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硝子体手術のワンポイントアドバイス56.脈絡膜上腔への気体誤注入(初級編)

2008年1月31日 木曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.25,No.1,2008670910-1810/08/\100/頁/JCLSはじめに裂孔原性網膜剥離に対するガスタンポナーデの合併症には,新裂孔形成,網膜剥離拡大,眼圧上昇,白内障,網膜下気体迷入などの報告があるが,非常にまれな合併症として,Bakerらは脈絡膜上腔への気体誤注入例を報告している1).筆者らも以前に,他院で強膜バックリング手術を施行された際に,この合併症をきたした症例を紹介されたことがある2).絡膜上腔への気体誤注入の原毛様体扁平部から27ゲージ針を硝子体腔内に刺入する際に,針先が硝子体腔内に入っていることを確認しないで,中途半端な刺入のまま気体を強膜と脈絡膜の間に注入してしまった場合に生じる(図1).同様のことは,気体だけでなく人工房水やシリコーンオイルを注入する際にも生じうる.脈絡膜剥離が生じている症例では,特に注意が必要である.筆者らが経験した症例では,初回強膜バックリング手術終了時に硝子体腔内に注入するはずの気体が誤って脈絡膜上腔に注入され,広範な脈絡膜剥離をきたしていた(図2a,b).本症例では,おそらく初回強膜バックリング手術時に脈絡膜剥離がわずかに生じており,強膜と毛様体の間隙が生じていて,気体が迷入しやすい状況にあったのではないかと考えられる.併症の予防と対このような合併症を防止するには,針先が硝子体腔内に刺入されていることを必ず確認してから気体を注入することが重要である.一般にガスが網膜下に迷入した場合には,視細胞が直接気体の影響を受けるので,網膜の障害は重篤であることが予想される.脈絡膜上腔気体迷入はそれに比較すると網膜への障害の程度は少ないと考えられる.Bakerらの報告や筆者らの症例でも再手術後の矯正視力は良好であった.しかし,気体は体位によっ(67)て脈絡膜上腔を移動する危険性もあるので,できる限り早期に気体を抜去するべきである.気体抜去の方法は27ゲージ針で人工房水を硝子体腔内に確実に注入すれば,針の抜去時に脈絡膜上腔の気体は圧に押されて針の刺入部より漏出する.文献1)BakerSR,HainsworthDP:Suprachoroidalgasasacom-plicationofpneumaticretinopexy.Retina20:224-225,20002)山本泰史,桑原ちひろ,齋藤総一郎ほか:脈絡膜上腔にガスが迷入した網膜剥離の1例.眼科手術16:109-112,2003硝子体手術のンポインバイス●連載脈絡膜上腔への気体誤注入(初級編)池田恒彦大阪医科大学眼科1脈絡膜上腔への気体誤注入の原因針先が硝子体腔内に入っていることを確認しないで,中途半端な刺入のまま気体を強膜と脈絡膜の間に注入してしまった場合に生じる.脈絡膜剥離併発例では特に注意を要する.図2a術前の眼底写真上耳側に胞状の脈絡膜剥離を認める.2b術前の超音波Bモード胞状の脈絡膜剥離とその後極に網膜剥離を認める.

