0910-1810/11/\100/頁/JCOPY緑内障に関連するスキャン・プロトコールとしては,視神経乳頭周囲では,直径3.4mmの円をスキャンするcirclescanと6×6mmの範囲を水平にスキャンする3Dscan,黄斑部では7×7mmの3D(V)scanが採用されている.3DOCT-2000にはフルオレセイン蛍光眼底撮影や自発蛍光撮影も可能な無散瞳眼底カメラも組み込まれているため,OCTと同時に眼底写真の撮影も行うことができる.はじめに現在,緑内障の画像解析の対象組織として従来の視神経乳頭と乳頭周囲網膜神経線維層(retinalnervefiberlayer:RNFL)に加え,黄斑部の解析が一般化しつつある.緑内障を適切に診断,評価するためには,それら3つの組織における器質的変化の特徴とそれがどのように観察されるかをよく理解することが求められる.それらの組織の評価にはこれまでに多様な画像解析が用いられてきたが,現在では光干渉断層計(opticalcoherencetomography:OCT)が必須となっている.現在すでに多くのメーカーから多様な機種が発売されているが,観察できる組織や観察方法などがそれらの機種間でかなり異なっている.本稿では,OCTによるそれら3つの組織の緑内障解析についてまとめるとともに,トプコン社(東京)のOCTではそれらがどのように解析されるのかをまとめてみたい.Iトプコン社のOCTのハードウェアトプコン社のOCTの現行機種は「3DOCT-2000シリーズ(図1,以下,3DOCT-2000)」であり,光源の中心波長は他の多くのOCTと同じく840nmであり,眼底組織での深さ方向分解能は5.6μm,水平方向分解能は20μm以下とされている.スキャン速度は毎秒50,000A-scanと,現在流通しているOCTのうちで最も高速なスキャンが可能な機種の1つである.(43)795*AtsuoTomidokoro:東中野とみどころ眼科〔別刷請求先〕富所敦男:〒164-0003東京都中野区東中野5-1-1ユニゾンモール3階東中野とみどころ眼科特集●光干渉断層計(OCT)の緑内障への応用あたらしい眼科28(6):795.800,2011トプコンOCTによる緑内障の評価AnalysisofGlaucomawithTopconOCT富所敦男*図1トプコン社製3DOCT.2000の外観796あたらしい眼科Vol.28,No.6,2011(44)とが少なくない(図3).3DOCT-2000の乳頭解析プログラムでは,多くの眼においてほぼ正確に乳頭縁を自動検出することができる.しかし(強度)近視眼,特に,大きな傍乳頭網脈絡膜萎縮(peripapillaryatrophy:PPA)を伴った眼では,OCTによる乳頭縁の自動検出が不正確になることをよく経験する(図4).これはPPAの部分では色素上皮とBruch膜が萎縮または欠損したり,網膜面と段差があったりすることが原因となっていることが多い.白内障などのためにOCT画像のクオリティが低い場合,色素上II視神経乳頭の解析よく知られたように緑内障では神経線維の減少に伴い視神経乳頭の陥凹が拡大し,リムの狭細化が起こる.リムの色調にも若干の蒼白化がみられることが多い.これらの比較的マクロの変化のほかに,篩板の菲薄化と後退,微小循環の減少なども緑内障眼の特徴的変化である.OCTなどの画像解析装置により視神経乳頭を観察する場合,陥凹の拡大,またはリムの狭細化が主たる対象となる.陥凹およびリムの解析では,①乳頭縁(乳頭と網膜の境界)を決定する,②乳頭の断面像上で乳頭の表面(RNFLと硝子体腔の境界面)を検出する,③断面像上で一定の高さを決めてそれ以上に神経線維がある部分をリム,ない部分を陥凹と定義する,という3つのステップをとるのが一般的である.これらのステップのうち,②と③は画像解析装置が得意とする部分であり,OCTだけでなく共焦点走査レーザー検眼鏡(HeidelbergRetinaTomograph:HRT)でも精密に乳頭や網膜の表面を検出することができ,基準高があらかじめ決まっていれば陥凹とリムを正確に評価することが可能である.これに対し,①の乳頭縁を決定することは画像解析装置が比較的苦手とする部分である.HRTでは,乳頭縁を機械的に決めることができないので,検者が乳頭画像上で乳頭外縁を指定する必要があり,検者により測定結果が異なることにつながっている.それに対し,OCTでは乳頭の断面像を得ることができるので,断面像上で乳頭と網膜の境界を自動検出し,それをつなげて乳頭外縁を決めることができる.現在,各社のOCTに乳頭解析プログラムが搭載されているが,乳頭外縁の自動検出の精度が,乳頭解析の正確性を決める最も大きな要素となっている.3DOCT-2000では,網膜断面像上の乳頭近傍で色素上皮(またはBruch膜)の断端を自動検出し,それをもとに乳頭縁が決められている(図2).OCTにより自動的に決定された乳頭外縁は,眼底写真上の乳頭外縁よりわずかに内側のように見えることが多いが,通常,乳頭縁の教科書的定義とされるscleralring(Elschnig’sring)はOCTにより自動検出されたものにより近いこ図23DOCT.2000のradialscanにより撮影された緑内障眼(右眼)の視神経乳頭の断面像矢頭部分がBruch膜の断端部.