あたらしい眼科Vol.27,No.8,201010970910-1810/10/\100/頁/JCOPYはじめに人工的後部硝子体.離(PVD)を作製する方法としては,硝子体カッターの吸引により視神経乳頭上にグリア環を作製したり,PVD作製用ピックなどで引っ掛ける方法が行われている.しかし,若年者では網膜硝子体癒着が強固のため,しばしばPVDを作製するのが困難な症例を経験する.Otaniらは,このような症例に対して,黄斑部からアプローチすることで比較的容易に人工的後部硝子体.離が作製できることを報告した1).その後,安藤も同様の報告をしており2),筆者らも追試を行い報告している3).●黄斑部からの人工的後部硝子体.離作製法コアの硝子体切除を行い,トリアムシノロンにて硝子体を可視化する.その後,中心窩近傍の比較的癒着が弱い部位より,ダイアモンドダストイレーサーを用いて後部硝子体膜にwindowを作製する(図1).その後,周辺部にむかってある程度windowを拡大したところで,硝子体カッターの吸引を用いて周辺まで人工的後部硝子体.離を作製する(図2).この際に,windowの辺縁の薄い後部硝子体膜には子午線方向の亀裂が入らないよ(85)う,また後部硝子体膜が途中で断裂しないように注意し,一塊としてPVDを作製するのがコツである.この際に,視神経乳頭上の癒着も比較的容易に.離できることが多い(図3).●本術式が有用な理由生理的に網膜硝子体の癒着が強固な部位としては,視神経乳頭,アーケード大血管,中心窩,硝子体基底部などがあげられる.一方,中心窩近傍は比較的癒着が弱くPVDを作製しやすい部位であると考えられる.これはOCT(光干渉断層計)所見で,中心窩には癒着が存在するものの,その周囲は潜在的な後部硝子体.離が認められることが多いことからも予想される.本術式の利点としては,網膜面に硝子体が残存しにくいことがあげられる.その理由として,windowのエッジが白内障の前.切開時に行うCCC(continuouscurvilinearcapsulorrhexis)のごとく連続性があるため,後部硝子体膜に亀裂が生じて部分的PVDとなる危険性が少ないことが考えられる.このためには,windowの大きさを4.5乳頭径大程度に留め,windowのエッジを確実に網膜から遊離させ,その下に硝子体カッターが挿入できるスペースを作ることが重要である.文献1)OtaniT,KishiS:Surgicallyinducedposteriorvitreousdetachmentbytearingthepremacularvitreouscortex.Retina29:1193-1194,20092)安藤伸朗:私のこだわり─後部硝子体.離は黄斑部から─.臨眼62(増刊):149,20083)佐藤孝樹,福本雅格,石崎英介ほか:黄斑部からの人工的後部硝子体.離作成法.眼科52:707-710,2010硝子体手術のワンポイントアドバイス●連載87黄斑部からの人工的後部硝子体.離作製法(初級編)池田恒彦大阪医科大学眼科図1後部硝子体膜にwindowを作製トリアムシノロンで硝子体を可視化した後,ダイアモンドダストイレーサーを用いて後部硝子体膜にwindowを作製する.図2周辺部人工的後部硝子体.離作製Windowの辺縁の薄い後部硝子体膜に子午線方向の亀裂が入らないよう一塊としてPVDを作製する.図3視神経乳頭上の硝子体.離後部硝子体膜と連続した視神経乳頭上の癒着も比較的容易に.離できる.