眼科医のための先端医療85.「見る」ことで網膜は強くなる!?  -ラット明環境飼育による網膜保護効果とNrf2-ARE経路の関わり-

2008年1月31日 木曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.25,No.1,2008630910-1810/08/\100/頁/JCLS1966年,Noellらはラットへの可視光照射によって視細胞が不可逆的に傷害されるという現象を報告しました1).以後の研究により,可視光による網膜傷害(網膜光傷害)が,ビタミンCやE,グルタチオン前駆物質,フリーラジカルトラップ剤などの抗酸化剤で効果的に抑制されることが報告されました.そのため,網膜光傷害は酸化ストレスによる細胞傷害機構解析の良いモデルとして用いられてきました.また,網膜光傷害による細胞死が網膜色素変性症における細胞死と同じくアポトーシスの形態をとる2)ことから,網膜変性症のモデルとしても利用されています.一方,光に対する網膜傷害の感受性が,ラットの飼育条件によって異なることが,初期の頃から知られていました3).その後,1980年代になって,Andersonらにより,通常の飼育環境の光照度(50100ルクス)よりも明るい環境光(400600ルクス)で数週間飼育した動物では,3,000ルクス・24時間照射による網膜光傷害がほぼ完全に抑制されること,暗い環境光(510ルクス)で飼育した動物では,同条件の光照射で非常に強い網膜傷害が惹起されることが報告されました4).このことは,網膜内に光によって惹起される内因性の生体防御機構が備わっていることを示唆する実験的事実ですが,長い間その分子機構については不明のままでした.酸化ストレスのキー分子Nrf2生体がミトコンドリア呼吸鎖を通じて,酸素からエネルギーを産生する過程では,常に一定の割合で不完全燃焼した不安定な酸素(活性酸素種)が漏れ出てきます.また,炎症や免疫細胞の貪食に関連しても種々の酸化酵素が働き,活性酸素種が生成されます.これらの活性酸素種や活性窒素種,X線,紫外線,金属,化学物質などの酸化ストレス要因に曝されると,生体は,グルタチオン,チオレドキシンやそれらの関連酵素などの生体防御因子の発現を誘導することで,細胞を守ろうとします.この,生体防御因子の誘導に転写因子nuclearfactorerythroid2-relatedfactor2(Nrf2)が重要な役割をもつことが明らかとなってきました5).図1に現在提唱されている,Nrf2による転写調節機構の模式図を示しま(63)シリーズ第85回◆眼科医のための先端医療監修=坂本泰二山下英俊(島根大学医学部眼科学)「見る」ことで網膜は強くなる!?─ ラット明環境飼育による網膜保護効果とNrf2-ARE経路の関わり─図 1Nrf2-AREによる転写調節機構の模式図Nrf2:nuclearfactorerythroid2-relatedfactor2,Keap1:Kelch-likeECH-associatedprotein1,ARE:antioxidant-responsiveelement,Ub:ユビキチン,Cys:蛋白質上のシステイン残基.Keap1Nrf2UbNrf2小MafUbCysCysKeap1Nrf2Nrf2Nrf2の寿命延長Cys-酸化Cys-酸化酸化ストレス~可視光(活性酸素種・活性窒素種)プロテアソームによる分解アクチン細胞膜細胞質核DNA転写第2相解毒酵素↑抗酸化酵素↑ARE———————————————————————-Page264あたらしい眼科Vol.25,No.1,2008す.Nrf2は,細胞質内でKelch-likeECH-associatedprotein1(Keap1)というアクチン結合蛋白と結合しています.非酸化ストレス下では,Keap1のユビキチンライゲース活性によりユビキチン化されたNrf2は,プロテアソームによる分解を受けます.そのため,非酸化ストレス下でのNrf2の寿命は非常に短いと考えられています.一方,細胞が酸化ストレスを受けると,その酸化ストレスは,Keap1内のシステイン残基の酸化という形で感知され,Nrf2のユビキチン化が抑制されます.その結果,細胞質内でのNrf2の寿命が延長し,核に移行するNrf2の量が増加します.Nrf2は,小Maf分子群とヘテロダイマーを形成し,DNAプロモーター領域のantioxidant-responsiveelement(ARE)配列に結合して,転写活性を発揮します.Nrf2-ARE経路によって転写活性化が亢進する分子として,グルタチオン-S-トランスフェラーゼなどの第2相解毒酵素やヘムオキシゲナーゼ1やチオレドキシン還元酵素などの抗酸化酵素が誘導され,細胞を酸化ストレスから守ります.網膜保護機構としてのNrf2-ARE経路前述の明環境飼育による網膜保護現象の系で,明るい環境光で飼育したラットの網膜では,暗い環境光で飼育したラットの網膜と比較して,4ヒドロキシノネナール(4HNE)という脂質過酸化マーカーの発現が上昇し,Nrf2-ARE経路による転写活性が亢進します6).さらに,チオレドキシンやチオレドキシン還元酵素の発現も亢進します.培養視細胞の系では,4HNEの前処置により,チオレドキシンやチオレドキシン還元酵素の発現が亢進し,過酸化水素による細胞傷害が抑制されます.この細胞傷害抑制効果は,Nrf2の発現をノックダウンすることでキャンセルされます.これらの実験的事実から,Nrf2-ARE経路活性化による生体防御因子の増強が,明環境飼育による網膜保護現象の分子機構として重要であると考えられます.網膜は,光を視覚情報として利用する(見る)という本来の目的と並行して,適度な光刺激によって網膜を保護する機構を誘導するという非常に巧妙なシステムを有していることが示唆されます.このような細胞保護機構が加齢などにより減弱することが,加齢黄斑変性などの何らかの網膜疾患の発症・増悪に関わる可能性について,今後検討が進むと予測されます.文献1)NoellWK,WalkerVS,KangBSetal:Retinaldamagebylightinrats.InvestOphthalmol5:450-473,19662)HafeziF,SteinbachJP,MartiAetal:Theabsenceofc-fospreventslight-inducedapoptoticcelldeathofphoto-receptorsinretinaldegenerationinvivo.NatMed3:346-349,19973)NoellWK,AlbrechtR:Irreversibleeectsonvisiblelightontheretina:roleofvitaminA.Science172:76-79,19714)PennJS,NaashMI,AndersonRE:Eectoflighthistoryonretinalantioxidantsandlightdamagesusceptibilityintherat.ExpEyeRes44:779-788,19875)ItohK,WakabayashiN,KatohYetal:Keap1repressesnuclearactivationofantioxidantresponsiveelementsbyNrf2throughbindingtotheamino-terminalNeh2domain.GenesDev13:76-86,19996)TanitoM,AgbagaMP,AndersonRE:UpregulationofthioredoxinsystemviaNrf2-antioxidantresponsiveele-mentpathwayinadaptive-retinalneuroprotectioninvivoandinvitro.FreeRadicBiolMed42:1838-1850,2007(64)■「「見る」ことで網膜は強くなる!?」を読んで─ラット明環境飼育による網膜保護効果とNrf2-ARE経路の関わり─今回は光による網膜障害のモデルから出発して網膜を保護する分子メカニズムをNrf2分子の働きを通して検討したお仕事を紹介していただきました.網膜疾患の治療戦略は,いろいろの疾患の病態を明らかにしてその原因を除くという治療が主流です.というより,種々の原因により網膜細胞が障害されるのを抑制して網膜細胞を保護する治療が確立していないのです.これが現在の網膜疾患の治療成績を上昇させるためにはボトルネックになっています.疾患の病態研究に基づき導入された抗VEGF(血管内皮増殖因子)抗体などや硝子体手術を用いた治療によっても糖尿病網膜症の治療成績はまだまだ満足できるものではありません.視力が最も大切な眼科医療の成否を示す指標ですが,視力は必ずしも現在の治療で上昇しません.網膜の細胞が破壊されて本来のものを見る機能が低下していることによります.今後は網膜神経細胞が破壊されないような新しい観点からの治療が大切です.今回の谷戸正樹先生の解説は,網膜光障害は単に光———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.25,No.1,200865(65)☆☆☆による障害を検討するのみでなく,活性酸素が各種疾患に対する影響を明らかにすることにより,光障害を分子レベルでわかりやすく説き起こしています.いわば神経保護治療についての基礎エビデンスを示されたと考えられます.医学的なこのようなしっかりした分子レベルでの研究成果があがっていると,その成果は活性酸素により網膜が障害される糖尿病網膜症,網膜分枝閉塞症,加齢黄斑変性など多くの疾患の病態解明,治療法開発に資することがきわめて大です.今後,まずは効果がはっきりと示せる疾患に対する治療薬が開発され,それが峰から裾野に広がっていくというのがとてもいい戦略的な研究ではないでしょうか?今後もこのような光による網膜障害を基にした多くの臨床研究,基礎研究が強力に推進されると考えております.山形大学医学部情報構造制御学講座視覚病態学分野山下英俊

