———————————————————————- Page 10910-1810/09/\100/頁/JCOPYa. HCLのケアHCL には酸素を透過しないポリメチルメタクリレート(PMMA)素材のレンズと酸素を透過するガス透過性ハードコンタクトレンズ(RGPCL)があるが,現在はほとんどが RGPCL であるため,以下は RGPCL のケアについて述べる.基本的に「洗浄→すすぎ→保存」の 3 つの操作がある.そして,定期的あるいは必要に応じて蛋白除去などの強力洗浄を行う1).洗浄法としては(1)界面活性剤を含有した洗浄剤によるこすり洗いと定期的あるいは必要に応じた強力洗浄,(2)界面活性剤を含有した洗浄保存剤に酵素を数滴添加するつけおき洗浄(2 液システム),(3)界面活性剤を含有した洗浄保存剤に酵素を混合したつけおき洗浄(1 液タイプ)がある.つけおき洗浄は簡便であるため,ユーザーには好まれるが,洗浄効果は弱いのでこすり洗いを行うよう指導したほうがよい.洗浄剤には研磨剤を含むものと含まないものがある.研磨剤を含む洗浄剤によるこすり洗いの洗浄効果は非常に高いが,表面処理を施している RGPCL には使用できないので注意を要する.こうした RGPCL では汚れのひどいときには強力洗浄を併用するよう指導する.b. SCLのケアSCL には従来素材のものと,シリコーンを含有した新しい素材のものがあるが,ケア方法は同じである.基本的に「洗浄→すすぎ→消毒→保存」の 4 つの操作はじめにコンタクトレンズ(CL)は材質の面からハードコンタクトレンズ(HCL)とソフトコンタクトレンズ(SCL)に分けられるが,ディスポーザブルレンズでない限りケアが必要である.レンズケアの目的は,使用した CL の汚れの除去と眼障害の予防である.CL を使用するとレンズ表面に蛋白質や脂質,カルシウム,化粧品などの汚れのほかに細菌,真菌,アメーバなどの微生物が付着することがある.CL を適切に処方したとしても,正しいケアが行われなければ,効果的かつ快適にレンズを使用できないばかりか,眼障害をひき起こすこともある.眼障害のなかで最も問題視されるのは角膜感染症であるが,CL のケアに関連したものが増えている.本稿では,日本における CL ケアの現状と問題点について概説する.ICLケアの現状1. CLケア方法ケア用品は薬事法の規制を受ける医薬品(局方精製水など),医薬部外品(SCL 用化学消毒剤,CL 装着液),薬事法の規制を受けない雑品(洗浄剤,保存剤,洗浄保存剤,溶解水)に分けられる.ケア用品には界面活性剤,酵素,防腐剤,緩衝剤,等張化剤,増粘剤,安定化剤,消毒剤などの成分がそれぞれの目的に沿って配合されている.(21)ツꀀ 1179 1ツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀ aツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀ 2ツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀ a aツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀ 751 0872ツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀ 1 1 15ツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀ 特集●コンタクトレンズ関連角膜感染症 あたらしい眼科 26(9):1179 1186,2009コンタクトレンズケアの現状と問題点Contact Lens Care:Current Situation and Problems植田喜一*1柳井亮二*2———————————————————————- Page 21180あたらしい眼科Vol. 26,No. 9,2009(22)和が不十分の場合には角膜障害を生じることがある.そのようなデメリットを改良したケア用剤として MPS が開発された.MPS は 1 剤で洗浄,すすぎ,消毒,保存ができることから簡便である.現在では MPS を使用するユーザーが大多数であるが,他の消毒法に比べて消毒効果が弱いことが難点である.SCL においても HCL と同様につけおき洗浄よりもこすり洗いを行うように指導する.SCL を保管中に,微生物が増殖しないようにレンズケースには新しい液を注ぎ入れるが,MPS 以外の消毒法では,操作終了から 24時間以上経過した場合は,再度消毒操作を行う必要がある.2. ケアに関連する角膜感染症の現状日本眼科医会が実施した CL による眼障害調査によると,2 週間頻回交換 SCL とディスポーザブル SCL の割合が高かった4)(図 2).角膜感染症に繋がると考えられる角膜潰瘍と角膜浸潤の割合は 2006 年度が 10.6%,がある.SCL は微生物に汚染されやすいため,消毒をしなければならないことが HCL との大きな違いである.