●連載◯137監修=安川力五味文117PachychoroidNeovasculopathy山本学大阪公立大学大学院医学研究科視覚病態学の治療Pachychoroidneovasculopathy(PNV)はパキコロイド関連疾患の一つとされ,脈絡膜の異常を伴ったC1型黄斑新生血管を伴うのが特徴とされる.本稿では,PNVの特徴およびその病態に基づいた治療を,これまでのエビデンスをもとに概説する.はじめにPachychoroidCneovasculopathy(PNV)はパキコロイド関連疾患,またはパキコロイドスペクトラム疾患群(pachychoroidspectrumdiseases:PSD)とよばれる一連の疾患群の一つとされる.Pachychoroidとは,その名の通り脈絡膜の肥厚を意味し,中心性漿液性脈絡網膜症(centralCserouschorioretinopathy:CSC)や滲出型加齢黄斑変性(age-relatedCmaculardegeneration:AMD),その特殊型のポリープ状脈絡膜血管症(polyp-oidalCchoroidalvasculopathy:PCV)といった疾患に関連する病態として着目されるようになった.PSDの定義は報告によってまちまちであるが,CSCに代表される脈絡膜血管の拡張や脈絡膜血管透過性亢進といった脈絡膜の異常を伴うとされ,最近では脈絡膜血管(おもに中大血管)の拡張を重視し,脈絡膜厚の肥厚は必ずしも必須の所見ではないとされる傾向にある.PSDの中でも脈絡膜新生血管を伴うものをCPNVとし,CSCやAMD,PCVと区別するようになっている.CPNVの診断PNVはその病態から欧米人と比較してアジア人に多く,最近のわが国の報告でもCPNVの比率はCAMDのC20%程度にみられるとされる1).PNVでは,光干渉断層計(opticCcoherencetomography:OCT)でCType1黄斑新生血管(macularneovascularization:MNV)に伴う網膜色素上皮の不整隆起がみられ,漿液性網膜.離のような滲出性病変を伴うことが多い.インドシアニングリーン蛍光造影は脈絡膜血管の透過性亢進やCMNVの診断に有用であるが,MNVは光干渉断層血管撮影(OCTangiography:OCTA)が描出に優れている(図1,2).CPNVの治療PNVはCCSCにみられるような脈絡膜異常と,AMDにみられるCMNVという二つの要素をもつため,治療も(83)C0910-1810/23/\100/頁/JCOPYIA図1PNVの画像眼底は漿液性網膜.離に一致して網膜色素上皮異常がみられ,眼底自発蛍光(FAF)では網膜.離部に異常過蛍光がみられる.フルオレセイン蛍光造影(FA)ではCMNVからの漏出,インドシアニングリーン蛍光造影(IA)では脈絡膜血管の拡張と異常透過性亢進を認める.その二つの方向性から考えることができる.CSC,とくに慢性CCSCの治療として考えると,脈絡膜血管の透過性亢進を抑制する目的としては,光線力学的療法(pho-todynamicCtherapy:PDT)が有効であることが知られている.慢性CCSCに対しては,保険適用外であるが照射量や照射時間,ベルテポルフィンの投与量を半減したPDTにより漿液性網膜.離の改善や脈絡膜厚の減少が期待でき,治療として確立されている.このため,PNVに対してもCPDTにより,視力の改善や漿液性網膜.離の消失,脈絡膜厚の減少など病態の改善に寄与できたとする報告が多数なされている2).一方,PNVにおけるCMNVの病態に着目すると,あたらしい眼科Vol.40,No.11,20231453OCTOCTA図2OCTおよびOCTAの治療前後図C1と同一症例におけるアフリベルセプト硝子体内注射併用光線力学的療法の治療前後のCOCTおよびCOCTA画像.上段が治療前で,OCTでは漿液性網膜.離とCMNVを疑う網膜色素上皮の隆起を認め,OCTAではCMNVが描出されている.下段は治療C3カ月後で,網膜.離は消失し,MNVも範囲が縮小し目立たなくなっている.AMD治療として代表的な抗CVEGF薬が適応として考慮され,その有用性も検証されている.PNVに対するベバシズマブ,ラニビズマブ,アフリベルセプトの有効性を比較した検討では,平均C30カ月の経過で網膜厚は3群とも有意に減少する一方で,脈絡膜厚はベバシズマブで有意な減少はみられなかったがラニビズマブ,アフリベルセプトで有意に減少し,アフリベルセプトが他の2薬より少ない回数で治療が可能であったと報告している3).いずれにしても,抗CVEGF薬はCPNVの治療に有効であると考えられる.また,PDTと抗CVEGF薬の併用療法も,PNVに対してより高い治療効果を示す可能性がある.Matsumotoらは,PNVに対しアフリベルセプト併用照射エネルギー半減CPDTを施行し,視力改善や中心窩網膜厚,中心窩脈絡膜厚といった解剖学的な改善がC1年間維持されたことを報告している4).また,Takeuchiらは,PNVに対しアフリベルセプト併用投与量半減CPDTを施行した半年間の結果を検討し,年齢が若い,治療歴がない,MNVのサイズが小さいもので効果が高い可能性があると考察している5).PNVに対しては,VEGF薬とCPDTの併用はその病態からも理にかなっており,推奨されうる(図2).CPNV治療の今後これまで述べてきたように,PNVの治療はCPDT,抗VEGF薬,もしくはその併用療法で効果が認められてC1454あたらしい眼科Vol.40,No.11,2023いるが,どの治療がもっとも推奨されるかは現在のところ不明である.PNVの病態は網膜色素上皮細胞や脈絡膜循環などのさまざまな要素が関連しているため,AMDやCCSCに対する治療と同様に,各病態の特性に応じた治療法を選択していく必要があると考えられる.文献1)MiyakeM,OotoS,YamashiroKetal:Pachychoroidneo-vasculopathyCandCage-relatedCmacularCdegeneration.CSciCRepC5:16204,C20152)MatsumotoCH,CHiroeCT,CMorimotoCMCetal:E.cacyCofCtreat-and-extendCregimenCwithCa.iberceptCforCpachycho-roidCneovasculopathyCandCtypeC1CneovascularCage-relatedCmacularCdegeneration.CJpnCJCOphthalmolC62:144-150,C20183)KarasuCB,CAkbasCYB,CKaskalCMCetal:LongCtermCresultsCofthreeanti-vascularendothelialgrowthfactoragentsinpachychoroidCneovasculopathy.CCutanCOculCToxicolC41:C145-154,C20224)MatsumotoCH,CMukaiCR,CKikuchiCYCetal:One-yearCout-comesCofChalf-.uenceCphotodynamicCtherapyCcombinedCwithCintravitrealCinjectionCofCa.iberceptCforCpachychoroidCneovasculopathywithoutpolypoidallesions.JpnJOphthal-molC64:203-209,C20205)TakeuchiJ,OtaH,NakanoYetal:PredictivefactorsforoutcomesCofChalf-doseCphotodynamicCtherapyCcombinedCwithCa.iberceptCforCpachychoroidCneovasculopathy.CGrae-fesCArchCClinCExpCOphthalmol2023(onlineCaheadCofprint)(84)