グレーの範囲内が自動判定された乳頭領域.図3緑内障眼(右眼)の視神経乳頭の解析結果乳頭上の黄色の曲線が乳頭外縁,ピンク色の曲線が陥凹縁を表す.(45)あたらしい眼科Vol.28,No.6,2011797RNFLの菲薄化も検出できることが多い.RNFLの菲薄化により光の透過率などが変わるため,眼底の直接観察や眼底写真などにより,神経線維の走行に沿った扇形のRNFL欠損が観察される.OCTによるRNFL厚の評価は,網膜の断面像上で網膜表面の内境界膜と硝子体の境界線とRNFLと神経節細胞層(ganglioncelllayer:GCL)の境界線の2つのラインをできるだけ正確に検出することが基本となる(図5).OCTとして最初に臨床に登場したタイムドメインOCTに比べ現在のスペクトラルドメインOCTでは,解像度の向上により両ラインの自動検出(セグメンテーション)の精度が改善した結果,RNFL厚計測の正確性が明らかに向上している.RNFL厚の解析のためのスキャン方法として,乳頭周囲を一定の直径の円に沿ってスキャンする方法(circlescan)と乳頭を含む一定面積を三次元的にスキャンする皮/Bruch膜のセグメンテーションができず乳頭縁の自動検出が不正確になることもある.つぎに陥凹とリムの境界を決める「基準面」の高さの設定が問題となる.1つの乳頭において,基準面が高いほど陥凹が大きくリムが小さく計測される.HRTでは乳頭の耳側(右眼では9時方向)の網膜表面から50μmの深さを基準面としているが,緑内障の進行に伴いRNFLが菲薄化し網膜面がわずかではあるが下がってくるため,長期の経過観察中に基準面が変化するという欠点をもっている.これに対しOCTでは,断層像上で検出される色素上皮層などを基準とし,そこから一定の高さを基準面として決めているので,緑内障が進行しても基準面の高さが変化することがない.3DOCT-2000では,緑内障眼を対象に視野障害度とリム面積との相関を検討した結果,両者が最もよく相関する「色素上皮面から120μmの高さ」を基準面として設定されている.3DOCT-2000により決定されたリム面積は,HRTにより決定された値よりも視野障害とよく相関することも明らかになっている.III乳頭周囲RNFLの解析緑内障の本質的な器質的変化は神経節細胞の細胞死とその軸索である神経線維の脱落である.網膜の全面から神経線維が集まる乳頭周囲では,RNFLが一定のパターンをもちながら比較的厚く分布しているため,わずかな図4PPAを伴った近視乳頭でみられた乳頭外縁の誤判定図5乳頭周囲のcirclescanの断面図上でのRNFLの自動セグメンテーション798あたらしい眼科Vol.28,No.6,2011(46)視微動の大きい被験者では正確な測定がむずかしいことがある.3DOCT-2000では,circlescanと3Dscanの両者とも搭載されているので,用途は対象患者に応じて使い分けることもできる.3DOCT-2000では,circlescan時に赤外線画像上の視神経乳頭の位置をもとに眼球運動をモニタリングすることにより,自動的に毎回の測定位置を一致させる機能(オート・アラインメント)が搭載され,測定の再現性の向上につながっている.3Dscan時には,スキャン中の測定位置の移動をモニタリングし,一定以上の移動があった場合にはその位置を自動的に再スキャンする機能方法(3Dscan)がある.3Dscanでは,測定後に乳頭中心から一定の距離の円に沿った部分を切り出すことで乳頭周囲RNFL厚を評価する.Circlescanの利点は,測定時間が圧倒的に短いため測定中の固視微動の影響をほとんど受けないことや被験者の負担が少ないことであり,欠点としては,測定後に測定位置を修正することができないため再現性の点で不利な点があげられる.3Dscanの利点と欠点はその逆となり,測定後でもデータ切り出しの位置の調整が可能なので,毎回の測定において同一部位を対象とすることが比較的容易である.しかし一方で,circlescanに比べて測定時間が長いため固PhotoThicknessMapShadowgramTSNITグラフAverageThickness4Sector12Sector36Sector図63Dscanをもとにした緑内障眼(右眼)の乳頭周囲RNFL厚解析の1例TSNITグラフ上の矢頭の部分で正常範囲より薄いことがわかる.(47)あたらしい眼科Vol.28,No.6,2011799ならGCLと内網状層の間を自動検出し,GCL単独の厚みを評価することが望ましくはあった.