定期的あるいは必要に応じて蛋白除去などの強力洗浄を行う.SCL のケアは消毒法によって大きくなる1,2).日本では 1972 年に低含水 SCL が発売された際,厚生省が認可した消毒方法は煮沸消毒で,SCL のレンズケアの主流であった.消毒効果の面からは,熱を用いて微生物を死滅させる煮沸消毒が最も強力で,アカントアメーバに対する消毒効果も十分であると現在も考えられる2,3)(図 1a, b).しかしながら,レンズの劣化,熱によって変性した蛋白質によるアレルギー,さらに高含水SCL に使用不可などの理由から,熱を用いないコールド消毒(化学消毒)が開発され,1992 年に過酸化水素を用いた消毒剤が,1995 年に多目的用剤(multipurpose solution:MPS)が,2001 年にポビドンヨードを用いた消毒剤が発売された(表 1).過酸化水素製剤は,レンズへの影響は小さく,高含水 SCL にも使用可能であるが,中和を要するので操作が煩雑であることや,誤使用や中表 1ソフトコンタクトレンズ消毒方法の変遷年消毒方法利点欠点1972煮沸消毒強力な消毒効果レンズの劣化,アレルギー1992過酸化水素MPS より消毒効果が強力煩雑な操作,誤使用1995MPS簡便な操作弱い消毒効果2001ポビドンヨード製剤MPS より消毒効果が強力煩雑な操作,ヨードアレルギー微生物減少 (log /ml)012煮沸消毒ポビドンヨード製剤過酸化水素製剤塩化ポリドロニウム製剤ポリヘキサメチレンビグアニド製剤コントロールa微生物減少値(log個/m?)012煮沸消毒ポビドンヨード製剤過酸化水素製剤塩化ポリドロニウム製剤ポリヘキサメチレンビグアニド製剤コントロールb図 1アメーバに対する消毒効果の比較a:Acanthamoeba polyphaga に対する消毒効果,b:Acanthamoeba castellanii に対する消毒効果(文献 3 より).塩化ポリドロニウム製剤,ポリヘキサメチレンビグアニド製剤は MPS の主成分である.———————————————————————- Page 3あたらしい眼科Vol. 26,No. 9,20091181(23)SCL の消毒法は MPS が 126 例(54%),過酸化水素が10 例(4%),煮沸が 1 例(0.4%)で,これらの消毒を毎日行っているが 69 例(30%)であった(図 8,9).レンズケースの交換は 3 カ月以内が 46 例(20%),6 カ月以2007 年度が 12.8%,2008 年度が 14.2%と増加してい た4 6).日本眼感染症学会が 2003 年に実施した全国の 24 施設の調査では,261 例の感染性角膜炎が報告された7).そのうち CL 使用者は 109 例(41.8%)で,CL 装用が最大の危険因子であった(図 3).起炎菌はケアを必要とする 2 週間頻回交換 SCL や従来型 SCL ではグラム陰性桿菌が多いのに対して,ディスポーザブル SCL ではグラム陽性球菌が多かった(図 4).日本コンタクトレンズ学会と日本眼感染症学会が実施した CL 関連角膜感染症全国調査の中間報告(2007 年 4月 2008 年 8 月中旬)では,入院を必要とする重篤な症例が 233 例であった8).ケアを必要とする SCL では,2 週間頻回交換 SCL が 127 例(54%),1 カ月あるいは3 カ月定期交換 SCL が 39 例(17%),従来型 SCL が 7例(3%),カラー SCL が 11 例(5%)に対して,ケアを必要としない 1 日ディスポーザブル SCL が 16 例(7%)で,1 週間連続装用 SCL が 4 例(2%)と,ケアを必要とする SCL の占める割合が高かった.HCL は RGPCLが 7 例(3%)で,PMMA 素材のレンズが 3 例(1%)という症例数であった(図 5).CL の洗浄に関しては,毎日しているが 87 例(37%)で(図 6),こすり洗いは毎日しているが 43 例(18%)と低い割合であった(図 7).HCL12.4%従来型SCL8.0%1日ディスポーザブルSCL12.8%1週間連続装用ディスポーザブルSCL1.0%2週間頻回交換SCL47.1%1 6カ月定期交換SCL7.1%シリコーンハイドロ ルレンズ5.7%カラーSCL2.3%度のないカラーSCL2.9% ルソケラトロジーレンズ0%その他のツꀀ 認レンズ0.1%不明0.6%図 2使用CLの種類(文献 5 より)6050403020100:(-):真菌・アメーバ:その他:グラム陰性桿菌:グラム陽性球菌例ディスポーザブルSCL19例2週間頻回交換SCL43例従来型SCL13例治療用SCL13例HCL13例図 4使用CLの種類と起炎菌(文献 6 より)0102030405060:CL使用(-):CL使用(+)0~910~1920~2930~3940~4950~5960~6970~7980~8990~99年齢(歳)例図 3年齢分布と感染時のCL使用(文献 6 より)2週間頻回交換SCL54%定期交換SCL17%1日ディスポーザブルSCL7%カラーSCL 5%RGPCL 3%従来型SCL 3%1週間連続装用SCL 2%PMMA素材のHCL 1% ルソKレンズ1%不明7%図 5使用CLの種類(文献 7 より)———————————————————————- Page 41182あたらしい眼科Vol. 