———————————————————————-Page10910-1810/08/\100/頁/JCLSる.クラスⅠ分子は細胞自身がもつ内在性蛋白質が分解されてできたペプチドと結合し,CD8+T細胞がこれを認識して活性化する.HLAクラスⅡ分子はa鎖とb鎖のヘテロダイマーからなる膜貫通型糖蛋白質で,B細胞,抗原提示細胞(皮膚のLangerhans細胞,樹状細胞,単球,マクロファージ)および活性化T細胞のみに分布している.クラスⅡ分子は抗原提示細胞が細胞外より取り込んだ抗原を分解してできたペプチドを結合して細胞表面に発現し,これをCD4+T細胞に提示して活性化する2).MHCはヒトではHLAとよばれるが,他の動物(種)では名称が異なる(表1).はじめにさまざまな要素が関わり合い疾患に罹患することになるが,そのなかには生まれもっている遺伝子も含まれる.もちろん,遺伝子の異常によって発症する疾患もあるが,遺伝子そのものに異常がなくとも,その遺伝子により疾患感受性が規定されていることがある.その一つが,抗原提示あるいは自己認識に関わる主要組織適合遺伝子複合体(majorhistocompatibilitycomplex:MHC)抗原である.MHCは個人により保有する型が異なり,ある種の型をもっている場合,ある疾患に罹りやすいことが知られている.IMHC抗原糖蛋白質であるMHC抗原はヒトの場合ではヒト白血球抗原(humanleukocyteantigen:HLA)とよばれ,1954年にJ.Dausset博士によってパリ大学で発見された1).その支配遺伝子座は第6染色体短腕上に存在し,高度の遺伝的多型性がある.免疫応答制御の中心的な役割を果たし,全長約4,000kbでありヒトゲノムのなかでも早くから詳細な解析が進んでいる遺伝子領域である.HLAは構造上の違いからHLA-A,B,Cに代表されるクラスⅠ分子とHLA-DR,DQ,DPからなるクラスⅡ分子に分けられる.また補体関連の蛋白質をクラスⅢということがある.MHCクラスⅠ分子はa鎖とb鎖のヘテロダイマーからなる膜貫通型糖蛋白質で全身の有核細胞に発現してい(9)1479eh838157特集●ぶどう膜炎検査の正しい使い方あたらしい眼科25(11):14791483,2008ヒト白血球抗原(HLA)HumanLeukocyteAntigen(HLA)南場研一*表1MHCの名称種MHCヒトマウスラットウサギネコブタHLAH-2RT1RLAFLASLAHLA:humanleukocyteantigen.H-2:histocompatibility-2.RLA:rabbitleukocyteantigen.FLA:felineleukocyteantigen.SLA:swineleukocyteantigen.———————————————————————-Page21480あたらしい眼科Vol.25,No.11,2008(10)III人類の進化とHLA個体はその個体のもつ遺伝情報により作られる.遺伝子の多くは個体間で差がなく,ほぼ共通の個体が形成される.たとえば,眼は2個,鼻は1個,耳は2個である.しかし,個体間で異なる部分もあり,たとえば皮膚の色,虹彩の色の違いは遺伝子の差により決定される.遺伝子の変化に富んだ部分を遺伝子多型があるというII抗原提示抗原に対する免疫反応は,以下のメカニズムにより成立する.蛋白抗原は抗原提示細胞内で,アミノ酸820個の直鎖であるペプチドへと分解される.ペプチドはMHCに結合し細胞表面へ運ばれ,T細胞へ提示される(図1).一般にMHCクラスIは内因性抗原を提示しCD8+T細胞,NK(naturalkiller)細胞により認識されるのに対し,MHCclassIIは外来抗原を提示し,CD4+T細胞に認識される.ところが,すべてのペプチドが抗原提示されるわけではなく,MHCに結合可能なペプチドのみが抗原提示される.このことがMHCにより疾患感受性が規定される鍵となる部分である.たとえば,aというペプチドに反応するT細胞が,ある疾患の発症に関与している場合,AさんのMHCにはaが結合するがBさんのMHCにはaが結合しないとすると,Aさんはa反応性T細胞により発症の可能性があるが,Bさんには発症の可能性がないというわけである(図2).さらにいえば,MHCにはペプチドが結合する溝があり,その溝には特定のアミノ酸のみ結合可能なポケットが2カ所ある.そのポケットに結合可能なアミノ酸が配列されたペプチドだけがMHCに結合するのである(図3).抗原抗原ペプチドMHC抗原提示細胞T細胞レセプターT細胞図1抗原提示抗原蛋白はアミノ酸820個の直鎖であるペプチドへと分解され,MHCに結合して細胞表面へ運ばれ,T細胞へ提示される.MHCクラスIとクラスIIとで蛋白分解,MHCへの結合の過程が異なる.a(抗原ペプチド)AさんのMHC(HLA)結合T細胞活性化発症Aさんa(抗原ペプチド)BさんのMHC(HLA)結合しないTT細胞活性化せず発症せずBさんT図2HLAの違いによる疾患感受性aというペプチドに反応するT細胞がある疾患の発症に関与している場合,aが結合可能なMHCをもつAさんはa反応性T細胞により発症.