●連載抗VEGF治療セミナー監修=安川力髙橋寛二12.加齢黄斑変性に対する細川海音森實祐基岡山大学眼科TreatandExtend法加齢黄斑変性に対する抗VEGF薬の投与方法について,これまでにさまざまな提唱がなされているが,現在のところ一定の見解には至っていない.本稿では,抗VEGF薬の投与方法の一つであるTreatandExtend法について概説する.抗VEGF薬の投与方法加齢黄斑変性(age-relatedmaculardegeneration:AMD)に対する抗VEGF(vascularendothelialgrowthfactor)療法の維持期における投与方法は,事前に計画した間隔で投与を行うプロアクティブ投与(計画的投与)と病態の悪化がみられてから投与を行うリアクティブ投与(事後対応的投与)に分類される.プロアクティブ投与はさらに,個々の病態によらず一定の投与間隔で抗VEGF薬を投与するFixedDose法と,個々の患者に合わせて投与間隔を変更するTreatandExtend法に分類される.リアクティブ投与はPRN(prorenata:必要に応じて)法と呼ばれることが多い.FixedDose法については過去の臨床試験の結果1~3)から,1カ月ごとまたは2カ月ごとの投与によって,導入期に改善した視力を2年間維持できることが示されている.しかし,実際の臨床において,すべての患者に毎月投与を行うことは患者,医師ともに負担が大きく現実的ではない.また,現在わが国ではPRN法が広く行われているが,毎月診察が必須であり,患者,医師ともに負担の大幅な軽減には至らない.実際の臨床では治療のタイミングが遅れることも多く,臨床試験で示されたような有効性が得られないことも指摘されている.TreatandExtend法の概要TreatandExtend法は,プロアクティブかつ個別化された維持期の投与方法として提唱され4),現在,欧米を中心に普及してきている投与方法である.TreatandExtend法では,滲出所見の有無にかかわらず診察日に計画的に抗VEGF薬を投与し,再発を認めない限り1ないし2週間ずつ投与および診察の間隔を延長する.そして,再発を認めた場合は1ないし2週間ずつ投与およ(103)び診察の間隔を短縮する.その結果,滲出性変化のない状態を維持するためにもっとも適切な投与および診察の間隔を決定することが可能となる(図1).現在のところ,延長および短縮の判断基準とその期間,最大投与間隔などについては施設によって違いがみられる.抗VEGF薬投与の導入期を設けていない施設もある.TreatandExtend法の治療成績Oubrahamらは,AMD患者に対してラニビズマブを投与し,TreatandExtend法(n=38眼)とPRN法(n=52眼)による治療成績をレトロスペクティブに比較検討した.その結果,1年の経過観察時点で,TreatandExtend法はPRN法に比べて良好な視力改善効果を示した(順に+10.8±8.8ETDRS文字,+2.3±17.4ETDRS文字,p=0.036).投与回数はTreatandExtend法がPRN法よりも多かったが(7.8±1.3回,5.2±1.9回,p<0.001),来院回数では両者に差はみられなかった(8.5±1.1回,8.8±1.5回,p=0.2085)5).また,Abediらは,AMD患者に対してラニビズマブを用いてTreatandExtend法を行い(n=120眼),2年間経過を観察した.その結果,これまでに報告されたFixedDose法の臨床試験と比べて投与回数が少ない(1年目8.6回,2年目5.6回)にもかかわらず,同程度の視力改善効果が得られた1,2,6).TreatandExtend法の長所,短所TreatandExtend法は,黄斑に滲出性変化が生じる前に計画的に抗VEGF薬の再投与を行うことによって,黄斑を滲出性変化のない状態に維持することを目標とする.そのため,滲出性変化を認めてから再投与を行うPRN法と比べて,再発を繰り返すことによる黄斑の不可逆的障害を軽減できる可能性がある.また,すべてのあたらしい眼科Vol.32,No.1,20151030910-1810/15/\100/頁/JCOPYABCDEFGV.A.=(0.9)V.A.=(0.8)ABCDEFGV.A.=(0.9)V.A.=(0.8)図1AMDに対するTreatandExtend法の治療経過78歳,女性.右眼典型AMD,occultwithnoclassicCNV.治療前視力(0.8).黄斑部に漿液性網膜.離を認めた(A,B,C).そこで,アフリベルセプトを4週間隔で計3回投与したところ滲出性変化が消退した.そのため,6週間後に4回目の投与を行った(D:4回目の投与日のOCT).4回目の投与日に滲出性変化がみられなかったため,投与間隔を8週(E),さらに経過が良好であったため10週まで延長した.すると滲出性変化が再発した(F)ので,投与間隔を8週に短縮し滲出性変化が消退した(G).現在は8週間隔で投与を継続している.投与は計画的に行われるため,PRN法のように来院時に急遽再投与を行うことはなく,患者側の不安や医師側の負担を軽減する効果もある.さらに,一定の投与間隔を継続するFixedDose法と比べて,状態の安定した患者に対しては投与および診察間隔を延長するため,結果として投与および診察回数が減り,患者や医師の負担軽減や医療経済学的な負担軽減につながる.しかし,TreatandExtend法は,FixedDose法と同様に滲出性変化の有無にかかわらず診察時に計画的に抗VEGF薬の投与を行う方法であるため,たとえば導入期以降に,抗VEGF薬を投与しなくても滲出性変化をきたさない症例に対しては,過剰投与を行ってしまう可能性がある.今後,どのような患者に対してTreatandExtend法を行うべきか検討が必要である.また,TreatandExtend法については現在のところ大規模ランダム化比較試験に基づくエビデンスがなく,今後の報告が待たれる.文献1)RosenfeldPJ,BrownDM,HeierJSetal:Ranibizumabforneovascularage-relatedmaculardegeneration.NEnglJMed355:1419-1431,20062)BrownDM,MichelsM,KaiserPKetal:Ranibizumabversusverteporfinphotodynamictherapyforneovascularage-relatedmaculardegeneration:two-yearresultsoftheANCHORStudy.OPHTHA116:57-65,20093)Schmidt-ErfurthU,KaiserPK,KorobelnikJ-Fetal:Intravitrealafliberceptinjectionforneovascularage-relatedmaculardegeneration:ninety-six-weekresultsoftheVIEWstudies.Ophthalmology121:193-201,20144)SpaideR:Ranibizumabaccordingtoneed:atreatmentforage-relatedmaculardegeneration.AJOPHT143:679680,20075)OubrahamH,CohenSY,SamimiSetal:Injectandextenddosingversusdosingasneeded:acomparativeretrospectivestudyofranibizumabinexudativeage-relatedmaculardegeneration.Retina31:26-30,20116)AbediF,WickremasingheS,IslamAFMetal:Anti-VEGFtreatmentinneovascularage-relatedmaculardegeneration:atreat-and-extendprotocolover2years.Retina34:1531-1538,2014104あたらしい眼科Vol.32,No.1,2015(104)