26,No. 9,2009(24)IICLケアの問題点1. ケア用品の洗浄効果,消毒効果先に,CL のケアの目的は汚れの除去と眼障害の予防であると述べたが,角膜感染症の予防の立場から考えると,この汚れの除去とは,微生物の汚染を防ぐということを意味する.そのためには,洗浄効果,消毒効果の高いケア用品が望まれる.ユーザーは操作が簡便な,しかも経済的な商品を求めがちで,企業もそうしたニーズに応えようと製品開発を進めている.こすり洗いの商品からつけおき洗浄の商品に,煮沸消毒から過酸化水素消毒剤,さらには MPS にという流れがそのことを示す例である.こうした商品の洗浄効果や消毒効果が従来の製品と同等以上であればよいのだが,簡便性を追求したために,最も重要なケアの目的が十分に果たされていないという問題がある2,3).各種化学消毒剤の消毒効果を比較したデータを図 11 に示す3,9,10)が,MPS は他の消毒剤に比して消毒効果は弱内が 20 例(9%)で,全くしていないが 32 例(14%)であった(図 10).この調査の詳しい報告は本誌の他項に譲る.毎日37 時々14 週2 3回10 週4 6回9 ほとんどしない8 記載なし15 全くしない4 その他3 図 6CLの洗浄(文献 7 より)記載なし16 その他3 全くしない15 ほとんどしない16 週4 6回8 週2 3回8 時々16 毎日18 図 7CLのこすり洗いツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀ 化ツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀ 図 8CLの消毒法ツꀀツꀀツꀀ いツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀ のツꀀツꀀツꀀ とツꀀツꀀツꀀ いツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀ 時ツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀツꀀ 図 9CLの消毒(文献 7 より)記載なし16 その他5 全くしない14 ほとんどしない18 不定期18ツꀀ カ月以内9ツꀀ カ月以内20 図 10レンズケースの交換(文献 7 より)———————————————————————- Page 5あたらしい眼科Vol. 26,No. 9,20091183(25)が広く知られている12).日本でも 2003 年にこのテストに準拠した方法で消毒効果を自主点検するようにという内容の行政通知が出ているが,このテストは特定の細菌ならびに真菌,それも特定した菌株に対する消毒効果を評価したものであるため,これをクリアすればすべての細菌ならびに真菌に対して効力があるというわけではない(表 2).このテストの一次基準をクリアした商品であるにもかかわらず,海外でフザリウムによる感染を生じたという報告13)があったのは記憶に新しい.さらに重要なことに,アメーバやウイルスなどのほかの微生物に対する評価法は規定されていない.現在,米国食品医薬品局(FDA)ではこれらの評価法を検討しているようで,特にアカントアメーバについてはその試験方法(アいため,微生物を CL からなるべく物理的に除去する(こすり洗いとすすぎ)ことが求められる.一方,洗浄効果や消毒効果の高い製剤は細胞毒性が高いため,その安全性が問題となる.各種化学消毒剤の角結膜に対する影響を比較したデータを図 12 に示すが,過酸化水素消毒剤は角膜上皮障害を起こしやすい11).ケア用品は洗浄効果,消毒効果が高く,かつ安全性の高い製剤の開発が期待される.2. SCL消毒商品の評価法SCL 消毒商品の効果を評価する方法として,国際標準化機構(ISO)が採用しているスタンドアロンテスト表 2国際標準化機構(ISO)14729に指摘されている5菌種細菌Pseudomonas aeruginosa(Institute for Fermentation Osaka 13275)Serratia marcescens(American Type Culture Collection Manassas VA, 13880)Staphylococcus aureus(Institute for Fermentation Osaka 13276)真菌Candida