新しい治療と検査シリーズ178.病的近視に続発した中心窩分離症に対する手術治療

2008年1月31日 木曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.25,No.1,2008610910-1810/08/\100/頁/JCLS的に硝子体手術が行われている3).〔症例〕65歳,男性.右眼変視を訴え当科紹介となる.屈折等価球面値は11ジオプトリー,眼軸長28.7mmの強度近視で,矯正視力は(0.1)に低下していた.眼底に軽度の近視性網脈絡膜萎縮と非常に丈の低い網膜剥離様所見を後極部網膜に認め,OCTで典型的な中心窩剥離型の分離症と診断した(図1).実際の手術法中高年の病的近視では核白内障を合併していることも多いため,有水晶体眼は原則として白内障手術を行う.しい治療と検シリー(61)バックグラウンド病的近視に続発する中心窩分離・剥離の歴史は古く,すでに1958年Phillipsらによって「強度近視眼における後極部網膜剥離」として報告されている1).特徴は,病的近視にみられる後極部網膜剥離で第一義的には網膜裂孔を伴わないものを指すが,黄斑小裂孔や沿血管微小裂孔を併発しているものも少なからずみられる.剥離の程度は検眼鏡的に明らかに認めるものから,光干渉断層計(OCT)を用いることによりはじめてその存在が明らかになる程度のものまである.またOCTで詳しく観察すると網膜分離だけで網膜剥離をまったく認めないものから,逆に分離がほとんどみられず剥離が病態のほとんどを占める場合があるなど病態は多彩である.注目すべきは強度近視眼で治療に苦戦する黄斑円孔網膜剥離の前駆状態であるとされており,本疾病を治療することで黄斑円孔網膜剥離の予防治療がある程度可能であるという点である.筆者らはその形状と手術成績から中心窩分離症を大きく3型に分類している.すなわち中心窩の視細胞が網膜色素上皮から剥離した「中心窩剥離型」,網膜分離はあるが網膜色素上皮から中心窩視細胞が剥離していない「網膜分離型」,そして黄斑円孔をすでに併発してしまっている「黄斑円孔型」である.視力は網膜分離型が最もよく,黄斑円孔型が最も悪い.また手術の効果は中心窩剥離型が最も高い.新しい治療法中心窩分離症の成因として網膜血管牽引,黄斑前膜,内境界膜の非伸展性などが指摘されており2),これらを外科的に除去することで網膜の復位ひいては黄斑円孔網膜剥離の予防を行うのが治療の目的である.症例の蓄積により安全性が確立し,最近は中心窩分離症に対し積極178.病的近視に続発した中心窩分離症に対する手術治療プレゼンテーション:生野恭司大阪大学大学院医学系研究科眼科学コメント:大野京子東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科眼科学1症例の中心窩分離症の眼底写真(上)とOCT像(下)眼底に近視性変化を認め,後極部網膜は中心窩剥離を伴う中心窩分離症を生じている.———————————————————————-Page262あたらしい眼科Vol.25,No.1,2008トリアムシノロンで可視化した後に硝子体切除を行うが,病的近視では網膜面上に硝子体皮質が強く癒着していることが多い.これら癒着硝子体や網膜前膜をDia-mond-dustedmembranescraperや硝子体鑷子を用いて丁寧に後極部網膜から剥離してゆく.内境界膜剥離の是非については議論の余地があるが,症例の多くで内境界膜の非伸展性が原因としてかかわっており,筆者は全例内境界膜剥離を行っている.インドシアニングリーンは毒性が報告されているため,萎縮性変化が軽微な場合はトリアムシノロンを用いるが,著しい場合は術中の安全性を優先してインドシアニングリーンを用いる.最後に20%六フッ化硫黄ガスガスタンポナーデを行って終了である.患者には1~2週間程度の伏臥位を指示する(図2).通常網膜はゆっくりと復位することが多く,長い場合,中心窩の復位に6カ月~1年かかる.非常に遅い場合,心配することもあるが,筆者は本術式で復位しなかった症例は今のところ経験していない.本法の利点2段階以上の視力改善は中心窩剥離型で80%前後,中心窩分離型で50%程度である.術後中長期で黄斑円孔の形成をみる場合が数%あるが,円孔形成の自覚のないものも多い.このように中心窩分離症に対する硝子体手術は比較的安全でかつ効果の高い術式であると考えられる.放置することで黄斑円孔網膜剥離まで進展すると失明の危機もある.それを予防するという意味でも有用な手術と考えている.文献1)PhillipsCI:Retinaldetachmentattheposteriorpole.BrJOphthalmol42:749-753,19582)生野恭司:強度近視眼に続発した中心窩分離症の病因と治療(総説).日眼会誌110:855-863,20063)IkunoY,SayanagiK,OhjiMetal:Vitrectomyandinter-nallimitingmembranepeelingformyopicfoveoschisis.AmJOphthalmol137:719-724,2004(62)☆☆☆本に対するント近年,近視に伴う黄斑(中心窩)分離・剥離に対する手術成績の報告が散見される.しかし,術後長期における再発などの合併症の危険性や手術適応について,まだ不明な点も多い.また,術式についても内境界膜(ILM)剥離併用の有無やILM剥離の範囲,ガスタンポナーデの併用の有無などについて必ずしも一定の見解が得られていない.前述したように,黄斑分離・剥離の1つの成因としてILMを含めた網膜表層の増殖変化があげられるため,生野らのようなILM剥離を併用した硝子体切除は理にかなっていると思われる.また,ガスタンポナーデを行うことにより剥離部位の移動や網膜復位までの時間短縮が得られると考えられ,有用であろう.しかしながら,黄斑分離・剥離の形態や成因は個々の症例によりそれぞれ異なっており,今後は長期術後経過を踏まえたうえで,個々の症例に応じた術式選択と手術タイミングの検討が必要となるであろう.図2症例の術後1年後の眼底写真(上)とOCT像(下)周囲に網膜分離は残存するが,中心窩剥離は復位した.視力は術前の(0.1)から(0.6)まで改善した.