しかし,OCT画像上,GCLと内網状層の間の境界は不明瞭なことが多いので,その代わりとしてより境界が明瞭な内網状層と内顆粒層の間の境界をセグメンテーションして,GCC厚として表記することが選ばれたと思われる.RTVue-100によるGCC厚測定に関して,緑内障の診断能や視野障害との相関などは乳頭周囲RNFL厚測定とほぼ同程度の能力があることが,これまでに複数報告されている.3DOCT-2000では,RTVue-100に比べ解像度とセグメンテーションプログラムが改善されたため,GCCだけでなく黄斑部の神経線維層,GCL,IPLなどの各層の厚みをそれぞれ単独で計測することが可能となっている(図7).これらの各層の厚み計測により,GCC厚や乳頭周囲RNFL厚に比べ,緑内障の診断能や視野障害との相関に関してどの程度の向上がみられるのか,現在,臨床研究が進行中である.3DOCT-2000の黄斑部解析の結果として,プリントアウト上には,黄斑部のRNFL厚,「GCL+IPL」厚,「RNFL+GCL+IPL(GCCに相当)」厚の3種類の厚みに関して「厚み」,「正常域からの逸脱度」,「上下の非対称性(asymmetry)」がそれぞれカラー表示されている(図8).ある程度進行した緑内障ではほぼ全例で,3種類の厚みすべてに関して異常な菲薄化が観察される.黄斑部解析については,早期緑内障またはpreperimetricglaucoma(視野異常が出る以前の段階の極早期緑内障)などにおいても器質的異常が検出できるか否かが興味深い点だが,筆者の印象としては,そのような早期緑内障のかなりの例で黄斑部に異常が認められるようである.(補完スキャン)が搭載され,測定時間が比較的長いという3Dscanの欠点を補っている.正常眼の乳頭周囲RNFL厚は,乳頭の上方と下方で厚く,耳側と鼻側で薄くなっている.その結果,横軸を乳頭中心を中心とする軸座標,縦軸を厚みとして乳頭周囲RNFL厚をプロットする(この曲線はTSNITカーブとよばれる)と2つの山と2つの谷をもったdoublehumppatternを呈する(図6).ほとんどのOCTにおいて,正常眼データをもとにTSNITカーブの正常域が定められている.この正常域を下回るRNFL厚がみられた場合,緑内障などによる病的なRNFLの菲薄化を疑うことになる.TSNITカーブの正常域は正常眼データを統計処理して決められていることが多い.乳頭周囲のある部位のRNFL厚の正常眼における分布の下方95パーセンタイル値または99パーセンタイル値よりも薄い場合に,その部分のRNFL厚が異常値と判定され表示される.明らかな正常眼であるにもかかわらず部分的な異常判定が出ることは少なくない.どのくらいの幅の異常値がみられた場合に,その眼を「緑内障」または「緑内障疑い」と判定するのかが大きな問題となり,それによりその装置の「診断能」が決まってくる.IV黄斑部の解析緑内障の本態は網膜神経節細胞の細胞死とされるが,網膜神経節細胞は黄斑部近傍に最も多く分布し,GCLは黄斑部近傍で最も厚い.そのため黄斑部のGCLの解析により,緑内障初期の神経節細胞のわずかな減少がより鋭敏に検出されることが以前から期待されていた.しかし,従来のタイムドメインOCTでは解像度が低かったため,GCL厚を正確に評価することがむずかしく,臨床に用いられることはほとんどなかった.これに対し解像度に優れたスペクトラルドメインOCTの登場により,黄斑部のGCLの解析が緑内障の評価のための重要なオプションの一つとなりつつある.スペクトラルドメインOCTの一つであるRTVue-100(Optovue社)には,RNFL,GCL,内網状層(innerplexiformlayer:IPL)の3層をまとめたganglioncellcomplex(GCC)厚の解析がはじめて搭載された.本来図73DOCT.2000による黄斑部網膜の自動セグメンテーション800あたらしい眼科Vol.28,No.6,2011(48)おわりに以上,OCTによる緑内障解析について,視神経乳頭,乳頭周囲RNFL,黄斑部に分けて,トプコン社の3DOCT-2000を中心に解説した.3DOCT-2000は,これら3つの組織のすべてについて高解像度の描出・解析が可能という点で緑内障解析,およびその臨床研究に適した機種の一つであるといえる.とはいえ,他社のOCTも含め,より正確な緑内障解析が可能となるように,ハードウェア,ソフトウェアのさらなる進化を期待したい.そのような正常眼に近い眼に「異常」が検出された場合,それが「偽陽性」である可能性はいつでも考えなくてはならない.しかし,黄斑部解析においてはその「異常」が神経線維の走行パターンに一致していることが多く,単純な偽陽性ではないことが推測される.そのような神経線維走行に一致した異常パターンは「asymmetrymap」で明確に認められることを多く経験している.現在,筆者が(極)早期緑内障の診断・評価を行う際には,この黄斑部解析のプリントアウトを最も重要視していることが多い.NFLGCL+IPLNFL+GCL+IPLOS(L)図83DOCT.2000による緑内障眼(左眼)の黄斑部解析のプリントアウト