No.12,2013度の低下がみられ,中心窩下に認めると視力低下の原因となりうる.萎縮が進行してRPE細胞の欠損が生じた状態が地図状萎縮であり,徐々に拡大傾向を認める場合が多い.3.1乳頭径未満の漿液性網膜色素上皮.離直径1,500μm(視神経乳頭の直径が目安)未満の小さな漿液性PEDを認め,CNVが明らかでない場合,国内の診断基準でAMDの前駆病変と診断される8).前述のように,大型ドルーゼンの一部は組織的には小さな漿液性PEDであることからわかるように,PEDは,蛍光眼底造影上,CNVを認めない場合も多い.Bruch膜への脂質沈着とRPEの基底部側の障害により,加齢眼のRPEは接着障害を起こしやすく,いったんPEDが生じるとRPEとBruch膜に囲まれた空間内の膠質浸透圧により,緊満な.離状態になり改善のきっかけが得られにくい.蛍光眼底造影で後期に過蛍光になってくるPEDでは抗VEGF薬や光線力学的療法が奏効する場合がある.おそらく,このような症例では,CNVやポリープ血管が潜在していて,Bruch膜を破壊して侵入した透過性亢進血管からの滲出圧がPED発生のおもな駆動力であるためと考えられる.一方で,Bruch膜が保存されているPEDの発生には閉鎖空間内の膠質浸透圧の要因が強くなり,治療に反応しないことが多いのではないかと推測する.PEDの存在は,滲出型AMDの発症や増悪の温床となり,また,CNVに起因する色素上皮裂孔は併発しにくいとしても,徐々に.離したRPEは萎縮してくるので厄介な病態である.黄斑下に存在すると,軽度の遠視化や変視症の原因となるがPEDのみでは矯正視力は良好であるため治療開始の決断がむずかしい.中心窩下に漿液性網膜.離を併発し遷延したり,RPEが萎縮したりしてくると視力低下してくる.数カ月.数年後に自然消失する場合もあれば,さらに拡大する場合もある.4.異常眼底自発蛍光近年の画像機器の進歩により,微弱な眼底自発蛍光を加算平均することによりノイズを減らして測定することが可能となり,2012年に眼底自発蛍光検査は保険収載(6) された.低侵襲で簡便な検査であり,加齢黄斑変性や網膜色素変性の診断,病状の把握に有用である.前述のごとく,生後より蓄積してくるRPE内のリポフスチンがおもな過蛍光物質であり,生理的な加齢変化として均一な背景蛍光として観察される(図1)1,15).しかし,ドルーゼンなどを認める時期以降に,minimal,focalincrease,patchy,focalplaque-like,linear,lace-like,reticular,speckledなど,特徴的なパターンを示す異常な眼底自発蛍光(過蛍光)を認める場合があり,このような眼では後に滲出型AMDや地図状萎縮を発症したり,既存の病変が拡大したりすることが明らかになっている2,3).つまり,異常眼底自発蛍光はAMDの前駆所見として重要である.たとえば,patchy,focalplaque-likeを認める眼は高率に滲出型AMDを発症し,linear,lace-likeは地図状萎縮に進展する可能性があり,reticularパターンはRAPと萎縮型AMDのリスクである3,16).異常眼底自発蛍光を示す部位にはドルーゼンが存在する場合としない場合がある.Patchyパターンは大型ドルーゼンと同じ局在を示す場合が多く,またreticularパターンもRAP特有の集簇性の大型ドルーゼンを伴う場合が多いが,一方,linear,lace-likeパターンは眼底所見に乏しい場合があり,地図状萎縮の前駆所見として重要である.II地図状萎縮(図2)RPEの萎縮が進行するともはや細胞間の接着が保てabcd図2地図状萎縮と眼底自発蛍光77歳,男性.両眼性に黄斑部に集簇する軟性ドルーゼンを認め,萎縮型AMDと網膜血管腫状増殖の発症に注意すべき症例である.a,b:右眼の眼底写真と眼底自発蛍光.眼底写真上は軟性ドルーゼンを多数認め,一部,融合している.地図状萎縮ははっきりしないが,眼底自発蛍光では斑状の低蛍光領域として地図状萎縮を確認できる.低蛍光領域の周囲には軟性ドルーゼンと一致して,patchyパターンの異常眼底自発蛍光(過蛍光)を認める.c,d:3年後の同一眼.ドルーゼンは消退傾向であるが,異常眼底自発蛍光を認めた部位に向かって地図状萎縮の拡大を認める.(7)あたらしい眼科Vol.30,No.12,20131655 なくなり,円形.地図状の欠損が生じる.RPEは生理的にVEGFを分泌し脈絡膜毛細血管を保持しているので,RPE欠損部位では脈絡膜毛細血管は萎縮していく.