眼感染症:常在微生物叢と眼感染症

2008年1月31日 木曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.25,No.1,2008590910-1810/08/\100/頁/JCLS眼感染症の発症機序は大別して2つあり,外傷や飛入により眼の外から病原体が持ち込まれる場合と,眼表面に存在する常在微生物が増殖して発症する場合がある.近年は薬剤耐性を獲得した常在微生物による感染症が増えており,結膜炎,角膜炎といった前眼部感染のほか,術後眼内炎の原因となる.眼感染症を正しく診断,あるいは予防するためには,常在微生物叢に関する知識をもち,薬剤耐性化に注意せねばならない.在微生物叢とは皮膚や眼,消化管など外界と接する身体各部の表面には,一定の微生物群が互いにバランスを保って存在し,これらの微生物群を一括して「常在微生物叢」とよぶ.そのほとんどは細菌であるため「常在細菌叢」あるいは「正常細菌叢」ともよばれるが,真菌やウイルスも存在する.常在微生物叢は,ホストの要因(年齢,性,薬剤の服用,免疫力など)や外的要因(点眼,微生物の侵入など)によって菌量や構成パターンが変動する.たとえば,ホストの免疫力が低下すると常在微生物叢が増殖する(日和見感染).また薬剤投与という外因によって微生物叢のバランスが崩れると,特定の菌のみが増殖する(菌交代現象).常在微生物叢は外来性の微生物,特に病原微生物に拮抗し,それらの侵入や増殖を防いでいる.一方で常在微生物叢の均衡が破綻し,ある菌のみが過剰に増殖すると,生体にとって不利な状況すなわち「感染症」となる.表面と常在微生物眼表面にも常在微生物が恒常的に存在し,表皮ブドウ球菌,コリネバクテリウム,アクネ菌などの細菌が健常な結膜から検出される1).ほとんどは病原性の乏しい弱毒菌であるが,黄色ブドウ球菌など病原性の高い菌も検出される.宿主が常在細菌に反応しない理由として,上田らは自然免疫に注目し,病原体認識機構であるTolllikereceptors(TLRs)について検討した.その結果,マクロファージでは細胞表面に発現し,細菌の菌体成分(PGNやLPS)に反応するTLR2やTLR4が,角膜上皮では細胞内に発現し,細胞表面のPGNやLPSに反応しなかった2).眼表面上皮は常在細菌に反応しないための機構を有すると考えられる.在微生物の薬剤耐性化1.ブドウ球菌①薬剤投与による耐性化表皮ブドウ球菌などのコアグラーゼ陰性ブドウ球菌(CNS)と黄色ブドウ球菌は結膜の常在細菌であり,その多くは一般的な抗菌点眼薬で容易に菌の増殖が抑制される.長期に抗菌薬が点眼されると眼表面において菌交代現象が生じて,使用している抗菌薬の効かない菌のみが存在する状態,すなわちメチシリン耐性コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(MR-CNS)やメチシリン耐性黄色ブドウ球(59)眼感染アレルーー感染症と生体防●連載①監修=木下茂大橋裕一1.常在微生物叢と眼感染症外園千恵京都府立医科大学大学院視覚機能再生外科学眼表面には常在微生物叢が存在し,通常は病原性を有さないが日和見感染や術後眼内炎の原因となる.近年は薬剤耐性化した常在細菌による感染症が増えており,結膜炎,角膜炎などの前眼部感染のほか,術後眼内炎が問題となる.常在微生物の薬剤耐性化に注意し,発症時には塗抹検鏡と培養検査の両方を行うことが有用である.表1代表的な常在細菌とグラム染色グラム性球菌グラム性菌ブドウ球菌色ブドウ球菌レ球菌球菌コリネバクテリウムバクテリウムクネ菌バのバクテリウムの性菌の菌———————————————————————-Page260あたらしい眼科Vol.25,No.1,2008菌(MRSA)が常在細菌となる.さらにステロイドが使用されると,弱毒菌による日和見感染を発症しやすくなり,MRSAあるいはMR-CNSによる感染症を発症する.たとえば,角膜移植後は糸の緩みなどが契機となって移植片に感染症を生じるが,起炎菌としてMRSAと酵母型真菌が多い3).このことは術後投薬(抗菌薬,ステロイド)による常在微生物叢の変化と密接に関係する.②健常結膜における耐性ブドウ球菌高齢者の健常な結膜から,少数ではあるが薬剤耐性を獲得したMR-CNS,MRSAが常在細菌として検出される4).あるいは,アトピー性皮膚炎患者において白内障術前に結膜からMRSAを検出することがある.このように,特に眼局所に投薬しておらず,充血も眼脂もない結膜から耐性菌を検出することは,手術や外傷で耐性菌が眼内に持ち込まれて眼内炎を発症するリスク因子となる.さらには,健常な小児や成人が市中型MRSAを無症候性に有することがある.市中型MRSAについては本シリーズの次回で記載する.2.コリネバクテリウムコリネバクテリウムも常在細菌叢の主要メンバーであり,通常は病原性に乏しい.しかしレボフロキサシン(LVFX)耐性コリネバクテリウムが増えてきつつあり,眼感染症の原因となりうる(図1の症例).3.その他ペニシリン耐性肺炎球菌(PRSP)による角膜炎はMRSA感染と同様に抗菌薬の長期投与,日和見感染で生じる.b-ラクタマーゼ陰性アンピシリン耐性ヘモフィリス(BLNAR)による眼感染症も今後問題になる可能性がある.感染症の診断培養検査で菌を検出しただけでは,起炎菌と断定することはできない.菌量と,どのような生体反応を示しているかが重要な判断材料となり,塗抹検鏡が有用である.図1の症例は,塗抹検鏡で好中球に貪食されるグラム陽性桿菌を多数認め,培養でLVFX耐性コリネバクテリウムを検出した.このように塗抹検鏡と培養検査で同じ菌を同定し,貪食像があれば起炎菌といえる.細菌検査機関が,これは常在細菌である,という理由で薬剤感受性試験を省略することがあり注意を要する.さらには検査結果そのものが省略され,「菌を検出せず」などと報告されることがある.「難治性結膜炎であり,薬剤感受性試験をお願いします.」あるいは「耐性化した常在細菌による感染症を疑っています.」など,依頼内容を明確にして検査を行う.文献1)原二郎:眼瞼・結膜の常在細菌叢について教えてください.あたらしい眼科17(臨増):5-7,20002)UetaM,NochiT,JangMHetal:IntracellularlyexpressedTLR2sandTLR4scontributiontoanimmu-nosilentenvironmentattheocularmucosalepithelium.JImmunol173:3337-3347,20043)脇舛耕一,外園千恵,木下茂ほか:角膜移植術後の角膜感染症に関する検討.日眼会誌108:354-358,20044)KatoT,HayasakaS:Methicillin-resistantStaphylococcusaureusandmethicillin-resistantcoagulase-negativestaph-ylococcifromconjunctivasofpreoperativepatients.JpnJOphthalmol42:461-465,1998(60)図1帯状角膜変性に対する治療的レーザー表層角膜切除術後の角膜感染症a:前眼部所見.角膜表層の細胞浸潤(*)と前房蓄膿を認める.b:病巣部の塗抹検鏡.多数のグラム陽性桿菌(小矢印)と好中球の貪食像(大矢印)を認める.a*b