albicans(Institute for Fermentation Osaka 1594)Fusarium solani(American Type Culture Collection Manassas VA, 36031)アメーバ規定なしウイルス規定なし:ポビドンヨード製剤:過酸化水素製剤:塩化ポリドロニウム製剤:ポリヘキサメチレンビグアニド製剤微生物減少 (log /ml)細菌真菌アカントアメーバウイルス緑膿菌黄色ブドウ球菌セラチアフサリウムカンジダアカントアメーバアデノウイルス012345図 11化学消毒剤の微生物に対する消毒効果(文献 8,9 より改変)00.010.020.030.04カルボキシフル レセイン取り み (nmol/mm2)ポビドンヨード製剤過酸化水素製剤塩化ポリドロニウム製剤ポリヘキサメチレンビグアニド製剤コントロールn=3,平均±標準誤差4 時間曝露*:Dunnett?s testツꀀ p<0.05*図 12家兎摘出眼に対する化学消毒剤の角膜障害性 (文献 11 より改変)———————————————————————- Page 61184あたらしい眼科Vol. 26,No. 9,2009(26)が異なる場合があるが,添付文書を熟読しないため,誤ったケアをしていることがある.説明したケア用品を継続して使用していたとしても,慣れてくるといい加減なケアをしていることもある.角膜感染症を起こした多くの患者は処方した眼科医の指導や添付文書に記載された内容を遵守していない場合が多い.使用した CL は毎回ケアする,CL を触れる前に手をきれいに洗う,CL をしっかりこすり洗いする,十分にすすぐ,薬剤の再使用はしない(レンズケースに残った薬剤は捨てて,新しい薬剤を入れる16)),といった指導を徹底的に行わなければならない.レンズを保存中はレンズケースのふたを閉める16),レンズケースは水場の周りに置かない,レンズケースからレンズを取り出した後はしっかり洗浄して自然乾燥する,MPS のボトルは使用しないときはしっかり閉めるなどを指導することも大切である.SCL のレンズケースの洗浄について添付文書を見ると,薬剤(MPS)で行うと書かれているものがある一方で,水道水で行うというものがある.日本では水道水が安全に管理されているため水道水で構わないという考えがある.水道法及び同法施行規則では,水道事業者が講じなければならない衛生上必要な措置として,給水栓(玄関の脇などにある水道メーターのついているところで各戸への水道の入り口)における水の遊離残留塩酸濃度を 0.1 mg/l(結合塩素の場合は 0.4 mg/l)以上保持するように塩素消毒をすることが定められているが,ビルなどの屋上にいったん貯められた水道水(それも夏などの気温の高い時期の水道水)については残留塩素の消毒効果が弱まっていることも予想され,微生物が増殖していないという確証はないので,なるべく薬剤(MPS)でレンズケースを洗浄し,水分を振り落として,自然乾燥したほうがよいと筆者は考える.おわりにレンズケアに関連した角膜感染症が増えていることから,今後,洗浄効果,消毒効果の高いケア用品の開発が期待される.現状においては,CL 処方時ならびに定期検査時にユーザーに対して適正なレンズケア指導を行うことが求められる.不幸にして角膜感染症が生じた場合メーバ接触濃度,用いる株,栄養体の培養方法,シストの調製方法),評価方法,合格基準などについて議論されている.3. HCLの消毒日本では水道水が衛生的に管理されているため,HCL は消毒が義務づけられていない.日本においてもHCL 使用者のアカントアメーバなどの微生物による角膜感染症の報告が増えている.洗浄液あるいは洗浄保存液によるこすり洗いとレンズケースの管理(洗浄,乾燥,早期交換など)で対応できるという意見が多いが,SCLと同様に HCL のケアにおいても消毒剤を使用するに越したことはないと考える.水道水が衛生的に管理されていない諸外国では HCL の消毒剤が普及している14).4. 雑品の規制洗浄剤などは CL を洗ったり,浸けたりするものであるため,人体には入らないという認識から雑品扱いとされ,厚生労働省の認可は不要であるが,これらの効果を評価するうえにおいても,薬事法による規制が望ましい.海外では CL ケア用品はすべて法律で規制されているので,その整合性も問われる.5. 眼科医の知識CL の診療を行うにあたっては CL についての知識だけでなく,ケアについての知識も求められるが,眼科医の多くはケア用品について詳しく知っていないというのが実情であろう.CL のケア方法は多種多様になり,次々と新しい商品が発売されるため,すべての商品を熟知することはむずかしいが,特徴のある商品については添付文書を熟読して,ポイントを理解して,ユーザーに対して適正なケア商品を薦める必要がある.6. ユーザーのコンプライアンスの低下概してユーザーはケア用品について無関心で正しいケアを行っていないことが多い.