———————————————————————-Page1(1)????近年,コンタクトレンズや屈折矯正手術の進歩は著しいが,一生眼鏡なしに過ごせる人はまれである.その意味で,眼鏡は屈折矯正の基本であり,眼科医は眼鏡に関する新しい知識を常に知っておく必要がある.近年,眼鏡の素材および設計技術の進歩に伴い,より快適な老視用眼鏡が開発されている.また小児の治療用眼鏡に関する制度が改善され,処方しやすい環境が生まれている.このような時代背景を踏まえ,本特集では眼鏡の新しい展開に関して述べる.眼鏡の役割の一つに,小児においては視力発達の促進があげられる.これは,成長期に網膜上に焦点を結んだ状態が得られないと弱視になるという,Hubel&Wieselの動物実験の結果に基づいている.したがって弱視が疑われる場合は,早急に眼鏡の処方が必要とされ,また定期的に度数を変えたり,傷がついた場合は同じ度数でも作り変える必要が出てくる.眼鏡は多くの先進国ではすでに療養費給付の対象になっているが,わが国ではこれまで療養費給付の対象になっていなかった.小児を抱える若い世代にとって,眼鏡を定期的に作り変えることは経済的にかなりの負担になり,われわれ眼科医が頭を痛める問題でもあった.患者団体からの陳情に対する厚生労働省の前向きな取り組みと,本特集の執筆者の一人である杉山能子先生らの努力により,わが国でも治療用眼鏡に対して療養費給付が認められることになった.申請の流れと,どの範囲の疾患に対してこれが適用されるかに関しては,まだ十分には知られていないと思われるため,杉山先生にこれらの点に関してご説明いただいた.眼鏡はこれまで,1歳半くらいにならないと装用できないと考えられてきた.これは,乳児は眼鏡を,違和感からすぐに取り外してしまうためである.ところが最近,ゼロ歳児から装用可能なゴーグル型眼鏡が開発された.これは,視覚の臨界期で感受性の強い時期から屈折矯正ができることになり,朗報である.このことに関して仁科幸子先生に解説していただく.乱視矯正の眼鏡の乱視度は,装用感を重視して低矯正を目指すことがよく行われているが,これは果たして正しいのであろうか?長谷部聡先生は留学先のGuyton先生の理論をもとに,斜乱視では低矯正が望まれるが,直(倒)乱視では完全矯正しても問題がないことを解説していただいた.累進多焦点の眼鏡を有効に使うためには,視線の移動が重要である.河原哲夫先生は,眼鏡をかけたときのどの部位を使って見ているかを検出できる,視線追跡装置を開発されており,この装置を使って累進多焦点を装用したとき,実際どの部位で見ているかについて解説していただく.また近年,遠近用累進多焦点眼鏡だけでなく,中近・近近の累進多焦点眼鏡も普及しつつある.これらの眼鏡は正面を見0910-1810/07/\100/頁/JCLS*TakashiFujikado:大阪大学大学院医学系研究科感覚機能形成学●序説あたらしい眼科24(9):1133~1134,2007眼鏡の新しい展開????????????????????????????????????????不二門尚*———————————————————————-Page2????あたらしい眼科Vol.24,No.9,2007たときに焦点が合う位置が中間距離(パソコンの距離)あるいは近距離(読書距離)に合わせてあり,上目使いをすれば遠方も見える眼鏡である.オフィスワークをする中高年が増加している現在,求められる中近・近近の累進多焦点眼鏡についての最新情報を簗島謙次先生に解説していただいた.累進レンズは設計上ある程度のユレ,ゆがみがでることは避けられず,これが見え方の質(QOV)を低下させる.ユレ,ゆがみは光学的には非点収差に起因するが,これをいかに少なくするかがポイントとなる.祁華先生には,このユレなどを定量化する方法について解説していただいた.瞳孔径が小さくなると,焦点深度が深くなり近くを見るときに調節力を節約することができる.加齢に伴う瞳孔径の減少は,合目的的な変化ということができる.瞳孔に造詣の深い浅川賢先生・石川均先生には,瞳孔径の加齢変化および白内障手術時に瞳孔を保つことの重要さに関して解説していただく.最後に,ロービジョンの分野で最近話題になっている遮光眼鏡に関して取り上げる.短波長の光を選択的にブロックする遮光眼鏡は,加齢黄斑変性などの網膜疾患の患者に対して,くっきり見えるようにするため処方することが多いが,客観的な証拠に乏しかった.視能訓練士の阿曽沼早苗さんは,遮光眼鏡装用下でコントラスト感度を測定することにより,加齢黄斑変性ではコントラスト感度が上昇することを示し,その機構にも考察を加えている.本特集は,眼鏡に関する上級編の解説になった感があるが,視機能管理の専門家として,眼科医が今後付加価値をつけていくためには,このような知識も積極的につけていってほしいという希望もこめて組んだものである.(2)