緑内障:緑内障治療薬-後発品と先発品の比較

2008年1月31日 木曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.25,No.1,2008570910-1810/08/\100/頁/JCLS医療費削減の必要性が唱えられている現在,治療薬を処方する際に後発品が注目されるようになってきた.特に緑内障のような慢性疾患に対して後発品を処方する場合,治療期間が長期にわたるためそのメリットは大きくなる.しかし,医療費削減の切り札として期待される後発品は先発品と比較して劣っていない点と劣っている点がある.表1に後発品が先発品と比較して劣っていない点と劣っている点を示した.後発品が先発品に劣っていない点を生かすために,その経済性なども理解しておく必要がある一方,劣っている点として,すべての薬剤に後発品は発売されていないことなどの確認も重要である(表1).本稿では,緑内障治療薬の後発品が先発品に劣っていない点と劣っている点について解説する.売されている後発品は?現在,国内では濃度も区別に含めると25種類の緑内障点眼薬が発売されているが,そのうち何種類の点眼薬に後発品が存在するのだろうか?(57)載緑内障セミナー監修=東郁郎岩田和雄91.緑内障治療薬─後発品と先発品の比較池田博昭*1塚本秀利*2*1広島大学病院臨床研究部*2高山眼科最近,医療費削減のため,後発品が医師のみならず患者の間でも注目されるようになってきた.しかし,後発品は先発品と比較して劣っていない点と劣っている点があり,その選択にはこれらの特徴をよく理解して処方する必要がある.表1後発品が先発品と比較して劣っていない点と劣っている点劣っていない点劣っている点発売されている後発品は?がしがれ先発品に後発品が発売されるが薬価のい薬にがであるがしがれていて先発品の薬価がいがさいと後発品は発売されないとある後発品は本当に安い?先発品に比て薬価がいのでの薬でのはる後発品と先発品の薬価にのない薬のなるとが先発品と同しはるがある後発品の適応症・効果・副作用は先発品と同一?先発品に効効果がされない同一先発品に効効果がされ用用適応症が一になる後発品の中身は先発品と同一?後発品は先発品と同のとで売され薬の品が同であるとのやなは先発品と後発品後発品でなる後発品は安定供給できる?点眼薬にし後発品がある医薬品ののがしている後発品の医薬品情報は提供される?先発品と同に後発品の情報できるの載内め情報提供は先発品に比劣る表2緑内障点眼薬の後発品の有無(2007.12現在)後発品のある点眼薬後発品の銘柄数後発品のない点眼薬0.25%チモプトールR6キサラタンRデタントールR0.5%チモプトールR7トラバタンズRエイゾプトR1%ミケランR5レスキュラRトルソプトR(0.5%,1%)2%ミケランR5チモプトールRXE(0.25%,0.5%)ピバレフリンR(0.04%,0.1%)ベトプティックRS2ミロルRウブレチドR(0.5%,1%)ハイパジールRコーワニプラノールR5リズモンRTG(0.25%,0.5%)1%サンピロR12%サンピロR1———————————————————————-Page258あたらしい眼科Vol.25,No.1,2008後発品は先発品の再審査期間が終了し,かつ特許切れ後に発売されることから,すべての先発品に対して後発品が存在するわけではない.後発品が存在する点眼薬と存在しない点眼薬を表2に示す.後発品が存在する点眼薬は9種類,しない点眼薬は16種類である.なお,ジピベフリン0.1%の後発品は2007年3月末に販売が中止となっているが,経過措置期間まで保険請求は可能である.発品は本当に安い?後発品の薬価は,その後発品が発売された時期に応じて先発品の薬価の7割に設定されている.たとえば,2007年夏に発売されたニプラジロールの後発品は先発品の7割の薬価であるのに対し,1981年に発売したチモロールの後発品の最も低い薬価は2割程度まで低下している.先発品と後発品の薬価を表3に示す.なお,後発品が複数存在する場合は最も低い価格を示した.また,先発品の薬価が経年的に低下するに従い後発品の薬価も低下するが,その低下率は後発品が大きい.0.5%チモロールの薬価は1995年当時で先発品が3,056円,後発品が2,020円であったのに対し,2007年の時点で先発品が2,107円(69%),後発品が463円(23%)と後発品の低下率が大きい.一方,1967年に発売したピロカルピンは2007年現在,先発品と後発品が同一の薬価になっている.すべての後発品が先発品に比べて低価格とは限らない.では,後発品を処方した場合,実際の医療現場ではどの程度安くなるのであろうか?たとえば,0.5%チモロールの先発品と後発品の最大薬価差は1,644円(表3)で,自己負担が3割の患者の場合,先発品を後発品に変更した場合,1本の最大の薬剤費用負担差は約500円になる.しかし,0.5%チモロールの先発品と先の後発品の1本当たり滴下できる滴数は各々151滴と118滴で,点眼できる期間は37日と29日(1日2回,1回1滴を両眼にした場合)と異なる.各々の薬価を滴数で除した1滴薬価は14円と4円,1日の理論的薬剤費用(1日2回,1回1滴を両眼にした場合)を算出すると薬価費用差は40円となる.自己負担が3割の患者の場合,後発品と先発品の最大の薬剤費用負担差は1日に12円(月間360円)となる.後発品の適応症・効果・副作用や中身は先発品と同一?後発品は動物での薬理試験データで有効性を確認しているが,安全性に特化した試験は行っていない.後発品は臨床試験(第Ⅲ相試験)を行っていない場合が多く,添加物の種類や添加量の異なる先発品と効果・副作用を正確に比べることはむずかしい.発品は安定供給できる?後発品が発売される際,厚生労働省は安定供給の指導を行っている.医薬品卸会社から入手できない後発品もあることから,予め供給ルート・日数などを確認しておく必要がある.ジピベフリン0.1%の後発品は1998年に数社から発売されたが,2007年3月には発売が中止されている.発品の医薬品情報は提供される?後発品の添付文書には,臨床試験(治験),使用成績調査(再審査終了時),薬物動態,臨床成績,薬効薬理(作用機序)などが記載されていない.添加剤の塩化ベンザルコニウムは記載されているが,等張化のための添加剤は記載されていない.塩化ベンザルコニウム濃度の違いで角膜潰瘍の発現率が異なることが判明しているので,後発品はできるかぎり情報を開示することが望ましい.まとめ以上,後発品が先発品と比較して劣っていない点と劣っている点について説明した.私たちは,劣っていない点と劣っている点を理解して,後発品を適切に使用する必要がある.(58)表3後発品のある緑内障点眼薬の薬価比較(2007.12現在)後発品のある点眼薬先発品の薬価(円)後発品のうち最も低い薬価(円)薬価の差(円)後発品薬価/先発品薬価0.25%チモプトールR1,4153461,0690.20.5%チモプトールR2,1074631,6440.21%ミケランR1,1916335580.52%ミケランR1,7238738510.5ベトプティックRS2,2561,6376190.7ハイパジールRコーワニプラノールR2,4681,7277410.71%サンピロR70470401.02%サンピロR85485401.0薬価は1本当たり.

屈折矯正手術:有水晶体眼内レンズとLASIKの比較

2008年1月31日 木曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.25,No.1,2008550910-1810/08/\100/頁/JCLS屈折矯正手術の主流はLASIK(laserinsitukerato-mileusis)であるが,医原性角膜拡張症(keratecta-sia)の発症リスクを避ける意味で,高度近視や角膜が薄い症例では少なからず制限を受ける.本来角膜が備え合わせる優れた光学特性や生体力学特性を低下させることも無視できない.さらには,角膜の創傷治癒反応には個体差があり,矯正量が大きいほど予測精度や安定性に悪影響を及ぼすと考えられる.それらの欠点を補うべく有水晶体眼内レンズ(phakicintraocularlens:phakicIOL)が開発されたが,高い安全性・有効性だけでなく術後視機能の優位性が報告されている.理由としては,第一にLASIKによる角膜中央部の切除により,角膜形状がprolateからoblateshapeへの変化に伴う球面収差の増加1)およびフラップ作製や照射ずれに起因するコマ収差の増加も含め,矯正量が大きくなるほど高次収差が増加すること,第二にphakicIOLでは瞳孔に非常に近い位置で矯正を行うため,網膜像の倍率変化を生じにくいことがあげられる(図1).これは屈折矯正手術を行ううえで重要であり,phakicIOLは最適な部位であることを意味する.高度近視における自験例での検討では,後房型phak-icIOL(implantablecollamerlens:ICLTM)はwave-front-guidedLASIKに比較して安全性・有効性が高かった.また,予測精度や安定性に関しても,ICLTMでは個体差のある角膜創傷治癒反応を受けにくく,over-shoot(遠視化)やregression(再近視化)も起こらず(図2),ICLTMの優位性は明らかであった.術後眼球全体の高次収差に関してもLASIKでは有意な増加を示したのに対して,ICLTMでは有意な変化を認めなかった.特に球面様収差は,LASIKでは有意な増加を示したが,ICLTMではほぼ不変であった.コントラスト感度もLASIKでは有意に低下したが,ICLTMでは有意に上昇した(図3).LASIK後regressionによる再照射を要した症例が4.0%に認められたが,その他明らかな術中・(55)屈折矯正手術スップ●連載監修=木下茂大橋裕一坪田一男92.有水晶体眼内レンズとLASIKの比較神谷和孝北里大学医学部眼科有水晶体眼内レンズ(phakicIOL)は,LASIKに比較して高い安全性・有効性だけでなく術後視機能の優位性が報告されている.角膜創傷治癒反応も受けにくいため,予測精度・安定性もきわめて良好である.これまで高度近視や角膜が薄い症例が良い適応と考えられていたが,中等度近視にまで適応が拡大しつつある.図1網膜像の倍率変化PhakicIOLでは近視量が大きくなっても,網膜像の倍率変化は無視しうる.一方,LASIKでは近視量が大きくなるほど,網膜像倍率は低下する.0.91.01.1-10.0矯正度数(D)網膜像倍率:LASIK:phakicIOL6.04.02.00.0-2.0-4.0-6.0-8.0図2PhakicIOLとwavefrontguidedLASIKの安定性の比較PhakicIOLでは角膜創傷治癒反応にほとんど影響されず,術翌日以降,屈折が安定している.一方,LASIKではovershootやregressionを生じている.-15.0-10.0-5.00.05.0術前1日1週1カ月3カ月6カ月1年等価球面度数(D):phakicIOL:LASIK術後期間———————————————————————-Page256あたらしい眼科Vol.25,No.1,2008術後合併症を認めなかった.参考までに,自験例によるICLTM手術全体における白内障発生率は1.9%であった.Sandersらは,中等度・高度近視眼においてICLTMは安全性・有効性・予測精度・安定性いずれもLASIKより良好な結果であったとしている2).また,Hrubaらは,10diopters(D)以上の症例においてICLTMはLASIKより早期に視力が回復し,予測精度・安定性に優れ,合併症も少ないとしている3).一方,Malecazeらは,812Dまでの症例において虹彩支持型pha-kicIOL(ArtisanTM)とLASIKを比較したところ,予測精度は同様であったが,矯正視力や術後視機能はphak-icIOLのほうが良好であったと報告している4).ではいったい,どの程度の近視にまでphakicIOLは適応となるのであろうか?これに対して現時点では明確な回答は得られていない.しかしながら,最近Sandersらは,軽度近視眼におけるICLTMとLASIKの比較を行い,安全性・有効性・予測精度・安定性すべてにおいてICLTMがLASIKより良好であったと報告している5).中等度近視における自験例での検討においても,高度近視ほどではないが,ICLTMはLASIKに比較して安全性・有効性が高かった.もちろん,phakicIOLは長期的な予後が不明であり,虹彩支持型(ArtisanTM,Arti-exTM)では術後炎症や角膜内皮障害,後房型(ICLTM)では二次性白内障といった克服しなければならない問題点も確かに存在する.しかしながら,これらの結果を考慮すると今後phakicIOLの適応は高度近視のみならず,軽度・中等度近視へ拡大していくのではないかと推測される.文献1)HershPS,FryK,BlakerJW:Sphericalaberrationafterlaserinsitukeratomileusisandphotorefractivekeratecto-my.Clinicalresultsandtheoreticalmodelsofetiology.JCataractRefractSurg29:2096-2104,20032)SandersDR,VukichJA:Comparisonofimplantablecon-tactlensandlaserassistedinsitukeratomileusisformod-eratetohighmyopia.Cornea22:324-331,20033)HrubaH,VlkovaE,HorackovaMetal:ComparisonofclinicalresultsbetweenLASIKmethodandICLimplanta-tioninhighmyopia.CeskSlovOftalmol60:180-191,20044)MalecazeFJ,HulinH,BiererPetal:Arandomizedpairedeyecomparisonoftwotechniquesfortreatingmoderatelyhighmyopia:LASIKandartisanphakiclens.Ophthalmology109:1622-1630,20025)SandersD,VukichJA:Comparisonofimplantablecollam-erlens(ICL)andlaser-assistedinsitukeratomileusis(LASIK)forlowmyopia.Cornea25:1139-1146,2006(56)☆☆☆●●●●●●●●●●LASIKPhakicIOL●:術後●:術前●●●●●●●●●●空間周波数(c/d)1.5361218空間周波数(c/d)1.536121830020010050201052.33.512510205030020010050201052.33.5125102050コントラスト感度図3PhakicIOLとwavefrontguidedLASIKのコントラスト感度の比較PhakicIOLでは術後コントラスト感度が有意に上昇するのに対し,LASIKでは有意に低下する.