視細胞はしばらく生存している可能性があるが,脈絡膜毛細血管の萎縮による酸素,栄養補給の枯渇により,またRPEに貪食されるべき外節の停滞により,徐々に萎縮していく.最終的には,Bruch膜の加齢性沈着物も排除され,網膜のグリア細胞が瘢痕形成に動員されて網膜と脈絡膜組織は癒着し,時に,網膜内に.胞を形成することとなるが,大抵,視細胞萎縮が先行していて暗点内の病変につき治療意義は乏しくなる.前述の自発蛍光検査は過蛍光異常所見をとらえるだけでなく,低蛍光所見を観察するのに有用である.萎縮型AMDの地図状萎縮部位や網膜色素変性で視野欠損部位などに一致して,RPEの欠損,リポフスチンの消失による低蛍光を認める(図2)17).視野欠損など視機能の低下部位と一致し,これらは徐々に拡大傾向を示し,病気の進行の把握,視野欠損などの視機能の状態に対する客観的評価のために有用である.ただし,RPEの欠損だけでなく,キサントフィル,新鮮な網膜.離,色素沈着,硬性白斑,フィブリンや,新鮮出血などでも蛍光ブロックによる低蛍光所見を呈するので注意を要する.IIIAREDS推奨サプリメント(表2)1.AREDSによるAMD病期カテゴリーAMDに対する抗酸化サプリメントの有効性を調べるために,AREDSでは,被験者のAMDの発症リスクの高さを,前駆病変の有無などをもとにカテゴリー1.4に分類している(表1)10).カテゴリー2を早期AMD,カテゴリー3を中期AMD,カテゴリー4を晩期AMDとよぶ場合があり,国内では独自にカテゴリー2と3のドルーゼンの所見を認めれば「AMD前駆病変」,地図状萎縮を認める場合,中心窩下を含むかを問わず「萎縮型AMD」,脈絡膜新生血管を認める場合と1乳頭径以上の漿液性色素上皮.離,大きさを問わず出血性色素上皮.離を認める場合,「滲出型AMD」と分類している8).AREDSでの結果では,5年間のAMDの発症率はカテゴリー1.4でそれぞれ0.4%,1.3%,18%,43%であり,カテゴリー3,4のAMD発症率が高い.すなわち,大型ドルーゼンを認める場合と地図状萎縮を認める場合,特にAMD発症眼の僚眼においてAMD発症率は高く,抗酸化サプリメント摂取が推奨される.表2AREDS,AREDS2推奨サプリメントと国内製品の成分表スタディ名AREDSAREDS2製品名プリザービジョンプリザービジョン+ルテインオキュバイト+ルテインルタックス15販売会社わかもとわかもとわかもと参天ビタミンCビタミンEb-カロテン亜鉛銅500mg400IU15mg80mg2mg500mg400IU─25mg2mg408mg241.6mg15.75mg30mg1.5mg408mg241.6mg─30mg1.5mg300mg60mg1.2mg9mg0.6mg288mg150mg─9mg1.2mgルテインゼアキサンチンDHAEPA10mg2mg(350mg)*(650mg)*9mg6mg15mgその他ビタミンB2ナイアシンセレンマンガンDHA:docosahexaenoicacid(ドコサヘキサエン酸),EPA:eicosapentaenoicacid(エイコサペンタエン酸).*DHA,EPAの追加効果は認められなかった.1656あたらしい眼科Vol.30,No.12,2013(8) 2.AREDSとAREDS2AMD予防にサプリメントを推奨する根拠として,2001年に報告されたAREDSと2013年に追試されたAREDS2の報告が重要である10,11).AREDSの多施設無作為臨床試験により,抗酸化物質としてビタミンC,ビタミンE,およびb-カロテン,抗酸化ミネラルとして亜鉛(貧血予防に銅も摂取)の効果が調査された10).AMD発症率の高いカテゴリー3と4,つまり大型のドルーゼンを認める眼や片眼がAMDを発症している僚眼においては,5年間のAMD発症率はプラセボ群で28%に対して,抗酸化物質群23%,亜鉛群22%,抗酸化物質+亜鉛群20%で,プラセボ群に対するオッズ比は,抗酸化物質投与群0.71(p=0.03),亜鉛群0.70(p=0.005),抗酸化物質+亜鉛群0.66(p=0.001)で,亜鉛投与群と抗酸化物質+亜鉛群で有意にAMDの発症予防効果を認めた.一方で,AREDSの調査中に,調査成分であるb-カロテン摂取が喫煙者の肺癌のリスクを高めると他の臨床研究で報告され18,19),また,同類のカロテノイドである黄斑色素(ルテイン・ゼアキサンチン)と競合して取り込みを阻害している可能性が示唆された20).その他,高用量の亜鉛は胃炎,貧血,地図状萎縮の助長などの可能性が懸念された.