レンズケアに対する意識調査の結果をみても,当初は説明を受けたケア用品を使用していても,薬局,薬店などで安価なほかのケア用品を購入していることが多い15).商品が変わると取り扱い———————————————————————- Page 7あたらしい眼科Vol. 26,No. 9,20091185(27)図 13眼障害啓発リーフレット(日本コンタクトレンズ協会のご厚意による)———————————————————————- Page 81186あたらしい眼科Vol. 26,No. 9,2009には,レンズケアが起因することを念頭に入れて,詳しい問診をとって対処する必要がある.ユーザーはレンズケアに無関心で,指導を遵守していないばかりか,思いもつかないような誤った取り扱いをしていることもあるので,定期検査時にユーザーが行っているケア方法を確認することも大切である.ケア用品によると考えられる眼障害を認めた場合には,その商品を製造した企業に報告するとともに,薬事法の規制の対象商品(医薬品,医薬部外品)であれば厚生労働省に,規制の対象外商品(雑品)であれば国民生活センターに報告することが望まれるが,報告例は少ない.ユーザーにも CL 販売店を介して製造した企業に報告するとともに,国民生活センターに情報提供するよう依頼するとよい.企業による商品の改善だけでなく,必要によっては行政指導が求められる場合もある.日本コンタクトレンズ学会と日本眼感染症学会はMPS による角膜感染症の増加を危惧し,MPS の諸問題を検討する MPS フォーラムの開催を企画した.日本コンタクトレンズ協会ならびに MPS を市販している企業の参加を求め,ユーザーに対する啓発活動について協議した結果,各商品の箱とボトルの正面に「こすり洗いを忘れずに」といった啓発メッセージとこすり洗いの絵を表示することと,箱の側面に「こすり洗いが必要,消毒液は毎日交換,レンズケースは洗って乾燥,レンズケースは定期的に交換」といった啓発文を記載すること,さらに眼障害啓発リーフレットを配布することを決定した.このリーフレットは両学会が監修し,日本コンタクトレンズ協会が作成した(図 13)が,日本コンタクトレンズ学会(http://www.clgakkai.jp/),日本コンタクトレンズ協会(http://www.jcla.gr.jp/),日本眼科医会(http://www.gankaikai.or.jp/)のホームページからもダウンロードできるのでご利用いただきたい.文献 1) 日本コンタクトレンズ学会コンタクトレンズ診療ガイドライン編集委員会:CL ケア.日眼会誌 109:645-647, 2005 2) 石橋康久,宮永嘉隆:アカントアメーバ角膜炎.日本の眼科 79:721-726, 2008 3) 柳井亮二,植田喜一,田尻大治ほか:アカントアメーバおよびウイルスに対するポビドンヨード製剤の有効性.日コレ誌 47:37-41, 2005 4) 日本眼科医会医療対策部:コンタクトレンズによる眼障害アンケート調査の集計結果報告(平成 20 年度).日本の眼科 80:940-946, 2009 5) 日本眼科医会医療対策部:コンタクトレンズによる眼障害アンケート調査の集計結果報告(平成 18 年度).日本の眼科 78:1223-1229, 2007 6) 日本眼科医会医療対策部:コンタクトレンズによる眼障害アンケート調査の集計結果報告(平成 19 年度).日本の眼科 79:1165-1170, 2008 7) 角膜サーベイランス・スタディグループ:感染性角膜炎全国サーベイランス─分離菌・患者背景・治療の現況.日眼会誌 110:961-972, 2007 8) 福田昌彦:コンタクトレンズ関連角膜感染症の実態と疫学.日本の眼科 80:693-698, 2009 9) 柳井亮二,植田喜一,田尻大治ほか:細菌・真菌に対するポビドンヨード製剤の有効性.日コレ誌 47:32-36, 2005 10) 植田喜一,柳井亮二:マルチパーパスソリューション.あたらしい眼科 24:747-757, 2007 11) 柳井亮二,植田喜一,戸村淳二ほか:家兎に対するポビドンヨード製剤の安全性.日コレ誌 47:120-123, 2005 12) 岡田正司:ソフトコンタクトレンズの消毒の評価法(スタンドアロンテスト).日コレ誌 48:93-97, 2006 13) 稲田紀子:CL 装用と感染症第 1 回─ 2006 年に報告されたFusarium 角膜炎多症例について─.日コレ誌 49:57-58, 2007 14) 谷川定康:ケア用品の海外事情(ハードコンタクトレンズ).日コレ誌 48:251-255, 2006 15) 星合竜太郎,濱田いずみ:レンズケアに対するコンタクトレンズ使用者の意識.日コレ誌 49:119-123, 2007 16) 宇野敏彦,大橋裕一,今安正樹ほか:コンプライアンスの低い使用環境における多目的用剤の消毒効果試験.日コレ誌 51:36-41, 2009(28)