眼内レンズ:嚢内眼内レンズの前房中脱臼

2008年1月31日 木曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.25,No.1,2008530910-1810/08/\100/頁/JCLS白内障手術後に,水晶体に固定されたままの眼内レンズ(intraocularlens:IOL)偏位や脱臼の報告はこれまでにもいくつかの報告がある1,2).しかし,前房内に内固定のままIOLが完全に脱臼した症例はまれである3).今回筆者らは,両眼IOLが内に固定されたまま前房内脱臼し,眼圧上昇,角膜内皮障害をきたした症例を経験したので報告する.例患者:78歳,女性.主訴:両眼視力低下.現病歴:2002年3月,前医にて両眼白内障に対し超音波水晶体乳化吸引術(PEA)およびIOL挿入術を施行された.術中合併症はなくIOLは内固定された.IOLは3ピースアクリルレンズ(全長6mm,光学部13mm)で,術直後の視力は右眼0.3×IOL(1.0×+1.00D(cyl1.50DAx100°),左眼0.7×IOL(1.0×+1.25D(cyl1.50DAx80°)であった.術後IOL振盪は認めていなかった.2005年1月定期受診時には両眼IOLの瞳孔捕獲を認めた.2006年5月定期受診時,右眼IOLが内に固定されたまま前房内に脱臼していた.左眼の瞳孔捕獲は解除されていた.視力は右眼(0.1×0.50D(cyl1.50DAx9°),左眼(0.3×0.25D(cyl1.50DAx9°)と低下していた.2007年2月転倒後より視力低下を認め,前医を受診した際,両眼IOLが内固定のまま前房内脱臼を認めたため,北里大学病院眼科(以下,当科)を紹介され受診となった.既往歴:糖尿病,認知症.家族歴:特記すべきことなし.来院時所見:視力は右眼0.02×IOL(0.03×8.00D),左眼光覚なし.眼圧は右眼20mmHg,左眼60mmHgであった.両眼IOLが内固定のまま前房内に脱臼し(53)ていた(図1,2).右眼は脱臼したIOLが角膜内皮に接触しており,左眼は前房内に炎症と凝血塊を認め,隅角鏡検査にてほぼ全周に周辺虹彩前癒着(PAS)を認めた.角膜内皮細胞密度は右眼1,492個/mm2,左眼1,891個/mm2であった.視神経は両眼ともに蒼白であった.山根史佳天野理恵清水公也北里大学医学部眼科眼内レンズー監修/大鹿哲郎257.内眼内レンズの前房中脱臼内固定した眼内レンズ(IOL)が両眼とも前房内に脱臼した症例を経験したので報告する.IOL前房内偏位は角膜内皮障害や続発緑内障など不可逆的な合併症を生じ,その処置に緊急性を要する.白内障術後,長期にわたる経過観察の必要性を再認識した.図1初診時の右眼前眼部写真眼内レンズが内固定のまま前房内に脱臼し,ループが角膜内皮に接触している.2初診時の左眼前眼部写真眼内レンズは内固定のまま前房内に脱臼し,前房内に炎症と凝血塊を認めた.隅角にはほぼ全周にPASを認めた.———————————————————————-Page254あたらしい眼科Vol.25,No.1,2008(00)治療および経過:今回視力の比較的良好であった右眼のIOL摘出術を勧めたが,本人,家族の希望により,2007年3月右眼は既存IOLの縫着術を施行し,左眼は経過観察とした.上方に2.8mmの角膜切開を行い,IOLのループのみを創口より出して(図3),角膜輪部より2mmの位置,3時と9時の2カ所でポリプロピレン糸にて縫着を行った.術後視力は右眼0.1×IOL(0.1×+1.00D(cyl2.00DAx130°).現在経過観察中である.本症例は78歳と高齢であり,Zinn小帯が経年変化により脆弱化していたと考えられる.そこに転倒,打撲などの外力が加わり,さらにZinn小帯の断裂が起こり,後方からの硝子体圧により瞳孔捕獲が起こった.そして対光反応などの瞳孔の運動により,徐々にZinn小帯の断裂が進み完全断裂し,前房内に脱臼したと考えられる.IOLが前房内に脱臼した場合には角膜内皮障害や続発緑内障をきたすことがある.その結果,不可逆的な視機能障害をきたす可能性があるため,その処置に緊急性を要する.高齢者は,Zinn小帯の経年変化による脆弱化に加え,転倒などの外傷の頻度も増加するため,IOLの偏位をきたす危険がある.当科において,平成18年7月からの1年間だけで28例29眼のIOL偏位により観血的治療を必要とした症例を経験した.白内障手術の増加により,今後もIOLが偏位する症例の増加が予想され,白内障術後の長期にわたる経過観察の必要性を再認識した.文献1)幾井重行,佐藤文平,田尻健介ほか:眼内レンズが内固定のまま硝子体中で脱臼した1例.眼科手術18:539-542,20052)加藤桃子,木村亮二,加藤整ほか:眼内レンズ位置異常をきたした症例の検討.眼科手術20:103-107,20073)神野英生,渡辺朗,神前賢一ほか:眼内レンズが内固定のまま前房内に脱臼したアトピー性皮膚炎の1例.眼科手術18:221-223,20053術中写真上方より2.8mmの角膜切開を行い,眼内レンズのループのみを創口より出して操作を行った.