そこで,AREDS2として,AREDSで推奨されているサプリメント摂取を基本として,黄斑色素であるルテイン・ゼアキサンチンと,近年,有効性が報告されているw-3多価不飽和脂肪酸(ドコサヘキサエン酸,エイコサペンタエン酸)の追加効果と,b-カロテン削除と亜鉛減量の可能性について検討された11).結果,5年のAMD発症率へのルテイン・ゼアキサンチンやw-3脂肪酸追加効果は認めなかった.ただ,サブ解析で,b-カロテンの代わりにルテイン・ゼアキサンチンを加えることの意義は示唆された.b-カロテン削除と亜鉛の減量はどちらもAMD発症率の結果に影響しなかった.このように,w-3脂肪酸に関しては,AREDSが推奨する従来のサプリメントに追加する意義が示されない結果となった.亜鉛に関してはもともと国内で販売されているサプリメントは含有量が低く設定されているが,今回の結果から判断すると問題ないと考えられる.よって,現時点では,ビタミンC,E,亜鉛に,(9)b-カロテンの代わりにルテイン・ゼアキサンチンを含むサプリメントが推奨される.国内で販売されている商品のなかでは,オキュバイトプリザービジョン+ルテイン(わかもと製薬)とサンテルタックス15+ビタミン&ミネラル(参天製薬)が適切なものと考えられる(表2).IVその他の生活指導(図3,表3)海外の治療指針に基づき,生活様式の改善として,禁煙,緑黄色野菜の摂取,血圧コントロール,体脂肪率の改善が,前駆病変.AMD発症患者(カテゴリー2.4)に推奨される12,13).喫煙はAMD発症リスクを3.4倍高めると報告されているので,できる限り禁煙指導に努めるべきである21,22).カテゴリー2,すなわち中型ドルーゼンや色素異常のみの患者に対しては,厳密にはサプリメントを推奨する必要はないが,5年間で約30%の患者がカテゴリー3,4に移行することがわかっている10).したがって,より早期からの予防の試みとして,食生活改善,すなわち肉食よりw-3脂肪酸を含む魚の摂取,抗酸化ビタミンを含む緑黄色野菜摂取などを推奨すると良いと考える.高血圧と肥満はAMD発症率を少し高める可能性がある22,23).AMD患者の約半数以上は高血圧の治療を行っており,抗VEGF薬硝子体内注射で血圧上昇するという報告もある.また,PCVの患者において高血圧は網膜下出血のリスクとなりうる.このように,高血圧の病態への関与は不明な点が多いがコントロールすべきであろう.高脂血症はBruch膜に蓄積した脂質の排除を間接的に妨げる要因となりうる.脂質関連遺伝子の遺伝子多型がAMDに関与すると,最近,報告されている24,25).肥満とAMDの関係は海外を中心に報告されている.スタチンがAMDに有効である可能性が以前報告されたこともあり,体脂肪率の改善に努めるのが無難であろう.その他,アルコール摂取に関しては,ビールの大量摂取は萎縮型AMDのリスクであるという報告がある.一方,赤ワインはポリフェノールの影響か予防効果が報告されている.飲酒は過剰摂取でなければそれほど問題でないと説明すると良い26).滲出型AMDは高齢者の疾患であるので,白内障手術を検討すべき状況をしばしば経験するが,滲出型AMDあたらしい眼科Vol.30,No.12,20131657 (50歳以上,)中心窩から2乳頭径の範囲に:前駆病変a)軟性(中型・大型)ドルーゼン:直径63μm以上,1個以上b)網膜色素上皮(RPE)異常:色素沈着,脱色素,色素むらc)1乳頭径未満の漿液性網膜色素上皮.離(PED)前駆病変関連所見d)異常眼底自発蛍光(minimal,focal,patchy,plaque-like,linear,lace-like,reticular,speckled)萎縮型AMDe)地図状萎縮(geographicatrophy:GA)診療方針/生活指導.4~6カ月ごとに経過観察(視力,OCT,眼底カメラ).AREDSサプリメント推奨〔特に大型ドルーゼン(125μm以上),PED,異常眼底自発蛍光,GAを認める場合〕.禁煙~無理ならできるだけ減煙(特に重要).緑黄色野菜摂取/血圧コントロール/肥満解消.光線曝露避ける(サングラス着用/暗所でのテレビ鑑賞,スマートフォン使用を控える)注意所見/方針白内障手術方針.OCTのRPEの凹凸の変化.生活(運転免許)に支障認める場合のみ検討.眼底カメラでドルーゼンの増加.ハイリスク眼(両眼の多数大型ドルーゼン,PED,.眼底自発蛍光の変化reticular)は片眼のみまず手術.診察間隔を1~3カ月ごとに短縮.着色眼内レンズ挿入.適宜,蛍光眼底造影検査.