しかし,aがMHCに結合しないBさんではa反応性T細胞へ抗原提示が行われないため,Bさんは発症しない.ポケットMHCアンカーアンカーペプチド図3ペプチドのMHCへの結合MHCにはペプチドが結合する溝があり,その溝には特定のアミノ酸のみ結合可能なポケットが2カ所ある.ペプチドのアミノ酸配列のなかにポケットに結合するアンカーとよばれる部位があるが,そのアンカー部位のアミノ酸の種類によりそのペプチドがMHCに結合可能かどうかが決定される.———————————————————————-Page3あたらしい眼科Vol.25,No.11,20081481(11)HLAタイピング抗血清,新鮮な十分量のリンパ球が必要であった.一方,最近ではHLA遺伝子の塩基配列が明らかとなり,遺伝子レベルでサブタイプに分類されるようになった.その結果得られたものを遺伝子型という.遺伝子型の検査法にはいくつかあるがPCR-SSO(polymerasechainreaction-sequencespecicoligonu-cleotide)法が最も普及している.遺伝子特異的なプライマーを使ってPCR増幅を行い,多型性部位配列に特異的なプローブと反応させて,陽性プローブの位置に発色バンドが出るようにしたものがキットとして用いられている.遺伝子型は「*」をつけて4桁の数字で示されるが,最近ではより詳細に遺伝子サブタイプの解析が進み8桁まで示されることもある.上2桁が血清型と一致することが多いが,違うものもあるので注意が必要である(表2).VIぶどう膜炎とHLAぶどう膜炎のなかでHLAがその発症に関与が示されているのは以下の疾患である.1.Behcet病Behcet病とHLA-B51との相関については,1973年に大野ら3)により(その当時はHL-A5)初めて報告された.その後の解析により,Behcet病の61%にHLA-B51がみられ,日本人のHLA-B51遺伝子表現頻度が15%(遺伝子頻度は8.6%)であることから高い危険率で疾患との相関がみられることが判明し,現在では疾患原因遺伝子の一つと考えられている.そして遺伝子型ではB*5101であることが判明した.最近ではさらに遺伝子サブタイプの分類が進みHLA-B*510101と6桁まで表記される.またB51陰性患者においてHLA-A*2601との相関も明らかにされている4).2.HLAB27関連ぶどう膜炎HLA-B27(HLA-B*2704,*2705)陽性者に発症する急性前部ぶどう膜炎である.日本人のHLA-B27遺伝子表現頻度が1%未満(遺伝子頻度は0.25%)であることを考えると診断的意味が大きい.他のHLA-B27関連疾が,HLAも遺伝子多型のある部位であり,人類の進化とともに変化してきたと考えられている.人類は700万年前にアフリカで誕生し,2万年前にユーラシア大陸へ入った後,一部はヨーロッパへ,一部はアジアへと広がった.ヨーロッパへ広がった白人のもつHLAと,アジアへ広がったモンゴロイドのもつHLAはまったく異なるパターンを示し,HLAの多型を調べることにより人類の足跡をたどることができるともいわれている.また,人類の進化とともにHLAが変化し,そのために出現した疾患もあると考えられる.たとえば,恐らく人類が誕生したときにはHLA-B51は存在しなかったし,Behcet病はこの世になかったと考えられる.白人,黒人にはHLA-B51が少ないことから,HLA-B51はユーラシア大陸に入った人類が,ヨーロッパとアジアへ別れた後,アジアへ向かった人類のなかから突如としてトルコ近辺で出現したと考えられており,その後にBehcet病も出現するようになったことが考えられる.人類は過酷な環境のなかで生存すべく遺伝子を変化させ適応してきたが,逆に不要な疾患も作り出してしまったようだ.IV疾患感受性とHLAある疾病は単一遺伝子の異常,欠損によって生じる.たとえば,アデノシンデアミナーゼ(ADA)欠損症などである.しかし,多くの疾病は複数の原因遺伝子が発症に関与すると考えられており,その複数の原因遺伝子をすべて保有しなくても,ある程度保有していると発症すると考えられている.たとえば,Behcet病もそのような多遺伝子が原因と考えられている疾患であり,その原因遺伝子の一つがHLA-B51である.Behcet病のなかにはHLA-B51陰性の患者もいるのはそのためである.V血清型と遺伝子型以前は,リンパ球混合培養あるいは血清に対する反応性(抗血清反応)によりHLA型の決定が行われていた.