コンタクトレンズ:円錐角膜へのハードコンタクトレンズ処方(1)  -仮面円錐角膜(masked keratoconus)を見抜く-

2008年1月31日 木曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.25,No.1,2008510910-1810/08/\100/頁/JCLS円錐角膜へのハードコンタクトレンズ(HCL)処方について,今回から5回にわたって解説する.1回目は診断,2回目はHCL単独処方,3回目はHCLベベルの修正,4回目はピギーバックレンズシステム,5回目は急性水腫のHCLを用いた治療について,私見を交えながら解説しようと思う.今回はHCLを処方する前に避けては通れない円錐角膜の早期発見について述べる.「円錐角膜の早期発見に意義はあるのか?」すなわち,円錐角膜を早期に発見して的確なHCL装用をさせれば,進行抑制が可能なのかという点について,はっきり結論づけた論文はみつからない.ただ,筆者らの印象では,円錐角膜進行例におけるDescemet膜破裂の症例では,HCLを処方されていなかったり,または処方されていてもHCL不耐症で装用していなかったケースが実に多い.逆に,筆者らが初期の段階からHCLを処方して経過観察を行っている数百人のケースにおいて,Descem-et膜破裂に至った例をみたことがないので,ある程度的確なHCLを装用していれば,円錐角膜の進行は抑制できるのではないかという仮説は十分通用すると考えている.円錐角膜の早期発見に意義があるとすると,これを見逃すことは眼科医として面目が立たなくなるのであるが,東京医科歯科大学の円錐角膜外来にたどり着くまで,何人かの眼科専門医の診断をすり抜けてきた円錐角膜のなかには,確かに診断がむずかしいと思われる症例があり,これを筆者らは仮面円錐角膜(maskedkerato-conus)とよんで整理している.<仮面円錐角膜タイプ1>屈折矯正視力検査をすり抜けてしまうタイプ.矯正視力が出にくい,乱視度数が強いといった状況で初めて疑われることの多い円錐角膜であるが,図1の右眼のように角膜形状がシンメトリーな場合,矯正視力は1.2まで出てしまう場合があり,ただの直乱視として片づけられてしまうことが多い.HCLを装用したときのフィッティ(51)黒石川誠佐野研二東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科眼科学コンタクトレンズー監修/小玉裕司渡邉潔糸井素純1仮面円錐角膜タイプ1のカラーコードマップVD=0.3(1.2×0.25D(cy13.0DAx50°),VS=1.5p(n.c.)で矯正視力は良好である.2仮面円錐角膜タイプ2のカラーコードマップ3図2と同一症例のHCL脱後30分のカラーコードマップ———————————————————————-Page252あたらしい眼科Vol.25,No.1,2008(00)ングパターンも,直乱視のそれと酷似しており,よく見逃される.非球面デザインHCLのフィッティングパターンの評価には,特に気をつけなければならない.対策は角膜形状解析に尽きる.最近はレフラクトケラトメータに付属したような普及機も登場しているので,ぜひ一台は持っていたい.<仮面円錐角膜タイプ2>タイプ2は,角膜形状解析検査さえすり抜けてしまうタイプ.たとえば,図2の左眼のカラーコードマップを見て,一体どれだけの眼科医が円錐角膜を疑うだろうか?図3が,この症例の本来の角膜形状である.円錐角膜の8割が両眼性であることを考えると,右眼が円錐角膜であることから,左眼も円錐角膜として間違いないだろう.こうした見落としの原因は本症例で装用していたHCLによるオルソケラトロジー効果による角膜のみかけ上の球面化である.対策は,HCL装用者の場合,レンズを外して最低20分経ってから角膜形状解析検査をすることである.HCL脱後,角膜形状は2週間ほどかけて本来の形状に戻るが,はじめの20分間は特に変化が大きく,円錐角膜を見抜くには十分な時間だからである.こうした仮面円錐角膜の概念を頭に入れていれば,日常診療のなかでの見逃しも,ぐっと少なくなるのではないかと思う.次号では,円錐角膜の視力補正の基本である,HCL単独処方のコツについて解説する.