術後消炎徹底(適宜,抗VEGF薬使用).術後6~12カ月はAMD発症注意図3前駆病変と萎縮型AMDの診療方針表3AMDの危険因子とおよそのオッズ比因子オッズ比現在の喫煙3.4過去の喫煙2.3高血圧.3高コレステロール血症/高BMI.4ビール摂取.3赤ワイン摂取0.7.アウトドア活動.2偽水晶体眼2.4AREDSサプリメント0.7BMI:bodymassindex.をすでに発症している眼において,白内障手術は病態を悪化させたり,再燃させたりすることがあるので注意が必要である.滲出型AMD眼で白内障手術を計画する具体的なタイミングは,まず,運転免許が更新できないなど生活に支障がでる状況で,白内障手術が視力改善の可1658あたらしい眼科Vol.30,No.12,2013能性がある場合である.それ以外は,白内障のためOCT測定が困難になってきた場合や,体調不良が危惧される80歳以上の患者,両眼AMDの末期で視力改善は困難であるが視野が明るくなることが期待できる場合などである.それ以外は手術を控えるべきであろう.眼底が落ち着いていても,白内障手術と抗VEGF薬硝子体内注射を併用するのが無難であろう.また,術後6.12カ月ほどはOCTによる注意深い観察が必要である.エビデンスがないが透明眼内レンズよりも着色(黄色)眼内レンズを挿入しておくと術後のbluelighthazardを軽減できて無難であろう.では,前駆病変,萎縮型AMDの眼に対してはどうするべきか?過去の疫学調査で,眼内レンズ挿入眼は,有水晶体眼に比べ,AMDの発症リスクが約3倍上昇することがわかっている27,28).したがって,もともとカテゴリー3や4のハイリスク眼,すなわち,大型ドルーゼンや色素上皮.離を認める眼や,AMD発症眼の僚眼に対しては,運転免許更新に関わるか,生活に支障をきたしていない限りは,できる(10) だけ白内障手術は急がないほうが無難である.また,RAPのリスクである多数の大型ドルーゼンやreticularパターンの眼底自発蛍光を両眼に認めるような眼では,不同視の問題がなければ,両眼同時期に白内障手術をしてしまわないで,術後の反応を見きわめるため半年以上の間隔を開けるのも無難である.その他,術前眼底透見不可であった白内障の術後は必ず眼底病変の有無を確認し,前駆病変を認める場合はしばらく注意深い経過観察を行うべきであろう.また,白内障手術時の後.破損は,それに伴う前部硝子体切除が抗VEGF薬の眼内滞留期間を短縮させて,抗VEGF療法が効きにくくなる場合があるので,前駆病変,CNV,糖尿病網膜症,黄斑浮腫の眼に対しては後.破損しないようくれぐれも注意が必要である.おわりにAMDの前駆病変は50歳以上の7人に1人の割合で認めるもので,視機能に影響していないため,日常診療では軽視しがちである.しかし,AMD発症リスクの高い状態で,眼底からの警告シグナルであることを忘れてはならない.AMDは,PDTや抗VEGF薬をもってしても,長期的には視力維持が困難であり,地図状萎縮に対しては治療法がない現状であるので,予防に努めるべきであろう.特に,わが国のAMDは喫煙が関与している場合が多く,禁煙指導は重要である.AMDの患者に禁煙指導を行わないのは,糖尿病網膜症の患者に血糖コントロールを促さないのと同じことであろう.サプリメントで推奨できるのはAREDS,AREDS2の報告に基づく製品のみであるが,その他の抗酸化作用を有するものは数多く存在する.それらの単独効果は否定できないが,AREDS2でw-3多価不飽和脂肪酸の追加効果がなかったという結果が出たように,推奨されるサプリメントを服用している人に対しては追加摂取する必要はない可能性が高い.逆に,経済事情で推奨サプリメントの購入も困難な場合は,緑黄色野菜の摂取で十分補えることも説明すべきである.文献1)OkuboA,RosaRHJr,BunceCVetal:Therelationships(11)ofagechangesinretinalpigmentepitheliumandBruch’smembrane.InvestOphthalmolVisSci40:443-449,19992)BindewaldA,BirdAC,DandekarSSetal:Classificationoffundusautofluorescencepatternsinearlyage-relatedmaculardisease.InvestOphthalmolVisSci46:33093314,20053)EinbockW,MoessnerA,SchnurrbuschUEetal;FAMStudyGroup:Changesinfundusautofluorescenceinpatientsage-relatedmaculopathy.Correlationtovisualfunction:aprospectivestudy.GraefesArchClinExpOphthalmol243:300-305,20054)MooreDJ,HussainAA,MarshallJ:Age-relatedvariationinthehydraulicconductivityofBruch’smembrane.InvestOphthalmolVisSci36:1290-1297,19955)WeismannD,HartvigsenK,LauerNetal:ComplementfactorHbindsmalondialdehydeepitopesandprotectsfromoxidativestress.Nature478:76-81,20116)Espinosa-HeidmannDG,SunerIJ,CatanutoPetal:Cigarettesmoke-relatedoxidantsandthedevelopmentofsub-RPEdepositsinanexperimentalanimalmodelofdryAMD.InvestOphthalmolVisSci47:729-737,20067)EvansJR:Riskfactorsforage-relatedmaculardegeneration.ProgRetinEyeRes20:227-253,20018)髙橋寛二,石橋達朗,小椋祐一郎ほか:加齢黄斑変性の分類と診断基準.日眼会誌112:1076-1084,20089)安川力:加齢黄斑変性の前駆病変とその症状.老年医学49:409-412,201110)Age-RelatedEyeDiseaseStudyResearchGroup:Arandomized,placebo-controlled,clinicaltrialofhigh-dosesupplementationwithvitaminsCandE,betacarotene,andzincforage-relatedmaculardegenerationandvisionloss.ArchOphthalmol119:1417-1436,200111)TheAge-RelatedEyeDiseaseStudy2ResearchGroup:Lutein+zeaxanthinandomega-3fattyacidsforage-relatedmaculardegeneration.TheAge-RelatedEyeDiseaseStudy2(AREDS2)randomizedclinicaltrial.JAMA309:2005-2015,201312)髙橋寛二,小椋祐一郎,石橋達朗ほか:加齢黄斑変性の治療指針.日眼会誌116:1150-1155,201213)JagerRD,MielerWF,MillerJW:Age-relatedmaculardegeneration.NEnglJMed358:2606-2617,200814)JohnsonPT,LewisGP,TalagaKCetal:Drusen-associateddegenerationintheretina.InvestOphthalmolVisSci44:4481-4488,200315)YasukawaT:Inflammationinage-relatedmaculardegeneration:pathologicalorphysiological?ExpertRevOphthalmol4:107-112,200916)Ueda-ArakawaN,OotoS,NakataIetal:Prevalenceandgenomicassociationofreticularpseudodruseninage-relatedmaculardegeneration.AmJOphthalmol155:260-269,201317)OishiA,OginoK,MakiyamaYetal:Wide-fieldfundusautofluorescenceimagingofretinitispigmentosa.Ophthalあたらしい眼科Vol.30,No.12,20131659 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