その結果得られたものを血清型という.その方法は,検査対象者のリンパ球を分離し,これを標的として多数の厳選されたHLAタイピング抗血清との反応をもとにHLA型を決定するものであるが,この方法では良質な———————————————————————-Page41482あたらしい眼科Vol.25,No.11,2008(12)VII実際の検査HLA検査は,地域によって異なるが,ぶどう膜炎には保険適用がないため自費もしくは研究費で行っているのが現状である.これまで述べてきたように診断に重要な検査であることを考えると,この状況は決して望ましくなく,早期に保険適用となることが期待される.稿を終えるにあたり,ご校閲いただきました北海道大学医学研究科炎症眼科学講座大野重昭教授に深謝いたします.文献1)DaussetJ:Leuco-agglutinins.IV.Leuco-agglutininsand患(強直性脊椎炎,炎症性腸疾患,乾癬,Reiter病)を合併することもある.3.Vogt小柳原田病HLA-DR4(HLA-DRB1*0405,*0410)との関連が示されている.実際,原田病の82100%がDR4陽性である57).しかし,日本人のDR4頻度が2943%57)と高いことを考えると,DR4陽性であることは原田病である根拠にはならず,むしろDR4陰性の場合に原田病ではない可能性を示唆するものであると理解すべきである.また,日本人の交感性眼炎でもVogt-小柳-原田病と同一のHLA相関を示す.表2HLABの遺伝子型と対応する血清型血清型遺伝子型遺伝子頻度(%)血清型遺伝子型遺伝子頻度(%)B7B*0702015.54B61B*4002017.75B*0705010.01B*40030.42B13B*13011.20B*400601014.70B*1302010.26B60B*40070.01B62B*150101019.37B44B*440201010.45B75B*15020.04B*4403016.97B62B*15070.63B46B*4601014.59B75B*1511010.96B48B*48012.93B71B*15181.57B51B*5101018.62B62B*15280.10B*5102010.23B*15380.01B*51030.01B27B*2704010.20B52B*52010111.43B*2705020.05B54B*54017.55B35B*3501018.15B55B*5502012.43B37B*3701010.52B*55040.16B38B*3802010.25B56B*56010.91B39B*390101013.34B*56030.17B*3902010.04B58B*58010.65B*39040.25B59B*59011.94B*39230.04B67B*6701010.99B60B*4001015.41遺伝子頻度は日本赤十字社中央骨髄データセンター骨髄提供希望登録者のHLA型遺伝子頻度より抜粋(http://www.bmdc.jrc.or.jp/stat.html).頻度が0.01%未満のものは省いた.———————————————————————-Page5あたらしい眼科Vol.25,No.11,20081483(13)patients.MolVis12:1601-1605,20066)IslamSM,NumagaJ,MatsukiKetal:InuenceofHLA-DRB1genevariationontheclinicalcourseofVogt-Koy-anagi-Haradadisease.InvestOphthalmolVisSci35:752-756,19947)ShindoY,InokoH,YamamotoT,OhnoS:HLA-DRB1typingofVogt-Koyanagi-Harada’sdiseasebyPCR-RFLPandthestrongassociationwithDRB1*0405andDRB1*0410.BrJOphthalmol78:223-226,1994bloodtransfusion.VoxSanguinis4:190-198,19542)菊地浩吉:周り道免疫学.メディカルレビュー社,19983)OhnoS,AokiK,SugiuraSetal:HL-A5andBehcet’sdis-ease.Lancet2:1383-1384,19734)上石智子,伊藤良樹,目黒明ほか:PCR-SSOP-Luminex法を用いた日本人Behcet病患者における症状別HLA-A,-B遺伝子解析.日眼会誌112:451-458,20085)HorieY,TakemotoY,MiyazakiAetal:TyrosinasegenefamilyandVogt-Koyanagi-HaradadiseaseinJapanese