写真:アシナガバチによる角膜刺傷

2008年1月31日 木曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.25,No.1,2008490910-1810/08/\100/頁/JCLS(49)坂根由梨山口昌彦愛媛大学医学部眼科ミナー監修/島﨑潤横井則彦284.アシナガバチによる角膜刺傷図1アシナガバチによる角膜刺傷(45歳,女性)右眼角膜中央付近に5mm大の類円形の角膜浮腫と細胞浸潤がみられた.中央部は強いDescemet膜皺襞を認めたが,角膜後面沈着物および前房炎症は明らかではなかった.図3図1と同一症例のフルオレセイン染色刺傷部位に一致した上皮欠損を認めた.図4再燃時の前眼部所見治癒約3カ月半後に角膜炎が再燃.前回の受傷部位とほぼ同部位に6mm大の類円形の浮腫と細胞浸潤を認め,上方に2つ,下方周辺部に4つの浸潤病巣を認めた.前房内に炎症所見はなく,角膜上皮欠損はみられなかった.図2図1のシェーマ①:角膜浮腫,②:細胞浸潤,③:前房内炎症(-).③①②———————————————————————-Page250あたらしい眼科Vol.25,No.1,2008(00)ハチによる角膜刺傷の報告は多数みられるが,それらの報告を検討すると,ハチの種類,受傷した季節,受傷深度,注入された毒量,受傷者の感受性などにより,その臨床像や予後は必ずしも画一的ではないことがわかる.特にハチの種類による予後の差は明らかであり,強毒性のスズメバチやクマバチの場合,水疱性角膜症,白内障,虹彩萎縮,続発緑内障,網膜の高度な障害にまで至るケース1,2)も多いのに対し,弱毒性のミツバチやアシナガバチの場合,最終的にわずかな角膜混濁を残すのみで,視力予後は比較的良好なケースがほとんどである3,4).三木ら1)がまとめた19611991年までのわが国におけるスズメバチ眼球刺傷の報告13例では,刺傷部位が前房まで至るケースが10例(77%)であり,最終視力は角膜移植を施行された2例を除けばすべて0.2以下で,5例(45%)が失明に至っている.また,中澤ら3)がまとめた19531994年までのアシナガバチ眼球刺傷の報告12例では,角膜でとどまっているケースが10例(85%)を占め,最終視力も11例(92%)が0.8以上と非常に良好である.治療としては,前房中に毒液が入った場合,できるだけ早期の前房洗浄をすべきとされており,消炎のためステロイドの点眼や全身投与,アトロピンの点眼などが必要である.スズメバチによる刺傷の場合は,早期では前房洗浄などの処置や,長期的には水疱性角膜症に対する角膜移植や白内障手術などの外科的治療を必要とすることも多い.それに比し,アシナガバチによる刺傷は,点眼などの保存的治療のみでも治癒することが多い.今回はアシナガバチによる刺傷で,特異な経過をたどった1症例4)を提示する.〔症例〕45歳,女性.庭で草むしりをしていた際,アシナガバチに右眼を刺され受診した.初診時角膜中央付近に,5mm大の類円形の角膜浮腫と細胞浸潤がみられ,強いDescemet膜皺襞を認めたが,前房炎症は明らかではなく(図1),刺傷部位に一致した角膜上皮欠損を認めた(図3).経過:レボフロキサシンおよびベタメタゾン点眼と,メチルプレドニゾロン眼軟膏を開始し,デキサメタゾン結膜下注射を3日行った.全身的には,プレドニゾロンを20mgから漸減投与した.1カ月後には視力(1.2)まで回復し,角膜もわずかに混濁を残すのみであったが,受傷約3カ月半後,角膜炎の再燃が生じた.前回の受傷部位とほぼ同部位に,上皮欠損を伴わない6mm大の類円形の角膜浮腫と細胞浸潤があり,その周辺にも浸潤病巣がみられた(図4).ヘルペスによる円板状角膜炎なども疑われたが,主病巣が前回の受傷部位に一致し,角膜上皮欠損を伴わない細胞浸潤を認め,血清中のアシナガバチIgE(免疫グロブリンE)抗体価が上昇していたことから,アレルギー反応と考え,ベタメタゾン点眼を開始したところ,角膜浸潤は改善し,消失した.その後,病巣の再燃は認めていない.本症例で角膜炎が再燃した理由として,角膜は血管の存在しない免疫学的に特異な臓器であるため,受傷時のハチ毒抗原が十分にクリアランスされないまま角膜実質内に残存し,ステロイド漸減により徐々に免疫抑制状態が解けた時点で,実質内にアレルギー反応が生じた可能性が考えられる.過去の報告では,本症例のような経過をたどった例はないが,予後良好とされるアシナガバチの刺傷においても,角膜炎の再燃を念頭に入れた長期間の経過観察が必要であると考えられた.文献1)三木淳司,阿部達也,白鳥敦ほか:スズメバチによる角膜刺傷の1例.眼紀45:1063-1066,19942)前田征徳,國吉一樹,入船元裕ほか:蜂による眼外傷の2例.眼紀52:514-518,20013)中澤毅,保谷卓男,野原雅彦ほか:良好に経過したアシナガバチによる角膜刺傷.眼臨89:1667-1669,19954)南伸也,山口昌彦,大島鉄朗ほか:特異な経過をたどったアシナガバチによる角膜刺傷の1例.眼臨97:961-964,2003

時の人

2008年1月31日 木曜日

———————————————————————-Page1あたらしい眼科Vol.25,No.1,200847(47)和歌山県立医科大学医学部眼科学講座に2007年4月1日,大西克尚教授(現名誉教授)の後任として,雑賀司珠也先生が第4代教授に就任された.雑賀先生は1964年2月生まれの和歌山市の出身で,地元の小中学校・高等学校を経て,1988年に和歌山県立医科大学を卒業,先々代の上野山謙四郎現名誉教授の主催されていた眼科学講座に入局された.翌1989年に大学院医学研究科外科系眼科学に進学され,以降,助手に採用された.その後,大西教授の下で講師,助教授を経て,今回の教授就任である.その間,講師在職中に文部省長期在外研究員に採用され,米国オハイオ州立大学眼科に派遣された.同科で,Visitingassistantprofes-sorとして角膜の創傷治癒と角膜発生学に関する基礎的研究に従事された.雑賀先生は上野山先生から白内障手術の指導を受けられ,その後,神戸海星病院の山中昭夫先生に日帰り白内障手術の導入時期や硝子体手術について学ばれ,さらに大西先生からは眼悪性腫瘍の治療に関して指導を受けられた.これらが雑賀先生の臨床面での大きな柱になっている.*創傷治癒が恒常性維持に必須である反面,過剰な治癒反応は瘢痕・線維化病変をひき起こし,視力障害の原因となるとのことから,雑賀先生は大学院時代から一貫して「創傷治癒と組織線維化」の研究に取り組んでこられた.学位論文では,安定型アスコルビン酸誘導体の局所投与がアルカリ外傷動物モデルで治癒促進効果をもたらすことを報告し,同論文により1993年に和歌山医学会青洲賞を受賞された.近年はノックアウトマウスを用いて特定の遺伝子の創傷治癒での役割を検討され,その遺伝子欠損の効果をウイルスベクターによる遺伝子導入で再現するという研究に取り組んでおられる.以上の「角膜,結膜」での創傷治癒の研究のほかに,「水晶体上皮細胞,網膜色素上皮細胞」の創傷治癒反応についても,さまざまな知見を得られ,その成果をもとに2003年にはゴードンカンファレンスで招待講演を行われた.また,2004年には日本白内障学会奨励賞を授与されている.*雑賀先生は臨床面では,早くから「日帰り白内障手術」の実現に取り組まれ,1995年1月には和歌山県下の官公立病院に先駆けて実施された.1995年には106例,1996年には136例,1997年には162例と増え,その後も現在まで順調に伸びているとのことである.網膜・硝子体手術についても和歌山県立医科大学へ導入され,医局スタッフの先生方への手術技術の指導も1998年頃には終了された.また,網膜下血腫除去手術とその手技を応用した黄斑部網膜下手術の手技も確立された.また,先生ご自身の研究テーマである「眼組織の線維化」に関連して,後発白内障に対して軟性アクリル素材の眼内レンズが軟性シリコーン性の眼内レンズよりも合併症が少ないと結論づけられた.*最後に,雑賀先生は「今後の抱負」として,卒前教育,臨床と卒後教育,研究面など多岐にわたり語られたが,その趣旨は,臨床研究,基礎的研究を問わず,「質の高い研究」を維持し,世界をリードできる専門分野を有する医師の育成であり,そのためには「リーダー自身が先頭に立って実践する」とのことである.先生ご自身の実験研究は週末と平日夜間に行われており,質・両ともに優れた原著論文を多数執筆されている.講義面では学生から,診療・手術面では多くの患者さんおよび教室のスタッフから絶大な信頼を得ておられる.先生個人としては,スタッフの健康維持が日々の診療に必要との考えから,家庭生活を犠牲にしない勤務体制を実現したいと語られた.0910-1810/08/\100/頁/JCLS人の時和歌山県立医科大学医学部眼科学・教授雑さい賀か司し珠ず也や先生